第六章 タイム
アリス・イン・ワンダーランド
出会いから13年
その頃のアンダーランドは赤の女王による支配に苦しみ かつてのような明るさを失っていた
彼らの希望は預言書オラキュラムに描かれた救世主アリスがジャバウォッキーを打ち倒すフラブジャスの日
その日を迎えるために 彼らはアリスを求めた
願いの通り アリスは再びワンダーランドへ降り立った
赤の女王と対立する本来の王位継承者であり妹の白の女王…
長い冒険を経てアリスは白の騎士として…ヴォーパルの剣を持ち ジャバウォッキーを打ち倒した
赤の女王は家臣であるハートのジャックとアウトランドへ追放されることとなった
赤の女王の周りにはジャバウォッキーやバンダースナッチ 彼女と同じように体の一部が大きな取り巻きたち そして愛するハートのジャック イロソヴィッチ・ステイン
しかし赤の女王は愛するハートのジャックに裏切られ ナイフを突き立てられかけた
ジャバウォッキーは殺され バンダースナッチはアリスたちの方へつき 取り巻きたちは全て偽りの身の上話で寄ってきていただけに過ぎず…
彼女は全て失った
アウトランドでは植物や野菜を自由に扱うことは許された
廃屋にはわずかに許されたもののみが運び込まれた
その中に 彼女たちの母から受け継がれた王家の振り子時計があった
数冊の本のなかには アンダーランドやウィッツエンドの伝説 伝承などが記された本があった
それらはやがて赤の城をタイムの城へと導いた
時を遡ることのできるクロノスフィア
時間の力を我が物にできれば…再び王座を取り戻し 妹の罪を彼女を慕う全ての人々に知らしめることができる
結果クロノスフィアは手に入らなかったが 時間の化身タイムが彼女を愛した
出会いから16年
昼過ぎ頃 書斎で何か作るタイムの元に ゼロが現れた
扉を叩いて入るのではなく その空間に突如として現れる形だったが 今日は彼の機嫌がそこまで悪くないのか ゼロは怒られはしなかった
試しにと作ったものを動かそうとしたタイムにゼロが近づく
ゼロ「オルゴール?」
レバーをくるくる回すとオルゴールが音楽を奏で 同時にカラクリも動く
手のひらの上に乗せられるサイズのものだ
イメージだと オルゴールのカラクリはもっと楽しげで可愛らしいもので作るような気がするが 曲は葬送行進曲で カラクリは処刑人によって首を刎ねられる国王
ゼロ「…ど…え 怖…」
タイム「そうか?」
ゼロ「わ…わかんない アンダーランドでは普通なのかな」
もしかしてこれは赤の女王に贈られるアレか?と思いながら 見ていたが…今考えると なぜタイムはこれをモチーフにチョイスしたのかがわからない タイムらしくないというか…
ゼロ「…君どれくらいアンダーランドの情報調べてないの?」
タイム「あれが最後だが」
ゼロ「へぇ…そう…」
赤の女王への贈り物として ふさわしいといえばそうだが 彼女が斬首刑を好んだことを彼は知っていて その上でこれを選んだのだろうか…
色々考えても住む世界が違うとなれば 不謹慎かどうかなどの考え方も違うかもしれないと自身を説き伏せる
タイムとゼロは一緒に部屋の外へ出て タイムはウィルキンズたちの作業を確認するために大時計の方へ ゼロは集会所へ向かうため その場で別れた
しばらく歩いているとゼロは突然集会所へテレポートした 驚いて振り向くとタイムの扉の上に浮かぶ文字が赤く染まる
ゼロ「え?あ そういうこと…」
驚いていると 先に集会所にきていたトビーも同じように気づき 立ち上がって扉前にいるゼロの元へ近づいた
トビー「物語が始まったんですか…?」
ゼロ「さっき別れたところなんだけど…時間的に…アリスが空間に入ったのかな…強制転移が発動したから驚いたよ…」
ゼロが部屋の中央へ向かう
手を握って開き 振り向いてトビーに側に来るように伝える
トビー「何をするんです?」
ゼロ「何が起きてるか見よう レ・ミゼラブルの道筋を変えた影響が出てないといいけど…」
トビー「…怒られないといいですけど」
ゼロ「まぁ…知らない一面は見れるかもね 私たちは彼に心を許されているから…」
また手を握り開き 両腕を上に掲げて交差させ 勢いよく腕を横に広げながら下へ振り下ろす
部屋は城の中を映した
13時半を過ぎた頃…
城の中を歩いていたタイムは自分型のアーチに肩が引っかかりひっくり返る
1人で文句を言いながら立ち上がると弔いの鐘が響く
すぐに生者の部屋へ向かう その道中彼の側で息を潜める存在には気づかなかった
タイム「誰の時間が止まったんだ?最後の時を刻んだのは…?」
問いかけながら奥へと歩き 目を閉じる
音の止まった時計を探す
タイム「……ブリリアム・ヒンクル」
タイムが呼ぶと 彼の手元に時計は移動してくる
ゆっくりと降りてきた時計を手に取り チェーンを外し 顔の前で時計を見つめる
時計の針はすでに止まっているが 時計からなのか心音が聞こえている
タイム「時間切れだ」
パチンと閉められた蓋 その瞬間アンダーランドのどこかでブリリアム・ヒンクルが死ぬ
