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-短編集-

「あ…、有り難う…」

「いや、それよりも、やべぇな…。ドアの方」


直ぐに立ち上がり、物をどかそうとするが、いくつかの棚が交差し、狭い準備室の空間でドアを塞いでいるのでどかすのが困難である事に気づいた。



「くそ。一人で動かすには時間が掛かるな」

「……ごめん…ね……、キル…」


俯き、青ざめながら謝る。
「別にリリーが謝る事じゃねーよ。整理されてない準備室だったしさ」

はぁ、と息をはいてリリーに近寄る。


「怪我してないか?」

「…うん。キルは?」

「俺も平気だ。まぁ…、完全に閉じ込められた訳じゃねーから、俺一人でもこれくらいどかして…」

「待って!」

塞いでいる道具をどかす為に離れようとすると、リリーが手を掴んで引き、ぎゅっと前から抱き締めてきた。



「………っ!?」

「…離れ…ないで…、お願い…っ」


「お…、おいリリー…?//」

「暗くて狭い所は…嫌……」


更にギュッと抱き締めるリリーに、落ち着かせようと大丈夫だと言い聞かせるが、全く離れようとしない。

カチンと固まって変な汗がにじみ出てきた。


「…ぅ………」


な、なんかヤバくねーかこの状況。

ヤバい心臓がバクバクして自分も落ち着けれない。


こんなのどうすりゃいいか分かんねーよ…っ!

