第2章

「あの男は誰だ?それにあいつ、兄さんて呼んでたよな」
今まで黙って見ていたアシェドがエリレオに話しかけた。

「あの方はカシルの兄、シディエス隊長。第二部隊の隊長でラスレン隊長の友人だ」
エリレオが答える。


ヴィシャス王国には二つの戦闘部隊があった。

ラスレン隊長の第一部隊。
シディエス隊長の第二部隊。

ラスレンの部隊は剣と弓で編成されている。
シディエスの部隊は剣だけではなく、魔法が使える者も所属していた。

カシルの兄のシディエスは、天才剣士として名が知られており、美形であるため目立っていた。

剣だけはなく魔法も使える魔法剣士で、10年前には17歳という若さで副隊長を努めた。

シディエスの弟であるカシルも魔法が使える剣士で、カシルもまた兄のような才能が隠れていた。

兄シディエスがあまりにも高名であるのと、カシル本人が控えめな性格のためか、カシルの実力はあまり知られていなかった。


「ふーん」
アシェドが、気の抜けた返事をする。

「お前…」
エリレオはため息を吐いた。

「あいつら何か話してるみたいだし、俺達には関係なさそうだから行こうか」
アシェドは、カシルにもシディエスにも興味がなかった。

「いや、僕はここでカシルを待つ」
エリレオは断った。

「なら勝手にどーぞ」
アシェドはあっさりと返し、シディエスとカシルの方をちらりと見た。

その瞬間、アシェドはシディエスと目があった。

冷静で鋭く相手の強さを見抜くようなシディエスの表情。

(…嫌な感じ)
アシェドは、シディエスのようなクールで冷静なタイプも苦手だった。

あの兄弟には関わりたくない。
特に、兄の方には…

――――
 
15/43ページ