タイムは生者の部屋の死んだ時計を回収し 死者の部屋へ向かう
反対側にあるので すぐに着く
死者の部屋はファミリーネームの頭文字順になっており 近い場所から入れるように部屋が変化している
暖かい光に溢れ雲の上のような場所にあり針の音がうるさいほどに聞こえる生者の部屋だが
死者の部屋は通路の左右に水があり全体的に非常に暗く そして何の音もせず静かだ
生者の部屋の乱雑に垂れ下がる時計たちと違い きっちりと整列したチェーンが下がっており そこには蓋の閉じられた時計のみがかけられている
アンダーランド人の命の時計の墓場のような場所でタイムはきちんと確かめるように名字を声に出しながら前へ進む
タイム「ヒゲンズ ハイボトム……もっと先か ハイターン ハイビュー…ヒメルビー よし…」
チェーンを手に取り 時計をかけ 手にしたまま語りかける
作業でしかなくなったことの中でも 1人のアンダーランド人を弔う気持ちでいるのだろうか
タイム「安らかに…時間は無駄にしていなかったか?」
最中 死者の部屋の戸が動く音がする
押し開けたままだったはずだが またゼロが覗き込んでいるのかと向くが サッと隠れる人影が見えた
彼女なら隠れるはずがない 何者が入り込んだのか 出てこいとタイムが言うと 意を決した侵入者は姿を現す
若い娘だとわかると タイムはすぐ警戒を解いた
どうやってここに辿り着いたかわからないが 見たところ武器はない
アリス「お時間をいただきたいんです」
タイム「…時間?」
こちらが何者かよくわかっていないようなので 自分が時間であり 時間あげるのは自身の一部をあげるということになる…と丁寧に言った
しかしまだ理解はできていないようだった
集会所でその様子を見るトビーは早速タイムの知っているようで知らなかった面をちゃんと見た気がした
トビー「あの人がアリス?」
ゼロ「うん」
アリスはタイムに何か話そうとするが 本来長々と人の話を聞きたがらない上 大時計の点検作業を行なっていたウィルキンズたちからの報告を聞きに向かっている途中というのもあり 全てタイムの言葉で遮られ あげく怒鳴られてしまった彼女は 仕方なく彼が話を聞いてくれるようになるまでついていくことにしたようで
歩き始めたタイムの後ろをついていっていた 彼は王笏を取り出し 手に持ったまま歩いている
少し歩いた時 タイムは何かに気づいて立ち止まり振り返った
タイム「…なぜ死んだものをポケットに入れているんだ?」
出すように言われたアリスは言われる通りにポケットから懐中時計を取り出した
彼が壊れていて動かないと教えるがアリスは父親の形見だと伝えた
アリス「肌身離さず持ってるの」
タイム「…誰しもいつしか別れは来るものだ」
それだけ言うとまた大時計へ向かって歩き出す アリスは納得のいかないまま 黙って彼の後ろをついていくしかなかった
大時計はすぐ近くにある
タイムはアリスにそれが万物の大時計だと伝え 自身の胸に埋め込まれた同じ時計を見せる
タイム「“彼は私 私は彼 それが全てだ 過去も未来も”……自作の詩だよ」
アリスは彼を全く理解できていない 話は聞かない上自分の言いたいことだけをさっきから伝えてきている
ゼロも最初会った頃の彼を思い出していた
大体似た感じだったので アリスに多少同情していた ただ信頼が無い状態で 大人しく2人きりで話をする状況をすぐ作り出すような人ではないのは確かだ
自身のすべきことを終え それでもアリスがまだいたので仕方なく書斎で話を聞くことにした…1分だけ
アリスは話し始めるが順を追っての説明に退屈したタイムは胸の時計の秒針をぐるっと一周させ 早送り状態でアリスの話を聞いていた
アリス「ハッター…本名はタラント・ハイトップ 私の親友で 家族は生きてるって信じている 家族はホルベンダッシュの日にジャバウォッキーに殺されたのに それでクロノスフィアをお借りして」
タイム「あ」
タイムはそう言って手を前に出しアリスに話を静止するようジェスチャーで伝える
まだ話は終わっておらず 1分も経っていない状態でタイムに話を止められ アリスは不満そうな顔をした
しかしタイムからしてみれば 話を遮らなければならないほど 聞き捨てならない単語があった
タイム「クロノスフィア?」
アリス「えぇ」
タイム「あれを…借りたいと?拝借したい?…掠め取る?」
アリス「借りるの」
アリスの態度は強気だ 彼女は最初からこれが目的でタイムの城に来ていたが タイムの態度に少しだけ苛立ち始めていた
だがタイムは相手にする気を失った
アリスから目を逸らし なるほど と頷き立ち上がる
タイム「君の望みは歴史を破壊することにつながる…クロノスフィアは大時計の動力だ」
アリス「でもハッターの病気を治すために必要なの」
タイム「…ウィルキンズ!」
何度も呼ばれ はいはいと返事をしながら小さな体で扉を押し開けウィルキンズが入ってくる
タイム「こいつをつまみだせ」
ウィル「かしこまりました 侵入者を外へ」
もう一切話を聞く気がないのだとわかったアリスは 不服そうな顔のままウィルキンズを見ていた