「はぁ~、やっぱ教室の少女は出なかったなー。次行こうぜ」

「ま、待ってよぅ~!」

「…………?」

後ろを振り向き、キルとリリーが居ない事に気がついたスティマが、みんなの後を追う。






「ハンナさん。キルとリリーさんが居ないんだけど…」

「を? ん~?」

気づいていなかったらしく、あたりを見渡す。


「どこいった?」

「あれ? さっきまで居たよね?」

エラが不安な表情でフィリと顔を見合わすと、クロルがう~んと唸る。



「はぐれたかもしれない…」

「ガキかあいつら」

「うわ~。ちょっと面倒な事になっちゃったっぽいね~」

「仕方ない。探しに行くか」

ハンナが向かおうと歩くが、ピタリ立ち止まる。



「に? どうしたの?」

「…霊が近づいてる…」

「Σえ…っ|||」

フィリとエラ、ネリルが一気に青ざめる。


「ど、どこからですか!?」

「廊下前方からだ。貴様ら、この教室に入るぞ」

直ぐドアを開け、全員教室に入る。


すると、ヒタヒタと裸足が床を踏む音が聞こえてきて、教室の外に響き渡った。





ひた



ひた







ひた………
























………ひた…………。













「…………………」












全員息を殺し、音が遠ざかっていった。






「やばいな…」

「え、ハンナさん、ヤバいって何が…」

後ろを振り向き、窓に近寄り耳をすましているハンナに近寄る。





「さっきの霊、この教室の窓の外から近づいてきてる…」


「え、窓じゃ直ぐに中見えるよ?」

慌てるネリルにエラがぐっとスコップを握り締める。


「こ、怖くないとも…!」

「ギリギリだよエラさん」

横からツッコむスティマ達をよそに、一番左の窓にひたりと音が響き、ペタッと手らしきものが外窓に現れくっついた。











「………………」


ハンナがジリジリと教室のドアへ引き下がっていき、手の横からゆっくりと黒い髪が見えてきた。








「みんな………」


ぐるんと皮膚がなくなった顔がこちらを覗き込み、ネリルとエラが悲鳴を上げる。



「逃げるぞ!」


バタンとドアを開け、全員教室から出た。

「ぎゃあぁぁ~!! あぁぁぁぁぁ!! なんだあれ!今のは何なんだアレ!?」

エラがグルグルと目を回し、泣きながら叫び声を上げて走る。


「いやアァァァ!!怖い怖い怖い怖いーっ!!」

ネリルに続き、フィリも青ざめながら物凄い早さで廊下を駆ける。

「幽霊です!! 紛れもなく幽霊ですよ!?」


途中動向したケイさえも、フィリの横に並んで悲鳴を上げている。




「ぎゃあぁー!!僕あんなのはじめて見た!!てかどうしよう、この先学校で泊まれないじゃんんんん|||」


「落ち着けや貴様ら!! 理科室に入れ!!」

ガラッと乱暴に開け、中に身を潜める。



準備室に閉じ込められていたキルとリリーが、物音に気付いて何なのかと耳を立てる。



「…みんなが探しに来たのかな…」


「分かんねーけど、また静かになったぜ?」


余りにも心臓に悪い為、リリーを離して隣に座っていたキルが、ドアに耳を押し当てる。



「…………?」


ふいに微かな音が聞こえ、リリーがきょろきょろとまわりを見渡す。


「……ねぇキル」

「ん?」


「何か…聞こえない?」

「え…」


きゅっと袖を握るリリーに、静かにしていると、廊下側からひたひたと音が近づいているのに気付く。



「…聞こえる……」

「…………これ…って…」


青ざめて気分が悪くなっていくリリーが、ゆっくりと口に出す。



「…テケテケ……かも…」

「なっ」

声を大きく出しかけたが、近くまで来ているのにハッとし、直ぐに押し黙る。












ひた







ひた














「………………」










ひた













ひた…ー
























「…………も…大丈夫…」


「…そっか。良かった」


リリーに顔を向けると、はぁ…と息が上がっており、冷や汗をかいていた。




「お、おいリリー、大丈夫か?」


「………キル…」


ギュッと両手でキルの手を握り締めると、頬を赤らめて涙を浮かべる。


その姿にどきりとするが、心配になってなんだと聞き返す。



「…お願い……、離れないで…。今の学校…、嫌な感じがするの…」


「嫌な感じって…」

ジワリと涙を流し、ぎゅっとキルの服を握り締めて顔をうずめる。


「……り、リリー…?」

また心臓がバクバクと緊張しつつ、ちゃんとリリーを支えるキル。


顔をうずめたまま、途切れ途切れに声を発するリリー。



「…お願いだから…、私から離れないで…っ」


「……………」


黙って赤くなっていたが、何時もの様子が違うリリーを見て、頭を撫でて落ち着かせるように優しく声をかける。




「大丈夫だって…。……離れたりしないから…」


その言葉を聞いて、ゆっくりとキルを見上げると、リリーに笑みを浮かべる。




「………な?」


ぼんやりと眺め、安心したのか、ふわりと笑いかけ、ギュッとキルに身を寄せる。



「……う…ッ」


「………ありがとう…」


「…ぁ……いや……。…別にいい…」



自分でも感じた事がない位の緊張で、リリーを抱きしめる。



(…もう、付き合ってるみたいじゃ…ねーか)


