第2章

町を出た二人。見渡すかぎり特に目立つものは何もない、広大な平地を歩いていた。

「ところで、なんでそんなカッコにしたんだよ?」
ユーリスが再び質問した。

「だ、だから。旅に出るから気分を変えなきゃって思ったんだよ」
「でもさ、あまりにも突然すぎないか?まあいいけどさ」
セディルの言葉にユーリスはあまり納得していない様子だった。


…気分転換というのは口実だ。

あの格好であの町にいると捕まってしまう恐れがあった。

今朝セディルがユーリスと待ち合わせる場所まで行く時も、警備兵や術士達が自分を捜し回っているのを見かけたのだ。


―少年を探せ―


幸い少年だと思われていたのが運のつきだった。

前に着ていた服を破って改装し、なんとか女に見えるような服装で町の洋服屋に入った。

セディルは、警備兵や術士達の目を誤魔化すために格好を変えていたのだ。


「昨日、大変なことがあった話をオヤジから聞いたんだ」
ユーリスが真面目な顔つきで話しだした。

「何かあったのか?」
セディルはユーリスの顔を見て、ただ事ではない話だろうと思った。

「闇の力を持つ少年を見付けたんだ」

「!」
ユーリスの口から出てきた言葉にセディルは動揺した。
それは自分のことではないか。

「しかも、大僧正であるオヤジの聖なる力も全く通用しなかったほどの、恐るべき力の持ち主だったらしいんだ」
ユーリスの表情が深刻になっていく。

そして、セディルはそのユーリスの話で気付いた。

昨日会ったレハラルドはユーリスの父親だったことに―

セディルは驚きを表面に出さないようにしていた。


「なんだか…」
ユーリスが何か言おうとした時…

二人の前に二本足で立つ巨大なカマキリのような魔物が現われた。

「出たな!こんなヤツすぐに倒してやる!」
ユーリスは杖を構える。
だが、直接攻撃をするような構え方だ。

「待て!それで戦う気なのか?」
なぜ魔法で攻撃しないのかとセディルは思った。

「この程度の敵なら魔強化で大丈夫さ」
ユーリスの口から知らない言葉が出てきた。

「マキョウカ?」
不思議そうに口にするセディル。

「えっ!?魔強化を知らないのか!?」
ユーリスが驚いて聞き返す。
どうやら魔強化というのは常識用語らしい。

「あっ、いや…!実はぼくは記憶喪失みたいなところがあって。だ、だから、よくわからないことがいろいろあるんだよ」
とっさにセディルは言いだした。

「そっか。じゃあ教えてあげるよ」
ユーリスが杖を持ち直すと杖が光った。

「実際に攻撃するから見てろよ」
ユーリスは杖を構えながら魔物に向かって走って行った。

光る杖を斜めに振り下ろす。
すると、まるで剣で斬られたかのように魔物の体が切断されたのだ。

魔物はそのまま倒れて動かなくなった。

「なっ!倒せただろ!」
ユーリスはカッコよくポーズを決めた。

「す、すごい!これがマキョウカっていう力なのか!」
杖がここまで強力になったことに驚くセディル。

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