第1章

考え事をしていたセレディンがふと気が付くと、いつのまにか公園の前を通っていた。
静かで人もぽつりぽつりしかいない。

「あっ!」
やや遠くで後ろ斜め側だったためよくわからなかったが、周りに人一人いないベンチに図書館で会ったユーリスが座っている事にセレディンは気付いた。

(あの人は!)
声をかけようと思ったセレディンは、ユーリスの所まで歩いていく。

「くっそ~!あのクソオヤジ~!ちょっと勉強の時間サボったぐらいであんなに怒らなくてもいいだろ~!」
突然聞こえてきたユーリスの独り言。
セレディンは一瞬、誰だ?と疑問に思った。

「さっきの人…だよな…」
セレディンは、図書館で会った時のユーリスと同じ人物であるかを確認しながら近づいていく。

顔がはっきりとわかる距離まで来ると、やはりユーリスだと確信した。

更に静かに近付いていき…

「クソオヤジねぇ~」
ユーリスの後ろからからかうように言うセレディン。

「うわっ!?」
声に気付いたユーリスが驚きの声を上げて振り向く。

「あーっ!お前はさっきの!?い、いつからそこに…!?」
ユーリスはベンチから急速に立ち上がり、セレディンを見て動揺した。

「やあ、また会ったね」
セレディンはにこりとした。

「勉強サボって叱られたのか~それで"クソオヤジ゙"か~」
セレディンは意地悪そうにユーリスを見ている。

「わかった!わかったよ!全部聞かれてたんだな。ああーおれとしたことが…っ」
誤魔化すのは無駄だと悟ったのか、ユーリスは観念してしまったようだ。

「図書館での態度は初対面の人に対する礼儀ってヤツだ。まっそーいうコトだな」
すっかり開き直ってしまったユーリス。

今のユーリスと図書館でのユーリスはなんだか別人のようだった。

「なんだよそれ。そういうことってどういうことだよ」
セレディンは楽しそうに返す。

こんな風に誰かと喋っていることに、喜びを感じていた。

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