第一章 出会い そして
襲来
それは 3年目のこと
その日は5人で集まっており 去年長男が産まれたテナルディエの話だったり いつもと変わらないたわいない会話をして過ごしていた
去年全く来ない時期があったタイムも 今は逆に増えていた
しばらく話をしていると 扉を叩く音がする
それはタイムの城に繋がる両開きの扉から聞こえてきた
ゼロ「…呼ばれている時は 上の文字が青いはず」
文字は黒いまま 光ってはいなかった
しかし扉の向こうには 開けろと言わんばかりに叩き続ける誰かがいる 城の向こうにいる奴らが扉を叩くのは タイムを呼ぶ以外理由が見当たらなかった
用もないのに扉は叩かない
タイム「ウィルキンズではないな」
そのうち 扉を叩く音は強くなる
ゼロ「……開けられない のは まさか」
ドンッという大きな音のあと 扉がミシミシ音を立て続けている
全員 すでに立ち上がっており テーブルの物は ゼロが消していた
誰も扉から目を離せなかった
ゼロ「みんな扉に戻れ!!!」
ゼロがそう言った後すぐ 扉が激しい音を立てて 壊れはしなかったものの勢いよく開いた
その向こう側から 床や壁を這う真っ黒な影が植物の蔦のように伸び 部屋に入り込んできた
その光景に驚き初動が遅れてしまった
ピレリもテナルディエも 扉にたどり着く頃には取っ手に影が絡みつき 開かなくなっていた
唯一間に合ったのがギュスターヴだった ピレリ側から迫っていた影がまだ届いていなかった
2人の扉が開かない様子を見た彼は
公安官「こっちだ!」
そう言って 扉を開けた状態で2人を呼ぶ
一方でタイムの扉の前の2人は
タイムが王笏を懐から取り出し しゃがんで王笏の底で床を叩く そこから青い光の電流が左右に伸び 床から天井まで一周した
ゼロが想造の動作を行い 扉の向こう側を覆うように被さる影に向かって電気を放つ手のひらサイズの弾を投げつけた
タイムの作り出したラインを越えると 影の動きが鈍くなる これにより公安官の扉だけはなんとか間に合った
ゼロ「私が行くまで戻って来ないで!」
そう言うと 腕を大きく横にふる
すると ピレリが2人を呼ぼうとして開けたままの扉がピレリの体が押し込まれるように中へ入った後 バタンと閉まる
通路は静かで 先ほどの出来事の現実味のなさから 何が起こったのかの整理がつかない
2人の動きは迅速で 何が来るのかを知っているかのようだった
壁を抜けると 公安官室の中
主人が帰ってきたのに気づいて マキシミリアンが起きてやってきた
テナルディエとピレリにしてみれば 未来の世界に初めて足を踏み入れたわけだが こんな理由では来たくなかった
公安官「ゼロが来るまで 待つしかないのだろうか」
ティナ「状況が掴めねぇな あれはなんなんだ?」
仕方なく 彼はこの世界で待つことになった
今は駅の営業も終わり 誰もいない状態なので 彼らが見つかる心配はないが それにしても 何が起こったのか分からない
彼らが逃げ延びた後の集会所では今どうなっているのか
ゼロはタイムの城へ続く扉を塞ぐ影をついに吹き飛ばし そのまま扉の向こうへ走った
タイムの体を能力で引っ張り 彼と一緒に集会所を飛び出した
ゼロ「タイムも奥へ!」
タイム「いや このまま奴らを消し去るぞ」
ゼロ「でも危険だ 彼らは逃がせたけど 奴ら君の世界から来た可能性がある」
タイム「狭間に入り込まれたんじゃないのか」
影がどこから来たのか掴めない ゼロはタイムを守らなければならない
影は2人を追う ゼロは仕方なく叫んだ
ゼロ「テンプス・ホルロージュ・パンデュール!!」
その名前を呼ぶと 彼女の目の前にテンプスが現れた
テンプスは剣を持っており 足元に迫る影に突き刺した
剣を抜き 上に伸びる影を切り裂き なおも覆い被さろうとする影をバラバラにする
するとバラバラになった影が勢いよく元に戻り そのまま扉の方へ戻っていく
そして扉と集会所の間に入り込み消えた
テンプス「お怪我は!?」
ゼロ「無傷!速攻逃げたから…彼らもね」
タイム「いなくなったな…」
