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-短編集-

関連章:本編【白猫探しにて】

キル、ネリル嬢、そして私の三人は、ある店主のオッサンと取引をして何故かなんやかんやで白猫を探しにコルティックから外の世界へ旅立つ事になってしまった。

たかが猫、されど猫。

すぐに白猫は見つかるだろうと私たちは予測してのんきに道を歩いていると、私はある“事件”に巻き込まれてしまったのです・・・・・・・。



シュール:さ~。みなさーん♪
火曜サ○ペンスが始まりますよー♪

キル:違うだろ!!!!(ツッコミ)←



「キル兄~!」


後ろからネリルが大声を出して走ってくる。


「大変 大変!先生が!」


「な、なんだ、どうした!」

慌てているようで、すぐに振り向くと、目の前で距離を置いて立ち止まるネリル。


「先生が・・・・・、先生がいなくなっちゃったの!」




「・・・・・・・・・・・・・・・-!?」





















ーメガネのユクエー
 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっそ」




なにも気にもならない様子ですたすたとまた歩き出すキル。



《・・・・・・・それだけ!?》



一瞬ズシーンと気が沈みこみ、すぐにまた慌ててキルの後を早足で追う。


「ちょっ、先生だよ!?あの先生が居なくなったんだよ!? なんとも思わないの!?」


「別に」


「即答しないでよ!?」


ザッと立ち止まり、何か決意を秘めた瞳でキルに声を張り上げる。



「に! 先生はキル兄の親友なのだよ!?あたしたちで先生を探し出そう!!」


「はあぁ!?」

いきなりの発言に対してとっさに振り向く。



「親友・・・・・・・それすなわち、“家族”なのだよキル兄・・・・・・」



何処(いずこ)へと手を差し伸べて清清しい顔をしてキルに言うネリルに対し、すぐに冷静なツッコミを入れるキル。


「お前誰だよ」


「というワケで・・・!」


パシっと手を取り、


「レッツゴー!!」


元気そうに勝手に手を引いて前を歩き出すネリル。
 


《なにぃぃぃぃぃぃぃっ!?》


「ちょ、ちょっと待て俺はパス!」


バッと手を振り払い二人とも立ち止まるがネリルはキョトンとして振り向く。


「ふえ?なんで?」



「なんでって・・・・・・・・・、“投薬実験”するは・・・、“人体実験”するは・・・、挙句の果てに、“ドラッグ”まで・・・・-っ!!」


頭を両手で抱え込み、ぶるぶるとかつてのトラウマが蘇って顔を青ざめる。



《わぁ~。沢山やられたねキル兄~》

満面の笑みで同情するネリル。


「とにかく、俺は探さないからな。自分だけで何とかしろ」


「に!」

一人で先を歩こうとするキルに後ろから引き留めるように抱きつく。


「待ってキル兄!!」


「ぎゃあぁぁぁぁ!くっつくなボケェェェェェ!!」

ゾワっと一気に鳥肌を出し、引き剥がそうと前に強引に歩くがまったく離そうとしない。



「離せっっ!」


「いやぁぁ~!」


「自分だけで探せや!」


「一人で探したらキムチより辛い!!」


「意味わかんねーよ!?」





‘ブチ、ブチ’


「・・・・・・・・・・・・・・・・?」


近くの方で黄色い白衣と眼鏡をかけた男性が地面に生えている草をむしり、声に気づきキルとネリルの所へ近づき声をかけてきた。


「おや。キルにネリル嬢。どうしたのですか?」



「ん?」

「に?」


見ると、にこにこフェイスで眼鏡の縁に手をかけ、シュールがそこに立っていた。


「先生!」

「眼鏡!」



「ははははは。6ページ目にしてやっと登場したのに酷い呼び名ですね」


棒笑いで笑う。


「お前っ、どこに行ってたんだよ!?」


「別に?薬草を採っていただけです」


「薬草ぅ~?」

目を細めて聞き返す。


「痺れ草に毒草、後、目眩を起こす目眩草や眠り草に・・・・・-」


「それ以上聞きたくねーよ!!」


「それよりキル。そこから離れたほうがいいですよ」


「は?」


「背後に魔物がいますから」


「うおわぁぁぁぁぁぁ~!!??」


キルの背後に二足歩行で立つ毛むくじゃらの黄色い牙を持った魔物がうめき声を鳴らす。

「くっ、さっき店で買った武器で・・・・-って、あれ?」


「あそこに落ちてるよ?」


後ろの方にベルトごと地面に双剣が落ちている。


「だぁぁぁー!ベルトがゆるかったのか!?」


今さら気づきすぐに取りに行こうとする。


「早く取りに・・・・・-」


‘ガァァァァァァァァ’