しぶしぶお辞儀をしてウィルキンズの後に続いて部屋を出ようとする
タイムも軽く頭を下げ見送ろうとしたが 彼女の別れ際の言葉が引っ掛かり 何も理解していないのだとわかったタイムは難しいやつが来てしまったと呆れたが それでも彼女に諦めさせようと…そして理解させようと 最後にもう一言伝える
タイム「お嬢さん 過去は変えられない…だが その事実から学ぶことはある」
アリスは何も言わず ウィルキンズに連れられ出口の方へ案内されていく
ようやく帰って行った面倒な客人を見送りため息をつくタイムだが 落ち着く暇もなくどこからかラッパのような音が聞こえてくる
タイム「ウィルキンズ!彼女が来たぞ!」
タイムに急かされ ウィルキンズは慌ててアリスを見送った道から離れ ハート型のアーチで飾られた部屋のある通路へ セカンズたちを連れ走って向かう
その間タイムは帽子を脱いで置いた
先ほどまでの不機嫌さがどこかへ行ってしまったその代わりようにトビーは驚くが ゼロは以前にも見た光景だったので さほど驚いてはいなかった
むしろ先ほどのような全く相手にしていない時の態度や 逆に少年のようにそわそわと嬉しいそうに人を待つような様子を今の今まで集会所で見せてこなかった方が驚かされる
ゼロのイメージでは本来のタイムとはこっちだ 人に畏怖の念を抱かせたくて…自身を偉大にみせたくて色々と演出し…表情豊かで喜怒哀楽はっきり表にだすような…なぜ普段あぁも冷静そうな感じなのかが理解できない
せっかちで怒りっぽくて人の話を退屈そうに それでもちゃんと聞いては…いて…
ゼロはなんとなく思う
テンプスの性格と似ている それを嫌がるゼロを 彼は知っている タイムは相手を思いやり 接する まさかそれで? そう思ったが 流石に考えすぎのように思える
自身を守るために人を突き離さなければいけないはずが 彼は招き入れる 本当の彼は…いや 全て彼なのかもしれない
部屋に来たのは赤の女王とその従者 従者は全身野菜でできていた
タイム「やぁ愛しい人」
タイムは嬉しそうに招き入れる 女王はタイムの方を見ることなく手を前に差し出し その意味を理解しているタイムは後ろを向いて 先ほどのオルゴールを手に取る
女王の方を向いて彼女に賛辞の言葉を送るが 差し出された手の上にまだ何もないことをアピールされ 少し申し訳なさそうに手の上にオルゴールを置く
女王は何も言わずオルゴールを回し 処刑人が王の首を切り落とすカラクリを一度見たあと 右側のウィルキンズがいる足元へ放り投げる
慌ててウィルキンズがなんとか掴むが 女王はもうその贈り物の方を見ていなかった
女王「一生大切にするわ」
一切笑わずにタイムを見てそう言いながら部屋の奥にある椅子に向かって歩き出す女王を目で追いながら それでもタイムは笑顔で“よかった”と言ったが すぐに顔が曇る
椅子に腰掛け タイムに背を向け チラッと顔を見て なんだろうと疑問に思うタイムに 悲しみに満ちた顔を見せたあと 椅子に顔を埋め泣き出す
ウィルキンズがそれに対するタイムの反応を心配していると 思った通り愛する人がなぜ泣いているのかわからず 側に寄り添い優しく声をかける
タイム「どうしたんだ なぜ泣いているんだ…?」
女王「私の願いを叶えてくれないのね」
タイム「私にできる限りを君に…つくしたじゃないか 城を作って 従者を生み出して…」
女王「えぇそうよ でも…ね 私の…大きな頭脳と…あなたのクロノスフィアがあれば…過去も未来も支配できるのに…」
タイムは思わず女王から目を逸らし ウィルキンズの方を見る
クロノスフィアという単語が出てウィルキンズも気まずそうだ この会話は過去何度も聞いているが その度話題を逸らしたり 別のものでその場を収めたりと 大変だった様子しか見ていない
タイム「いくら言われてもダメなんだ ほら…ドードー鳥の剥製とかウィルキンズとか…他のものならいくらでもあげよう けど クロノスフィアはダメだ…」
女王「叶えてくれないのね!私の…願いを あなたでさえも!誰も私を愛してくれない…!」
怒りながら立ち上がった女王を宥めようとするが うまくいかない 女王の機嫌は完全に悪くなった どんな愛の言葉も贈り物も クロノスフィア以上のものはないと女王に言われても タイムとしては答えられない
その時 タイムの後頭部に見える機械部分から火花が散る
タイム「…大時計が」
ゼロとトビーは顔を見合わせた タイムは書斎から走り出す
ゼロは手を横に振る すると景色がぐんぐん大時計の方へ近づく
大時計へ辿り着くとセカンズたちが慌ただしく集まっていた 彼らはいくつかのグループになり どんどん合体しミニッツになる
緊急時の戦闘態勢…それはクロノスフィアが台座から奪われたことを意味する
台座の上にはアリスがいた その手の中にはクロノスフィアが握られている
先ほどウィルキンズに入ってきたところから出て行くよう言われていたが そのウィルキンズがタイムに呼ばれてその場を去り 女王を迎えに行った 彼女はその隙に大時計へこっそり入り込んだのだ