ゼロ「…ひとまずは大丈夫 かな」
ゼロは胸を撫で下ろし 再び集会所へ戻る
剣を納めたテンプスもその後に続く
タイム「彼らに説明しなくてはならなくなったな」
ゼロ「…どのみち完璧じゃないにせよ 早いなぁ」
テンプスは集会所とタイムの城をつなぐ扉を細かく確認し 中で話し合うゼロとタイムの方へ近づく
テンプス「やはり壊されています また世界の狭間に入り込まれたようです」
ゼロ「そっか…タイムの城から来たわけではなさそうなら…まだ対策はできる」
ゼロはヒューゴの扉の方を見て 意を決したようで 扉に向かって歩き出す
テンプスはついていこうとしたが タイムに止められ 見送る形となった
ゼロを待つ3人は その間やることがないので 公安官室の中でうろうろしながら話し合っていた
ティナ「…今どうなってるんだろうな」
ピレリ「さぁな…ゼロが我々を逃すってことは何かしら脅威なんだろうが」
そこへ壁から前半分だけ出てきたゼロが彼らに手招きをする
いつになく暗い顔をしたゼロを見て 良い話を聞くことは難しいのだろうと思った彼らだが それでも 集会所へと戻ることになった
全員いつもの席に座り さらにテンプスがゼロとタイムの椅子の間の少し後ろ側で仁王立ちしている
テンプスはしかめっ面で タイムは難しい顔をしている
ゼロ「まず簡潔に さっき何が起こったのか…なんだけど…私たちは敵の襲撃にあった あの影みたいなのが敵」
ゼロはテーブルの上に人の形をした…先ほどの影のミニチュアを出す
ゼロ「…あの存在の名前は“バグ”…私たちの時代には不具合って意味合いでも使ってる やつらは不具合が現実化した存在」
影は形を変え 机の上に広がる どんどん机は黒くなっていく
ゼロ「この机が 物語の世界だとするならば バグが最終的に行うのは 世界を黒で塗りつぶすように消し去ること バグで黒く染まりきると キャラクターも 世界も存在できなくなる…そういう不具合を引き起こすのがやつら」
バグは元に戻り 机の上でぐにゃぐにゃと 一定の形にならないまま動き続ける
ゼロ「バグは想造者を狙う やつらは私たちがいなくなると 世界全てが失われることを知ってる …それ以上の目的を持ってる奴らもいるけど…」
机の上から影が消える
ピレリたちはその話を ずっと静かに聞いていた
ゼロの世界の話は いつも別世界の話になってしまい 理解するのが難しいことの方が多い
だが相手が何者だろうと ゼロの敵は 人間であるピレリたちからしてみれば 脅威でしかないはずだった
ゼロ「今回 この世界を狙っているバグたちは エターナルと名乗ってる 君たちがここへくるよりも前に一度襲撃されて それ以来防壁を張っていたんだけど…」
テンプス「それも完璧ではない 以前確認した時点では概ね問題はなかったが やはり時間の問題だった この物語は複数の世界を繋げているがゆえに 不安定でもある そこに入り込まれ こうした事態を引き起こす 奴らは想造者ですら負ける可能性がある」
本来 想造者はその力により 全てのキャラクターに負けることはない
しかし同じ想造者とバグだけは ある条件を満たすと 想造者に対し 死に至る攻撃ができるようになる 設定上勝利不可能な相手に 勝ててしまうのだ
ゼロ「条件は名前 バグたちは本当の名前を知らないと 相手に危害を加えられない 逆に知られてしまうと想造者ですら殺せちゃう…ってわけです」
公安官「……そのエターナルが 我々も狙うのか」
ゼロ「狙う時は 狙う 私の名前をバグたちは知らない でも殺そうとする 君らも狙う ただ 本名知らないと攻撃通らないけど……でも話の中で 名乗ってると知られる」
公安官「…なるほど なら私は本名を知られているのか」
ティナ「俺とゼロ以外は ダメじゃねぇか」
テンプスは大きく頷く
すでに話を飲み込んでいる公安官とテナルディエに対し ピレリはまだ戸惑っている様子だった
名前を知られると 化け物のような存在に殺されるかもしれない
この場所は 絶対の力で作られた 安全な場所では無くなった
