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第五章 テナルディエ

運命の約束

出会いから15年

集会所ではテンプスが時間の流れを簡易的に線で書いた図で表した紙を広げ ゼロの隣に座っていた

テナルディエはまだ体が重いが 今自分がやるべきことのために すぐには理解できないかもしれない時間の話を聞いていた

テンプス「“Otherworldly Story”の世界を作る際 過去の歴史の構築する手間を省くために4つの物語を2つの世界へ分けてあり その世界を指定した時間と場所で壁を繋げ それをこの集会所のあるOWSの別空間へと扉と道で繋げています そしてその5つの世界全てが大元はOWSという物語世界から分かれたものになります」

OWSという物語の世界を作り それをヒューゴとトッド アリスとレミゼラブルの物語世界へと繋がる2つの時間軸に分け 全ての物語が終わり次第時間軸や世界を合流させ 元のOWSに戻す それにより物語が存在する世界の数を最大2つにまで抑えることで 他の物語世界を1つの場所に繋げるという…想造者たちからすれば不安定さを生む危険なことも 低リスクで行える…らしい

その際 時間の流れのあり方…今回の場合 過去や未来は不変なのか可変なのか それは言及されている物語があるなら それを参考に構築する

テナルディエの場合 選択によっては未来が変わるとゼロは説明していた
だがテンプスはもしかしたら違うかもしれないとだけ補足した

テンプス「…ゼロ様が観測した時点でまだ訪れていない未来に関してどうかは知りませんが 預言の書が存在する世界と繋がってるんですよ まぁそれでも想造者であるゼロ様の力が優先されますから テナルディエの選択だけは未来を可変性のあるものにした可能性はありますけど…それでもロザリー・テナルディエが死ぬか死なないかぐらいなもんですよ」

この話の上で テンプスが言いたい問題の設定
すでに出たが それはつまり “Alice through the looking glass”世界における時間のあり方だった

ゼロ「あ」
ティナ「あってなんだおい」
テンプス「なぜそこを失念したまま契約しちゃったんですか…」
ティナ「それの何が問題か説明しろよ…!」
テンプス「つまり起こった出来事は不変 あの物語は時間に関係する話だから その辺り明確なんだ」

預言の書なんてものが存在するくらいだから 未来は初めから決まっていて 逆に過去に戻り変更することもできないということで 不変の世界 もちろん最初に作る時 Attlgの元になるOWSはその設定の通りになっている 元がそうなので 他全ての世界もそうなっている

テンプス「それでもゼロ様の力があれば過去へ戻れるし変えられるだろう だがそれはもう違う世界だ つまりこの線から レミゼラブルだけ道が分かれて 元に戻ることもなくなる お前が時間を遡った後の元の世界が消えないからだ」

テナルディエが過去へ戻り未来が変わった世界とテナルディエが過去へ戻ったあとも残り続ける本来の道のりを歩んだ世界
2つの世界が存在することになり その内過去改変に成功した世界はタイムの世界との整合性が取れないために本来の世界軸からは分かれ やがて元に戻るOWSとも違う別の世界線になってしまう 本来はできないはずのパラレルワールドの完成だ その危険性は計り知れない

テナルディエが過去に戻る時 記憶も保持して戻るので 今のテナルディエの記憶を過去のテナルディエに上書きするような形になる
その時点で世界は2つに分かれるので 過去へ戻ったテナルディエと戻っていないテナルディエの2人が存在することになる それだとキャラクターの存在までも不安定になる 時間を巻き戻す場合も同じだ
今のテナルディエを過去のテナルディエにしてしまう場合は 過去へ戻る前の世界からテナルディエがいなくなり それはその後のアゼルマ含め物語がおかしくなる

世界がさらに分かれても危険 さらにはテナルディエをどう過去に戻そうとしても不安定になる

テンプス「なので今いる世界をどうにかしない限り 道は分かれ 危険な状態になります これは不可能でしょう」
ゼロ「…いや考える 約束は約束だ テナルディエ 明日の夜 もう一度集会所に来て欲しい ここでやる あと ギュスターヴとトビーに話をして あとは…タイムに…ちょっと協力してもらえないか聞いてくる…十中八九何言ってんだって顔されると思うけど…」
ティナ「わかった…最悪無理でも 本来できないようなことを頼んでるんだ 流石にその時は諦める アゼルマだけでも なんとか…だから」
ゼロ「全力でやる 絶対に約束は守る 彼らに君の過去を話す許可が欲しい 理由説明して 説得する」
ティナ「ギュスターヴにはどうせある程度知られてるだろうしな…どうとでもしてくれ 大した話でもない…」