トビー「…これは」
ゼロ「主人公に盗られた」
トビー「ど…どんな物語なんです 以前アンダーランドを救った主人公が 今度はアンダーランドを危険に晒すんですか…?」
ゼロ「友達のためだと さっき言ってた 理由はそれだ 過去に戻って 友人の家族を助けようとしている…死んだ家族を」
トビー「…僕らと 同じことを?」
友人であるテナルディエの死んだ家族を救うために 過去を消し時間を戻し 選択を変え 結果2人救った
アリスという主人公は友人の死んだ家族を救うためにクロノスフィアを奪ってでも使い 過去を変えたいのかと トビーは思った
その思いは理解できる 目の前で悲しみ苦しむ友人を アリスという人は放ってはおけないのだろう けれど…
トビー「クロノスフィアで過去は変えられないはずじゃ…」
ゼロ「変えられない テナルディエは元々の物語と私の力があるから設定をねじ曲げて可能にした でも本来 過ぎたものは変えられない…アリスにとってタイムが悪役である理由は…もうわかるよ」
アリスがミニッツから逃げる最中に転倒し その拍子にクロノスフィアを落としてしまった
しかしそのおかげでクロノスフィアが起動し球体の船になる
起動と同時にタイムは強い胸の痛みを感じ 走っている途中だったがその場に跪く形になった
女王も突然飛び出したタイムにどうしたのか聞きながらついてきていた
下を覗くと 離れた場所に かつての自身が王位を失う何よりの原因であり ジャバウォッキーを殺したあのアリスがいた
アリスは女王に見つかったのに気づいたが それよりも後を追いかけてきたミニッツから逃れるために急いでクロノスフィアに乗り込む
操作方法がわからなかったが 上を見ると“私を引いて”と書かれたチェーンがぶら下がっている 思いっきり引っ張ると クロノスフィアは勢いよく回転し 浮かぶ上がる
タイムは必死で止めるように訴え ミニッツたちに急いで捕まえるよう命じる
しかしアリスは操縦レバーを思い切り引き クロノスフィアはぐんぐん加速し タイムや女王たちのいる通路目掛けて進み あと少しでぶつかるという距離で必要速度に達し消える
女王はタイムが彼女をアリスと気づいていなかったことに怒っていた “自分の”クロノスフィアがアリスに奪われ 怒りが頂点に達した女王はタイムに向かって
女王「あいつは打ち首じゃ!!」
と叫びながら従者と共に城を去って行った
また彼女の機嫌を損ねたが 今はそれ以上の問題に対峙していた
女王が去ってすぐ また胸に痛みを感じる チョッキを開いて胸の時計を確認するとすでにひび割れからパラパラと破片が落ちている
今はまだ問題なく動く大時計だったが動力源を失えばやがてエネルギーが尽き大時計は壊れ タイムも死ぬ
だが相手は過去に戻ることを目的にクロノスフィアを盗んだ ならば同じように時間の海へ行き追いかけ捕まえなければいけない
タイム「ウィルキンズ お前たちは大時計を動かし続けろ きちんとした時間を 1秒を刻み続けろ 私はあいつを追う…ミニッツ セカンズ 板材と金属を持ってこい 即席で船を作る さぁ急げ!!」
慌ただしい城内で ウィルキンズの不安そうな声が響き…
タイム「ゼロ…見ているんだろう…私は私のすべきことをするだけだが…これが私の物語だと?なるほどな アリスから見れば 私は悪役か 目的の…邪魔をする……ゼロ!」
集会所からゼロが移動し トビーは通常の姿に戻った集会所に1人取り残された
大時計の前に集められた材料を前にタイムとゼロ ウィルキンズが立つ
ゼロ「物語の中だ あまり干渉できない」
タイム「…少し文句ぐらい言わせろ アリスめ 自分が何をしているのかわかっていない!」
タイムが時空を歪め 一瞬で即席の船を完成させる
それは船というより手漕ぎトロッコといった方がわかりやすい姿をしていた
板の上に乗るだけで真ん中に手漕ぎトロッコのハンドル部分から支柱が十字に伸び 上部で前後に棒が伸び 支柱の先端全てに何か部品が取り付けられている
ゼロ「…何も言えないのに 大変な時に呼んだって役に立てない」
タイムは船の上に立ち ハンドルを持つ
タイム「約束は守る それだけは覚えておくんだ」
ゼロ「約束…」
タイム「ウィルキンズ 頼んだぞ すぐに元に戻す」
それだけ告げ タイムはハンドルを上下に動かす
支柱の先端に付けられた部品に青い光が溜まり 部品同士の間に電流が走る光が見える 宙に浮かび スピードが増すとクロノスフィアのようにやがてそこから消えた
ゼロ「約束か…」
物語が終わった時 同じ存在になるか 今まで通りでいるか 答えると約束している
最悪時間が破壊され タイムが死に アンダーランドが終わってしまう非常事態
それでも彼は必ずクロノスフィアを取り戻し その答えを伝えると言ってくれたのかもしれない
ゼロ「…タイム 君は本当に……よし ウィルキンズ 大変だろうけど 頑張って 君らの行動が みんなの選択が 今…全ての道が不安定なこの世界を救う」
そう伝えると ゼロは城から集会所へテレポートした