ゼロ「君らの世界に入り込むことはできない 君らの世界には 一番強い力で防壁を作ってる でも訳あってタイムの世界との扉だけは完璧なものが作れない だから奴らはこことタイムの城にだけ入り込める 本当はこんなこと 二度と起こらないようにしたかったのに…脅威を排除しきれていない場所に 君らを集めてしまっていた 伝えていなかった 本当に 申し訳ない」
ゼロが落ち込んでいる 申し訳なさと 悔しさとが入り混じる表情で 立ち上がり 彼らにあたまをさげている
それを見て 3人は顔を見合わせ 話し合い始める
公安官「伝えていなかったことは問題だが…」
ティナ「ゼロとテンプスとタイムなら対応できるんだよな」
ピレリ「その防壁 以前から何年持ったんだ」
ゼロ「100年は…」
ピレリ「…お前としてはどうなんだ まだこれを続けるのか?」
ピレリがそう聞くと ゼロはゆっくりとだが頷いた
それを見て また3人は顔を見合わせる
ティナ「向こうにいる時 少しだが3人で話し合った アレがやばい敵だと仮定して その上で またこの場所に戻るのかを」
テンプス「そもそもまた来ることがありえるのか」
公安官「話を聞いて 思った なぜ君は我々を 危険があると知りながらここへ呼んだ?ただ友人になることが 我々の行く末を見ることだけが 本当に君の目的なのか?」
ゼロは少し下を向いて考え バッと顔をあげて 彼らの目を見る
ゼロ「…友人になりたいのも 君らの物語を見たいのも本心だよ でも危険だと知りながら世界を繋げた理由は 君ら同士を会わせることで 何か変化を生み出せると思ったから それ以上に…物語の世界を1つにしないといけない理由が……」
タイム「守るために 君たちをひとつの世界に集めている そのための場所のはずが 奴らの入り込める唯一の隙間にもなった ここは 本来…変わるための場所で 守られるための場所だった それだけは…確かだ」
ゼロが何かを話そうとして 詰まると タイムが話し始めた こういう場合 タイムが前のめりに話し出すことはあまりなかったが
前回のことを知っているであろうタイムがこの集会にきていたのもその変化のためなのか 理由のためなのか
ゼロ「世界を繋げて その繋がりを安定させる場所がここなんだ 全部の世界を 重ねないように繋げる 連結部分 この集会所に 君たちが来なくても 物語は問題なく進む でも…何かが変わると思う この場所なら…」
その思いは 何が根拠なのか わからない
ゼロの望みのために作られた世界 それを守るために世界を扉と道と壁で繋げた
バグのエターナル
名前を知られていれば 襲われる 死ぬかもしれない
ゼロ「君たちの世界は守る この世界も今度は守り切る 二度とあんなことが起きないように…だから もし…私を信用してくれるなら…友人でいて欲しい」
公安官「…次来る時まで 返事は待てるか」
ティナ「そうだな 今すぐは決められねぇ」
ピレリ「……私は別にいいが」
ゼロ「ピレリ…」
ピレリ「ただ私のことも信用して 隠してることを…話せるなら 今はお前を信用してやる」
テンプスは 3人の反応が思っていなかったものだったのか 焦ってタイムの席の後ろから
テンプス「やっぱりまだここに来る気なのか!?」
ティナ「なんだよ ゼロはそっちがいいって言ってるから 考えてやるって話だ」
テンプス「この世界にいるほど主が危険だというのに…!」
公安官「1番の反対派が身内にいるぞ」
ゼロ「どこにいたって私は狙われてるし…ここにいないと守れないんだよ…」
テンプスは今回のことでゼロが諦めたり 彼らが来なくなると思っていたのだろうが 当ては外れてしまった
テンプス「私はお前たち3人を守る気などない!私は想造者の守人だからな!タイムは死なれると困るから特別やっているだけだ!」
ピレリ「ゼロがやるって言ったから いらん」
ティナ「なんでお前は俺らが嫌いなんだよ」
テンプス「…世界の崩壊に巻き込まれても 想造者は死ぬからだ」
公安官「それを防ぐんだろ…?」
