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第六章 タイム

ウィッツエンド

ジャバウォッキー復活後危機に陥ったウィッツエンドだったがレイ王がタイムに助けを求めたことで国にたどり着かれることもなく 平穏を取り戻していた

レイ王の後の王や女王たちもタイムとの約束を守り それ以上に彼との交流を楽しんでいた

そして60年以上の時が流れた頃…

祝福の鐘が鳴る
時を見る機械を止め 足早に生者の部屋へ向かう

ウィッツエンドの王と妃の間の子が生まれる日だった
タイムは生者の部屋の扉を押し中へ入る 一番先端に降りた時計は 他の命の時計と同じ輝きを持っていた
時計の上でかざした手のひらを回す 動き始めた時計は同じ1秒を正しく刻む

タイム「…エルズメア」

祝福と愛情を込めて名を呼ぶと 鎖はゆっくりと上へ昇り他の時計たちの中へと入っていく
この瞬間に間に合ってよかった そう思いながら振り向き部屋を出る

ウィッツエンド王家に生まれた子は6歳になるとタイムへの謁見が許され初めて彼の前に立つ
それ以前からタイムと王家の関係や歴史はお話として聞いていても幼い子からしてみれば普段他人に畏れられるようにと自身を演出している彼を目にすれば怖いと思う
しかし王家の子として例え彼の見た目が恐ろしくとも応対しなくてはならない だが少しすれば彼がどのような人物であるか 子にはわかった

高くそびえたつ斜塔 巨大な歯車などで構成された城内の機構 万物の大時計 時間の庭園
自然豊かなウィッツエンドには無い雰囲気に初めて触れ 子供たちは興味津々で城の中を探検したがる
ただ底も見えない場所にある通路ですら低い柵しかないような城内なので常にウィルキンズがついて子供たちの冒険に付き合うことが多かった

エルズメア「その後オレロンは私に言ったの!」
タイム「あぁ」
エルズメア「体を大きくするケーキと小さくする薬 どっちもドリンクなら保存が楽なのに!って」

しばらくしてその冒険にも飽きると 城内を歩くタイムの早い足取りにも負けずについてきてあれこれ聞いたり 自分の話をひたすらしたりするようになってくる

学校に通うようになったらしいエルズメアは毎日あれを習ったとか友達とこんな話をしたとか それをタイムに報告しにくる

エルズメア「でもアッペルスヘンには長持ちさせるための材料を入れるから大丈夫だろうし…」
タイム「小さくなった時 開けられるピッシュサルヴァーの瓶が作れないな」
エルズメア「ケーキはある程度小さくなってもかじれるけど瓶って難しいわって言ったの」

蝋燭の暖かな光がある部屋はいくつかあるがエルズメアは大体ダイニングキッチンにいた
前のタイムが料理好きの王妃のために作った部屋らしいがタイムはここ数十年使ったことはなかった

エルズメアに言われて部屋を開けたはいいものの彼女は今料理より薬の調合に夢中になっている
ダイニングテーブルの上にはいくつもの瓶が並べられていて他にも死人のコインやバターフィンガーを引っ張り出している
料理の材料ではなく薬の材料が広げられ 調合用の道具も調理台にしっかり並べてある

タイム「それであと何杯作る予定なんだ?」
エルズメア「これで最後!絶対完璧よ」

勉強熱心なのは感心するが分厚い本を広げながら調理台で薬の調合をされると何十年と食事をした記憶がなくても なんとなく控えてほしいしと感じる

本日七度目の調合が始まり 慎重に材料を入れるエルズメアを見守る
病弱な子だったが いつの間にこんなに元気になったのか とても喜ばしいことだ


エルズメアとオレロンの婚約を知らされた時 彼女は王位をオレロンに譲るつもりだということもタイムに話した
ウィッツエンド王家は基本王の長男長女が継ぐこととなっているが王もしくは女王の判断でより相応しい者へ王位を渡すことも長い歴史の中では無い話ではなかった
エルズメアは結婚の前にそれを民に告げ 民もそれに納得し オレロンは王位継承することとなった

彼らと過ごす時間が タイムにとって煩わしい毎日の役割に対する考え方を変えていった
クロノスフィアや大時計を…時間を守ることは アンダーランドの民を守ることにつながる
彼にとっての良き友たち そして友のとって大切な全てを 彼は守っているのだと思えるようになった

ゼロ「ヴォーパルの剣もオラキュラムも君?そうなんだ」

全てを知るようで知らない彼女は再び同じ場所に部屋を作り直し扉を用意し あとは時を待つばかりになった
友たちの世界は戻した状態から修復してまた時を進めたり 来るべき時まで何も動かさなかった


