第2章
セディルとユーリスは、最初の目的地ヴィシャスを目指して、ひたすら平地を歩き続けている。
「ヴィシャスには城があり、世界でも有名な場所なんだ。でも…」
ユーリスが話し始めた。
ヴィシャスは、国の占領、支配、滅亡などを企む敵達に狙われている状況にあった。
そのため戦力を必要としており、兵士や傭兵を募集していた。
敵はさまざまだ、賊や泥棒といったわかりやすい連中から正体不明の組織シュヴァまでいる。
そのため城も街全体も厳重に警備されていた。
戦場の危機になることを恐れ、他国へ移住する人々や国を出て故郷に帰る人々も出てきた。
「どうしてそんなに狙われているんだろう?」
セディルは疑問に思った。
「ヴィシャスにある、莫大な財産や貴重な宝を手に入れたいのか。英雄の力や部隊の力を恐れてるのか。世界でも一、二を争うほどの国力を持っているからな」
ユーリスはヴィシャスの街までの方角を真っすぐ見ていた。
「街に着いたらどうするんだい?」
話が一区切りしたところで、セディルは聞いた。
「ラスレンさんに会って、シュヴァの事について話し合い、協力をお願いしたいんだ」
ユーリスは、同じ聖なる力を持つラスレンと力を合わせられることを願っていた。
「その人とは会ったことがあるのかい?」
「ああ、ラスレンさんとは顔馴染みだよ。それにラスレンさんは英雄セインレスの子孫だからな」
ユーリスは明るく答えた。
「セイン…レス…?」
セディルには聞いたことのない名前だった。
「えっ!?あの英雄セインレスだぞ!?」
驚いたユーリスがセディルを見る。
「…ごめん。知らないんだ」
セディルは謝って正直に答える。
「わかったよ。おれも驚いたりして悪かったな」
ユーリスはセディルの不安を和らげるため、穏やかな笑顔で返した。
今から200年前――
光の力を持つカトレリア一族は、魔物を率いる謎の組織ヴァルツ達に狙われ、一族は滅ぼされた。
ヴァルツ達は魔物達を使役し、地上界の人々を恐怖に陥れようと企んでいた。
そんな時、一人の男が現われた。
名は“セインレス”。
天上人から授かった聖なる剣“レクレヴァス”を手にし、仲間達と共にヴァルツの野望を打ち砕き、世界を救った――
「その英雄の血を引いているのがラスレンさんなんだ」
ユーリスは一通り説明した。
「へえ。そんな重要な人に会えるなんて。どんな人なのかな?」
セディルは興味を抱いていた。
「それは会ってみてからのお楽しみさ」
ユーリスは早く会いたそうな顔で言った。
二人はしばらく歩いている。
「ところでさ、セディルは武器を持っていないようだけど、何を使って戦うんだ?」
ユーリスが気になったことを質問した。
「…!」
セディルは、はっと気付いて足を止める。
「セディル?」
ユーリスも止まりセディルを見た。
「あれ…っ?ぼくは…」
セディルは不安になり、自分の手を見て考え込む。
ぼくは戦っていた…。
武器は何を使ってた…?
そもそも武器を持っていたのか…?
なら魔法は…?
何かの攻撃魔法を使っていたような気がするけど、モヤモヤして思い出せない…。
覚えていたのは初級の回復魔法と、戦い以外に使う結界魔法くらいだ…。
「ぼくはどうやって戦ってきたんだ…?何もわからない…」
セディルは、自分が戦っていたことは理解していても、自分の戦った行動の部分が記憶から抜け落ちていた。
「ええっ!…あっそうか。記憶喪失だったんだよな…」
ユーリスは驚くも、セディルには記憶がないのだから無理もないだろうと思った。
(おかしいな?今まで戦ってきた相手は覚えているのに、なんで自分の戦い方だけが思い出せないんだ?)
セディルは、なんとかして記憶の底から引っ張り出そうとする。
しかも、この時代に来る前の戦いの記憶だけがないことに気づく。
(まさか…ぼくが未来に来てしまったことと関係があるのか?どうなっているんだ?)
いくら考えても頭がこんがらがるだけだった。
「まあいいや。そのうち思い出すか…。行こうユーリス」
気がかりだったが、今は考えていても仕方がないと思い、セディルは歩き出した。
――
.