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」



後ろから魔物の巨大な爪がキルの方に振り下ろされ、とっさに身の危険を察知して上空にジャンプして避ける。

そのまま爪が地面にめり込み、岩や石の破片が周囲に飛び散る。


「おっと・・・。な、なんだぁ?」


シュールとネリルのそばに着地して眉を潜める。



「どうやら私たちと遊びたいようですね」


「に?」


にこにこしているシュールをネリルが見上げる。



「よし!じゃあ、いくぞ!」


「お気をつけて」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



しばらく爪を地面から引き抜く魔物を見たまま黙るキルだが、シュールはニコニコとしているだけで何も言わない。



「・・・・・・・・・・・お前も行けよ・・・」


「お断りします」


バッサリと言い返す。



「テメーふざけんなよ!?」


「ふざけているからこそ行かないんですよ」


「俺だけ行けってか!?」

「それより来ますよ?」


‘どがあぁぁぁぁぁぁんっっ!!’←

キルは無言で片足を上にして倒れ避け、シュールはわー、と面白そうに避ける。




「あ、あぶねー・・・・」

「派手に転びましたねキルー」

何事もなかったかのようにネリルがいるところへ戻る。

「二人とも、大丈夫?」


「っていうかお前も見ていないで助けろよ!?」

ビシっとネリルを指差すがネリルは汗をかいて目をそらす。

「えー・・・キル兄の言ってることよくわかんなーい」

「とぼけんなっっ!!」

「ではこうしましょう。キルがまず魔物を引き連れて戦っている間にネリル嬢が武器を取りに行く」


「お、お前も戦わないのかよ?」

シュールに聞くと、眼鏡の縁に手をあててにっこりと笑いかける。


「“殺ろうと思えば・・・・、殺やれますよ?”」




『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・|||』

にこにこし続けるシュールの発言に若干後ろに引いて間をあけるキルとネリル。





「こ、殺さなくていい・・・・・」


「おや。それは残念です」


シュン、と微笑しながら残念そうな顔をする。


《なにが残念なんだよっ!?》




「まぁ、冗談はよしとして、仕方ないので今回は私も力を貸してあげますよ。キルが“殺る気”なさそうなので」


左中指にはめている緑色のリングが光りだし、ネリルがその間に武器が落ちている場所に小走りで向かう。


(・・・・だれも殺るだなんて言ってねーよ)


心の中でツッコミを入れるキル。

手の甲を前に出し、リングから長い旗がでてきて空中でそのまま左手でキャッチしてかまえる。


「久しぶりなんでどうなるかわかりませんけどね♪」


右脇に棒を挟み一言言うと、キルが魔物の行動に気づく。


「シュール、危ない後ろだ!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ー!」


‘ドンッ・・・ーッ’

とっさに目を開き後ろを振り向きながら旗の先端を魔物に向け、緑色の丸い奉陣をだして動きを一時期止める。


「そう焦らずとも、ちゃんとお相手してあげますよ」



微笑しながら話すと、ネリルがキルの装備していた双剣をベルトごと持ち上げ。

「キル兄~!投げるよー」


ビュッとキルに向かって投げ、そのまま片手でベルトを掴んで受け取る。


「ありがとな」



タン、とバックに軽くジャンプしてキルの隣にシュールが並ぶ。


「では、がんばってくださいねー♪」

「わかってるって」

地面を強く蹴り、魔物の方へジャンプするように右の短剣を勢いよく腹部に振り上げる。

グアァァァァァァッ!


