このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

-短編集-


ーOffの日ー

 

「はぁ~あ。ヒマだなぁー……」

真っ白い建物と巨大な白の教会が建ち並ぶサンクスの街。その中でいつもの黒いコートを着ていなく、普段の格好をしてベンチに足を組んで座っているエディンが居た。

闇の瞳(ダーク・アイ)に所属し、特別機関員である彼の傍らには飛天勝が暑そうにだらんとベンチに持たれかかり、うぐぅ~と唸っている。


ちなみにボーダーシャツという何時もの格好でカチューシャをしている。

「今日はめったにない機関の休みなのだ…。暇をつぶさなければ勿体ないぞぉエディン君」

「どうでもいいけど何であんたが居るの…?」

質問すると汗をかいた顔をタオルでふき取り返答を返す。


「いやなに。私も暇だからここに居るだけだ。それはいいとして、いつも一緒にいるグレンはどうしたのかな?」

スッと顔を向けると既に隣に居なく、スタスタと聞かずに離れて歩いて行っている。


「って、おぉぉォォォいッ!!何故シカトして離れるのだぁ!話しを最後まで聞けえぇ!」

バッと立ち上がり走って隣にきて着いていくが、エディンは無表情のまま前を歩き続ける。

「別に聞きたくない内容だし、正直、休日とかどうでもいいんだよね」

「聞きたくない内容とはなんだぁぁ!私と共に居るのがそんなに不満か!」

「不満っていうか、暑苦しいオッサンの隣に居たくないだけ」

「うがっ」

ストレートに返すエディンの言葉で相当なショックを受ける飛天勝だが、尚隣をキープし着いていく。


「オッサンとはなんだオッサンとはぁ! 私はまだ22だぞこらぁ!」

「精神年齢が十分老けてる。僕なんか見た目も中身も前から変わらず17のままだよ三下」

「ぐおぉぉ~っ」


真顔で歩きながら毒舌を吐くのに、必死で自分の意識を保つ飛天勝。だがやはり辛抱強く、エディンの後ろから着いていき文句を言ってくる。


「お前ぇぇ! そんな事を言っていいのかぁ! 私はつい最近機関に入ったが、お前の方がもっと前に入っていただろうがぁ! 私よりも年長者じゃないかぁぁ!」


「あのさぁ」

ぴたりと止まり迷惑そうな表情で飛天勝を見上げる。


「そうゆう喋り方止めてくれない? それが一番老けてる対象になってんだけど。一々声もデカくて耳がつんざくし、直ぐ隣で怒鳴らないでよゴキ●リ」

「私はゴキ●(ピー)リではない!!飛天勝!飛・天・勝!」

「起承転結?はいはい分かりましたよ。いいから僕に着いて来ないでよ邪魔だから」


手をひらひらと振りながら再び歩き出すと、直ぐ目の前に女の子が走って来て前から衝突する。


「うわっ」

「きゃうっ」

お互いドサッと反動で後ろに座るようにして倒れる。

「いったぁ…」

むくっと肘をさすりながら目の前の少女に目を向けると、あうぅ~と頭を抱え込んで何やら唸っている。


「だ、大丈夫かエディン君!」

「あんたの頭よりかはね」

「なぅ!」


変な返事を返す飛天勝をシカトして少女を観察するエディンだが、顔を上げた途端に誰なのか理解してぽかんと口を半開きに開ける。


「うぅ~…、またぶつかっちゃったよぅ…」

ネリルだった。


「………うわ」

「に?」

思わず声をもらしてしまい、ネリルがこちらを見てハッとする。


「きゃぁぁ~!?ごごごごごめんなさいゴメンナサイ!!ワザとじゃないからぶつかってゴメンナサイ!」

涙目で必死に謝られ、声を聞いて飛天勝もネリルだった事にようやく気づく。


「む、君は確か…」

「に? えっと…」

エディンと飛天勝を交互に見て首を傾げる。


「ぁ、ぁの…、どこかで会った事あったっけ…?」

「ぇー………」


記憶力の無さにエディンが更に表情を歪める。


「この子凄い記憶力の持ち主だね。どんな脳してるんだろう」

「む。私も全く覚えてない。きっと人違いだろう」

「うわー…、バカだー…」

「なんだとぉぉぉ!」

飛天勝に対しての反応だけ冷たく毒舌を吐くと、またエディンに怒る。

「だ、誰だったっけ?やっぱり会った事あるような…」

「…………」

(あー…。いつもコート着てるから普段着見た事ないんだ。…それにしたって声や顔で分かる筈だと思うが…)

