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ー夢ー


現実にない希望や願望を実現出来ればどんなにいいだろう…

ーあなたも私も、いつかは消える運命だけれど…、私さえいなければ、あなたの夢は守れたのに…。

…‥あの時の私は、そんな考えしか出来なかったけど、あなたがあの時言ってくれた言葉が、今の私がいるんだよ?

……‥…ねぇ…、 私はあなたの為なら、自分自身をなくしてもいいから、必ず助けて見せるからね…。

…絶対に……ー


ー…雨が水晶のようにゆっくり降っていて、優しい海の音が聞こえる夜の森…、そこは私が行った事も、見たこともない所…。

その森の少し広い草原の中央に、倒れている女の人をもう一人の男の人が抱えて何かを叫んでる…‥。

あんなに必死で……。


「ー…………な!………ろよ!…なんで…………ー

…時……、………ろ!?…なのに、…で……ー…な……ー…だよ!!

…おー……が……ら…

俺は……!!」



「ーーいや!!…ハァ…、…ハァ……。………………夢?」

バッとベッドから起き上がり、まわりを見渡すと、いつもの殺風景な部屋で、夢だった事に気づく。

「今のって………」


呟くように下を向く少女。

髪はピンク色のロングで、左片方の長い髪だけ赤と黄色の蝶々の形をした髪飾りで束ねている。
瞳は濃いピンク色で綺麗に澄みきってる。

服装はオレンジ色の、膝まである蝶の模様がついたスカートになっていて、両肩は白い羽根のようなデザインで首筋には丸く黄色く、中心だけ一つ青い石がついたネックレスをつけている。



「………………」


首にまいてる一つだけついた白い石を触りながら、今見た夢を思い返す。

………ここのところ同じ夢を何度も見てるような気がする…。

いつも決まって夜の森の場所で、私の知らない男の人がもう一人の女の人に何かを叫んでる…。


顔はよく見えなくて、うなされ起きるまで夢とは思えないくらい現実に近かった…。

「………はぁ…。…………また…、…あの夢……」

息をふき、少女は今日もまたいつもと同じように深い眠りにつく……。

少女が眠りについたとたん、外の満月が一瞬ほのかに光った………。





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「……ふぅぁぁぁ…、…………寝みぃ…。 ……おぉ~ぃ…、やっと全部調べ終わったぞ~…」

「おや?もう読み終わったんですか。キルにしては早いですねぇー」


「“しては”って言葉は余計だろ…」

「そうですね」

「一言で済むかよ。………まぁ、どーでもいいけどよー」

そう言いながら持っている現代世界地図を山積みになっている本の上に放り投げる。

「ま、いいじゃないですか。何も言わないよりは、何か言った方が痛い目にも逢わずに済むんですから」

「まぁ、それもそうだけどよぉ…」

「っつーかいきなりなんの話ししてんだよ…」
 

冷めた口調で言い返すキル。
 
「別に?それより、例の言葉は見つかりましたか?」
 
「いや、 全くと言っていいほどなかったよ」
 
 
「…ふむ、…そうですか…」
 
 
「なぁ、シュール、なんでそんなにあの言葉にこだわるんだ?しかも地図関係のしか探さないしよぉ。何か関係があんのかよ」
 
 
 
「分かりませんか?あなたも知ってる筈でしょう。 なぜ街の人達はあんな事になったのか…。犯人のめぼしはついてるんです。これは一刻を争う事態なんですよ」
 
 
 
「いや、分かってるけどよぉ、 なんか…あんましパッとしないんだよなぁ…」
 
 
 
「あなたの考えは脳みそ以下ですか?」
 
 
「あぁ?喧嘩撃ってんのか?」
 
 
「いえ?別に?」
 
 
 
「……その様子だと、…お前も見つからなかったんだな…」
 
 
 
「えぇ…」
 
 
「そうだよなぁ… あんなの初めてだもんなぁ…」
 
「……………………」 
 
しばらく沈黙が続く。
 
 
 
……「ここでは時間がたつのが早く感じますね」
 
「そうか…?」
 
「そうですよ」
 
月明かりがさした夜、まわりの木々よりも高い岩の頂上に、黒いコートを着た二人組の男が月に向かって囁くように会話する。
 
 
「…やっぱり、今日じゃないとダメなんですか?」
 

不安げに問う男にハッキリと答える。
 
「あぁ。時間がないんだ…。なんとしてでも奴を阻止するんだ。…わかってるな…」
 
「…やっぱり間に合わないんですね…。これから行く所はやはり昨日と同じ所ですか?」
 
「……なぜ、他の奴らと違って動けたのか知らないが…、あいつらには知られてはいけないんだ…」
 

「それじゃぁ、やっぱり……」
 

「記憶を消す…」
 

「……………………」 
 
 
「………いくぞ」

「………はい…」
 
 
…一瞬、月が赤く光り、空が青く染まったと同時に二人組の姿が消えて見えなくなった……ー


……ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……!


仄かに緑色に光りだした満月を見ながら、紫色の着物に似た服を着た女が一言つぶやく。

「早くあの人の所へ行かないと…」

 そういって、木の枝に立っていた女がガサッと音をたてると素早く消え、どこかへいってしまった……。
 
 
     
      ー夢ー
          ー完了ー
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