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第一章 出会い そして

時間の守人

トビーが来て3日後 スウィーニー・トッドの扉が勢いよく開いた

ピレリ「聞いたぞ!!」

最初はなんのことかわからなかったが ピレリはその場にいたゼロとタイムに対し 苛立ちをあらわにしていた

ゼロ「落ち着きなよ…」
ピレリ「トビーがここへ来たらしいな」
ゼロ「あぁ 来たよ そのこと?」
ピレリ「問題ないような顔をするな!」

ピレリはゼロの向かいにある自分の席に座り 前屈みになって机を勢いよく叩く

ピレリ「なにも…なにも話してないだろうな」
ゼロ「流石にここに関しての説明とかはしたよ」
ピレリ「余計なことは?」
ゼロ「余計なことは余計だから省いたし そもそもトビーはここへ来た時点で混乱してたから あんまり話せないまま帰っていったよ」

ピレリはそれを聞いた後も じっとゼロを睨んでいた

ピレリ「あの事は 他人の口からトビーに知られたくない わかるな?」
ゼロ「なんの話をしてるのやら」

そう言ってその場から一瞬で消え去るゼロ
突然のことでピレリは驚いた声をあげたが タイムはその様子を見て いつものようにため息をついた

タイム「逃げられたな」
ピレリ「隠す気ないのか…あいつ…!」
タイム「仕事はどうした」
ピレリ「気が気でなくてやってられるか!そもそもトビーに話を聞いた時点で……あぁくそっ…」

ピレリはとにかく 落ち着こうと椅子に座った
手を組み 額に当て 深呼吸をする

ピレリ「…やっぱりあいつは 全部わかってるんだろうな」
タイム「さぁな どこまで知っているのか 私もわからない どうでもいいがな」
ピレリ「知られたくないことが ないからだろ?」
タイム「お前はあるようだな」
ピレリ「あるさ いくつか 後戻りできなくなった…ことはな」

ため息をついて タイムを見る
これ以上 聞いてこないのかと 目で訴えてみるが

タイム「なんだ 急に黙って」

通じないらしい

ピレリ「…タイム お前に秘密とか そう言ったものはあるのか?」
タイム「秘密?隠すべき相手もいないのに 秘密など生まれない」
ピレリ「あぁ…そういう…いやたしかに 隠し事をする相手は…いなさそうな場所だった」

タイムの城の中 タイム以外にも誰かいたが 人ではないらしい

ピレリ「トビーが ここに来た時お前を見ていたら 今より余計混乱したかもしれないな」
タイム「ゼロの力がなければ お前たちも同じようになっていただろう」
ピレリ「そんなこと…までとは思ったが 何でもありってのは…俺たちの思考も…はぁ…」

落ち着いたのか ピレリは立ち上がり 一呼吸して 自身の扉を見る

ピレリ「俺は お前とも ゼロやテナルディエやダステとも友人でいることが嫌ではない むしろ そういった仲の…友人がいないから嬉しいんだが…これは想造のせいなのか?」
タイム「……いや…君の本心だ」

彼らの日常の中に 集会所の世界が現れてから1年と少し
トビーはそれから 何かピレリと話したのか 時々顔を出すようになった ただいくつか質問をしたあと 満足したように帰っていく
決まって そういう時にはピレリはおらず そしてトビーの質問の中に この場でのピレリについて など彼に関する質問は一切なかった

そして

ティナ「久々に全員揃ったな」
ゼロ「せっかくだし 今日は豪華に行こうかな」

違う世界の友人同士 近況報告をしていると 段々周りとどんな関係性を持って暮らしているかを知れるようになっていた

しかしそんな彼らの前…
ピレリたちの座る席の前 ゼロたちの背後
八角形の部屋の中 唯一の両開きであるタイムの扉が真ん中の壁にあり 左にはゼロが来るたびに現れる扉がある
右にはなにもなかったはずだが 一枚の扉がある

