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第一章 出会い そして

伐木の契り

出会いから2年
夏頃の出来事

いつも通り集まっていた彼らは ふと ある時のことを思い出していた

ピレリ「そういえば 最初に言っていた“仮”の友人の仮 取れたか?」
ティナ「どーでもいい」
ゼロ「うっ…なぜ……仮の友人から友人になれてるって思ってくれるなら 私としては嬉しいよ?何を基準に…そう言えるかはわからないけど」

仮の友人であった彼らは 友人のようになってはいたが そもそも明確に友人と呼べる関係になる瞬間など あるのだろうか

公安官「なら 今日から仮の無い友人でいいだろう」
ゼロ「そ…そう思ってくれる?」
タイム「好きにしろ」
ティナ「そうそう」
ゼロ「うぅん……別に ピレリとダステがそう思ってくれればいい…ですけど」
ティナ「思ってないとは言ってない」

なんなんだもう とゼロがムスッとした顔を見せると ピレリが何かを思い出し ゼロに

ピレリ「ゼロ グラス人数分と いつもの酒を出してくれ」

と頼んだ
この場にいる者の中で 酒を飲むのは人間3人だけだ 話の流れの中でなぜ急に…と思いつつも すぐにロックグラスを5つ出し ジンも置いた

ゼロ「はいどーぞ」

そう良いながら グラスに綺麗な丸の氷を出現させ 瓶を宙に浮かせた後 3人分注いだ

ピレリ「2人の分も 少しでいいから 注いでくれ」
ゼロ「私飲まないよ…」
ピレリ「仮の友人から変わる 区切りをつくるんだぞ」

そう言われ ゼロはひとまず自分とタイムのグラスにも一口分注いだ
それを見たピレリは グラスを持ち上げ 全員の方を見る

ピレリ「私が子供の頃 父と友人たちがやっていたことなんだが…一つのテーブルを囲み 同じ酒を注いだグラスを掲げ 彼らは永遠の友情を誓っていた 今思えばみんな酔っていたんだろうが 私はそんな友人同士の父たちに憧れた」

どうやらピレリは 今からそれをやろうとしているらしい
ゼロはわくわくしながら グラスを手に取った

ピレリ「親しい友になるのなら 私が憧れた…この乾杯をしたい 今まで何度かやったけどな それでもこれは 特別だ」
ゼロ「親友に なろうって宣言だね…?」

ピレリがやりたがり ゼロが乗り気だ
酔っ払いの行動ならともかく 素面でやるのかとテナルディエは思ったが 公安官もタイムも反対せずに 何も言わずにグラスを掲げている中で 反対してこの時間を長引かせるのも面倒だと考え あくまで乗り気でない顔だけ見せて 掲げた

ゼロ「私たちの永遠の友情に…乾杯!最高の友人でいよう!」

4人より腕の短いゼロは机に手をつき 前のめりに彼らのグラスに近づけた 彼女の言葉に応え彼らは声を合わせ乾杯と言った
威勢よくグラスをカチンッと音を鳴らし ゼロは満足気に一口飲んだ



…数日後


集会所にはゼロとトビーの姿があった
彼は毎回ピレリに許可を取り 絶対にピレリが来ない日にやってきていた

つまり今日も ピレリは集会所にはこないし トビーに与える仕事もないというわけだった

トビー「ゼロさんは 僕らのことをなんでも知っているんだよね」
ゼロ「なんでもってわけでもないけど ある程度 元の話の知識はね」
トビー「じゃあ………っ!」

それを聞いて トビーは何か言いかけたが グッと言葉を押し込んで 黙ってしまう
ピレリの席に座る彼の前には 紅茶が置かれ まだ暖かいので 湯気が立っている

同じ紅茶を飲むゼロは手に持っていたカップを置き 彼が何か言うのを待っていた

口をぎゅっと閉じ ずっと悩んでいる
何かを聞きたいのだろう それはわかる
聞くのが恐ろしいのだろうか 未来のことが聞きたいのかもしれない

トビー「ピレリさんのことも よく知って…いる?」
ゼロ「知っているとも 2年の付き合いで よりね」
トビー「2年より前でも?」
ゼロ「うん まぁ少しは……何か知りたいの?あいつの過去を」