テンプス「エターナルは……いや とにかく そこまで手は回らない 最も守るべきは主とタイムだ」
集会をやめるか やめないか その答えは後日となり この場は解散となった
ゼロとタイム テンプスは残り 再び話し合い始める
タイム「全部話すのか?以前何があったか 想造者についても」
ゼロ「…彼らにしてみれば 関係のない話だから してもいいけど こっちの自己満足にしかならないよ それに 今のところ君の可能性が高いってだけだし」
テンプス「それより主 力を使いすぎでは?あまりに都合のいいキャラクターたちにして…あれでは力ありきになり この世界でしか彼らを留められない」
ゼロ「…そんなに使ってないよ 彼らは私に対して 少しは友人って思って接してくれてるし テナルディエは 私から何かしらの恩恵を期待してるんだろうし 今は この世界で彼らが穏やかでいられるように ほんの少しだけ 空気を変えてるだけじゃないか…」
タイムはため息をつく
想造者が世界を作らなければ 自分たちの今はないが それぞれが与えられた役割や 世界が作られた結果起こりうる一番の問題を 彼らがどう思うかまで 考えた上で作っているのか
ゼロ「どこからその自信が来るのかっていいたいの?」
タイム「お前が予想するなら 全て事実だろう」
ゼロ「私は本当に 君たちを…」
タイム「…」
ゼロ「君が私を友達だと思っていなくても…長い付き合いになるんだ だからお願いだよ タイム」
そう言ってゼロはその場から姿を消し テンプスも後を追うように姿を消す
タイムはため息をつき 立ち上がり 城へ戻って行った
その後すぐレ・ミゼラブルの扉が開く
誰もいない部屋の中を見て テナルディエがしまった という顔をしたが そのまま部屋の中へ入り 椅子に座る
ティナ「聞きそびれたことがあったんだがーゼロ?」
試しに呼びかけてみるが ゼロからの返事はない
しかし代わりに 別の場所から 返事がきた
その声に驚きながら声の方角を見ると そこにいたのは…
ティナ「…タイム?」
テナルディエは 慌てて立ち上がった
END
それは 3年目のこと
その日は5人で集まっており 去年長男が産まれたテナルディエの話だったり いつもと変わらないたわいない会話をして過ごしていた
去年全く来ない時期があったタイムも 今は逆に増えていた
しばらく話をしていると 扉を叩く音がする
それはタイムの城に繋がる両開きの扉から聞こえてきた
ゼロ「…呼ばれている時は 上の文字が青いはず」
文字は黒いまま 光ってはいなかった
しかし扉の向こうには 開けろと言わんばかりに叩き続ける誰かがいる 城の向こうにいる奴らが扉を叩くのは タイムを呼ぶ以外理由が見当たらなかった
用もないのに扉は叩かない
タイム「ウィルキンズではないな」
そのうち 扉を叩く音は強くなる
ゼロ「……開けられない のは まさか」
ドンッという大きな音のあと 扉がミシミシ音を立て続けている
全員 すでに立ち上がっており テーブルの物は ゼロが消していた
誰も扉から目を離せなかった
ゼロ「みんな扉に戻れ!!!」
ゼロがそう言った後すぐ 扉が激しい音を立てて 壊れはしなかったものの勢いよく開いた
その向こう側から 床や壁を這う真っ黒な影が植物の蔦のように伸び 部屋に入り込んできた
その光景に驚き初動が遅れてしまった
ピレリもテナルディエも 扉にたどり着く頃には取っ手に影が絡みつき 開かなくなっていた
唯一間に合ったのがギュスターヴだった ピレリ側から迫っていた影がまだ届いていなかった
2人の扉が開かない様子を見た彼は
公安官「こっちだ!」
そう言って 扉を開けた状態で2人を呼ぶ
一方でタイムの扉の前の2人は
タイムが王笏を懐から取り出し しゃがんで王笏の底で床を叩く そこから青い光の電流が左右に伸び 床から天井まで一周した
ゼロが想造の動作を行い 扉の向こう側を覆うように被さる影に向かって電気を放つ手のひらサイズの弾を投げつけた
タイムの作り出したラインを越えると 影の動きが鈍くなる これにより公安官の扉だけはなんとか間に合った