公安官「…さっきまであったか?あの扉」
ティナ「いや ないな」
ピレリ「本当だな なんだあの…扉」

そう言い出した3人を見て ゼロとタイムも振り返る
すると その真っ黒で 金の装飾のされた扉を見て ゼロが首を傾げる

ゼロ「…なんだろ 見覚えがある気がする」
タイム「君が作ったわけじゃないのか」
ゼロ「違う」

ささやかな宴会も 一時中断となり ゼロは全員にその場から離れないよう忠告してから 扉に近づいていった

ゼロ「…勝手に扉を繋げられるのは…うーん…ごめん一回心当たりあるやつの所行ってくる」

そう言って 彼女はその場から姿を消した
残された4人は さてどうしたものかと顔を見合わせる
彼女が戻ってくるまで 謎の扉をそのままでいいのか

ピレリ「開けてしまうか」
ティナ「その方が早い」
タイム「ゼロが戻るまで待った方がいいと思うが」

そうこうしていると 扉の取手が下がる

公安官「…誰か来る…のか?」

タイムが立ち上がり 座る3人の前に背を向けて立つ

タイム「いざとなったら すぐに自分の扉に逃げろ」

いざとなったら…タイムはなにに警戒しているのだろうか
あの扉の先からなにが やってくるというのか

緊張しながら ゆっくりと開く扉から目を離さないようにする
タイムの背中に隠れた向こう側を 体を伸ばして覗き見る

中から現れたのは 人間だった
背の高い青年 黒を中心として ベストなどを重ねて着ている
右腕の肩から肘にかけてと 左腕の肘から手首にかけて 筒を斜めに切ったような…アクセサリーなのか腕鎧なのか わからないものをつけている
ブーツの硬い音を鳴らして こちらを見る

その表情は 決して明るくはなかった
突然現れたにも関わらず こちらを睨みつけていた

「そこを…どかないか」
タイム「なるほどまたお前か…早く戻った方がいい 彼女がお前を探しているぞ」
「あの方は今はいない方がいい」

彼はずかずかとタイムに近づき 避けて通れるものをわざわざ押し退けて 座る3人の目の前に立った

「あぁ貴様らのような人間にどうしてあの方はこうも…」

嘆くような仕草
一体何が何だか

ピレリ「いや まず誰だお前」
「誰?あぁそうか あぁぁ…面倒だ こんなことなら…」
タイム「まず名乗れ 説明してやれ 慣れたことだろう」
「またか!自己紹介など…何回…」

深くため息をつく
どうやら2人は知り合いのようだが
タイムとゼロの距離感とはまた違う かなり仲はよくなさそうだ

「はぁ……私は…我らが主の守人(まもりびと)であり時間の守人 テンプス・ホルロージュ・パンデュール…呼ぶ気があるならテンプスと呼べ」

全員 時間が止まったかのように黙ってしまう
知らない単語が飛び出した なんだ我らが主って

ティナ「主ってのはゼロか?」
テンプス「当たり前だろ それ以外誰がいる」
ティナ「いや 当たり前ってのは…」
タイム「テンプス」
テンプス「わかっている!!」

テンプスがゆったりと部屋の中を歩き回る
あちこち見て周り 扉のない壁際に置かれた横長のチェストの上を触り ぐるりとこちらを見る

格好はタイムとどこか似ているが こちらに向ける目は深い黒で いかに彼らを嫌っているかを表情で訴えている
若いように見えるが ゼロと関わってるとなると 見た目より年齢は上なのかもしれない
の割には落ち着きがない ずっと部屋を見て回りながらも 彼らにある程度警戒心を抱いているようだった

テンプス「痕跡は一切ないが 警戒が足りない 守りがなってない 見つかれば終わりだぞ」
タイム「文句を言いに来たのか?」
テンプス「確認しに来たまでだ 繰り返さないためにも」

タイムのこうも不機嫌な顔は最近見ていなかった 相当苛立っているのだろうか しかしテンプスはそんなことどうでもいい様子だ

テンプス「それで?ピレリにテナルディエにダステ お前たちなにが目的でここに来ている」
ピレリ「なにって…」
テンプス「あの方の力を利用するためか?」
公安官「ただ話をしに来ているだけだが」
テンプス「ただ話を?想造者だぞあの方は…おかしな話だ」
ティナ「友人と“ただ”話をすることのなにがおかしい」

表情豊かな男だ 3人の言葉を聞くたびにころころ変わる
会って間もないが 彼らもテンプスは嫌いだった やたら上から 知りもしないのにごちゃごちゃ言ってくる
べらべらと言い続けていた彼も 友人という単語に対して 止まった
初めて聞く単語とは思えないが

テンプス「友人?どういう…ことだ お前たちは あの方のことは…初めはそんな風ではなかったはずだ まさかそんなに上手く行くはずが…」

初日の話しか知らないのか 困惑している
友人の話をしてきたのはゼロの方だ よっぽどこちらが友人になろうとしなさそうだと思われていたのだろうか
あくまで公安官の発言どおりの仮の友人ではある その仮を取った覚えはないが

テンプス「どうするつもりなんだゼロ様は…守りきれるかもわからないのに…」
公安官「…君が君しか知らない内容を説明することなく話すせいで 全くわけがわからないんだが 一体何を確認しにきたんだ」
テンプス「説明は許可されていない どのみち そのうち知ることになる」