END
出会いから13年
その頃のアンダーランドは赤の女王による支配に苦しみ かつてのような明るさを失っていた
彼らの希望は預言書オラキュラムに描かれた救世主アリスがジャバウォッキーを打ち倒すフラブジャスの日
その日を迎えるために 彼らはアリスを求めた
願いの通り アリスは再びワンダーランドへ降り立った
赤の女王と対立する本来の王位継承者であり妹の白の女王…
長い冒険を経てアリスは白の騎士として…ヴォーパルの剣を持ち ジャバウォッキーを打ち倒した
赤の女王は家臣であるハートのジャックとアウトランドへ追放されることとなった
赤の女王の周りにはジャバウォッキーやバンダースナッチ 彼女と同じように体の一部が大きな取り巻きたち そして愛するハートのジャック イロソヴィッチ・ステイン
しかし赤の女王は愛するハートのジャックに裏切られ ナイフを突き立てられかけた
ジャバウォッキーは殺され バンダースナッチはアリスたちの方へつき 取り巻きたちは全て偽りの身の上話で寄ってきていただけに過ぎず…
彼女は全て失った
アウトランドでは植物や野菜を自由に扱うことは許された
廃屋にはわずかに許されたもののみが運び込まれた
その中に 彼女たちの母から受け継がれた王家の振り子時計があった
数冊の本のなかには アンダーランドやウィッツエンドの伝説 伝承などが記された本があった
それらはやがて赤の城をタイムの城へと導いた
時を遡ることのできるクロノスフィア
時間の力を我が物にできれば…再び王座を取り戻し 妹の罪を彼女を慕う全ての人々に知らしめることができる
結果クロノスフィアは手に入らなかったが 時間の化身タイムが彼女を愛した
出会いから16年
昼過ぎ頃 書斎で何か作るタイムの元に ゼロが現れた
扉を叩いて入るのではなく その空間に突如として現れる形だったが 今日は彼の機嫌がそこまで悪くないのか ゼロは怒られはしなかった
試しにと作ったものを動かそうとしたタイムにゼロが近づく
ゼロ「オルゴール?」
レバーをくるくる回すとオルゴールが音楽を奏で 同時にカラクリも動く
手のひらの上に乗せられるサイズのものだ
イメージだと オルゴールのカラクリはもっと楽しげで可愛らしいもので作るような気がするが 曲は葬送行進曲で カラクリは処刑人によって首を刎ねられる国王
ゼロ「…ど…え 怖…」
タイム「そうか?」
ゼロ「わ…わかんない アンダーランドでは普通なのかな」
もしかしてこれは赤の女王に贈られるアレか?と思いながら 見ていたが…今考えると なぜタイムはこれをモチーフにチョイスしたのかがわからない タイムらしくないというか…
ゼロ「…君どれくらいアンダーランドの情報調べてないの?」
タイム「あれが最後だが」
ゼロ「へぇ…そう…」
赤の女王への贈り物として ふさわしいといえばそうだが 彼女が斬首刑を好んだことを彼は知っていて その上でこれを選んだのだろうか…
色々考えても住む世界が違うとなれば 不謹慎かどうかなどの考え方も違うかもしれないと自身を説き伏せる
タイムとゼロは一緒に部屋の外へ出て タイムはウィルキンズたちの作業を確認するために大時計の方へ ゼロは集会所へ向かうため その場で別れた
しばらく歩いているとゼロは突然集会所へテレポートした 驚いて振り向くとタイムの扉の上に浮かぶ文字が赤く染まる
ゼロ「え?あ そういうこと…」
驚いていると 先に集会所にきていたトビーも同じように気づき 立ち上がって扉前にいるゼロの元へ近づいた
トビー「物語が始まったんですか…?」
ゼロ「さっき別れたところなんだけど…時間的に…アリスが空間に入ったのかな…強制転移が発動したから驚いたよ…」
ゼロが部屋の中央へ向かう
手を握って開き 振り向いてトビーに側に来るように伝える
トビー「何をするんです?」
ゼロ「何が起きてるか見よう レ・ミゼラブルの道筋を変えた影響が出てないといいけど…」
トビー「…怒られないといいですけど」
ゼロ「まぁ…知らない一面は見れるかもね 私たちは彼に心を許されているから…」
また手を握り開き 両腕を上に掲げて交差させ 勢いよく腕を横に広げながら下へ振り下ろす
部屋は城の中を映した
13時半を過ぎた頃…
城の中を歩いていたタイムは自分型のアーチに肩が引っかかりひっくり返る
1人で文句を言いながら立ち上がると弔いの鐘が響く
すぐに生者の部屋へ向かう その道中彼の側で息を潜める存在には気づかなかった
タイム「誰の時間が止まったんだ?最後の時を刻んだのは…?」
問いかけながら奥へと歩き 目を閉じる
音の止まった時計を探す
タイム「……ブリリアム・ヒンクル」
タイムが呼ぶと 彼の手元に時計は移動してくる
ゆっくりと降りてきた時計を手に取り チェーンを外し 顔の前で時計を見つめる
時計の針はすでに止まっているが 時計からなのか心音が聞こえている
タイム「時間切れだ」
パチンと閉められた蓋 その瞬間アンダーランドのどこかでブリリアム・ヒンクルが死ぬ
タイムは生者の部屋の死んだ時計を回収し 死者の部屋へ向かう