何も返事を返さずにジッと見ているエディンに対し、更に目を泳がして焦る。


「あ、あの、もしかして…怒ってる…のかな?」


(敬語使わない部分で既に低脳なのは把握出来るし…)


「痛かったらごめんね?どこ怪我したのかな?」

「いいよ別に怒ってないから」

すくっと立ち上がり裾やズボンの汚れを払う。


「むぅ。やはり見覚えがあるなぁ」

飛天勝もネリルも、どちらもギリギリのラインで思い出せないらしくう~んと唸っている。


「…………」

(これ以上話しても仕方ないし、離れよ…)

「じゃぁ僕行くね」

直ぐに立ち去ろうと動き出すと、待って!と腕をガシッと掴まれた。


「ちょっ何!?」

「あの、随分と暑くてかしましいと思いますが…」

「あつかましいね。混ざってるし」


「あぅ、えーっとね? あたしのシューリング…」

そこまで言って、力強く頭を下げる。


「一緒に探して欲しいですっ」

「……………」


無表情で見たまま、はぁ?と表情を歪めて掴まれた手を振り払う。


「なんで僕が君の探し物を手伝わなくちゃいけないの? そんなの自分で探してよ」

「ずっと探してるけど見つかんないの~! あたしのお友達もみんな全員忙しいからって探しにいけないし、あたし一人でもう三時間も探し回ってるの」


「さ、三時間…」

そんな時間探し続けていれば流石に諦めると思うんだけど…。


「む。それは気の毒だなぁ。私も一度カチューシャを取られた事があってな。君とは探し物の発端は違うが、盗っ人を探すのに苦労したぞ」

「それ、あんたが寝てたからじゃなかったっけ?」

「そうだった気がするぅ」


返事ウザイ。

「それで他人を巻き込むわけ?(他人じゃないけど)」

「いいじゃないかぁ。こんな幼気な少女、放ってはおけんぞ」

「に、じゃぁ…」


「む! 私たちに任せろ! 君のシューリングは私達が見つけだそう!」

「はぁあ!?ちょっと僕まで巻き込まないでくれる?」

「なんだぁ。人助けはいいものだぞぉ? 私は人助けが出来るが為に、機関員に入ったのだからな」

「そんなのどうでもいいよ。僕は君とは違う目的なんだから、抜けさせてもらうよ」

「エディン君!!」

ガシッと肩を掴み、


「君には失望した!私は幾度か君とチームを組んだが、今日の君は消極的すぎてガッカリだぁ」

「汚い手で触らないでくれない?」

「にっ」


途端、ネリルが驚いたようにエディンの頭上を見て指差す。


「あ、あ、あたしのシューリング!」


「え?」

「ぬお!」

全員頭上を見ると、ネリルがいつも持っていたブレスレットが、エディンの頭の上で光りを放ちながら回転していた。

『てっ、天使!?』

「んなわけないだろ!!」


ネリルと飛天勝がエディンの姿をみて同時にハモる。



「あ、よく見たらあたしのシューリングっ! えい!」

「うわっ」


両手で取ろうとするが、シューリングが他の場所へ行き、エディンと共に倒れてしまった。


「いったたた…。また…」


「に! シューリングが!」


ガバッと立ち上がりエディンの腕を引っ張り走りだす。


「って、ちょっと、え!?」


「なんだエディン君も探すのか。よーっし!みんなで探そうじゃないかぁ!!」


飛天勝も叫び声をあげながら、ネリルとエディンの後を追っていった。

「にっ、あっち!草むらの中に入ったよ!」

