第四章 ゼロ・イストワール
ゼロ・イストワール
出会いから13年
タイムの城の中を歩くゼロ
昔 彼と初めて会った時も この道を歩き 彼を探していた
王座に座り目を閉じる彼の前に立ち その姿を見上げる その目が開いた時 ようやく直接見ることのできた青い瞳に見惚れ 言おうと思っていた言葉を失う
彼を目の前に 話をすることができる それに緊張し 立ち尽くす
ずいぶん前のことを思い出していると 道の途中でどこかへ歩いて向かうタイムを見つける
ゼロ「タイム」
タイム「見に来たのか?」
ゼロ「何を?」
タイム「…違うのか」
それだけ言うとタイムは早歩きでどこかへ移動し始める なんのことかわからないゼロは後を追うことにした
ゼロ「どうしたの 何か問題が起きた?」
タイム「今日はフラブジャスの日だと ウィルキンズが…」
ゼロ「じゃあアリスが?」
タイム「帰ってきたのかは…ただもしそうだとしたら ようやくジャバウォッキーが…」
もうそんな頃なのかと思いながら歩く
13年経ったから 確かにその時期といえばそうだが まさか今日がその日だなんて 確認不足だった
低く弔いの鐘が鳴る
移動先を変え タイムは来た道を戻り途中を曲がる
ゼロ「私がここに映そうか それこそあの機械に映すみたいに…」
タイム「…もういい 終わるならそれでいい」
ゼロ「そう…」
生者の部屋につく タイムだけが中に入り 針の止まった時計を探す
目を閉じ 音の止まった時計を見つける
タイム「…ジャバウォッキー」
タイムはじっと時計を見る 針は止まり 中の歯車ももう動いていない
タイムには 何か見えたのか 反射的に目を閉じ 顔を逸らす
タイム「時間切れだ」
パチンッと蓋を閉じる ゼロはその間戦場の様子を見ていた 蓋を閉じた後 ジャバウォッキーは倒された
死者の部屋を後にし またタイムとゼロは歩き始める
今どこに向かっているかはわからないが 聞く気はない
ゼロ「昨日は見なかったの?」
タイム「もう見ないことにしている」
ゼロ「え?なんで…」
タイム「お前に話す必要があるのか?」
そういえば 私自身も全部は話してないなと思い その言葉に対しては そうだねとしか言えなかった
何より絶対に理由を聞いてくれるなと しっかり目を見て言われてしまった
色々と見ているうちに もうこの物語も終わりに近づいているんだと実感していく
残る物語はレ・ミゼラブルとアリス・イン・ワンダーランドだが ゴルボー屋敷に移ったという話 アリスの冒険…
集会所は昔のような 毎日楽しいような場所ではなくなっていた ピレリが死ぬ前の6年間が 一番楽しかったかもしれない まだ誰も悲しみに合わず ただ話し合っていればよかっただけの時間
ピレリは死に テナルディエはほとんど乞食のような生活を続けている
けれど物語がなければ トビーもギュスターヴも 今の幸せを得ることはなかったかもしれない
共に戦い 脅威を退けても ただ集会所が安全になっただけだ…まぁテナルディエは本来あり得ない権利を得たわけだが…
その物語の中で選択肢をあるようにみせて 初めから一本しかない道を選ばせるのが想造者だ 物語の中で生きていたら まるで自分の選択のように思えるが 全て予定調和でしかない
ただ現実化したキャラクターは時に想造者の予想を裏切り 望んだ未来を手にすることもある
テナルディエのように 作り上げた時に複数の道がある場合がある
元の物語がある世界だが 彼だけ作り上げる際に色々と混ぜた 本来の彼だと 到底ここで友人になり 仲良くなるなんてできはしないだろうと
彼はテナルディエであって テナルディエでは…
ゼロ「(ダメだ テナルディエのことばかり考えてもその時が来ないとどうにもならないじゃないか…)」
考えごとをすると いつも話が勝手に転がり 余計なことばかり考えてしまう
他のことを考えようと タイムに話しかける
ゼロ「ねぇ 最初に私がテンプス連れて行った時のこと覚えてる?」
タイム「忘れるわけがないだろう 斬りかかってきたんだぞ」
ゼロ「そ…そういえばそうだったね…」
100年近く前
ゼロがタイムに再び会いに行くと 非常に嫌そうな顔をされたが 無理に追い返すことはしなかった
しかしテンプスがどこからか勝手に現れ 手にした剣でタイムに斬りかかる
タイム「なんなんだお前は…」
テンプスの攻撃は空振りしていた
タイムもゼロもその場から動いてはいなかったが 彼の手から剣が消え 何も持たない腕を振っただけになったのだ
テンプス「…何が起きた なぜお前が…剣を」
テンプスの剣はタイムが持っていた
切先を下に向け ジロッとテンプスを見る
唖然とするテンプスだが ゼロの方を見ると彼女はため息をついて呆れ顔をされる
この事態になっても 焦る様子もない
タイム「どうしてお前の守人が私を斬りつけようとする」
ゼロ「君の話をしたら 勝手に危険人物扱いしてて…言い聞かせてきたんだけど 効果なかったみたい…申し訳ない」
時間を止めている間に守人に関する説明は済んだようだった
タイムは至って冷静だが テンプスは何も理解できていなかった
時間を操作されたというのはもちろんそうだろう しかしそれは 同じ時間であるテンプスは即対策しようがある まず操作不可能である場合が多い
そうでないにしても…力を使う反応を感知すれば…だがもうそんな次元ではない 発動のタイミングが全くわからない こっちを向く時にはもう時間が止められていたことになる