時が流れる ウィッツエンドは他とは違い小さな国だったが それでも豊かで美しい国だった

2台の柱時計は城内に安置され 約束通り今でもタイムやクロノスフィアなどに関して伝説として語られ 今日もまた王家の子たちに受け継がれようとしていた

オレロンとエルズメアの娘 イラスベスとミラーナはフェルの日の事故が起こるまではまだ良い姉妹であったはずだった

エルズメア「いくつか記憶が…失われたようなの あなたのことは何も覚えていなくて 話をすると頭が痛むらしくて だからここには連れて来られないの ごめんなさい…でも約束は…ちゃんとお話として伝えるわ それに王位継承の前にもう一度あなたと会わせる ミラーナにも伝えておきます だから今は…」

娘が大怪我を負い 大きくなってしまった頭は元に戻す術がない その状況の中でも エルズメアはタイムに説明をするため城を訪れた
姉妹が彼と過ごした後の夜だった 彼は姉妹を大切にしていてくれたことをエルズメアは知っている

タイム「あぁ見ていた 偶然だが…」

事故の瞬間をよく知っていたのでエルズメアやミラーナにはきちんと説明をした
エルズメアは理解し頷き ミラーナは服をぎゅっと掴み 震える声で小さく返事をした後しばらく城へ来なくなった

姉妹の仲が元に戻ることはなかった イラスベスとミラーナだけが知るあの日の嘘 それが事故の原因になったためにミラーナは酷く罪悪感を抱いていた
しかし本当のことが言えないまま何年も過ぎ その間イラスベスはミラーナに対する怒りや憎しみを膨らませていた

オレロンとエルズメアだけがタイムとの交流を続けた

ミラーナはタイムが全て知った上で隠してくれているのだと勘違いしていた だからこそ彼の前に立つのが怖かった
王位継承者であるイラスベスがタイムとの交流を行わないのは約束を破る形となる タイムはイラスベスが城へ来なくなったことを寂しがっていると彼女は思っていた
その原因を作ったことがバレてしまうのが怖かった

トゥーマリーの日 イラスベスの言動に失望したオレロンはついに限界を迎え 王位継承者をミラーナに変えた
だが姉が変わった原因は 人々に笑い物にされる原因は その大きな頭 ミラーナの嘘が原因の数年前の事故
それらが両親や民に知られるのが恐ろしかった

タイムはあの事故以来時を見る機械は使っていなかったがそれでもミラーナにとってタイムは恐れを抱く存在になっていた
イラスベスは何も知らず避け ミラーナは知りながら避けた
オレロンとエルズメアはミラーナを何度か説得したが 結局彼女は王位継承の日まで城には行かなかった

タイムはただミラーナが姉との幸せな思い出の残るこの場所を悲しみから避けているのだと思っていたので 無理に訪れる必要は無いのだと伝えてはいた

直接は会わずともオレロンもエルズメアも時間の水を通して彼と話すことができた
昔から知る友と思い出話をするのも楽しく…そして…

アリスが初めてアンダーランドに落ちてきた年

タイムは集会所のある部屋へ向かい歩いていた

1月18日

扉の前にゼロが立っている
彼らはすでに壁の中へ引き込まれている

2人にとっては再会
3人にとっては出会い

その日がやってきた

出会いから3年の時が経った頃
エルズメアが病に侵され どの調合の薬も効果は見られず 手の施しようがなく 時間はただ過ぎていた

集会所が最初の襲撃にあった後 エルズメアの容態は悪化していた

タイム「…やはり治らないのか?そうか……諦めるな やれるだけのことはやるんだ……時計はまだ城だろう だから……」

オレロンを励ますが エルズメアの苦しみを取り除けない自身に責任を感じていた
一番辛いのは彼女だろうが オレロンもまた苦しんでいた


半年後

タイムは大時計の点検を行なっているウィルキンズたちの様子を見るため 城内を歩いていた

そこへゼロが現れた
彼女は何か言う前に 忙しいとタイムに言われてしまったため 大時計へ向かう彼の後ろについていき 用事が終わるのを待つことにした

すると 城内に低い鐘の音が一回鳴り響いた

ゼロ「この音…」

タイムはすぐさま方向転換し 生者と死者の部屋がある方向へ向かった
先ほど聞こえた音は 弔いの鐘だった

ゼロは手前までついてきていたが 何か感じたのか 手前で止まり 部屋へ向かうタイムを見送る
その反応で 彼はより不安になった

目を閉じ 止まった時計を探す
ゆっくりと目を開き その時計がある方向を見る

タイム「…エルズメア」

ウィッツエンドの城の中
エルズメアが眠るベッドの側にはオレロンとミラーナがいた イラスベスの姿は無い
少し前に彼女の容体に異変が起き 一晩中側に付き添っていた 今は落ち着いて眠っていた