反対側にあるので すぐに着く
死者の部屋はファミリーネームの頭文字順になっており 近い場所から入れるように部屋が変化している
暖かい光に溢れ雲の上のような場所にあり針の音がうるさいほどに聞こえる生者の部屋だが
死者の部屋は通路の左右に水があり全体的に非常に暗く そして何の音もせず静かだ
生者の部屋の乱雑に垂れ下がる時計たちと違い きっちりと整列したチェーンが下がっており そこには蓋の閉じられた時計のみがかけられている
アンダーランド人の命の時計の墓場のような場所でタイムはきちんと確かめるように名字を声に出しながら前へ進む
タイム「ヒゲンズ ハイボトム……もっと先か ハイターン ハイビュー…ヒメルビー よし…」
チェーンを手に取り 時計をかけ 手にしたまま語りかける
作業でしかなくなったことの中でも 1人のアンダーランド人を弔う気持ちでいるのだろうか
タイム「安らかに…時間は無駄にしていなかったか?」
最中 死者の部屋の戸が動く音がする
押し開けたままだったはずだが またゼロが覗き込んでいるのかと向くが サッと隠れる人影が見えた
彼女なら隠れるはずがない 何者が入り込んだのか 出てこいとタイムが言うと 意を決した侵入者は姿を現す
若い娘だとわかると タイムはすぐ警戒を解いた
どうやってここに辿り着いたかわからないが 見たところ武器はない
アリス「お時間をいただきたいんです」
タイム「…時間?」
こちらが何者かよくわかっていないようなので 自分が時間であり 時間あげるのは自身の一部をあげるということになる…と丁寧に言った
しかしまだ理解はできていないようだった
集会所でその様子を見るトビーは早速タイムの知っているようで知らなかった面をちゃんと見た気がした
トビー「あの人がアリス?」
ゼロ「うん」
アリスはタイムに何か話そうとするが 本来長々と人の話を聞きたがらない上 大時計の点検作業を行なっていたウィルキンズたちからの報告を聞きに向かっている途中というのもあり 全てタイムの言葉で遮られ あげく怒鳴られてしまった彼女は 仕方なく彼が話を聞いてくれるようになるまでついていくことにしたようで
歩き始めたタイムの後ろをついていっていた 彼は王笏を取り出し 手に持ったまま歩いている
少し歩いた時 タイムは何かに気づいて立ち止まり振り返った
タイム「…なぜ死んだものをポケットに入れているんだ?」
出すように言われたアリスは言われる通りにポケットから懐中時計を取り出した
彼が壊れていて動かないと教えるがアリスは父親の形見だと伝えた
アリス「肌身離さず持ってるの」
タイム「…誰しもいつしか別れは来るものだ」
それだけ言うとまた大時計へ向かって歩き出す アリスは納得のいかないまま 黙って彼の後ろをついていくしかなかった
大時計はすぐ近くにある
タイムはアリスにそれが万物の大時計だと伝え 自身の胸に埋め込まれた同じ時計を見せる
タイム「“彼は私 私は彼 それが全てだ 過去も未来も”……自作の詩だよ」
アリスは彼を全く理解できていない 話は聞かない上自分の言いたいことだけをさっきから伝えてきている
ゼロも最初会った頃の彼を思い出していた
大体似た感じだったので アリスに多少同情していた ただ信頼が無い状態で 大人しく2人きりで話をする状況をすぐ作り出すような人ではないのは確かだ
自身のすべきことを終え それでもアリスがまだいたので仕方なく書斎で話を聞くことにした…1分だけ
アリスは話し始めるが順を追っての説明に退屈したタイムは胸の時計の秒針をぐるっと一周させ 早送り状態でアリスの話を聞いていた
アリス「ハッター…本名はタラント・ハイトップ 私の親友で 家族は生きてるって信じている 家族はホルベンダッシュの日にジャバウォッキーに殺されたのに それでクロノスフィアをお借りして」
タイム「あ」
タイムはそう言って手を前に出しアリスに話を静止するようジェスチャーで伝える
まだ話は終わっておらず 1分も経っていない状態でタイムに話を止められ アリスは不満そうな顔をした
しかしタイムからしてみれば 話を遮らなければならないほど 聞き捨てならない単語があった
タイム「クロノスフィア?」
アリス「えぇ」
タイム「あれを…借りたいと?拝借したい?…掠め取る?」
アリス「借りるの」
アリスの態度は強気だ 彼女は最初からこれが目的でタイムの城に来ていたが タイムの態度に少しだけ苛立ち始めていた
だがタイムは相手にする気を失った
アリスから目を逸らし なるほど と頷き立ち上がる
タイム「君の望みは歴史を破壊することにつながる…クロノスフィアは大時計の動力だ」
アリス「でもハッターの病気を治すために必要なの」
タイム「…ウィルキンズ!」
何度も呼ばれ はいはいと返事をしながら小さな体で扉を押し開けウィルキンズが入ってくる
タイム「こいつをつまみだせ」
ウィル「かしこまりました 侵入者を外へ」
もう一切話を聞く気がないのだとわかったアリスは 不服そうな顔のままウィルキンズを見ていた