ぎこちない動作ではあるが、段々落ち着きを取り戻していったのか、キルの両肩に手を置いてリリーが見上げる。





「…有り難う。……もう…落ち着いたから…」


「そ、そっか」


ふぅっと息をついて、まだ緊張は残ってはいるものの、立ち上がって窓から隣の理科室を覗く。


「あれ? ハンナ達じゃねーか」


見ると、隠れていたハンナやフィリ達が立って話し込んでいる。



「霊からまけたが、これ以上探索するのは危険かもな」

「はい…、まさか本物の霊に出くわすとは思ってもいませんでしたしね」


スティマとケイも話しに入り込み、う~んと考え込む。


「僕も解明は不可能だと判断するよ」


「ですね。続けるとしても、エラさんとネリルさんの精神が持つと思えないですし」

隅っこの方でガタガタと震えている二人を見て呟く。


「こりゃ早いとこはぐれたキル君達を探して、撤退するしかないな」

話を聞いていたクロルが、準備室に目を向ける。



「あ…、キル」


「を? キル君?」


見ると、トントンとドアを叩いて合図を送っているキルの姿が見え、全員近づく。

「おい、聞こえるか?」

「よ~キル君。やっと見つけたぞ。聞こえるがどうした?」

「俺ら閉じ込められていて、出られねーんだよ。クロル居ないか?」


「こっちに居るよー…」

ひょいっとハンナの隣に立つクロルに、ほっと胸を撫で下ろす。


「クロル、お前の能力で、ここのドアをふさいでる棚を動かしてくれないか」

「その大きさならギリギリ大丈夫だと思う。ちょっと待ってて…」


意識を集中させ、棚を壁際に離して動かしていき、ドアがやっと開けるようになった。


「これでいい?」


「サンキュークロル。リリー、出られるようになったから行こうぜ」

「……うん」

こくんと頷いてキルの手を取り、繋いだまま皆のいる理科室に出る。



「を? おぉ~?」

「キルさん。もうそんなに仲良くなったんですね?」


スティマとハンナがニヤニヤとして、一瞬なんの事かと思う。


「は? 何がだよ」


「手を繋いじゃってまぁ~。可愛らしい~」

ハンナが指摘してやっと気づき、ばっと手を離す。


「な、ばっ、そんなんじゃねーって// なぁリリー?」

「………えっと…」


離した手をぎゅっと口元で握り締め、何故か若干、キルから目を逸らして頬を赤らめる。


「……………」


何も言い返さないリリーに、え、と逆にキルが様子に不思議がる。



「貴様ら、まじで何かあったのか…」


その様子を見て、ハンナが真顔で聞き出してきた。



「別になんもねーって!!閉じ込められただけで、少し不安になってただけだっ」


「とか言っちゃって~、顔赤いぞキル君。状況の流れでキスとかしちゃったんじゃね~の~」

「な、キッ…っ」


その言葉を聞いた途端、更に赤くなり、ボンッと煙りを吹き出した。



「んな事、まだ…」

「あ。まだって事は、いずれしたいんですね」

スティマが冷静に解釈すると、リリーがえ?とキルを見上げる。


「…私と?」

不思議そうに顔を傾げるリリーを見て、自然と口に目を移す。



「………んな…事…」

「……………」


口元を軽く隠し、目を伏せてキルから逸らす。


「………キルとなら…別にいい…かな…」


「…………!?」

ほんのりと赤らめ、ぼそりと呟くリリーの発言に、とうとうキルが横に倒れてしまった。

「きゃあぁ~! キル兄が倒れちゃったよぅ~!!」

「お嬢ちゃんがそう言うとは、進展があったらしいな」


慌てるネリルにハンナは真顔で分析し、ケイとエラ、スティマが倒れたキルにエールを送る。


「良かったね。僕は陰ながら応援しておくよ」

「が、頑張って下さいキルさん!」

「お手伝いするよキルさん」


「………うぅ…//」


目を回しているキルを、ハンナが取りあえずクロルに命令を下し、背負わせる事にした。


「なにはともあれ、合流出来たんだし、とっとと出るとするか!」


先頭に立ってドアを開く。








が、ガタガタと音を鳴らすだけで、ドアを開けない。



「…………ん?」

両手でスライドさせたり、押したり反対に引いたりするが、ドアを開けない。




「あの…、どうしたんですかハンナさん」

様子を見ていたフィリが嫌な予感をして聞き出すと、振り向いたハンナが真顔でさらりと口を開く。



「ドアが開かない。閉じ込められた」



「………………」




暫くの沈黙。









「え?」


エラがやっと声をだし、えぇぇ!?と驚いてドアに近づく。



「ちょ、閉じ込められたってヤバくないか!?」


「ヤバいね。相当ヤバいよこれ。だって今日、学校には僕しか居ないもの」


ケイが最も重大な事を話し、ネリルが顔を青ざめる。


