第1章
足音が暗闇に響く。
なびくマントの暗い紅が夜の闇に溶けそうなぐらい暗い空。
城の壁のところどころに灯る明かりだけが見えていた。
イラついた顔で、誰もいない城の外の広場を歩いている、茶髪に紅い瞳をした少年がいた。
「ハァ…」
アシェドはため息を吐いた。
先程から落ち着かない…
自分の中にある力…
その力を放ってしまいたいような衝動にかられていたのだ。
黙ってじっと我慢していることに耐えられなくなり、
「ちょっと憂さ晴らししてから戻ってくるか」
苛立ちをぶつける対象を魔物に向け、街の外へ行こうとしているところだった。
そんなアシェドを二人の男達が見ていた。
指定の服を着た一般兵とは違い私服なので傭兵だとわかる。
「あいつか?今日入った新人は」
二人のうちの一人がアシェドを見て口を開く。
「ああ、あのガキだぜ。生意気そうな面しやがって…気に食わねぇ」
傭兵の男二人はヒソヒソと会話していた。
そんな男達の前をアシェドが通った。
「よお!」
一人がアシェドに声をかけるが、アシェドは無視して通り過ぎる。
「おい、何無視してんだよ!」
男達がアシェドの前に回り込んだ。
「先輩が声かけてんだから挨拶ぐらいしたらどうなんだ?」
男が脅すような口調で言った。
「早くどいてくれ」
進行の邪魔をされ、アシェドは更に苛立った。
「なんだその態度は?目上の人に対して失礼じゃないか!」
「ここは一つ先輩としてお前に教えておかねーとなぁ」
男達はアシェドに攻撃的な視線を向けた。
「あ~あ、運が悪いねぇキミ達は。俺は今機嫌が悪いんだよ」
アシェドは冷笑を浮かべながら口にした。
「だから、俺の力を思い知らせてやろう」
途端に恐ろしく邪悪な表情になるアシェド。
「おいっ!コ、コイツヤバイんじゃないか!」
「な、なにビビッてんだよ!こんなガキ一人相手に!」
男達は、見ただけて凍り付きそうなアシェドの表情に恐ろしさを覚え、逃げ腰になっていた。
アシェドが右手をかざすと、そこには黒い空気のような塊が現われ始めた。
「なっなんだアレは!?」
「お、お前は魔法が使えるのか!?」
思いもしなかった出来事に男達は驚きの声をあげた。
この世界では、魔法が使える者は少数だった。
大抵、魔力のある者は生まれてくる。
しかし、魔力が微量であるため魔法を発動させるのが困難であったり、魔力のコントロールが不自由で魔法を使いこなすだけの力がない者が大半だった。
魔力を使役できる者の血を受け継いでいるか、あるいは魔法の才能がある優れた者だけが魔法を使い、人々から注目される重要な存在となっていた。
アシェドが右手をサッと振ると黒い空気の塊が分散し、無数の塊となって男達に襲いかかった。
「!!」
複数の塊が男達の体をかすめる。
男達に怪我はなかったが、体のかすった部分にゾクゾクとした重い冷たさを感じた。
「くっ…な、なんだ今の黒いヤツは!?」
「あ、あれは魔法だ!だが、あんなのは見たことがないぞ!?」
二人はアシェドの力に恐怖を感じていた。
「おや?キミ達どうしたんだい?センパイとして俺に何か教えるんじゃなかったのかなぁ?」
アシェドは皮肉混じりに男達を見下していた。
「今のはちょっとした脅しだよ。次からが本番だ」
アシェドの顔つきが恐くなり、再び魔法を発動させるため手をかざそうとした…
「何をしているんだ!」
突然、後ろから聞き覚えのある声が耳に入る。
アシェドは振り向いた。
金髪で蒼い鎧を着ており鮮やかな紅いマントを身に付けた、ラスレンがこちらに駆けて来るのが見えた。
「やべぇ!ラスレン隊長だ!」
「お、オレ達は悪くないからなっ!」
更に焦った男達はそそくさと去って行った。
アシェドはその場に残ったままラスレンの方を見た。
ラスレンは、逃げた男達のことは目にもくれずアシェドの前で足を止めた。
「唐突に聞くが、さっきの魔法は何だ?」
初対面の時の気さくな感じとは違い、真剣な口調でラスレンは質問した。
「何って…あれはかなり初級の弱い魔法ですよ」
わざとなのか、アシェドは偽りの笑顔で答えた。
「その顔で誤魔化そうとしても無駄だぞ。あの魔法は闇の力だろう?なぜ二人を襲ったんだ?」
ラスレンの表情が厳しくなる。
もはやアシェドの笑顔は通用しなかった。