「ヴィシャスには城があり、世界でも有名な場所なんだ。でも…」
ユーリスが話し始めた。
ヴィシャスは、国の占領、支配、滅亡などを企む敵達に狙われている状況にあった。
そのため戦力を必要としており、兵士や傭兵を募集していた。
敵はさまざまだ、賊や泥棒といったわかりやすい連中から正体不明の組織シュヴァまでいる。
そのため城も街全体も厳重に警備されていた。
戦場の危機になることを恐れ、他国へ移住する人々や国を出て故郷に帰る人々も出てきた。
「どうしてそんなに狙われているんだろう?」
セディルは疑問に思った。
「ヴィシャスにある、莫大な財産や貴重な宝を手に入れたいのか。英雄の力や部隊の力を恐れてるのか。世界でも一、二を争うほどの国力を持っているからな」
ユーリスはヴィシャスの街までの方角を真っすぐ見ていた。
「街に着いたらどうするんだい?」
話が一区切りしたところで、セディルは聞いた。
「ラスレンさんに会って、シュヴァの事について話し合い、協力をお願いしたいんだ」
ユーリスは、同じ聖なる力を持つラスレンと力を合わせられることを願っていた。
「その人とは会ったことがあるのかい?」
「ああ、ラスレンさんとは顔馴染みだよ。それにラスレンさんは英雄セインレスの子孫だからな」
ユーリスは明るく答えた。
「セイン…レス…?」
セディルには聞いたことのない名前だった。
「えっ!?あの英雄セインレスだぞ!?」
驚いたユーリスがセディルを見る。
「…ごめん。知らないんだ」
セディルは謝って正直に答える。
「わかったよ。おれも驚いたりして悪かったな」
ユーリスはセディルの不安を和らげるため、穏やかな笑顔で返した。
今から200年前――
光の力を持つカトレリア一族は、魔物を率いる謎の組織ヴァルツ達に狙われ、一族は滅ぼされた。
ヴァルツ達は魔物達を使役し、地上界の人々を恐怖に陥れようと企んでいた。
そんな時、一人の男が現われた。
名は“セインレス”。
天上人から授かった聖なる剣“レクレヴァス”を手にし、仲間達と共にヴァルツの野望を打ち砕き、世界を救った――
「その英雄の血を引いているのがラスレンさんなんだ」
ユーリスは一通り説明した。
「へえ。そんな重要な人に会えるなんて。どんな人なのかな?」
セディルは興味を抱いていた。
「それは会ってみてからのお楽しみさ」
ユーリスは早く会いたそうな顔で言った。
二人はしばらく歩いている。
「ところでさ、セディルは武器を持っていないようだけど、何を使って戦うんだ?」
ユーリスが気になったことを質問した。
「…!」
セディルは、はっと気付いて足を止める。
「セディル?」
ユーリスも止まりセディルを見た。
「あれ…っ?ぼくは…」
セディルは不安になり、自分の手を見て考え込む。
ぼくは戦っていた…。
武器は何を使ってた…?
そもそも武器を持っていたのか…?
なら魔法は…?
何かの攻撃魔法を使っていたような気がするけど、モヤモヤして思い出せない…。
覚えていたのは初級の回復魔法と、戦い以外に使う結界魔法くらいだ…。
「ぼくはどうやって戦ってきたんだ…?何もわからない…」
セディルは、自分が戦っていたことは理解していても、自分の戦った行動の部分が記憶から抜け落ちていた。
「ええっ!…あっそうか。記憶喪失だったんだよな…」
ユーリスは驚くも、セディルには記憶がないのだから無理もないだろうと思った。
(おかしいな?今まで戦ってきた相手は覚えているのに、なんで自分の戦い方だけが思い出せないんだ?)
セディルは、なんとかして記憶の底から引っ張り出そうとする。
しかも、この時代に来る前の戦いの記憶だけがないことに気づく。
(まさか…ぼくが未来に来てしまったことと関係があるのか?どうなっているんだ?)
いくら考えても頭がこんがらがるだけだった。
「まあいいや。そのうち思い出すか…。行こうユーリス」
気がかりだったが、今は考えていても仕方がないと思い、セディルは歩き出した。
――
.