第2章

 
「確かにな」
一方シディエスはあまり酔っていないようだ。

「もう一杯飲むか」
お酒に弱いラスレンは、既に酔いが回っていた。

そのせいなのか、グラスに入ったワインをビンの中に入れながらボーッとしている。

「おいっ!何やってんだよ兄貴!?」
シャークはラスレンの手を止めた。

「ラスレン。ビンとグラスが逆だろう」
シディエスがつっこむ。

「あ、そうか。どうりでビンが小さくて軽いと思ったよ」
ラスレンがビンとグラスを持ち直した。

「ハッハッハ!しっかりしてくれよ兄貴~」
シャークもまた陽気に酔っぱらっていた。


そして――


「シャーク。そろそろ帰ろう」
酒を飲み終え、シディエスが言い出す。

「そうだな。おい、帰るぞ…って兄貴…?」
「ラスレン?」
二人はラスレンを見るが、ラスレンは酔いすぎているのか目がうつろだった。

「う~ん…」
ラスレンは、フラフラとテーブルに頭を倒しそのまま眠ってしまう。

「ラスレン、大丈夫か?」
シディエスはラスレンに呼びかける。

「…ん?…」
ラスレンは、なんとか起きるものの意識がもうろうとしており、今にも寝てしまいそうだった。

「兄貴…ったくまたかよ~」
シャークは苦笑する。

「シャーク。すまないがラスレンを頼む」
シディエスは明日の朝早くから勤務があった。

「しょーがねぇなぁ。部屋まで送ってやるか。彼女を送るならまだしも兄貴だもんなぁ~」
シャークはラスレンに肩をかしながら冗談を言う。

「お前はこの間、女と二人で飲んでいなかったか?」
シディエスがクールに尋ねる。

「ああ。けどフラレちまったぜ。なんかうまくいかなくてよ…」
シャークはガッカリしたような顔をする。

「そうか」
シディエスは短く返す。

「そういや前に、お前が両手に花で飲んでたのを見かけたぜ」
シャークが羨ましそうに言う。

「あれは向こうが勝手に言い寄ってきたのだ。二人とも断ったがな」
シディエスが冷静に答える。

「もったいねぇ」
シャークが一言返した。

「…もったいない…花を捨てたのか…綺麗な花を…」
起きているのか寝ているのかわからない状態のラスレンが寝ぼけているように呟く。

「どうやら意味がわかっていないようだな」

「ダメだなこりゃ。完全に酔ってるぜ」
シディエスとシャークの二人は顔を見合わせる。

「…シディエス両手に花…」
半分以上寝ているラスレンが小さく呟く。

「その部分だけ覚えているとはな」
微笑するシディエス。

「はははっ。まあいつものことだから。きっと明日になったら忘れちまってるんだろうなぁ」
シャークも笑いだした。

――――

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