短編
パリで再会する彼ら
その日 理髪師のデイビー・コリンズはトビーを連れてモンパルナス駅に来ていた
駅で人気のベーカリーに行きたいというトビーの頼みで 店に出ない日にやってきた
満足げにパンの袋を抱えるトビー
その横で デイビーは70年近く前のモンパルナス駅の景色を思い起こす
物心ついた頃から 彼には 以前の自身の記憶があった
壁の中の友人たちとの数年間の記憶 アドルフォ・ピレリとしての人生…
駅の中を眺めていると 鉄道公安官を見つけた
青い服は健在で あの頃ほど明るい青ではないものの ギュスターヴの姿を思い出す
すると じっと見すぎたのか 公安官がまっすぐこちらにむかってくる
デイビー「(な…なんだ…?)」
どんどん近づいてくる公安官は なぜかこちらを睨みつけている 怖い顔をした男は デイビーと同じくらい背が高く 思わずトビーを自分の後ろに隠すようにしてしまう
「…ピレリ?」
近づいてきた公安官は 深く被っていた帽子を少し上げて デイビーの顔をよく見た上で 小さめの声で尋ねた
デイビー「…ダステ?」
同じ姿をした 鉄道公安官
昔と違うのは 髭のない顔 笑顔
それでも 彼はどうやらギュスターヴだった
ダステ「やっぱりピレリか!」
デイビー「まさか ダステ…いや なんでだ!?」
ダステ「それはこちらのセリフだが…ゼロが何かやったのかもしれないな」
トビー「ギュスターヴ・ダステさん?」
話をするデイビーの後ろから トビーが顔を出す
目の前にいるのがギュスターヴだとわかると 満面の笑みを浮かべ パンの袋を側のベンチの上に置き ギュスターヴに抱きついた
ダステ「トビーか!?」
トビー「ギュスターヴ!まさか会えるなんて!嬉しいです!」
ダステ「私もだ…!」
ここ2人 ここまでの仲だったか?とデイビーは首を傾げる
出会って6年でいなくなってしまったのだから その後に集会所で起きていた出来事を知らないのは当たり前だった
トビー「今でも鉄道公安官なんですね…他の人は?」
ダステ「レナルドや…あとはフュベールにも 会えたよ 他にもな」
トビー「良かったです…!」
デイビー「…なんだか俺より詳しいな」
トビー「え いえ その…だってあなたがいなくなってから 何十年も付き合いが…」
デイビー「何十年!?」
トビーとギュスターヴに関しては 集会所での交流がトビーが来られなくなるようになるまでの間 ずっと続けられていた ギュスターヴの最後の日より前に トビーは壁の中にほとんど入らなくなっていたが それでも 何かしら節目には2人に会い
そして ギュスターヴとの約束が果たされるより前に ゼロとタイムにも会いに行けなくなっていた
ダステ「ピレリは6年…ぐらいだよな」
デイビー「6年か…」
ダステ「テナルディエで15年近くだったから まぁ 知らないことがあるのは 仕方がないな」
デイビー「……あと デイビー・コリンズ…だからな」
ダステが その名前を聞いて そういえば と思い出したような表情になる デイビーからすると それも知っているのか という気持ちだった
ダステ「そうか 今は本名の方か」
デイビー「話した記憶はないが…」
ダステ「君の過去なら トビーとゼロから聞いている リドルフォの話も含めて」
デイビー「…え 全部か?」
ダステ「……まぁ ほとんど」
デイビーがベンチで項垂れているのをよそに トビーとダステは思い出話に花を咲かせていた
そろそろ戻らないと と言い ダステは帽子をとって彼らに別れの挨拶をしようとした
トビー「あっ ギュスターヴ!今はどこに住んでいるんですか?僕たち リュクサンブール公園の方で店をやっているリドルフォのところにいるんです」
ダステ「駅の側だ 5分くらい行ったところに…」
トビー「連絡先を…」
ギュスターヴはトビーに連絡先を教え その後3人は別れた
こうして突然の再会の時間は終わった