ゼロ「私が行くまで戻って来ないで!」
そう言うと 腕を大きく横にふる
すると ピレリが2人を呼ぼうとして開けたままの扉がピレリの体が押し込まれるように中へ入った後 バタンと閉まる
通路は静かで 先ほどの出来事の現実味のなさから 何が起こったのかの整理がつかない
2人の動きは迅速で 何が来るのかを知っているかのようだった
壁を抜けると 公安官室の中
主人が帰ってきたのに気づいて マキシミリアンが起きてやってきた
テナルディエとピレリにしてみれば 未来の世界に初めて足を踏み入れたわけだが こんな理由では来たくなかった
公安官「ゼロが来るまで 待つしかないのだろうか」
ティナ「状況が掴めねぇな あれはなんなんだ?」
仕方なく 彼はこの世界で待つことになった
今は駅の営業も終わり 誰もいない状態なので 彼らが見つかる心配はないが それにしても 何が起こったのか分からない
彼らが逃げ延びた後の集会所では今どうなっているのか
ゼロはタイムの城へ続く扉を塞ぐ影をついに吹き飛ばし そのまま扉の向こうへ走った
タイムの体を能力で引っ張り 彼と一緒に集会所を飛び出した
ゼロ「タイムも奥へ!」
タイム「いや このまま奴らを消し去るぞ」
ゼロ「でも危険だ 彼らは逃がせたけど 奴ら君の世界から来た可能性がある」
タイム「狭間に入り込まれたんじゃないのか」
影がどこから来たのか掴めない ゼロはタイムを守らなければならない
影は2人を追う ゼロは仕方なく叫んだ
ゼロ「テンプス・ホルロージュ・パンデュール!!」
その名前を呼ぶと 彼女の目の前にテンプスが現れた
テンプスは剣を持っており 足元に迫る影に突き刺した
剣を抜き 上に伸びる影を切り裂き なおも覆い被さろうとする影をバラバラにする
するとバラバラになった影が勢いよく元に戻り そのまま扉の方へ戻っていく
そして扉と集会所の間に入り込み消えた
テンプス「お怪我は!?」
ゼロ「無傷!速攻逃げたから…彼らもね」
タイム「いなくなったな…」
ゼロ「…ひとまずは大丈夫 かな」
ゼロは胸を撫で下ろし 再び集会所へ戻る
剣を納めたテンプスもその後に続く
タイム「彼らに説明しなくてはならなくなったな」
ゼロ「…どのみち完璧じゃないにせよ 早いなぁ」
テンプスは集会所とタイムの城をつなぐ扉を細かく確認し 中で話し合うゼロとタイムの方へ近づく
テンプス「やはり壊されています また世界の狭間に入り込まれたようです」
ゼロ「そっか…タイムの城から来たわけではなさそうなら…まだ対策はできる」
ゼロはヒューゴの扉の方を見て 意を決したようで 扉に向かって歩き出す
テンプスはついていこうとしたが タイムに止められ 見送る形となった
ゼロを待つ3人は その間やることがないので 公安官室の中でうろうろしながら話し合っていた
ティナ「…今どうなってるんだろうな」
ピレリ「さぁな…ゼロが我々を逃すってことは何かしら脅威なんだろうが」
そこへ壁から前半分だけ出てきたゼロが彼らに手招きをする
いつになく暗い顔をしたゼロを見て 良い話を聞くことは難しいのだろうと思った彼らだが それでも 集会所へと戻ることになった
全員いつもの席に座り さらにテンプスがゼロとタイムの椅子の間の少し後ろ側で仁王立ちしている
テンプスはしかめっ面で タイムは難しい顔をしている
ゼロ「まず簡潔に さっき何が起こったのか…なんだけど…私たちは敵の襲撃にあった あの影みたいなのが敵」
ゼロはテーブルの上に人の形をした…先ほどの影のミニチュアを出す
ゼロ「…あの存在の名前は“バグ”…私たちの時代には不具合って意味合いでも使ってる やつらは不具合が現実化した存在」
影は形を変え 机の上に広がる どんどん机は黒くなっていく
ゼロ「この机が 物語の世界だとするならば バグが最終的に行うのは 世界を黒で塗りつぶすように消し去ること バグで黒く染まりきると キャラクターも 世界も存在できなくなる…そういう不具合を引き起こすのがやつら」
バグは元に戻り 机の上でぐにゃぐにゃと 一定の形にならないまま動き続ける
