第2章

「お前達何をしている」
急に声が聞こえた。

相変わらず派手な服を着た王子が高飛車な表情で立っていた。

「モーリム様!」
王子の姿が目に入ると、ラスレンを始め周りの者達は波が退いたように静かになる。

「今は訓練の時間のはずだろう。なぜ怠けているのだ?」
モーリムがラスレンを見てわざとらしく嫌味を言ってきた。

「申し訳ありません。訓練を続けます」
ラスレンはすぐに謝罪した。

しかし、モーリムの口はそれだけでは収まらなかった。

「お前は、雑談してだらけていられるほど余裕なのか?ほ~う、対した自信だな。随分と自惚れているじゃないか」
馬鹿にしたような偉ぶった口調で放つモーリム。

「決してそのような事は…」
「言い訳する気か?本当に見苦しい奴だな。お前が私にどうこう言える立場なのか?」
モーリムは訂正しようとするラスレンの言葉を遮り、腕を組んでふんぞり返っていた。


いつもこのような感じで、ラスレンに対して何かと難癖をつけ、嘲ったり威張り散らしてくるモーリム。

モーリムはラスレンと同い年で、昔からラスレンが気に食わなかった。

剣の実力、人気、知名度全てにおいてラスレンの方が上であることを知っているモーリムは、ラスレンを妬んでいた。

そのためモーリムは、身分は自分の方が上だということをラスレンに思い知らせるようにしていた。


「モーリム様。ここにいらしたのですか」
中年の男の声がした。

全ての兵の中で最も高い位を持つ、兵士長ソルゴだった。

「すまないソルゴ。ラスレン達が訓練をサボっていたので注意していたのだ」
モーリムの言動は先程までとは一転し、真面目な態度で振る舞い始める。

「そうですか。ラスレン達は少し休憩していたのだと思いますよ。長々と話していたわけではないでしょう」

「おお。それもそうだな。確かにお前の言うとおりだ」
ソルゴの言葉には素直に聞く調子のいいモーリムだった。

「……」
ラスレン、シャーク、エリレオ、兵士達はモーリムの二重人格ぶりに呆れ返っていた。

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