「ああ、あぁ、あたし、どうしたら…~」


「そんな時は俺の能力で…ー」



「お前は鍵を壊すだろう|||」


エラがクロルに現実を突き付ける。

鍵解除に加減が出来ないらしい。


「じゃ、じゃぁ、僕が…ー」


「貴様だとドアノブ壊して余計出られなくなりそうだ」



フィリの行動パターンを把握していたハンナは無表情で止めに入る。



すると、パチンとラップ音が聞こえ、全員押し黙る。




「…音を立てるな、今…この場に気配を感じる…」


「……そんな…」


ネリルが青ざめて落ち着きなく見渡し、突然、ガタガタと窓やドアが音を鳴らして激しく揺れ始めた。


「いやぁぁぁ!?|||」

ぎゅっと目を閉じて両耳を塞ぎ、しゃがみ込む。
エラもネリルを支えてしゃがみ、周りを見渡す。




他の皆は警戒し、ハンナはジッと外を睨んでいる。


「青白い光が見える…。…この音は大多数の浮遊霊の仕業だ…」

「ハンナさん、対処方法はないんですかっ?」

ガタガタ、バンバンと、あまりにも激しい音に、表情を歪めるスティマが聞き出す。


「難しい。中じゃなくて外に居るから、此方側から手を出せない。 …それに、あの数だと一辺に来ちゃ…」


眉を潜め、難しい顔を浮かべる。



「あの人魂のようなもんが、原因かもな…」


「…………っ」



危機的状況に陥ってしまい、全員が警戒する中、今まで気絶していたキルが、ピクリと動き、クロルから降りて離れる。


「………よせ…」



「………を?」

「………キル…」

ハンナとクロルが目を向け、ネリル、エラ、ケイとスティマも彼を見上げる。


「キルさん…、もしかして…」


俯いたまま突っ立っているキルに、フィリが察して声をもらす。




「……………」

先程と全く違うキルの様子に、リリーが何なのかと見上げる。


「………キル…?」


「………ク…クック…」


下から覗き見える顔が、ゆっくりと上がると、青く澄み切っていた瞳が、真っ赤に燃え盛る赤い瞳になっており、クツクツと笑みを浮かべて窓を見つめる。

















「…テメェ等…、俺の学校で好き勝手動いてくれんじゃねぇか……」



どす黒く、低い声をだし、先程の笑みが一瞬にして消え、見えないものに対して睨み付ける。


「………散れ…」


「…………!!」


すると、ガタガタと響いていた音がピタリと止み、シン…と静まり返った。





「…音が……、止んだ…?」


リリーがまわりを見渡し、ハンナもふぅ~、と肩の力を抜いて座り込む。



「全員キル君にビビって逃げてったぜぇ~」


「…………」

黙ってキルの後ろ姿を見ていると、不意に無表情な顔を振り向かせ、リリーに目を合わせた。


びくりと肩を上げて驚くと、ネリルやエラがキルの腕を掴んでお礼を連呼する。



「にぃ~、ありがと~! ありがと裏キル兄~!」

「も、もう駄目かと思ったよ裏キルさん!有り難う!」


「気安く触んな…」


振り解き、クロルもパチパチと無表情で拍手をする。



「久しぶりですね。裏キルさん」

「僕は二回目かなぁ~」

スティマとケイが普通に呟く。

だが、はじめて見る裏のキルに、リリーはどう反応すればいいのか戸惑ってしまっている。

「………リリー…」

「な…、なに…?」


不意に名前を呼び掛けてきたので、遅れて反応しキルを見上げる。


「……外傷してないか」

「……あ、…うん」

「そうか…。ならいい…」


「……………」


意外と優しい言葉をかけてくれたので、緊張がほぐれていった。



「にしても、あいつらは一体何だったんだ? 何がしたいのかさっぱりだ」

一人理解出来ずにいるハンナが全員を見渡して立ち上がると、時計を確認してこう言った。



「……ひとまず、今日は解散だ。得体の知れないモノに、これ以上深追いすんのも危険だからな」


全員、ハンナに反対せずに頷き、開くようになったドアから出て、ようやく、正門まで出られた。




時間は12時を回っており、店の光りが消えた夜空は、沢山の星がキラキラと輝いて見える。







「まさか今の学校がここまで酷いとはな。この分だと、七不思議が全て本物ってのも有り得るかもな」

「に! こ、怖い事言わないでよぅ~…」


びくびくするネリルに、ハンナがニヤニヤと笑いかける。

ワザと言ったらしい。



「ご、ごめんみんな、僕、今日学校に泊まる事になってたんだけど…、流石に無理っぽい…。誰か泊めてくれない…?|||」

「帰ればいいだろ?」

「アパートに一人暮らしだから、余計帰りたくないんだよっ|||」

震えているケイを結局、クロルの家で泊めてあげる事になり、各々が解散する事に。

