短編

壁の向こうへ

テナルディエと再会した日のこと

ティナ「それで…お前たちのことも聞きたい」
デイビー「今はトビーと2人でリドルフォの店で働いてる」
トビー「まだまだ修行中です…知ってる方とは再会できました」
ダステ「私は同じ仕事をしている 私もリゼットたちとは会えた」
ティナ「…誰もゼロには会ってないのか」

それを言われて初めて 彼女の元へ行く方法を探していないことに気づいた
まずはテナルディエと思ったのもあるが そういえばゼロやタイムは元気にしているだろうか

デイビー「あの2人に会うには…壁…だよな」
トビー「でも僕らの世界は…物語が無かった世界線ですし…」
ダステ「壁が繋がっていた場所は無い 連絡手段はもちろん無い」
ティナ「ゼロが俺たちの聴覚にかけてた翻訳の魔法みたいなのもは残ってるのが妙だ」

それを聞いてデイビーが気づく
当たり前すぎてなんとも思ってはいなかったが 彼らに英語が通じている
彼らが合わせて話しているわけではないのか

ティナ「別に英語は話せるが 今は普通フランス語」
デイビー「俺たちの間しか有効じゃないってことなのか?」
ティナ「そうみたいだな 叔父さんの仕事についてっていくつか他の国に行ったがその時は効果がなかった」
トビー「…ってことは ですよね」

テナルディエは頷く
ギュスターヴもわかっているようだったが そのことを知らないデイビーはとりあえずまた知らない話らしいと諦めモードに入っている

ティナ「壁の場所を変える力は 国を出たら使えなくなるってことで 結局取られることはなかった 耳のコレが残ってるなら…」

部屋の壁に目線を向ける4人は立ち上がり テナルディエが真ん中に立って 一度深呼吸した後手を伸ばす
この壁は あの場所に通じると信じて 触れれば変わる

白い壁に手は飲み込まれる そこに何も無いかのように

手を引いてお互い顔を見合わせる 驚きと喜び 道は繋がった
向こうはどのくらい時間が経っているだろうか もう集会は行われてはいないだろうが 城へ行けばタイムはいるはずだ


扉を開ける そこにはゼロとタイムがいた


ゼロ「色々テンプスに調べてもらったけど 君らの血筋自体は続いてて…でも過去だけ変わって…なんかややこしいけど 君らの過去は存在しているけど 物語の中のことは起きなかった過去になってるっぽいのかな」
ティナ「違う人生だったってことか?」
ゼロ「世界が分かれないまま君ら全員がOWSの世界に生まれた世界線 もちろんバラバラの時代に それでいてタイムの世界に変化はない…もしかしてアリスの世界に統一されたのかな…」

色々わからないことだらけだが とにかくダステの子供だったりピレリの子供たちの家がそのまま続いて その家に彼らが生まれ…
テナルディエの場合彼の叔父の家が続き コリンズの場合アイルランドの方にいたパトリックの親戚の家が続き ラッグはトビーの父親に兄弟がいたのかもしれない
他にも色々…とにかく近かったり遠かったりと親戚はいるもので 巡り巡り同じ町で彼らが生まれるに至り 同じ名前を持って今ここにいる

ゼロ「私がわずかでも想造したから 全てこの瞬間のために運命の力が働きまくったかも…」
タイム「…アンダーランドもか?」
ゼロ「アリスもかな」
ティナ「なんて名前なんだ?運がよけりゃ有名人かもしれないぜ」
ゼロ「アリス・キングスレー…」

テナルディエが少し考える テナルディエ家はオドューラホテルの創業者一族で彼の親族には有名人も多く 彼自身かなり顔が広い

ティナ「父親の名前はチャールズか?」
ゼロ「そ…そう 知ってるの?」
ティナ「1人娘がいて キングスレーで 俺が会ってるっていう偶然があるのは…彼だけだな 貿易会社やってる」
ゼロ「貿易!多分合ってる ってことはアンダーランドも…」

しかし同じ家に戻ってくるなら タイムとすでに交流があっておかしくない

タイム「…しかし王女の名前はエリザベスとミラーナだからな」
ゼロ「ミラーナいるじゃん!!?」
タイム「ミラーナはいるぞ 記憶があるかは知らない」
ゼロ「確かイラスベスって名前は赤の女王の名前だから王家の子には絶対つけないんだよね」
タイム「まぁそうだな」
ゼロ「会ったことないの?」
タイム「まだ無い 成人するまでは…」
ゼロ「えーっとエリザベスってイラスベスの名前の…」

怒りっぽいという意味の“irascible”とエリザベスを合わせたイラスベス つまり運命は元になったエリザベスという名前がつけられるように動いた

タイム「…本当か?」
ゼロ「名前が違うんじゃわかりづらいかもしれないけど…」
タイム「オレロンとエルズメアと話していたんだ 産まれてくる子はあの子たちだろうかと」
ゼロ「そうじゃん君その2人とも知り合いじゃんか!」
タイム「…もし記憶が戻ったとして 彼女はどう思うのだろうか」
ゼロ「そこはわからないよ…変わってしまった原因は無いし 王位継承者の問題もない…」


デイビーとテナルディエは現在 出てきた名前が分からないのですっかり蚊帳の外だが テナルディエがこれがお前の感じていたものかとデイビーに理解を示していた


ゼロ「…まぁ記憶戻るか待ってみるしかないか」


ゼロはデイビーとテナルディエの方へ向き直す

ゼロ「で えっと ピレリとティナは知らない部分もあるよね」
デイビー「今はデイビー・コリンズ…」
ゼロ「あっごめん デイビーとテオドールか」
ティナ「俺はどっちでもいい」

ゼロが簡潔に彼らの知らない話をする
集会所に流れた長い年月 別れの時 今までは彼女は別の物語の修復に奮闘し タイムは変わらない日々を送っていたこと…

ダステ「そういえば 君の国 なんて名前だったか…」
ゼロ「日本だよ」
トビー「僕ちょっとだけ日本語知ってます!日本のアニメ好きです!」
ゼロ「ほんと!?」
デイビー「やたら日本に興味あると思ったら…ゼロの母国だったのか」
ティナ「うちのホテルは日本にもあるぞ」
ゼロ「私の世界には無いホテルだもんな…気になる…」

テナルディエがスマホを取り出し 写真を見せる

ゼロ「スマホ持ってる!!!」
ティナ「…持ってちゃ悪いか」
ゼロ「私と同じ時代なのより強く実感した!携帯吹っ飛ばしてスマホ持ってる君らを目の前にするなんて!!」

前世の記憶があるとはいえ現代に生きているので 以前無かったものだろうと別に驚きもせず使ってはいる
逆に想造者になって以来 自身はそういったものを使わなくなったゼロは懐かしさ込みで写真ではなくスマホを見ている

ゼロ「知らない会社のスマホだ…異世界を感じる…時代が合ったら逆に異世界みを増してしまった…」
ティナ「そこはお前の想造次第だろ」

そのあとは誰と再会したかという話が続く リゼットをここへ呼んでもいいか という話にもなり 約束をする
今後全ての扉を彼らに一番都合がいい場所に繋げることに決まり この場所のことを知るリドルフォも含め また集まろうかと決まった


城へ戻ったタイムが 150年以上前のように どこか嬉しそうであったため ウィルキンズは質問した

ウィル「扉の先で何かありましたか?」
タイム「あぁウィルキンズ イラスベスとミラーナが戻ってきたかもしれない」
ウィル「オレロン様とエルズメア様以外にも 戻ってくるということですか?」
タイム「時計を調べてみよう 知っている名前がたくさんあるだろうな」


END
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