その時 ゼロの扉が開く

ゼロ「テンプス…」
テンプス「主!確認はできました 今は問題はなく…」
ゼロ「問題ならある」

テンプスが突然 膝から崩れ落ちるように地面にうずくまる形になった

ゼロ「タイム 何もなかった?」
タイム「口の利き方が悪いな」
ゼロ「あぁごめん 止めてもよかったんだよ?」
タイム「そこまで怒ってはいない」

とりあえず テンプスが黙ったので 一旦集会所は平穏を取り戻した
ゼロはあちこち探して結局ここへ戻ってきていた

ゼロ「テンプス 弁明があるなら聞こうか」

ゼロが手を横に振ると ガバッとテンプスが立ち上がる その顔はさっきまでとは違い なんだか弱々しい

テンプス「ゼロ様 私はこの目で安全の確認をしにきたのです ここ最近で 最も来ている場所です 何より…確認すべき理由はあるでしょう」
ゼロ「私が呼ばない限り ここへは来ていけないはずだ」
テンプス「一年は来ませんでした しかしもう…」

ゼロが手を握って開く動作をする 想造力を使う時の動作だ
すると もう一つ椅子が現れる ゼロの左隣 一番左側だ

テンプス「ゼロ様…」
ゼロ「まず おそらくいい態度をしなかったであろう彼らへの謝罪を 私の友人に対しての無礼を詫びて タイムが優しいから良かったものを…」
テンプス「…本当に…彼らは…ゼロ様の?」
ゼロ「仮の友人だけど 私の願いを聞いてくれた いい友達だよ さぁ」
テンプス「…あぁまさか…!すまなかった 友人だったとは思わず…ゼロ様を利用しようとする奴は多いから…疑ってしまった 君たちが良いならば 許してほしい」

そう言って 深く頭を下げるテンプス
なんだかよくわからないままだが 謝罪をされては 許すしかない まぁ 正直テンプスがそのままべらべら何かを喋っていた方が色々知れたかもしれないと思うと 態度はもうどうでも良くなっていた 結局詳しくは聞けなかったが…

ピレリ「それはまぁ 許すが…ゼロ なんなんだ こいつは」
ゼロ「彼は私の…ボディーガードみたいなもんでさ 守人…って名前つけてるうちの1人」
テンプス「最初の守人だ 物語の時間も守護している」
ゼロ「その…疑ってる相手とか 敵とかにね こんな態度なんだけど…その…悪い奴ではないんだよ 私の守人だし ただ守ろうとしすぎてこうなってるだけで…」
テンプス「当然のことをするために動いているだけです」

ゼロがじろっとテンプスを見ると 彼は口をギュッと閉じた

タイム「で 椅子を増やしたということはなんだ 加える気か?」
ゼロ「この際定期的に確認させてやる」
タイム「そうなると私の城にも来るぞ こいつは」
ゼロ「邪魔するようだったら 遠慮なく私を呼んでよ 回収するから」

よっぽど迷惑というか 面倒な奴なのかもしれないが 来るのか この男がこれからも ここに

テンプス「仕事の邪魔はしない できる限り誰もいないうちに済ませる」
タイム「本当だな?」
テンプス「もちろんだ では 確認も終わったので帰ります ゼロ様 何かありましたらすぐに呼んでください」
ゼロ「あーはいはい 何もないだろうけど」

また深くお辞儀をしたテンプスは 3人にも頭を下げたあと すぐに自分の扉へと戻り その後扉は消えてしまった

ゼロ「守護者としては優秀なんだよ 一応」
タイム「一応 な」
ティナ「で?結局何を確認しにきたんだ?」
ゼロ「私の安全だろうね 世界のバランスとか……敵の侵入がないか とか」
公安官「敵?」

ゼロは気まずそうな顔をする 少し間を空けて言った言葉 言うべきか言わないでおくべきか 悩むようなこと…

ゼロ「こんな能力だからね 狙われることもあるんだよ 世界を超えて来れるやつがいないわけじゃない それだけの話 別に ここや 君ら3人には関係ない話だよ」

テンプスが確認しにくるような場所であるはずなのに 危険ではない というのは流石に納得はできないが ゼロは話したくないことに関しては完全に口を閉ざす
不安を煽るようなことをしたくないのか 後ろめたい何かがあるのかはわからないが
おそらくはこれ以上 今聞いても無駄だろう

ティナ「関係ないなら それに越したことはないがな」
ゼロ「…まぁこれからたまーに来るだろうけど あんまり気にしなくて良いよ」



新しい出会い
それが何をもたらすのかは まだ わからない




END

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