「ちょっ、いい加減離してくれる!?」


エディンが引きずられながらネリルに叫ぶと、ぱっと離し驚いたような悲鳴を上げる。

「きゃあぁぁ」

「いたっ」


ドサッと倒れ、何事かとネリルに聞くと、震えながら前を見ている。


「…………?」


ネリルが見ている方向を見ると、見るからに薄気味悪い黒の教会が見えた。



「あぁー…、街外れの教会か…」


知っていたような口振りで、ゆっくりと 立ち上がる。



「に…いぃ……」


ぶるぶると青ざめていくネリルの後ろから、飛天勝が遅れて追い付いてきた。



「早いぞ君たちぃー!」

「僕も含まないでくれない? 強制的に連れてこられただけだから」


ほこりを手で払い落とし、ゼェゼェと息を上げる飛天勝から目をそらす。



「む…。あれは…」


目の前の黒い教会にようやく気づき、エディンの後ろから見上げる。



「おー。黒の教会ではないかぁ。懐かしいなぁ」

「に…、しっ、知ってるの?」

「知ってるもなにも、ここ幽霊が出るって噂で有名だから…」

「いやいやいやいや! あたしここに入りたくない! あ、でも入らないとシューリングが…。でででも、どうしよぅ~」

に~と頭を抱えて自分と戦うネリルを見てエディンはやれやれと背を向ける。


「怖いんなら行かない方がいいんじゃない? もう僕を振り回さないでよね」

「に! 待って!」

ガシッと服を掴みまた押されてお互い倒れる。



「もう! なんなのさ一体! 入るの!? 入らないの!?」

「やっぱりシューリングは諦めたくないの! あたし、あの教会に入りたいけど…正直言うと入りたくないし…、でも二人一緒なら入れるの!」


「はぁ? あのねぇ…、僕だってそんな暇な事してられないんだよ。行くならこの虫と二人だけで探しに行ってよ」

「それじゃ駄目なの!」

ぶんぶんと首を横に振り


「さっき君の頭に寄ってきてたし、もしかしたら呼び寄せる力を持ってるのかもかもと思うの」


「………(かもかも?)
…そんなの偶然に決まってるだろ」

「いいや、これはもしかすると本当かもしれんぞ。本当とかいて「マジ」と読む」

「アンタは黙っててくれる?」

飛天勝をそっちのけに立ち上がろうとするが、ネリルがぎゅっと服を掴んで動けない。

「…お願い……、あたし…、諦めたくないの…」

下を向き、今にも泣きそうな表情にぎょっとする。


「……………」

なに…。
これ、強制?
うんと言わない限り離さないような?


「ふざけないでよ。そんなのに構ってる時間なんて…」

「まぁまぁ。ここは泥船に乗ったつもりで」

「それ沈むから」

最後まで言わさず阻止するが、やはり飛天勝はネリルとエディンの肩を掴み得意気に頷く。



「いいだろう。困った人は見過ごさない。それが私たちだ!」

「に! ほんと!?」

「ちょっと!?」

「さぁ! いざ黒の教会へ行こうじゃないかぁ!!」


ビシッと指差し、エディンは表情を曇らせる。









「…………まじ(本当)…?」

そんなわけで、ここからは超最強である飛天勝が黒の教会内部を説明していく。

マイクを持って。


「えー、見ての通り、中は全く人気がなく、私たち三人しか居ない。荒れ果てた椅子、神壇、テラス、ステンドガラスと、もうどこからどう見ても不気味な雰囲気が漂っているな」