しぶしぶお辞儀をしてウィルキンズの後に続いて部屋を出ようとする
タイムも軽く頭を下げ見送ろうとしたが 彼女の別れ際の言葉が引っ掛かり 何も理解していないのだとわかったタイムは難しいやつが来てしまったと呆れたが それでも彼女に諦めさせようと…そして理解させようと 最後にもう一言伝える
タイム「お嬢さん 過去は変えられない…だが その事実から学ぶことはある」
アリスは何も言わず ウィルキンズに連れられ出口の方へ案内されていく
ようやく帰って行った面倒な客人を見送りため息をつくタイムだが 落ち着く暇もなくどこからかラッパのような音が聞こえてくる
タイム「ウィルキンズ!彼女が来たぞ!」
タイムに急かされ ウィルキンズは慌ててアリスを見送った道から離れ ハート型のアーチで飾られた部屋のある通路へ セカンズたちを連れ走って向かう
その間タイムは帽子を脱いで置いた
先ほどまでの不機嫌さがどこかへ行ってしまったその代わりようにトビーは驚くが ゼロは以前にも見た光景だったので さほど驚いてはいなかった
むしろ先ほどのような全く相手にしていない時の態度や 逆に少年のようにそわそわと嬉しいそうに人を待つような様子を今の今まで集会所で見せてこなかった方が驚かされる
ゼロのイメージでは本来のタイムとはこっちだ 人に畏怖の念を抱かせたくて…自身を偉大にみせたくて色々と演出し…表情豊かで喜怒哀楽はっきり表にだすような…なぜ普段あぁも冷静そうな感じなのかが理解できない
せっかちで怒りっぽくて人の話を退屈そうに それでもちゃんと聞いては…いて…
ゼロはなんとなく思う
テンプスの性格と似ている それを嫌がるゼロを 彼は知っている タイムは相手を思いやり 接する まさかそれで? そう思ったが 流石に考えすぎのように思える
自身を守るために人を突き離さなければいけないはずが 彼は招き入れる 本当の彼は…いや 全て彼なのかもしれない
部屋に来たのは赤の女王とその従者 従者は全身野菜でできていた
タイム「やぁ愛しい人」
タイムは嬉しそうに招き入れる 女王はタイムの方を見ることなく手を前に差し出し その意味を理解しているタイムは後ろを向いて 先ほどのオルゴールを手に取る
女王の方を向いて彼女に賛辞の言葉を送るが 差し出された手の上にまだ何もないことをアピールされ 少し申し訳なさそうに手の上にオルゴールを置く
女王は何も言わずオルゴールを回し 処刑人が王の首を切り落とすカラクリを一度見たあと 右側のウィルキンズがいる足元へ放り投げる
慌ててウィルキンズがなんとか掴むが 女王はもうその贈り物の方を見ていなかった
女王「一生大切にするわ」
一切笑わずにタイムを見てそう言いながら部屋の奥にある椅子に向かって歩き出す女王を目で追いながら それでもタイムは笑顔で“よかった”と言ったが すぐに顔が曇る
椅子に腰掛け タイムに背を向け チラッと顔を見て なんだろうと疑問に思うタイムに 悲しみに満ちた顔を見せたあと 椅子に顔を埋め泣き出す
ウィルキンズがそれに対するタイムの反応を心配していると 思った通り愛する人がなぜ泣いているのかわからず 側に寄り添い優しく声をかける
タイム「どうしたんだ なぜ泣いているんだ…?」
女王「私の願いを叶えてくれないのね」
タイム「私にできる限りを君に…つくしたじゃないか 城を作って 従者を生み出して…」
女王「えぇそうよ でも…ね 私の…大きな頭脳と…あなたのクロノスフィアがあれば…過去も未来も支配できるのに…」
タイムは思わず女王から目を逸らし ウィルキンズの方を見る
クロノスフィアという単語が出てウィルキンズも気まずそうだ この会話は過去何度も聞いているが その度話題を逸らしたり 別のものでその場を収めたりと 大変だった様子しか見ていない
タイム「いくら言われてもダメなんだ ほら…ドードー鳥の剥製とかウィルキンズとか…他のものならいくらでもあげよう けど クロノスフィアはダメだ…」
女王「叶えてくれないのね!私の…願いを あなたでさえも!誰も私を愛してくれない…!」
怒りながら立ち上がった女王を宥めようとするが うまくいかない 女王の機嫌は完全に悪くなった どんな愛の言葉も贈り物も クロノスフィア以上のものはないと女王に言われても タイムとしては答えられない
その時 タイムの後頭部に見える機械部分から火花が散る
タイム「…大時計が」
ゼロとトビーは顔を見合わせた タイムは書斎から走り出す
ゼロは手を横に振る すると景色がぐんぐん大時計の方へ近づく
大時計へ辿り着くとセカンズたちが慌ただしく集まっていた 彼らはいくつかのグループになり どんどん合体しミニッツになる
緊急時の戦闘態勢…それはクロノスフィアが台座から奪われたことを意味する
台座の上にはアリスがいた その手の中にはクロノスフィアが握られている
先ほどウィルキンズに入ってきたところから出て行くよう言われていたが そのウィルキンズがタイムに呼ばれてその場を去り 女王を迎えに行った 彼女はその隙に大時計へこっそり入り込んだのだ