――――
なびくマントの暗い紅が夜の闇に溶けそうなぐらい暗い空。
城の壁のところどころに灯る明かりだけが見えていた。
イラついた顔で、誰もいない城の外の広場を歩いている、茶髪に紅い瞳をした少年がいた。
「ハァ…」
アシェドはため息を吐いた。
先程から落ち着かない…
自分の中にある力…
その力を放ってしまいたいような衝動にかられていたのだ。
黙ってじっと我慢していることに耐えられなくなり、
「ちょっと憂さ晴らししてから戻ってくるか」
苛立ちをぶつける対象を魔物に向け、街の外へ行こうとしているところだった。
そんなアシェドを二人の男達が見ていた。
指定の服を着た一般兵とは違い私服なので傭兵だとわかる。
「あいつか?今日入った新人は」
二人のうちの一人がアシェドを見て口を開く。
「ああ、あのガキだぜ。生意気そうな面しやがって…気に食わねぇ」
傭兵の男二人はヒソヒソと会話していた。
そんな男達の前をアシェドが通った。
「よお!」
一人がアシェドに声をかけるが、アシェドは無視して通り過ぎる。
「おい、何無視してんだよ!」
男達がアシェドの前に回り込んだ。
「先輩が声かけてんだから挨拶ぐらいしたらどうなんだ?」
男が脅すような口調で言った。
「早くどいてくれ」
進行の邪魔をされ、アシェドは更に苛立った。
「なんだその態度は?目上の人に対して失礼じゃないか!」
「ここは一つ先輩としてお前に教えておかねーとなぁ」
男達はアシェドに攻撃的な視線を向けた。
「あ~あ、運が悪いねぇキミ達は。俺は今機嫌が悪いんだよ」
アシェドは冷笑を浮かべながら口にした。
「だから、俺の力を思い知らせてやろう」
途端に恐ろしく邪悪な表情になるアシェド。
「おいっ!コ、コイツヤバイんじゃないか!」
「な、なにビビッてんだよ!こんなガキ一人相手に!」
男達は、見ただけて凍り付きそうなアシェドの表情に恐ろしさを覚え、逃げ腰になっていた。
アシェドが右手をかざすと、そこには黒い空気のような塊が現われ始めた。
「なっなんだアレは!?」
「お、お前は魔法が使えるのか!?」
思いもしなかった出来事に男達は驚きの声をあげた。
この世界では、魔法が使える者は少数だった。
大抵、魔力のある者は生まれてくる。
しかし、魔力が微量であるため魔法を発動させるのが困難であったり、魔力のコントロールが不自由で魔法を使いこなすだけの力がない者が大半だった。
魔力を使役できる者の血を受け継いでいるか、あるいは魔法の才能がある優れた者だけが魔法を使い、人々から注目される重要な存在となっていた。
アシェドが右手をサッと振ると黒い空気の塊が分散し、無数の塊となって男達に襲いかかった。
「!!」
複数の塊が男達の体をかすめる。
男達に怪我はなかったが、体のかすった部分にゾクゾクとした重い冷たさを感じた。
「くっ…な、なんだ今の黒いヤツは!?」
「あ、あれは魔法だ!だが、あんなのは見たことがないぞ!?」
二人はアシェドの力に恐怖を感じていた。
「おや?キミ達どうしたんだい?センパイとして俺に何か教えるんじゃなかったのかなぁ?」
アシェドは皮肉混じりに男達を見下していた。
「今のはちょっとした脅しだよ。次からが本番だ」
アシェドの顔つきが恐くなり、再び魔法を発動させるため手をかざそうとした…
「何をしているんだ!」
突然、後ろから聞き覚えのある声が耳に入る。
アシェドは振り向いた。
金髪で蒼い鎧を着ており鮮やかな紅いマントを身に付けた、ラスレンがこちらに駆けて来るのが見えた。
「やべぇ!ラスレン隊長だ!」
「お、オレ達は悪くないからなっ!」
更に焦った男達はそそくさと去って行った。
アシェドはその場に残ったままラスレンの方を見た。
ラスレンは、逃げた男達のことは目にもくれずアシェドの前で足を止めた。
「唐突に聞くが、さっきの魔法は何だ?」
初対面の時の気さくな感じとは違い、真剣な口調でラスレンは質問した。
「何って…あれはかなり初級の弱い魔法ですよ」
わざとなのか、アシェドは偽りの笑顔で答えた。
「その顔で誤魔化そうとしても無駄だぞ。あの魔法は闇の力だろう?なぜ二人を襲ったんだ?」
ラスレンの表情が厳しくなる。
もはやアシェドの笑顔は通用しなかった。
――――