残ったのはリリーと、人格の変わったキルだけとなった。





「じゃぁ…、私も帰るね?」

落ち着かない雰囲気のまま帰ろうと、足を動かす。


「…お前、霊の気配、感じ取れるんだな…」

急に話しを切り出し、え、と振り向く。


ジッと学校を見上げたまま、尚も話しを続ける。



「…霊自体は見えないのか……」

「う…うん」


こくんと頷くと、そうか…、と静かに言い、此方に近付く。



「……なぁ、今の俺は、お前から見てどう見える?」



「え…?」


突然話しが変わったので、反応に遅れてしまった。

でも直ぐに問い掛けに応じ、思考を巡らせる。



「…どうって……」




「さっきとは全く違う俺を、どんな風に見える?」

真っ直ぐ見つめる赤い瞳。


捉えたものを逃がさないような眼に、自身も目を逸らす事が出来なくなってしまって、彼を真っ直ぐ見つめる。



「………私は…」


どう言えばいいのか迷ったが、思った事を口に出した。





「キルはキルに変わりないように見える」

「………どうして…」


「どうして?」

その返しに、不思議な思いがこみ上げる。


「…だって、キルはキルでしょう?」


「……けど、人格が全く違う」


リリーの言葉を否定的に返す彼だが、迷いなく言い返した。



「どんな性格を持っていようと、キルの性格に変わりないもの…」


「……………!」



その言葉に驚いたのか、クックックと笑いかける。




「…なる程な……。…俺が惚れる訳だ……」


笑みを浮かべたまま近寄り、ジッとリリーを見下ろす。



「間違いではないでしょう…?」

「あぁ。間違いじゃない。なら、さっき会話で言ってたお前の言動も、嘘でもないよな?」


「さっき?」


「理科室で言った事だ。俺となら、してもいいんだろ? リリー」


「…理科室…………」


キルが何の事を言っているのか分からず、理科室での事を思い出す。

キルとならしてもいい事…。



似たような言葉の中に、ようやく思い出して見上げる。



「それってキ…っ」

口を開いた途端、顔を近付け、キスを交わす。



「……………」


一瞬、何が起こったのか分からずにジッとしていたが、直ぐに理解し顔を離した。


「……え…?」


「こうゆう事、俺とならしてもいいんだろ? リリー」

ニヤリと意地悪い笑みを見せつける。



「……で…でも…、キルは私の事…」


「今夜だけだ。明日には戻ってる。…俺はお前に好意を抱いてるからな……」


「…………え…ッー」

躊躇なく返し、フッとまたキスを繰り返す。



「………ん…」


初めてする行為に戸惑いを感じ、離れようとしても離してくれず、余計にキスを交わし続けてくる。



とても甘く、手慣れたように角度をずらして口に触れる。


頭がクラクラしてきて、今にも倒れそうになってきた。



「キ…ル…ッ……」


「………リリー…」

名前を呼び、グッと口を塞ぐ。

「…んん……ッ」


ただ深くキスをするだけでも、こんなにも呼吸が出来なくなってしまう。

でも、嫌だとは思えなかった。


私自身も知らない内に、引き寄せられていたからかもしれない…。




「………………」

そっとキスをやめて離し、耳元の髪を指で掻き分ける。


「…………っ…」


ふらりと倒れそうになったが、そっと腰に手を回し、至近距離で赤い目で見つめる。


「なぁリリー…、このまま家まで送ってってやるか?」

「……………」


間近で囁かれ、暫く目が離せずにぼんやりと見つめていたけれど、ハッとして離れ、走り去る。



「い、いい! 一人で帰れるから!」


自分でも訳が分からないままに走って、熱くなった顔や身体を風に当てて家までの道を走った。


そんな姿を見て、キルが若干、赤らめたまま笑みを零す。



「やっぱ可愛いな……、あいつ…」




ぼそりと口にして、自宅へと帰って行った。








進展し、急速に近づく二人。




が、今夜の霊現象は、翌日、学校内で影響が出てしまい、事件と化してしまったのだが、それはまた別の話しである。













-サイエンス学園Ⅱ-
    ~2時限目~

     ー終わり!ー

サイエンス学園。


次回の学園では?






ハンナ
「ハンナだ。次回の学園ではリリーが転入したての時期の出来事にさかのぼる」






リリー
「何だろう…、朝下駄箱の中に手紙が入ってたんだけど…」


ALL
『それラブレターじゃね!?』


『ドキどき☆ラブレター』








ハンナ
「つーわけだ。次回、お楽しみにな」





乞うご期待!
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