トビーはゆっくりだが 頷いた
ピレリからは何も聞いていないのだろう 彼自身のことを 彼の今までの人生を…知る必要がないと思われているから 何より知られたくないだろうから

トビー「なんで僕を孤児院から引き取ったか 知ってる?」

ゼロは答えない 答えに詰まるというより 疑問に対して驚いている
それが 聞きたいことなのかと

ゼロ「手伝いが欲しかったってだけじゃ…」
トビー「誰かを雇うより お金がかかりそうなのに…ですか?」
ゼロ「……あぁ そういうもんなの?」

トビーはピレリと出会ってからのことを思い出していた

ピレリはそもそも1人の育ち盛りを養えるほどの財力があるわけではなく ギリギリ食べていけるかいけないかになっており 店に客は来るが 手伝いが必要だとは思えないほどの人数で わざわざ孤児を助手につける必要性がないほど 彼自身の手際も良かった

店こそ無償で譲り受けたものではあるが 看板の名前を変える余裕もなく 商売道具にもお金がかかって仕方ない日々

ただ眠れない夜のための酒だけは切らせず
食事は同じものを与えられ
それでも時折 殴られるし蹴飛ばされる

機嫌が悪くなる理由が わかる時もあれば 全く意味がわからないこともある
選んで引き取ったのに 顔を見ると何がそんなに憎いのかと思うような表情をされる時がある

それなのに 過去一度逃げ出した時には 雨の中傘もささずに慌てて探しに来る
嫌っているのに 追い出さない 孤児院へ戻さない なぜか 一緒に酒も飲むし その時には何も言ってこない

普段仕事の話以外をしてこない 関わりがあるのは 機嫌が悪い時だけ

意味が わからない

引き取った理由がわからない

生活が苦しくなることはわかっていただろうに 孤児院から引き取った子供を 必要でもない助手にさせ その上嫌っている

何か他の理由があるのではないかと考えたが メリットがあるような理由が見当たらなかった

かといって聞けない
何も知らない頃に聞いた理由が“助手が必要だったから” 今となっては本当なのかわからない

トビー「だから 教えて欲しいです 知っているなら…」
ゼロ「…知っている けどそれを教えたら きっとピレリは2度とここにはこなくなる」
トビー「ピレリさんには絶対に知っているとバレないように接します だから…」

関係がわからないまま過ごすのは苦痛だった
何が目的何かがわからないのは恐怖でしかない
必死に頼むトビーだが ゼロは首を縦に振らない

ゼロ「私の役割じゃない これは ピレリが言うべきことだから」
トビー「…別の理由では あるんですよね」
ゼロ「私が知っていると思っているものはね」

トビーは口を閉じる 考えても 答えはいつも出てこない 別の理由があるとわかっても その理由が酷く恐ろしいものかもしれない

トビー「…今日聞かれたことを ピレリさんに言いますか?」
ゼロ「隠し事は 極力しない約束をしてるからね」
トビー「…構いませんけど あの人は なんて言うんでしょう」


結局 トビーの疑問は晴れないままだった
ゼロは扉の向こうへ帰っていくトビーを見送り ため息をつく

ピレリの理由
それを彼が伝える時が果たして来るのかはわからない

ゼロ「…展開的にどうなんだかなぁ」


2年の時を過ごし 友人となった彼らの今後が 果たしてどうなっていくのか
想造者は全て知っているのだろうか

彼女すらわかりえない 何かが 存在してしまうのか


次にピレリが来た時 彼はいつもしてくる質問をした

ピレリ「何か聞かれたか」
ゼロ「あぁそうそう 今回は初めて君に関して質問されてさ」
ピレリ「っ何をだ」
ゼロ「まず言わせてよ 何も教えてないからね?」

ピレリは頷き 早く話せと催促する
焦る気持ちはわからなくもないが もう少し隠して欲しいし落ち着いて欲しい

ゼロが席を指差し座らせると ピレリは不安そうな顔をしたまま 感情を隠そうともしなかった

ゼロ「何も教えてないってば 引き取った理由を聞かれただけだし」
ピレリ「引き取った理由…?」
ゼロ「そう 君にメリットがないように思えたから 聞かれたんだと思うけど」




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