第2章

その日の午後、ヴィシャス城の外では――


「オ~イ!アシェドー!」
ラスレン隊長の弟のシャークが、走りながらアシェドを呼ぶ。

シャークは、船乗りの仕事は休日期間中だったが、城で隊の補佐をしていた。

「あっオッサン」
アシェドは軽く返す。

「オッサン!?オイオイ、そりゃねーだろ。オレはまだ21…って、そんなこたぁどうでもいい。お前忘れてねーか?もう訓練の時間だぜ」
シャークが話していると、兄のラスレンが走ってきた。

「アシェド!お前何してるんだ!他の人はもう集合しているぞ!」
ラスレンがわざわざ探しに来てくれたのだ。

「はい。今行きますラスレン隊長」
偽りの笑顔で答えるアシェド。

「ほら!早く来い!」
ラスレンは急いで歩きだそうとする。

「兄貴!危ねぇ!」
シャークがラスレンを止めようとするが、

「っ!?」
ラスレンは壁の出っ張りに頭をぶつけた。

「兄貴、大丈夫かよ?昔からドジなところあるからな~」
シャークは、痛そうに頭を押さえているラスレンを見ている。

「注意力散漫ですよ隊長」
どこか嫌味を含んだ笑みを浮かべるアシェド。

「…いいから行くぞ!」
ラスレンは、ぶつけた頭を擦りながら歩きだした。 


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今日の訓練が終わり、ラスレンの部屋では。

「全く、アシェドの態度には呆れるであります!信用できるかどうかも怪しいものです!」
エリレオはアシェドの不真面目さに不信感を露にした。

「落ち着けってエリレオ。まあ確かにアイツは変わったヤツだけどよ」
シャークは、アシェドに対してあからさまな不快感は感じないが、何かを隠しているようにも思えた。

「ですが、アシェドの言動は理解しがたいであります」
エリレオはアシェドのキャラが掴めないでいた。

(アシェドか…)
二人の会話を聞きながら、ラスレンは考えた。
アシェドからは、笑顔の下にどこか闇を感じる気がした…。


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