第1章

セディルはユーリスに道案内されながら歩いていた。

しばらくすると、教会のような大きな屋敷が見えてきた。

ユーリスは屋敷の門の前で足を止める。
門の内側には広い中庭があり、白っぽいローブを着た人が何人かいた。

「ここがおれの家だよ。僧侶達が集まる場所でもあるんだ」
「えっ!?この屋敷に住んでいるのか?」
セディルは驚いた顔でユーリスを見る。

「実は、おれのオヤジは大僧正なんだ」
「だ、大僧正だって!?」
ユーリスの言葉にセディルは更に驚いた。

「ああ。おれもいつかはオヤジのように立派な存在になりたいんだ」
ユーリスは、父親に対して反発しているように見えるが、本当は誰よりも尊敬していた。

「ところでユーリス。明日の出発で大丈夫なのかい?」
セディルが確認する。

「もちろんさ。明日の朝、町の入り口で待ってるからな」
ユーリスは待ち合わせ場所を伝えた。

「わかった。でも寝坊するなよお坊っちゃん」
「するかよっ!それにお坊っちゃんはやめろ!と、とにかく明日だぞ!」
セディルのからかいを真に受けたのか、ユーリスはムキになっていた。


――


広々とした屋敷の廊下を歩いている二人の人物がいた。

「…ん!これは…!?」
立派な服装で位の高そうな中年の男が急に立ち止まった。

「レハラルド様。どうしました?」
もう一人は、黒い長髪に茶色の瞳でローブを着た若い男だった。

「微かな力だがわかるぞ。私たちが持つ聖なる力とは相反する力だ」
レハラルドと呼ばれた中年の男は、重い表情で口にした。

「まさか、その力とは…」
若い男は、深刻な顔で返す。

「そうだルイン。これは…闇の力だ!どこかにいる…!」
レハラルドは、はっきりと答えた。

「あの門番を通り抜けて街の中に入るとは…今までの闇の力を持つ者とは違いますね」
若い男ルインは、冷静な性格なのか落ち着いた口調だった。

門番には、闇の力を感知できる特殊な力を持つ、厳選された者が配置されていた。
闇の力を持つ者が簡単に街に入ってくる事は想定外だった。

「なんにせよ、このままにはしておけんな」
レハラルドは表情を険しくしていた。


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