テナルディエだけ集会所を出たあと テンプスはゼロの方を腕を組みながら 怒っているアピールをする

ゼロ「ちょっと軽率だった 時間ナメてた でも…ようはあの時と同じ方法でやればいいんでしょ!?」
テンプス「以前エターナルに彼らや世界を壊された時ですか」
ゼロ「そう その時…世界の修復もまともにできないほど崩壊して消えかかって タイムの世界とここを起点に とにかく エターナルの襲撃を退ける準備ができるくらいまで戻した その時のやり方 未来を…そしてすでにすぎた過去を…」
テンプス「お待ちください なるほど 説得という意味がわかりました ですがタイムが頷くとは思えない ギュスターヴやトビーは…わかりませんが…あの時こそ自分の世界のため 彼らを取り戻すために動いてくれましたが また というのは…しかもあなたの軽率な約束のせいですよ」

ゼロは否定できなかった
そもそも以前もゼロのミスによるバグの発生…しかし あまりに悲惨な世界の崩壊 彼らを失ったということもあり タイムは本来の彼では絶対にしないであろう過去と未来を変えるという時間操作を手伝ったのだ
過去は変えられない それがタイムの世界の本来の姿だというのに…だ

今回は死んだロザリーが生きている世界線にするためという理由
タイムでは絶対に協力しないような内容だ
彼は散々過去を変えようとする人間を見てきた アンダーランドの心臓とも言える万物の大時計とタイムの動力源であるクロノスフィアは 時間を旅できる船でもある 以前テナルディエたちもそれに乗り 過去の自分たちに危険を知らせにいった
しかしそれは 過去にトビーが来たからこそ知っていた 決まり決まった未来 逆にやらないといけないことだった
本来クロノスフィアが台座から失われることは世界の危機で それで過去へ戻ったとして変えられない
タイムはよく知っている 彼にとって 過去は絶対に変えられないもので 未来も予言の書の通りに進むものだと思っている
それが当たり前で 常識で なんなら過去を変えようとする奴は総じてクロノスフィアを手に入れたがっているので 彼からすれば脅威 敵になる うんざりするほど身の上話は聞かされていたのでその度追い返し 無駄なことをなぜするのかと呆れていた

だからタイムは 自由に過去を変えられるゼロの力 想造力を良く思ってはいない


ゼロ「なんとか話す とにかく やり方はこの方法しかない」
テンプス「…お供します タイムの元へ行きましょう」


ゼロは考える
この方法で過去を変える場合 時間を戻すのはタイムにやってもらうしかない 時間に関わる想造を2つ同時に行えるほど 今のゼロは想造力を使いこなせないし テンプスに関してはどちらも出来ない

テナルディエ以外は 同じことを繰り返す必要性が出てくる


ゼロ「だからタイム もう一度手を貸してほしい」
タイム「断る」

彼の書斎の中で 座るタイムとその前に立ち話すゼロ 斜め後ろにテンプスが立っている

ゼロ「難しいことなのはわかってる けど 君なしじゃできないんだ…」
タイム「…以前はアンダーランドの崩壊を防ぐために仕方なくやったんだ 本来ありえないことお前の力で…」
ゼロ「私はまだ 万能じゃない これは私とテナルディエの身勝手な願いだけれど 叶えたい…誰にだって変えたい過去があって 彼のような人だけ特別なのは…確かに不公平かもしれないけれど…それが運命…」
タイム「運命を初めからもっと誘導しておけばよかったんじゃないのか どのみち変えるくらいなら…それがお前の力だろうに」
ゼロ「…そう…その通り 言い返せないよ それは…彼が思い出すとは思ってなかったのもある 私が望んだ 運命の形が…やっぱりまだ力不足だ 全てを思い通りに出来ない」
タイム「お前は…確かにまだ未熟なんだろう 理想に実力が追いつかず 失敗してばかりだ…元々テナルディエにとって良い未来があるなら…初めから…」

ゼロとタイムの話し合いをテンプスは横で静かに聞いている 余計なことは何も言うなと言われているので 発してしまわないように じっと待っていた

ゼロは時間が無限にあり どの時間にも自由に行き来できる力を持ち 何よりいくらでもやり直しできるような力を持つ つまり基本突き進んでも 後から修正してしまえるのが当たり前だった
だからタイムとは考え方が合わない 過ぎ去った時間は修正不可能である みな等しく流れる時間は同じであるので いくら望んでも 過去は変えられない どんな時計も直せるが 命の時計は直せない