ゆっくりとエルズメアの目が開く
苦しみが取り除かれた穏やかな表情のまま オレロンとミラーナを見る

エルズメア「…誰か私の手を握っている?」
オレロン「いや 私もミラーナも…今はしていない」

オレロンが彼女の手に触れ ミラーナは握った
エルズメアはそれで理解して 悲しそうに微笑んだ

エルズメア「……あなたなのね…タイム」

その言葉に驚き オレロンもミラーナのように彼女の手を強く握る
それが気のせいであって欲しいと心で強く願う


彼女の時計からはまだ鼓動が聞こえる
彼女の時計の針はすでに止まっている
彼女の命の時計が閉じた時 彼女の目も閉じる 永遠に

何も戸惑うことはない 躊躇することもない 今までも 他のアンダーランド人同様 王家の人々の時計を閉じてきた
それがタイムの役目 閉じられるべき時に この蓋は閉まる 針の止まった時計は 役割を果たせない

だがエルズメアやオレロンたちは特別だった
ほんの数代の王たちしか見ていないが 今までで最も良い王と王妃だと思っていた
何より良き友人だった

タイムとして そんな感情で役目を放棄してはいけないのはわかっている
この先 いちいちそんなことで悲しんでいては この永遠を耐えられなどしない

彼女もアンダーランド人 特別扱いはできない

この手でいつものように閉じるべきだ
声に耳を傾ける前に その顔を見る前に


エルズメア「オレロン イラスベス ミラーナ…タイム…みんなをいつまでも…愛しているわ」


その苦しみを取り除いて 安らかに 良い時を過ごしたことだけをただ願い

エルズメア「…あの子をお願い」


エルズメアは瞳を閉じた

蓋の閉じた命の時計を手に死者の部屋へ向かう
鎖にかけ 蓋の名前を撫でる 最後に会いに行けなかった
声は聞こえていたと心の中で告げ 彼女と別れる

部屋を出て大時計へ向かうと まだゼロがいてウィルキンズと話をしていた

何も知らないのか 全てを知っているのか
ゼロの言葉からは読み取れない 彼女は容易く嘘をつく


イラスベスはどうしたのだろうか


アンダーランドは平和だった
ここしばらくはずっとなんの脅威もなく 人々は幸せに暮らしていた

心に闇を宿す彼女は力を求めた

イラスベスはあるものを探していた
王位継承者しかその場所を記した地図を見ることはできなかったが 彼女はそれを盗み見た
そしてたどり着いた時 母は亡くなった

最愛の妻の死に憔悴したオレロンは自身の年齢のことも考え 国のため生前のうちにミラーナに王位を渡すことに決めた

母の死の悲しみが家族への憎しみに勝ることはなかった
彼女の中にはそれしかなかった 母もまた自分を愛さなかったのだから


イラスベス「お父様も妹もハイトップ一族もウィッツエンドの民もみな憎い けどお前は私の味方…私のジャバウォッキーちゃん…」


出会いから6年
集会所においてはピレリが姿を見せなくなった頃のこと

タルジーの森では祭りが行われていた
そこには後にマッドハッターと呼ばれるタラント・ハイトップやその友人たち
ミラーナや彼女に仕える白の騎士たちもいた

楽しそうな人々の声は突然の襲撃により悲鳴に変わる

ジャバウォッキーが森に現れ炎を吹き さらにトランプの兵士たちやハートのジャック イロソヴィッチ・ステインが現れた

ヴォーパルの剣を持つ白の騎士はジャバウォッキーに対し勇敢に立ち向かうが その炎で倒され剣は地面に落ち それをステインが拾い上げる

タラントの家族もジャバウォッキーに襲われ ミラーナを逃した後家族を探しても 見つかることはなかった

ホルベンダッシュの日 鳴り響く弔いの鐘の理由がなんなのか 以前の経験からタイムにはなんとなくわかっていた
ジャバウォッキーがまた目覚めた 力を求める声に応えて 人々を襲う


