第1章

カシルとラスレンは周囲を見回すが、魔物の気配はなかった。

二人は、報告のために兵士たちが集まっている場所まで歩いていた。

その間も、襲ってくる魔物は一匹も見かけなくなり、街の人たちも安堵した顔になっていた。


兵士たちは魔物が全滅した事を確認し、戦いが終わった。

「ありがとうカシル。君の魔法のおかけで本当に助かったよ」
ラスレンは笑顔でカシルに礼を言った。

「い、いえ。そんな、僕は…」
周りに注目されているため、カシルは緊張してしまい上手く言葉が返せかなった。

隣にいるエリレオも張り詰めた表情だった。

「それじゃ、王様へのご報告があるから俺は先に行くよ」
副隊長であるラスレンは、一足先に城へ戻っていった。


「そうか!あの少年はシディエス隊長の弟だ!名前は…思い出せないが」

「何っ!?あいつがシディエス隊長の弟だと!?」

「シディエス隊長に兄弟がいるなんて知らなかったよ」

「ラスレンさんと一緒にあの魔物を倒してしまうとは。さすがシディエス隊長の弟だ」

ざわざわとカシルの話題が聞こえてくる。

周りからの視線を感じ、その場に居づらくなってきたカシル。

(どうしよう…こんなことになるなんて…)
カシルは目立つことが苦手で固まってしまった。

エリレオはカシルの困った様子を見て、早くこの場から去ろうと思った。

「突然で悪いのでありますが、僕たちは集会に出席しなければならないので、これで失礼させていただくであります!」
エリレオが大きな声で言いだした。

「すみません。失礼します」
カシルは軽く頭を下げた後、周りを見ないようにして去っていった。

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