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その後
𝙽𝚊𝚖𝚎
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そうして1人で百面相をしている間に皆んなどんどん到着した、クロムもルリさんといちゃいちゃしながら入って来るし雰囲気にあてられそうだった。
驚いたのはコハクちゃんも彼氏と来たこと、流石に参加はしなかったみたいで送りだけだったけど帰りも迎えに来ると言って帰って行った。
スイカちゃんは安定に可愛いしさらに綺麗になってコミュ力まで上ったものだから奥の座敷が一段と盛り上がりを見せていた。
そんな声を聞きながらまるで焦らされるように彼がなかなか姿を現さない、痺れを切らして一度お手洗いで化粧を直していると誰かが入り口のドアを開ける音が聞こえた。
「ゲン…かな。」
そう無意識に呟きながらお手洗いのドアノブに手をかけるとゲンの声と、可愛らしいはじめて聞く女性の声。
何を話しているかは聞こえないけれど確かに店内に居るようだ、一瞬最悪な想像をして固まる体をギギギと音が出そうな動きで笑顔を忘れずに貼り付けて上着を預かりに向かう。
嘘でしょ、私のネガティブな考え方が嫌な想像を加速させるだけでハイヤーの運転手さんか秘書が送りに来ただけだって、きっと。
前を向けずに地面を見て歩く。
意を決してちょうど顔を上げた先には嫌な予感が的中してしまっていた。
「ゲンちゃんー今日は初期メンバーの集まりでしょ?私なんかがいたら怒られるって〜。」
派手な指先に間延びした鼻にかかった声、いかにも女性を敵に回しながら男性ウケだけは良さそうな女性がゲンの腕に絡みついているのが見えた。
見せつけているのか。
それでも表情は何とか崩さずに言葉を交わす。
「久しぶり、今日は彼女さんと一緒なんですか?聞いてなかったからびっくりしましたよ。」
手が、震える。
「久しぶりききょうちゃん、そうなんだよね〜お披露目とビックリさせようと思って連れて来ちゃった。」
そこまで言われてはもう何も返せない、完全に打ちのめされトイレに逃げ込もうとする体を必死で動かした。
なんで。何で?
「そ、う。えっと…そんなこともあろうかとひと席多く予約したんだよね、だから大丈夫!」
自分でも何が何だか分からない、何が大丈夫だ大丈夫なものか。
視界がグラグラ揺れる、その後2人を奥の座敷に案内をして自分も席に着こうとぐるりと皆んなを見渡した。
そりゃトイレに引き篭もりたいよ、でもこれ以上戻らないと不審がられる。
それだけは嫌で誰かに頼りたくても1人きりで泣くことしかできない湿った性格も嫌になった。
今日は嫌になってばかりだ、せっかく楽しみにして来たのに。
席の並びなどぐちゃぐちゃになっていて既に出来上がっているメンバーの中何処に座ろうかと考えていると千空と目が合い隣をポンポンと指示された。
コクリと頷き返事をすると、壁にもたれるようにして飲んでいた千空の横に大人しく座る。
「ご苦労さん、相変わらずな奴らばっかで騒がしいったらありゃしねぇ。」
「そうですね、今日は無礼講ってやつですか。」
そう言いながらもこうして私まで気にかけてくれる千空は大人だななんて思いながら顔を上げた、そしてさっきのゲンのせいで動揺していて周りをよく確認せずに席に座ったことを後悔した。
目の前に幸か不幸か大好きなゲン…と、それにくっつきっぱなしのあの女性が机を挟んで座っていたからだ。
物理的な距離が近いもの話せるのも嬉しい、でも今日は違う今日は厄日に間違いない。
何で泣きそうになりながら2人の惚気なんて聞かなきゃいけないの。
「ほんとジーマーで、楽しみにしてたんだから俺“達“」
「達…」
誰にも聞こえないであろう小さな私の呟きはせめてもの抵抗だった。
その後も相変わらずゲンはペラペラと良く喋ること、聞きたくない彼女との馴れ初めは運命を感じただとか。一般の女性だからこその魅力だとかお酒か恋か酔っているようだった。
適当にうんうんと相槌をしながら話しかけられても千空に話題を流していたら天国から地獄に落とされた集まりは終わりの時間を迎えた。
何とか乗り切った…。
はずだった
「ききょうお前今日おかしくねーか。」
「…え。」
見られていたのだろうか。
ざわざわと帰り支度をする中で一向に腰を上げない千空にタクシーを呼ぶタイミングを測っていたせか思っていたより間抜けな声が出てしまった。
「始まる前は浮かれてたのに戻って来てからずっと泣きそうな顔してやがる。」
気にしてくれていたなんて、嬉しくなんかない。ここまで鉄の女なんて言われるほど強いふりを出来ていたのに今更誰にもバレたくない。
「やだな、気のせいですよ普段とメイクも服も違うわけですし!」
上ずった声しか出なかった。
「…ならいけどよ。」
「た、タクシーもう呼んじゃっていいですか?二次会行くなら…」
悟られてくなくていつもより饒舌になっている気がする。
「それともまだ交通機関動いてるのでそれにしますか?」
「明日もやりてー事あるし大人しく帰るわ。」
その言葉に安堵しつつそそくさとタクシーを呼ぶために席を立った。
私って本当に可愛げが無いな、ここで耐えきれずに涙の一つくらい出て来たらまだ目の前に座っていたゲンや千空にも気にかけてもらえたのに。
気を引けたかもしれないのに。