ゼロ「バグは想造者を狙う やつらは私たちがいなくなると 世界全てが失われることを知ってる …それ以上の目的を持ってる奴らもいるけど…」
机の上から影が消える
ピレリたちはその話を ずっと静かに聞いていた
ゼロの世界の話は いつも別世界の話になってしまい 理解するのが難しいことの方が多い
だが相手が何者だろうと ゼロの敵は 人間であるピレリたちからしてみれば 脅威でしかないはずだった
ゼロ「今回 この世界を狙っているバグたちは エターナルと名乗ってる 君たちがここへくるよりも前に一度襲撃されて それ以来防壁を張っていたんだけど…」
テンプス「それも完璧ではない 以前確認した時点では概ね問題はなかったが やはり時間の問題だった この物語は複数の世界を繋げているがゆえに 不安定でもある そこに入り込まれ こうした事態を引き起こす 奴らは想造者ですら負ける可能性がある」
本来 想造者はその力により 全てのキャラクターに負けることはない
しかし同じ想造者とバグだけは ある条件を満たすと 想造者に対し 死に至る攻撃ができるようになる 設定上勝利不可能な相手に 勝ててしまうのだ
ゼロ「条件は名前 バグたちは本当の名前を知らないと 相手に危害を加えられない 逆に知られてしまうと想造者ですら殺せちゃう…ってわけです」
公安官「……そのエターナルが 我々も狙うのか」
ゼロ「狙う時は 狙う 私の名前をバグたちは知らない でも殺そうとする 君らも狙う ただ 本名知らないと攻撃通らないけど……でも話の中で 名乗ってると知られる」
公安官「…なるほど なら私は本名を知られているのか」
ティナ「俺とゼロ以外は ダメじゃねぇか」
テンプスは大きく頷く
すでに話を飲み込んでいる公安官とテナルディエに対し ピレリはまだ戸惑っている様子だった
名前を知られると 化け物のような存在に殺されるかもしれない
この場所は 絶対の力で作られた 安全な場所では無くなった
ゼロ「君らの世界に入り込むことはできない 君らの世界には 一番強い力で防壁を作ってる でも訳あってタイムの世界との扉だけは完璧なものが作れない だから奴らはこことタイムの城にだけ入り込める 本当はこんなこと 二度と起こらないようにしたかったのに…脅威を排除しきれていない場所に 君らを集めてしまっていた 伝えていなかった 本当に 申し訳ない」
ゼロが落ち込んでいる 申し訳なさと 悔しさとが入り混じる表情で 立ち上がり 彼らにあたまをさげている
それを見て 3人は顔を見合わせ 話し合い始める
公安官「伝えていなかったことは問題だが…」
ティナ「ゼロとテンプスとタイムなら対応できるんだよな」
ピレリ「その防壁 以前から何年持ったんだ」
ゼロ「100年は…」
ピレリ「…お前としてはどうなんだ まだこれを続けるのか?」
ピレリがそう聞くと ゼロはゆっくりとだが頷いた
それを見て また3人は顔を見合わせる
ティナ「向こうにいる時 少しだが3人で話し合った アレがやばい敵だと仮定して その上で またこの場所に戻るのかを」
テンプス「そもそもまた来ることがありえるのか」
公安官「話を聞いて 思った なぜ君は我々を 危険があると知りながらここへ呼んだ?ただ友人になることが 我々の行く末を見ることだけが 本当に君の目的なのか?」
ゼロは少し下を向いて考え バッと顔をあげて 彼らの目を見る
ゼロ「…友人になりたいのも 君らの物語を見たいのも本心だよ でも危険だと知りながら世界を繋げた理由は 君ら同士を会わせることで 何か変化を生み出せると思ったから それ以上に…物語の世界を1つにしないといけない理由が……」
タイム「守るために 君たちをひとつの世界に集めている そのための場所のはずが 奴らの入り込める唯一の隙間にもなった ここは 本来…変わるための場所で 守られるための場所だった それだけは…確かだ」
ゼロが何かを話そうとして 詰まると タイムが話し始めた こういう場合 タイムが前のめりに話し出すことはあまりなかったが