しばらく話し合いが続いた後 タイムが目を閉じ 腕を組み 深くため息をつく

タイム「お前は口が下手なんだから 想造力で私を頷かせるべきじゃないのか」
ゼロ「君の世界の理を一時的に捻じ曲げようってところで 君まで変えてやろうってのは…余計卑怯に…なると思って 君の言い分は正しい 本来過ぎた過去はどれだけ後悔しようと変えられない…それは私にも 言えること…だもんね」

目は閉じたまま めんどくさそうに話を聞く どれだけ言っても引く気は全くないらしく これ以上は時間の無駄でしか無いと思っていた
ゼロもだんだん諦め始めていた やはり勝手が過ぎることなんだと

タイム「…1人では 絶対にできないんだな」
ゼロ「たぶん 途中で時間か世界が崩壊しかねないから 1人では絶対にやろうとは…テナルディエのためだとしても そこまでの危険はおかせない 君たちのためにも…」

またため息をつき ようやく目を開け ゼロの方を見る 今度は彼女から目を逸らさず じっと何か考えていた

タイム「わかった」

そう言いながら立ち上がる

タイム「お前のために力を貸そう その代わり 私の方にも約束をしてくれ」

タイムの顔が少し優しくなると ゼロは嬉しそうに笑う

ゼロ「どんな約束を?」
タイム「この先私が答えを出すまで 想造者になるならないの話をしないことと…私がどちらを選んでも もう2度と…世界が消えるようなことはするな」

ゼロの顔が少しこわばったように見えたが それはタイムに強く睨まれた上で言われたからなのか…すぐに彼女は何度も頷いた

ゼロ「話は絶対しないよ 約束する 2個目は…なんとかやってみせる」
タイム「自信がないように見えるが」
ゼロ「いや絶対に2度と!ないようにする 私のままでいる!」
タイム「…なら明日 同じ方法で」

そう言って タイムは先に書斎を出た
ゼロは嬉しそうにテンプスの方を見る
ひとまず時間を戻す力の問題は解決した

テンプス「次はギュスターヴとトビーに説明を 私は一度白の世界へ戻り状態を確認してきます」



集会所に呼び出されたギュスターヴとトビーは テナルディエの過去に何があった上で彼が何をしたいのかを話され しばらく頭の中で色々と整理をつけていた

ダステ「それは可能ではあるんだな」
ゼロ「タイムの世界基準の 時間の仕組みは変えられなくても 方法がひとつある それでも過去を変えられるようにしてしまうから タイムにも説明した上で協力してもらえることになった」
トビー「その方法って 僕らでも理解できるような…ものなんですか?」
ゼロ「…その 単純な話 その選択をした事実を消せばいい ただ事実を消しただけじゃ同じテナルディエが同じことをするだけになる 今のティナの記憶があって始めて未来を変える別の選択肢を選べる だから…それが起きた過去を消しながらティナ自身の時間を記憶を保持しながら過去へ戻さないといけなくて…えーっと…」

ゼロはもう一度自分の中でも整理して 明日何をしようとしているのか 何を理解してもらった上で 協力して欲しいのか…話す

ゼロ「過去を消して 今のティナを今のまま連れて行く ただその場合 君たちも記憶を保持したまま過去へ戻らないといけない もちろんタイムも ティナの世界だけ別の道に行かないために 全部均等に…集会所内ですぎた1年を 全部の世界ごと戻すから…」

ロザリーを救うとなると 戻すべきなのはゴルボー屋敷での事件前 戻し過ぎるのも問題が多いのでどこまでやれるかはわからないが とにかくそこまで戻して 事件自体起きないように仕向ける…が 今ここにいるギュスターヴ トビー ゼロは事件が通常通り起きた現場を集会所で見ている その事実も消さないと 集会所での出来事含め事件が起きなかったOWSが作れない
…となると 全部の世界が戻らないといけない この場合 彼らは記憶がなくても 同じように過ごせる分問題ないのだが 彼らの過ごした時間も一度無かったことにする

トビー「僕らの記憶も保つのは難しいんですか」
ゼロ「いや 人数が増える分にはそう難しくはないけど…でも 同じ1年をまた繰り返すことになるし…さすがに…」
トビー「でも テナルディエの話を忘れたくないです 彼が何をして 過去を変えようとしたのかも」
ダステ「そうだな…私も 何も知らないでいるのは…覚えていていいなら そうしたい ちゃんと知った上で 彼とどう接するか 何を言うか 受け入れるのか…決めたい…前に言っただろ?私は彼の行く末を…見届けたい」



タイムとゼロとテンプスの言葉が ギュスターヴとトビーと過ごす時間が テナルディエの心の奥底に わずかに変わることのできる穏やかな火を灯した
全てを失い 闇の中でようやくその火を見つけた彼は 間違い全部を正せるわけではないとしても 1人の家族を救うため 過去へ戻る




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