トビー「…これは」
ゼロ「主人公に盗られた」
トビー「ど…どんな物語なんです 以前アンダーランドを救った主人公が 今度はアンダーランドを危険に晒すんですか…?」
ゼロ「友達のためだと さっき言ってた 理由はそれだ 過去に戻って 友人の家族を助けようとしている…死んだ家族を」
トビー「…僕らと 同じことを?」
友人であるテナルディエの死んだ家族を救うために 過去を消し時間を戻し 選択を変え 結果2人救った
アリスという主人公は友人の死んだ家族を救うためにクロノスフィアを奪ってでも使い 過去を変えたいのかと トビーは思った
その思いは理解できる 目の前で悲しみ苦しむ友人を アリスという人は放ってはおけないのだろう けれど…
トビー「クロノスフィアで過去は変えられないはずじゃ…」
ゼロ「変えられない テナルディエは元々の物語と私の力があるから設定をねじ曲げて可能にした でも本来 過ぎたものは変えられない…アリスにとってタイムが悪役である理由は…もうわかるよ」
アリスがミニッツから逃げる最中に転倒し その拍子にクロノスフィアを落としてしまった
しかしそのおかげでクロノスフィアが起動し球体の船になる
起動と同時にタイムは強い胸の痛みを感じ 走っている途中だったがその場に跪く形になった
女王も突然飛び出したタイムにどうしたのか聞きながらついてきていた
下を覗くと 離れた場所に かつての自身が王位を失う何よりの原因であり ジャバウォッキーを殺したあのアリスがいた
アリスは女王に見つかったのに気づいたが それよりも後を追いかけてきたミニッツから逃れるために急いでクロノスフィアに乗り込む
操作方法がわからなかったが 上を見ると“私を引いて”と書かれたチェーンがぶら下がっている 思いっきり引っ張ると クロノスフィアは勢いよく回転し 浮かぶ上がる
タイムは必死で止めるように訴え ミニッツたちに急いで捕まえるよう命じる
しかしアリスは操縦レバーを思い切り引き クロノスフィアはぐんぐん加速し タイムや女王たちのいる通路目掛けて進み あと少しでぶつかるという距離で必要速度に達し消える
女王はタイムが彼女をアリスと気づいていなかったことに怒っていた “自分の”クロノスフィアがアリスに奪われ 怒りが頂点に達した女王はタイムに向かって
女王「あいつは打ち首じゃ!!」
と叫びながら従者と共に城を去って行った
また彼女の機嫌を損ねたが 今はそれ以上の問題に対峙していた
女王が去ってすぐ また胸に痛みを感じる チョッキを開いて胸の時計を確認するとすでにひび割れからパラパラと破片が落ちている
今はまだ問題なく動く大時計だったが動力源を失えばやがてエネルギーが尽き大時計は壊れ タイムも死ぬ
だが相手は過去に戻ることを目的にクロノスフィアを盗んだ ならば同じように時間の海へ行き追いかけ捕まえなければいけない
タイム「ウィルキンズ お前たちは大時計を動かし続けろ きちんとした時間を 1秒を刻み続けろ 私はあいつを追う…ミニッツ セカンズ 板材と金属を持ってこい 即席で船を作る さぁ急げ!!」
慌ただしい城内で ウィルキンズの不安そうな声が響き…
タイム「ゼロ…見ているんだろう…私は私のすべきことをするだけだが…これが私の物語だと?なるほどな アリスから見れば 私は悪役か 目的の…邪魔をする……ゼロ!」
集会所からゼロが移動し トビーは通常の姿に戻った集会所に1人取り残された
大時計の前に集められた材料を前にタイムとゼロ ウィルキンズが立つ
ゼロ「物語の中だ あまり干渉できない」
タイム「…少し文句ぐらい言わせろ アリスめ 自分が何をしているのかわかっていない!」
タイムが時空を歪め 一瞬で即席の船を完成させる
それは船というより手漕ぎトロッコといった方がわかりやすい姿をしていた
板の上に乗るだけで真ん中に手漕ぎトロッコのハンドル部分から支柱が十字に伸び 上部で前後に棒が伸び 支柱の先端全てに何か部品が取り付けられている
ゼロ「…何も言えないのに 大変な時に呼んだって役に立てない」
タイムは船の上に立ち ハンドルを持つ
タイム「約束は守る それだけは覚えておくんだ」
ゼロ「約束…」
タイム「ウィルキンズ 頼んだぞ すぐに元に戻す」
それだけ告げ タイムはハンドルを上下に動かす
支柱の先端に付けられた部品に青い光が溜まり 部品同士の間に電流が走る光が見える 宙に浮かび スピードが増すとクロノスフィアのようにやがてそこから消えた
ゼロ「約束か…」
物語が終わった時 同じ存在になるか 今まで通りでいるか 答えると約束している
最悪時間が破壊され タイムが死に アンダーランドが終わってしまう非常事態
それでも彼は必ずクロノスフィアを取り戻し その答えを伝えると言ってくれたのかもしれない
ゼロ「…タイム 君は本当に……よし ウィルキンズ 大変だろうけど 頑張って 君らの行動が みんなの選択が 今…全ての道が不安定なこの世界を救う」
そう伝えると ゼロは城から集会所へテレポートした
END