前回のことを知っているであろうタイムがこの集会にきていたのもその変化のためなのか 理由のためなのか
ゼロ「世界を繋げて その繋がりを安定させる場所がここなんだ 全部の世界を 重ねないように繋げる 連結部分 この集会所に 君たちが来なくても 物語は問題なく進む でも…何かが変わると思う この場所なら…」
その思いは 何が根拠なのか わからない
ゼロの望みのために作られた世界 それを守るために世界を扉と道と壁で繋げた
バグのエターナル
名前を知られていれば 襲われる 死ぬかもしれない
ゼロ「君たちの世界は守る この世界も今度は守り切る 二度とあんなことが起きないように…だから もし…私を信用してくれるなら…友人でいて欲しい」
公安官「…次来る時まで 返事は待てるか」
ティナ「そうだな 今すぐは決められねぇ」
ピレリ「……私は別にいいが」
ゼロ「ピレリ…」
ピレリ「ただ私のことも信用して 隠してることを…話せるなら 今はお前を信用してやる」
テンプスは 3人の反応が思っていなかったものだったのか 焦ってタイムの席の後ろから
テンプス「やっぱりまだここに来る気なのか!?」
ティナ「なんだよ ゼロはそっちがいいって言ってるから 考えてやるって話だ」
テンプス「この世界にいるほど主が危険だというのに…!」
公安官「1番の反対派が身内にいるぞ」
ゼロ「どこにいたって私は狙われてるし…ここにいないと守れないんだよ…」
テンプスは今回のことでゼロが諦めたり 彼らが来なくなると思っていたのだろうが 当ては外れてしまった
テンプス「私はお前たち3人を守る気などない!私は想造者の守人だからな!タイムは死なれると困るから特別やっているだけだ!」
ピレリ「ゼロがやるって言ったから いらん」
ティナ「なんでお前は俺らが嫌いなんだよ」
テンプス「…世界の崩壊に巻き込まれても 想造者は死ぬからだ」
公安官「それを防ぐんだろ…?」
テンプス「エターナルは……いや とにかく そこまで手は回らない 最も守るべきは主とタイムだ」
集会をやめるか やめないか その答えは後日となり この場は解散となった
ゼロとタイム テンプスは残り 再び話し合い始める
タイム「全部話すのか?以前何があったか 想造者についても」
ゼロ「…彼らにしてみれば 関係のない話だから してもいいけど こっちの自己満足にしかならないよ それに 今のところ君の可能性が高いってだけだし」
テンプス「それより主 力を使いすぎでは?あまりに都合のいいキャラクターたちにして…あれでは力ありきになり この世界でしか彼らを留められない」
ゼロ「…そんなに使ってないよ 彼らは私に対して 少しは友人って思って接してくれてるし テナルディエは 私から何かしらの恩恵を期待してるんだろうし 今は この世界で彼らが穏やかでいられるように ほんの少しだけ 空気を変えてるだけじゃないか…」
タイムはため息をつく
想造者が世界を作らなければ 自分たちの今はないが それぞれが与えられた役割や 世界が作られた結果起こりうる一番の問題を 彼らがどう思うかまで 考えた上で作っているのか
ゼロ「どこからその自信が来るのかっていいたいの?」
タイム「お前が予想するなら 全て事実だろう」
ゼロ「私は本当に 君たちを…」
タイム「…」
ゼロ「君が私を友達だと思っていなくても…長い付き合いになるんだ だからお願いだよ タイム」
そう言ってゼロはその場から姿を消し テンプスも後を追うように姿を消す
タイムはため息をつき 立ち上がり 城へ戻って行った
その後すぐレ・ミゼラブルの扉が開く
誰もいない部屋の中を見て テナルディエがしまった という顔をしたが そのまま部屋の中へ入り 椅子に座る
ティナ「聞きそびれたことがあったんだがーゼロ?」
試しに呼びかけてみるが ゼロからの返事はない
しかし代わりに 別の場所から 返事がきた
その声に驚きながら声の方角を見ると そこにいたのは…
ティナ「…タイム?」
テナルディエは 慌てて立ち上がった
END