第2章

ヴィシャス城の敷地内には広場があった。

隊で集まり、訓練や練習試合をしたりするのに最適な場所だった。

そこでは、兵士達とその部隊の隊長のラスレンが休憩を取り、話をしていた。

「何ですと!アシェドは闇の力を持っていたのでありますか!」
ラスレン隊長の部下のエリレオの声だ。

「闇の力を持つ少年ですか。話を聞いていても、よくわからない人ですね…」
兵士キヤは冷静に考えていた。

「あいつがもし敵だったらオレは容赦しませんよ!」
兵士ナータは熱い口調で言った。

他の兵士達も皆同じようなことを口にしている。

「お前達は俺の言ったことを信じてくれるんだな」
昨夜のモーリムの言葉を気にしていたからなのか、ラスレンは思わず口にしてしまった。

「当たり前であります!ラスレン隊長が僕達に嘘をつくはずないであります!」
真っ先に口を開くエリレオ。

「そうです隊長。僕たちはラスレン隊長を信じています」
エリレオの友人カシルも続いた。

「ラスレン隊長の敵はオレ達の敵ですよ!」
更に続けてナータも言った。

他の兵士達も次々に言う。

「みんな…ありがとう」
自分を信頼してくれている部下に対して礼を言うラスレン。

「兄貴!」
突然兵士達の後ろから声がした。

私服を着ているので城の兵士ではない。
橙の髪に紫の瞳。青い鉢巻きをした体格のいい青年だった。

「シャーク!」
ラスレンが現われた青年の名を呼ぶ。

「よぉ、兄貴!久しぶりにここに来たぜ」
シャークはラスレンに親しく声をかけた。

シャークはヴィシャスから離れた港町の船乗りとして働いていて、仕事の合間に余裕があれば城に顔を出すのが日常であった。

その後、シャークの後からひょっこりと誰かが姿を現した。

紅色の瞳に茶色の髪をしたどこか怪しげな人物―

「アシェド!?」
ラスレンとエリレオが同時に口にした。

「ひどいじゃないですか。いくら傭兵とはいえ俺はエリレオと一緒に組んでいるんですよ。俺だけ仲間はずれにしないで下さいよ」
相変わらずアシェドは偽りの顔を見せている。

「ああ、こいつか。傭兵として新しく入ったんだってな。兄貴も顔合わせしてるだろ」
シャークはあっさりと話す。

「ラスレン隊長。昨日は戦いを邪魔されましたね。せっかくいい戦いになってきた所だったのになぁ。王子に止められて、さすがの俺もやる気なくしちゃいましたよ」
まるで遊びを楽しんでいたように語るアシェド。

今のアシェドを見て、ラスレンもエリレオも、周りの兵士達もすっかり拍子抜けしてしまった。

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