危険を察知したのか、体を後ろにそらしたが、キルが振り上げた短剣の刃が魔物の右手首に向かい、切断された。

相当なダメージで、腕を上に掲げながら悲鳴を上げる。

攻撃を仕掛ける事に気づき、すぐさま後ろにバックジャンプすると、魔物の左手の爪がギリギリ、キルの目の前を風を切った。


「・・・・・・・んにゃろ・・・-!」

そのまま空中で一回転し、地面に着地しながら双剣を目の前でクロスさせ、一気に魔物の懐へ走って攻める。


ギャアァァァアアアァー




今度は狙いが当たり、魔物の腹部がバツ印を描くように切り裂かれ、地面に横向きに倒れる。
一瞬、赤い血液が刃と地面に飛び散るが、数秒してすぐに乾くように無くなる。



「楽勝楽勝!」

双剣カチャ、と背中腰の鞘におさめる。


「にぃ~!すごいすごい!」

ネリルが走ってキルの所に近づいてくる。


「や~。戦闘慣れしていないと言う割にはまだ全然劣ってないじゃないですかキルー」

シュールも隣に立つ。
いつのまにか旗はリングにおさめている。



「お前もだろ」


「二人ともすっごいよ!あたし凄く物凄く感動しちゃったよぅ」


「それ程でもねーよ」

「ねね。どうやったらさっきみたいに動けるの?」


「その質問に答えるって、むずくね?」


キルがネリルを見下して目を細める。


「まぁ、戦闘慣れでしょうね。実戦を繰り返す事が一番ですよ。実戦」


「そなの?」


シュールを見上げると、はいと応える。


「どうでもいいけど、お前さっき買ったマイクあんだろ?あれで戦えばいいじゃねーか」

「に!忘れてた!」

マイクをポケットから出して両手で持つ。

「まずマイクでどう戦うのか知ってんのか?」

「知らなーい♪」


にっこり満面の笑みを浮かべてにひっと笑うネリルに呆れるキル。


「はぁ…。なんで買ったんだよ」


「かあいいーからー」


「それだけかよ」


「先生もかあいーと思うよね?」


シュールに顔を向けて聞くと、さっきまでそこにいたシュールがいつの間にか姿を消していた。

「・・・・・・・・・・・あれ?」


「おい。あのメガネ何処行った…」


「わかんない」

キルとネリルの背後に寂しい風が吹き込む。


「また消失かよおー!なんであんなに消えるんだよ足音全く聞こえねーし!」

頭をガシガシかいて大声をだすと、ネリルがしゃがんで顎に手をそえて推測する。


「キル兄、先生ってもしかすると、メガネがないとどの道にいかないといけないのか分からないんじゃないのかな…」


「なんだよいきなり。シュールが方向音痴だっていうのか?しかもなんでいきなりメガネが関係するんだよ」


「だってこれ見てみて?」

ネリルが指差す方向を辿ると、地面に誰のメガネか分からないが、落ちている。


「こ、これはまさか!シュールのメガネ!?」


「に!?」


ズガーンと大げさに発言し、真剣な表情でキルがメガネを拾いネリルも真剣にメガネを見つめる。

「お、おい。これって…やばいよな?相当・・・」


「う、うん…。あたしも最近になって先生やキル兄に会ったけど、すっごくもの凄くヤバイと思う…」



二人共ゴクリと唾を呑み込む。



すると、シャンクが突然二人の間をわって現れてきた。


「これは事件だ!!」



『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・‥・・・・』


キルとネリルが白いコートとフードで隠された顔を無言で見ると、あれ?と首をかしげるシャンク。



「なんでなんの反応も無しなのお二人さん」


「お前、まだ出番じゃねーだろ」


「そだよ。こんなところでー」


冷めた口調でいうと、ガガーンと口でショックを受ける。


「ネリルちゃんまで!俺だってなんか知んないけどでろでろって言われて出たんだよー」


「誰にだよ?」


「えーっと、空耳から?」


「頭おかしいんじゃねーの?」

「ズゴーン」

容赦ないツッコミにまた傷ついたシャンク。


「短編集だから何が起こってもどんな展開でもいいって言われたし・・・、しかもなんでそんな大事な事俺に押し付けるんだよぅ」


四つん這いになり、いきなり泣き始めた。


「著者のバカヤロウー!おにー!悪魔ー!」



「誰に対して言ってんのか全く分からないな…」


「ね」


それでもキルとネリルは真顔でシャンクの様子を眺めるだけである。


しかも三人の背後には、探している白猫が普通に横切ったが、誰も気付かなかったという。



~おまけ~


「おや、ここにもいい毒草が。おっとここにも」


シュールはキル達から結構離れたシェアルロードの泉にたどり着いていて、毒草を辿り集めていた。

だが、ちゃんとメガネをかけている。


「あー。まってまってー。俺まだ出たばっかなのにー!」


「うるさい。俺たちが出たことによってこの短編集を読んだ読者さんどうケリをつけるんだ。ネタ暴れしやがってこの脳みそ馬鹿が」


もう一人の白コートを着た人物によって、シャンクはずるずると引きずられ回収された。



「結局メガネはどこに行ったんだよ・・・」


「このメガネ、先生に早く返さないと大変だよね」



「だよな」



「あれ?あれ~?私の眼鏡どこにいったんだー?」


「それならさっきトレスさんが外に持っていきましたよ」


玉座に座ってようやく眼鏡がないのに気づく皇帝陛下に、補佐官が冷静に言う。


「ええ~!?またッスかぁ!?何回目だこれで!?」


「27回目です」


「か、数えてたんだ~…。っていうか、なんかあんまり皇帝としての扱いが酷い気がするよね」


「皇帝が皇帝ですからね」


「なにをぉぉぉぉぉ!?」




その頃のトレスは物凄い速さで走って、キル達から離れるようにミスティルへ走っていた。


「きゃはははー!眼鏡どっかに落としちゃったけどいっかー♪もーどろ」
↑一番の元凶者





ー俺の出た意味はー?ー
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