END
その日 理髪師のデイビー・コリンズはトビーを連れてモンパルナス駅に来ていた
駅で人気のベーカリーに行きたいというトビーの頼みで 店に出ない日にやってきた
満足げにパンの袋を抱えるトビー
その横で デイビーは70年近く前のモンパルナス駅の景色を思い起こす
物心ついた頃から 彼には 以前の自身の記憶があった
壁の中の友人たちとの数年間の記憶 アドルフォ・ピレリとしての人生…
駅の中を眺めていると 鉄道公安官を見つけた
青い服は健在で あの頃ほど明るい青ではないものの ギュスターヴの姿を思い出す
すると じっと見すぎたのか 公安官がまっすぐこちらにむかってくる
デイビー「(な…なんだ…?)」
どんどん近づいてくる公安官は なぜかこちらを睨みつけている 怖い顔をした男は デイビーと同じくらい背が高く 思わずトビーを自分の後ろに隠すようにしてしまう
「…ピレリ?」
近づいてきた公安官は 深く被っていた帽子を少し上げて デイビーの顔をよく見た上で 小さめの声で尋ねた
デイビー「…ダステ?」
同じ姿をした 鉄道公安官
昔と違うのは 髭のない顔 笑顔
それでも 彼はどうやらギュスターヴだった
ダステ「やっぱりピレリか!」
デイビー「まさか ダステ…いや なんでだ!?」
ダステ「それはこちらのセリフだが…ゼロが何かやったのかもしれないな」
トビー「ギュスターヴ・ダステさん?」
話をするデイビーの後ろから トビーが顔を出す
目の前にいるのがギュスターヴだとわかると 満面の笑みを浮かべ パンの袋を側のベンチの上に置き ギュスターヴに抱きついた
ダステ「トビーか!?」
トビー「ギュスターヴ!まさか会えるなんて!嬉しいです!」
ダステ「私もだ…!」
ここ2人 ここまでの仲だったか?とデイビーは首を傾げる
出会って6年でいなくなってしまったのだから その後に集会所で起きていた出来事を知らないのは当たり前だった
トビー「今でも鉄道公安官なんですね…他の人は?」
ダステ「レナルドや…あとはフュベールにも 会えたよ 他にもな」
トビー「良かったです…!」
デイビー「…なんだか俺より詳しいな」
トビー「え いえ その…だってあなたがいなくなってから 何十年も付き合いが…」
デイビー「何十年!?」
トビーとギュスターヴに関しては 集会所での交流がトビーが来られなくなるようになるまでの間 ずっと続けられていた ギュスターヴの最後の日より前に トビーは壁の中にほとんど入らなくなっていたが それでも 何かしら節目には2人に会い
そして ギュスターヴとの約束が果たされるより前に ゼロとタイムにも会いに行けなくなっていた
ダステ「ピレリは6年…ぐらいだよな」
デイビー「6年か…」
ダステ「テナルディエで15年近くだったから まぁ 知らないことがあるのは 仕方がないな」
デイビー「……あと デイビー・コリンズ…だからな」
ダステが その名前を聞いて そういえば と思い出したような表情になる デイビーからすると それも知っているのか という気持ちだった
ダステ「そうか 今は本名の方か」
デイビー「話した記憶はないが…」
ダステ「君の過去なら トビーとゼロから聞いている リドルフォの話も含めて」
デイビー「…え 全部か?」
ダステ「……まぁ ほとんど」
デイビーがベンチで項垂れているのをよそに トビーとダステは思い出話に花を咲かせていた
そろそろ戻らないと と言い ダステは帽子をとって彼らに別れの挨拶をしようとした
トビー「あっ ギュスターヴ!今はどこに住んでいるんですか?僕たち リュクサンブール公園の方で店をやっているリドルフォのところにいるんです」
ダステ「駅の側だ 5分くらい行ったところに…」
トビー「連絡先を…」
ギュスターヴはトビーに連絡先を教え その後3人は別れた
こうして突然の再会の時間は終わった
END