「にぃ~、怖いよぅ」

「どうでもいいけどどっからそのマイク出した訳?」

スタスタと歩いてシューリングを探す三人だが、飛天勝を先頭に内部を案内する。


「質問はガイドが終わってからどうぞぉ~」

「腹立つガイドだな…」

見た目通り。



「に!」

「む、どうしたのだ?」

「こ、この壁の穴…、なんかおかしくない?」

「…………?」


ネリルを中心に三人共、神壇の後ろにある穴に注目する。

確かに無理やり穴を開けたような形跡があり、どうも自然に朽ち果てたようには見えない。


「…これ、多分魔物が居る証拠だね」

「むむむ! この教会に魔物だとぉ!? こちらの領域だというのにけしからんな!」

「仕方ないんじゃない? 領域って言っても、マークや監視がほぼ手薄な場所だし、僕だってすっかり忘れてたくらいだからね」

「に…、なんだかよく分かんない事話してるけど…」

「あんたは気にしなくていいよ。こっちの話しだから」

色々と知られてちゃ、僕らが困るし後々なにかあると厄介だしね。



「ちょっと待て! 何か感じるぞ!」


飛天勝が穴から離れ、上を見上げる。


「に! な、なんか居るよ!?」

「あぁー…、何かと思えばウィルスか…」

青い光りのラインを放つ不気味な魔物が、ズシンと目の前で音を立てて立ちはだかる。

見た目は長いローブを着て、破いた魔女のような服で不気味な杖を持っている。


「きゃあぁぁぁ! これ絶対凄く確実にヤバいくらいにピンチだよ!?」

「どんだけ単語並べるんだよ。こんなのザコじゃん」


テンパるネリルが神壇の後ろに隠れ、魔物がエディンに杖を縦に斬る。


攻撃パターンをよんでいたエディンは後ろにバックジャンプし、神壇の上に立つ。


「おーっと! 流石は身のこなしがいいだけある! ウィルスの攻撃をいとも簡単に避けたぁぁぁぁ!」

それでも上下左右に杖を振るウィルスだが、エディンは全く相手にならないようで、ヒョイヒョイと簡単に全て避けきる。

その傍らで飛天勝は熱い実況を行い続ける。


「だが魔女らしきウィルスも負けていられない! 相手に何としてでも攻撃を与えたいが全く傷一つ与えられない。熱い! 熱い激闘が繰り広げられるぅぅヴぇっ」

「ってかお前も戦えよ!!」

避けつつ膝を曲げ、飛天勝の腹部にゴスッと突き倒す。

その反動でマイクを手放し、口から血を流す。










「え…エディン君…、もうちょっと優しく…」

「ほら来るよ」

「ぬおっ!?」


ウィルスが横に杖を振り、エディンは上空のシャンデリアにぶら下がり、飛天勝はギリギリブリッジでかわす。


その隙をついてウィルスは魔法を使用する構えをし、無陣を張り詠唱を唱える。



「げぇぇぇェェ!? 魔系のウィルスが魔法を使用すると威力が凄いぞ!?」

「攻撃して回避するしかないだろっ」

シャンデリアに足を置いて、ウィルスに飛び向かう。

だが数秒で詠唱を唱え終え、バッと隠れて見ていたネリルに標的を変える。


「な…っ」

両手に黒く巨大な針を三本ずつ構え、ウィルスに切りつけたが、詠唱後硬直に何らかの魔系インフィニティ(特殊効果)があるらしく、針が透き通ったように手応えがなく回避された。


(ヤバい…、このままだとあいつ(ネリル)に…!)

「逃げろ!」


飛天勝を見てもインフィニティによる効果が作動し影響を受けたのか、ナイフを持ったまま倒れている。


ネリルは横に逃げようと走るが、ウィルスの魔法陣が早く、直ぐに陣に追いつかれてしまった。

「く…っ、“トレード”!」


ヘイスト(瞬足)でネリルの前へ行き、前へ押し倒して魔型の標的を自分へ変更しまともにくらってしまった。


「きゃ!?」

「うぁっ…!」

青い光りと電撃が伝い、ドサッと地面に倒れ込む。


「…エディン君!」

やっと動けるようで、飛天勝がすぐさま黒いナイフを投げつけて標的を自分に切り替えさせて注意をそらす。

倒れたまま立ち上がらないエディンを見て、慌ててネリルが駆け寄り呼びかける!


「…お兄ちゃん!」

「……く…っ」



無様だな…。

僕があんなザコ相手に重傷を負うとか、馬鹿げてる…。

「…な…、なんであたしなんかの替わりに…!」

倒れているエディンを覗き込むように叫ぶネリルの声に、表情を歪めて顔を向ける。


「……五月蝿いな…、あんた一番弱そうだったし…」


思えば助ける必要なんてなかったんじゃないか?

