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その後【救済if】千
𝙽𝚊𝚖𝚎
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*ぬるいエロ
「おい、着いたぞ。」
意識があるんだか無いんだか分からないききょうをひとまずベッドへ投げる、広いワンルームの作りになった空間に必要以上の装飾を施した家具。
そこはまだいい、想定はしていたがベッドが一つしか無かった。
「ん、ごめん…まだ動けない。」
ズルズルとベッドの上を動くだけの生き物になっているききょうは真ん中あたりで動きを止めた。
「そこで吐くなよ。」
「流石にそこまでじゃない。」
こういう時は何て言葉をかけたものか先に備品である高そうなベッドの心配をしてしまった。
受け答えが出来るうちにとペットボトルの水を手渡す。
「水でも飲んでおけ、後で干からびても知らねーぞ。」
手渡すついでに自分もベッドに乗り上げるとギシとフレームが軋む音にも緊張を煽られる気分だ、触れるなら今だろう。
「んーせんく…硬くて開かない、こういう時は開けてから手渡すもんじゃ…」
語尾が聞き取れないふわふわした話し方になるききょうからぺットボトルを回収するために身を寄せた。
「しゃーねーな、お姫様は有り難くそのまま寝てろ」
自分の心臓が煩い、それが知らず知らずのうちにききょうを好きになっていたのだと自分に告げられているように感じる。
難なく蓋を開けると水を一口含んで顎を指で掬い上げる。
「あ、何で千空がのんで…ん、ん」
唇を合わせると薄く開いてゆっくり流し込む、少しでも長く触れていられるようにそっと。
喉が嚥下して飲み込むのを確認しても唇を離す気にはなれずに触れるか触れないかのギリギリの距離で頬に手を添えながら滑らかな肌を指先でしばらく撫でていた。
その間驚いて目を見開くききょうに優越感を覚える。
「な、んで…」
触れただけでそこから甘く痺れるようでどれだけ俺はききょうの事が好きで今まで目を逸らして来たのか、そのせいか腹の中心にまでジンジンと切ない痺れを感じるほどだ。
これ以上は確証も得られて自分を抑えるには距離が近すぎる、一旦体を離してからその問いに答えることにする。
「実験だ。」
ふうと自分を落ち着けるために息を吐きながら当初の目的でもあり、いい意味で成功した事について語ろうと口を開くがその前に静かに涙を流すききょうにしまったと離した距離をまた詰めた。
「っ、人で…実験なんかして、楽しいですか…」
まずい、爆速で誤解を解かねーと。
こういう時は確か、抱きしめたらいいのか。前のめりに回転の良くなった頭で聞いたり小耳に挟んだ女性の扱い方を頭の引き出しから引っ張り出す。
「あ゛あ、成功もした。自分の気持ちがはっきり分かったからな。俺は…」
くっそかっこわりー、ここまできてすんなり好きの一言がなかなかでてこない。成人しても一切触れて来なかった人間の欲や心というものはこんなにも思い通りには動かないものか。
言葉の代わりに抱き寄せながら至極優しい手付きを意識しながら頭を撫でてやる、こうすれば顔を見ながら想いを告げるより言葉が出やすいだろうと思ったからだ。
「っ、く……。」
声を押し殺して涙を流し続けるききょうに愛おしさが込み上げる。
どんな姿も心を揺さぶる栄養になるなんてさっきまで分からなかったのに、気づいてしまうと刺激的に五感を刺激される。
「ききょうが好きだ、心底惚れてる。」
抱き寄せている腕に更に力を込める。
「で、でも…私、他に好きな人が…」
想定内。
「そんな事分かった上で言ってるんだよ、何年俺と仕事してると思ってんだ。」
様子を知りたくて頬を撫でながら涙を掬い取るついでに顔を上げさせるとききょうの濡れた瞳いっぱいに映る自分でも見たことのないような顔をした自分と目が合った。
「じゃあ…」
「その上で提案だ、俺を選べ。そうすれば絶対惚れさせてやる。あのペラペラメンタリストの何倍もな。」
自信も策も無い、だが手放したくも譲りたくもない。
勝算も無くこんな事を言う自分こそペラペラだ、それでも駄々をこねる子供のようにききょうが首を縦に振るまで放す気が一ミリも起きない。
やっぱ恋愛脳は非効率的なトラブルの元にしかなんねーな。
「考える…ん、ん」
そう蚊の鳴くような小さな声で答えるとモゾモゾ動いたききょうは寝息を立て始めた。
「…生殺しってやつか、起きたら容赦しねー…」
そう言いながらも自身も酒と日頃の疲れのせいか瞼が落ちてくる。
結局首が痛くなりそうだと考えながらその日はぐっすり寝込んだ。
。