それがイラスベスによるものだとは この時は知らなかった


ミラーナはマーモリアルへ逃げ イラスベスはジャバウォッキーの力でアンダーランドを支配する女王となった
さらに彼女はバンダースナッチも従え ジャバウォッキーへの唯一の対抗手段であるヴォーパルの剣をバンダースナッチの小屋に隠す

アンダーランドの暗い暗い赤の女王の支配の時代 王たちは次々処刑され 彼女はオレロンも捕らえ 即座に処刑を決めた
ウィッツエンドの前王はサラゼングリムやウィッツエンドの人々の前で首をはねられることになった

預言の書にも記された悲劇の歴史

だがタイムは その記憶がない
何も知らぬうちに 運命は最悪な方へ向かっていた

アンダーランドの各地域を治めていた王たちの名が書かれた時計の針が止まるたび 何が起こっているのか知らされる気分だった

やがてオレロンの番が来る

時の流れの中 最期の彼の姿を見る
振り向けば そこにジャバウォッキーが力を与えた相手がいるのだろうが それができない

時計を握るとオレロンがその感覚に気づいたのか“タイム”と呟く

オレロン「…すまなかった」

蓋を閉じると 光に包まれた生者の部屋に景色が戻る
あの言葉は誰に向けられたものなのかわからない

この数年でエルズメアとオレロン両方を失った
ウィッツエンド含め多くの国で民が殺され 女王の気分次第でその人数は増える

ミラーナは城への時計を封じていたため彼はその支配者が誰なのかを知らないままだった

アンダーランドの危機だった
ジャバウォッキーがその気になれば世界は滅びる
止める力は女王が緩やかに奪っていく

そんな闇に沈むような悲しみの中悪い知らせは続く


ピレリがトッドに殺された


トビーに返そうと思ったが 結局タイムが持つこととなった懐中時計の蓋を撫でる
友人であった者の死が続き それでも冷静でいようとした
彼らとの交流を増やすほど いつかの別れが悲しくなる
いまだに割り切れない この先幾度とそんなことは起きる 王家との交流は自然と途切れたが 今でもイラスベスとミラーナは時計を持っている

いつか彼女たちも
その子も
その孫も
その子孫全て

この手で蓋を閉じる
殺しているわけではない すでに止まった時計の蓋を閉じているだけだ 最期の時に せめて自分だけが看取る

青い目に灯る光が消える日はいつだろうか
時の終わりとは?

もしそれがあるのだとしたら ゼロは…止めるのだろうか


ゼロ「確証はない でも言わないといけないことがある」

右目が緑色に変わり 次に瞬きすると元に戻る
これにどんな意味があるのか いまだにわからない

ゼロ「バグが狙っているのは私じゃない 君だ 奴が狙うなら その理由は…君が想造者になりうる者だからだと思う」
タイム「…それは…おかしいはずだろう この世界に想造者は生まれない」
ゼロ「創られた世界には絶対に想造者が生まれる でも再現された世界は違う 君の言う通り本来想造者は生まれない…それぞれは再現された世界で キャラ設定の改変はありえないけれど…」

ゼロが気づいた時にはタイムは集会所の時間操作を可能にしていた 連動する扉の上の数字すら止め 全ての世界の時間を操る

ゼロの設定した世界では本来ありえないこと
それができる理由

ゼロ「全ては初めから決まっている この世界全てを造ったその時から…世界を繋げた その集合地 つまり集会所は…物語名“Otherworldly Story”創られた世界…交わる場所に集まるキャラクターの中から想造者は選ばれる バグたちは外したことがない…おそらく君が 想造者に…」
タイム「なると思うのか?想造者になれば正真正銘君の仲間になるからそうさせたいのか?同じ永遠なら 私は今のままを選ぶ 他の世界など構えるか!」

タイムの後頭部の歯車は煙を上げながら回転し彼の怒りを示す
ゼロは無理に彼を想造者にするつもりはなかった そもそも本来あり得ない設定になる 想造者として仲間に入れる気などなかった 彼女は純粋に彼と友人になりたかっただけだ
その思いだけでこの世界を作り上げた

ゼロ「拒否するならそのままでいい 世界は私が守る」
タイム「そうだお前が…」

だがタイムが選択を待たせているのは このゼロの過去にあった
彼女は永遠を望み想造者になったにも関わらず過去数回記憶を消し去り自身を忘れている
それは世界の消滅を引き起こす 完全に消えることこそないが キャラクターは確実に消え去る
世界も不安定な状態となり 修復が間に合わなければやがてバグに飲まれる
彼女は今まさにその修復の最中だ