こいつとは敵だし。



色々面倒になる前に立ち上がろうとしたが、ネリルの表情を見て、言葉を失ってしまった。










「っ……いやだよ……」




涙を流し、エディンの頬に落ちて震えていたから。




「……また…居なくならないでよ……お兄ちゃん…」



「……………」


本気で泣いてる…。
この子…、誰かと投影しているんだ…。



「…もう…、一人で悲しみたくない…、泣きたくない…。

……大丈夫って、また頭を撫でてよ…、お兄ちゃん……っ」


両手で泣いてる顔を覆い、エディンの前で泣き続ける。


「………………」


………僕だって…、嫌だよ…。

本当はこんな事したかったんじゃない。


僕はもっと、別の生き方をしたかった。






「ー……くっ!」

飛天勝がウィルスに留めをさし、消滅する。

一息つき、エディンとネリルの元へ駆け寄って下級治癒術をかける。


「エディン君…!」

「……………」


倒れたまま手のひらを飛天勝に向けて、言葉を制止する。

治癒してくれたおかげでもう傷もなく立ち上がれるが、立つ気力が起こらない。



今目の前で泣いている彼女の気持ちが、自分にも流れ込んでいて…妙な感じがしているから…。




「……やめろ…」


泣いてる彼女に言うが、思ったよりも小さな声になってしまい、もう一度聞こえるように声を放つ。


「……やめろよ…。泣くなんて…みっともない……」


やっと聞こえたらしく、泣き止んで手を下ろす。

ゆっくりと上体だけ起こし、座ったままの僕を見るが、まだ目に涙を溜めたままだ。


「………僕はもう、何ともないし、…ウィルスも消滅したんだから…」

「…………」

それでも不安が拭えないのか、本気で心配した目で僕を見ている。


…お願いだから…、そんな目で見ないでよ。

嫌な事を思い出してしまう。

「…ごめんね?」


涙を溜めたまま謝る。

ごめん?
謝る必要なんて、今更ないんじゃない?

……僕じゃない別の人に言ってるようなものだし。



「…もういいから、別に今は何ともないし…」

立ち上がり、服の汚れを手ではたく。

「む…、怖かったのか? 泣いてると前がよく見えないぞ?」

飛天勝が泣いてるネリルにハンカチを渡す。

何が起こるか分からない為に、常に持っているらしい。


「に…、ありがとう!」

「まぁお礼を言われる程でもない。これで涙を…」

涙を拭かずに両手でズビーっと鼻をかみ、飛天勝にハンカチを戻す。



「……………|||」


それを受け取った飛天勝は若干顔を青くしてハンカチをつまんで眺める。

ハンカチの使い道が違う。


袖でごしごしと涙を拭い、にこっとまた僕達二人に笑いかける。


さっきまで泣いていたのに、直ぐに笑う。ころころと表情の変化が激しいな…。



「あ!」

「え…」

僕の頭の上を見て驚いた顔をする。


………まさか…。



「あたしのシューリング!!」

ビシッと頭上に浮かぶシューリングを指差し、掴もうと迷いなく飛んで両手を伸ばす。


案の定、僕はまたタックルされ下敷きにされた。


「もう! あんた少しは学習してよ!?」


ネリルを見ると、今度はちゃんと掴んだらしく、シューリングを両手に持って表情を明るくしている。


「………はぁ…」

溜め息をついて立ち上がり、遅れてネリルも立ち上がるがぴょんぴょん飛び跳ねてこちらにまたお礼を言う。


「良かったー! 二人のおかげで取り戻せたよぅ! ありがとう!」

「なぁに。困った時は放っておけんからな」

「……………」


シューリングを大事そうに持つネリルを眺めるように見るエディン。


…多分、あのシューリングは投影していた人と関係しているのか…。



内心分析しつつ、他の事も考えながら地面に目線を落とす。


……出来る事なら…、




「…敵じゃなければ良かったのに……」

「に…?」


思わず呟いてしまった。


「別に、何でもない」

軽くごまかして先に出口へ向かう。

遅れて二人も出口へ向かい、僕達三人は教会を出た。

「はぅ~、怖かったよぅ」

「もう探し物も見つかったんだし、いいでしょ」

「に! ありがとうお兄ちゃん。またどこかで会ったら、お礼するね!」


バイバイしながら僕等の前から走って去っていった。


嵐が去って行ったような気分。

色々と危なっかしいな…ほんと。





「エディン君」

「なに」

「あの子や他の仲間と敵じゃなければいいと思ったのだろう?」

「……………」


気づいてたんじゃん。
やっぱり。




「…あんたと違って、僕はやりたい事以外興味ないからね」

「またまたぁ~。もっと他の意味もあるだろう?」


「……………」


黙り込む僕を見て意外そうな表情を見せ、ふぅむと息をつく。


「やはり図星なのか」


スッと先に街へ歩き、飛天勝を無視する。



“敵にしたくなかった。”



そうだよ。

それだけは嘘じゃない。


でも、あんまり干渉も出来ないんだ。しちゃいけない。

干渉し過ぎると、僕は諦めてしまいそうだから。



でも……、








「一日だけは…こうゆう日もあっていいな…」


「む、何か言ったか?」


ぼそりと呟いた言葉に飛天勝が反応し、ニヤニヤする。





「にやにやしないでくれる? 気持ち悪いから」

「なにをぉぉぉぉ!!??」












-ENDー
14/37ページ
スキ