第2章

セディルはヴィシャス国の城の中で道に迷っていた。

ユーリスやリファラと共に、ヴィシャスの城の前まで着いたのはいいが、その後、お手洗いに案内してもらい、帰り道がわからなくなってしまったのだ。


「うわっ!」
セディルは誰かとぶつかってしまった。

「すまない。大丈夫か?」
金髪にエメラルドのような緑色の瞳の青年が声をかける。

「はい。ぼ、ぼくの方こそすみませんでした」
セディルは頭を下げて謝った。

「大丈夫ですか?お嬢さんもラスレン隊長も」
近くにいた老年の執事が声をかける。

「えっ…?あなたがラスレンさん?」
探していた人物に会ってしまったので、セディルは驚いた。

「ああ、そうだよ。俺を知ってるのかい?」
ラスレンは笑顔で尋ねる。

「はい、実は…」
セディルはラスレンに事情を説明した。

英雄の子孫で隊長を努めているという話を聞いたから、もっと上の年令の人を想像していた。

ラスレンはセディルが道に迷っていると聞いたので、ユーリス達が待っている城の入り口まで一緒に行くことにした。


「あの、さっきはすみませんでした」
セディルはもう一度謝罪した。

「いや、気にするな。俺がよそ見してたからだよ。俺、結構ドジだからな」
親しみやすいラスレンの態度にセディルの緊張感が和らいでいく。

「そうなんですか?」
セディルは思いきって聞いてみた。

「ああ。一昨日は、ボーッと歩いてたら急に衝撃がきて何が起こったのかと思っていたら、柱に顔面をぶつけてしまったんだ。部下にも笑われたな」

「柱に顔面…!」
ラスレンの話を聞いてセディルは笑いだす。

「おい。笑わなくてもいいだろう」
ラスレンは苦笑いする。

(なんだか意外だな)
セディルはラスレンを見て、人は見かけによらないと感じた。
 
ーー

セディルはラスレンのおかげで、ユーリス達の待っている城の前まで戻って来ることができた。


「ラスレンさんこんにちは」
ユーリスはラスレンに挨拶した。

「ユーリス様。お久しぶりですね」
ラスレンは笑顔で答えた。

「はい、おれも父上も相変わらずです」
ユーリスは慣れた口調で言葉を返す。

ユーリスは前からラスレンとは何度か顔を合わせたことがあった。

(ラスレンさんが敬語…。そうだ…!ユーリスは大僧正の息子だった)
セディルは、ユーリスとは対等な感じで旅をしていたため、あらためてユーリスの身分を思い出したのだった。

「来て下さってありがとうございます。詳しい話は部屋でしましょう」
ラスレンは、三人を部屋まで案内することにした。

――
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