彼女にこのまま任せて 果たして彼女が2度と過ちを犯さないと言えるだろうか
テンプスが言うには彼女がその選択をするまでの年数はなぜか毎回短くなっているという
永遠に生きる彼女が永遠に間違わないと 誰が言えるのだろうか

何が理由で彼女がその選択をするかわからない ひとつの理由に人間の心を持ったままであるが故の精神の弱さがある
孤独は彼女を殺すのだろうか 大勢の守人がいても?
何を恐れているのかわからない だが彼女は今回友人を求めて世界を再現した それは精神の安定のため

永遠の友人でいれるのだろうか あまりにも人間に近く 身勝手な 幼い神 その気分次第で変わる全て

彼女は過去の自分の犠牲者
タイムも同じような過ちを犯した

彼女は良い友人になっていた


OWSの全ての物語が終わった後でも この世界を守る気になれば想造者になることを受け入れる だがもし彼女を信じられたなら この手で守らなくても大丈夫だと思えたなら この世界を愛せなかったなら 想造者にはならない それこそ本来の姿


ダステの物語が終わり

バグ・エターナルとの戦いが終わり

…アンダーランドの暗黒の時代が終わり

テナルディエの物語が終わった



目の前の元女王がイラスベスであり ジャバウォッキーに力を与えられ オレロンを処刑し それ以上に多くのアンダーランド人を虐殺し 長年人々を苦しめてきた あの赤の女王であり

アリスによって怪物は倒され ミラーナは王冠を取り戻し アンダーランドがようやく平穏になった

そんな時に彼女はタイムの元へ来た

タイムは最初気づかず接していたが 話を聞いていて理解した

エルズメアやオレロンとの約束がある
だがそれ以上に フェルの日以来会わなかった彼女はとても美しい女性に成長していた
彼は本心からイラスベスを愛していたから 城を作り 野菜で従者を作り 会うたびに贈り物をしていた

暗闇の中にいた心に光がさした
記憶のない彼女だが自分を愛してくれている

今の彼女にアンダーランドを再び支配できるような力はない
愛に飢えた心が両親と妹への恨みが彼女を動かしたのだと知ったあと より献身的になった
ミラーナには友人たちがいた 忠誠を誓う兵士もいる 彼女は自分の力で幸せになれる 愛される子だ きっと自分に会いに来ないのも 多忙ゆえだろう

タイムは約束をようやく果たす時が来たと思っていた


誰にも愛されずやがては愛を利用されたイラスベスは 今度は自分が愛を利用した


クロノスフィアが盗まれたことで 結果としては全てが丸く収まった

何もかもが元に戻り それ以上のものを手にした


タイムだけは 手に入れたものはなかったが 姉妹が 以前と同じとまでは言えなくとも 和解し 再び共に生きていくのだと思うと

それで良かったのかもしれない


オレロンもエルズメアも 2人の娘に最善のことができたわけではなかった
愛だけは…本物だったことを タイムは知っている

アンダーランドには平和が訪れた
ジャバウォッキーが目覚めない世界を 彼女たちは作り上げてくれるかもしれない

イラスベスは許されないことをした

だがそれは タイムが口を出せる話ではない
アンダーランドに暮らす彼らが 今度イラスベスとどう接するかを決める

タイムにできるのは 今までと同じこと

ただ 彼らとここで話をする



タイムは孤独だ

アンダーランドで唯一の半人間半機械

そして永遠


時計をくぐる彼らを見送る


私を騙したイラスベスを許す

アリスにクロノスフィアを盗らせたミラーナを許す



ミラーナ「…タイム」

友人たちを先に行かせ ミラーナがタイムの元へ戻る

ミラーナ「大切な友達を救いたいために クロノスフィアやこの場所を共に守る立場である私がしたことは 許されないことです 私はいくつもの過ちを犯した 私は本来 王位継承者には…ふさわしくはない それでも今は 私がやらなければいけない 約束は…破棄されるべきか 私に…どうか教えて…」


タイムは微笑み 彼女を城から帰した
アンダーランドやウィッツエンド王家とのこれからは 今すぐに決められることではない ミラーナはイラスベスの処刑はしないだろう 追放もしない 姉妹の仲が戻り その選択肢は消えた

だが民にとって それは関係ない
これからは贖罪のため生きるべきだろうが…どうなるのかはわからない

ため息をつき 振り返り 城の中を歩く
ウィルキンズは ダステやゼロがマニュアルを探す手伝いをしたと告げた

タイム「…そうか」

タイムは集会所へ向かった


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