ゼロ「彼 私の時間止めたって話したよね…なんで信じないの…」
タイム「…そんなにおかしなことだったのか」
ゼロ「ここの時間が君だとしても…想造者以外からの時間操作は影響ないはずなんだけどね…」
テンプス「危惧していた通りじゃないですか主!」
ゼロ「…だとしても危険じゃない」
タイム「まさかこれから会わされる連中はこんな奴じゃないだろうな」
ゼロ「流石に違う」
二度目はないとだけ凄み タイムはテンプスに剣を返した
普通に武器を返してきたので テンプスは驚いていたが タイムは気にせず仕事に戻って行った
…その話を聞いたギュスターヴとトビーは横で気まずそうに話を聞くテンプスをゼロのような呆れ顔で見ていた
彼らに出会いについて聞いてみたら まさか初対面がそんな酷い有様だったとは…
トビー「どうしていつもそうなんですかテンプス…」
テンプス「お…お前たち相手には斬りつけなかっただろう」
ゼロ「基本バグ退治と時間管理しかしてないからかそのあたりの感覚おかしいよね…タイムとの一件でちょっとマシになったけど…」
テンプス「どれだけこちらが力に影響を受けるか確かめただけです…」
ダステ「急に攻撃されたのにタイムはよく許したな」
ゼロ「ほんとにね…」
3人の目線がチクチク刺さったテンプスは 小さくスミマセンでした…とだけ言い その場から消えた
トビー「それで…その前のゼロとタイムが会った時はどんな感じだったんですか?」
ゼロ「私の時は…色々説明してたら 体の時間止められて 欲しいのはその説明じゃない いい加減にしろって怒られた」
トビー「2人ともタイムとの初対面失敗してるんですね…」
ギュスターヴの方は そういえば 最初に会った時 やけに馴れ馴れしいし 訳の分からない説明ばかりされたし わからないのは仕方ないよなぁみたいな顔されたし その他色々印象最悪ではあったな…と思っていた
テンプスは言わずもがな
トビー「…でも どうしてタイムだけ100年前に会ったんですか?」
ゼロ「あー…いや 私が間違えただけなんだけど…トビーの世界の年代基準で考えてたら そもそも君の時代勘違いしてて 結果的に100年早くこの場所を開いて…いや この話はやめよう」
途中まで話して 顔が暗くなる
何か話せないようなことがあったのか この場所を100年早く開いたせいで起こることがなんなのか想像もできないので 考えようがないが
とにかくゼロはそれ以上口を開かないので知りようがなかった
ゼロ「話変わるけど…エターナルの攻撃さ 結局テンプス以外の誰も受けてないよね」
トビー「思えば僕 名字変わってたんでした」
ゼロ「名字が?なんで?」
トビー「リドルフォの養子になったので」
となると エターナルに致死攻撃されても 問題なかったということになる
本名にフルネームに名字変更に…なるほど 吹き飛ばされる危険性以外に関しては 鉄壁だった可能性がある
トビー「今はトビアス・ピレリです」
ゼロ「そっか ピレリか…」
ダステ「だからあの時通じなかったのか…」
納得いったところで 今日は解散 ということになった
…100年早くこの場所を開いたことに気づいたのは もう手遅れになった頃だった
トッドの扉は時代がその分早く設定されていたが 他の扉はトッドの世界に合わせて年代を設定しているため 今と同じだった
それが良くなかった 不具合が起きた
あの日のことを思い出すと 胸が苦しくなる
初めて目を覚まして 全てを聞かされた時のように
自分のしたことの結果に 胸を痛める 過ちを繰り返してしまったことに気づく もう取り返しがつかないと思っていた
あの楽しい時間は 帰ってこない なんとか修復はできたが 崩壊の原因には逃げられた 元凶である自分は とにかく必死だった
次は逆にもっと救える術はないかと作り変えた 出会いの全てを忘れ もう一度やり直そうと
続くはずだったものを 途中で終わらせてしまったから
今度こそ 最後まで…
城の中で 集会所のある斜塔の方を見ながら テンプスはため息をつき タイムに話しかける
テンプス「これが仮に失敗したら どうすると思う」
タイム「さすがにもうやり直さないだろう」
テンプス「あの方に限界が来たらどうなるか 知っているだろう」
タイム「そんなことで いちいち傷つくのか?望んだものなのに 簡単に手放すのか?」
テンプスは目を細め 過去を思い出す
タイムに伝わるように 舌打ちをする
テンプス「手放すから 困っているんだろう あの設定があるから選択できる」
タイム「…その時に私が側にいれば止めてやろう」
テンプス「そんなことできない」
タイム「お前ですら できないからか?」
テンプス「黙れ 今度こそ斬るぞ」
タイム「次やれば容赦しないつもりだ」
悔しそうにタイムを睨むが 彼には一切効果はない
テンプスは時計を取り出し 時間を確認する また時計をしまい 余裕そうな表情で見下ろすタイムをもう一度 ギッと睨む
タイム「…ゼロは本当に私たちと友人になりたくてこの世界を作ったのか?」
テンプス「もちろん それが一番の理由だ だが あの方は昔から物語の世界に強い憧れを持っている 想造者はまさに理想の存在だ 頭の中にある世界が現実になり そこに触れることができる あの方はずっと望んでいた お前たちに会うことを…」
タイム「何が…彼女をそうさせるんだ」
テンプス「…ただ一つの 強い感情だけだ」
集会所の中では 今きっとまた明るい話をするよう努めているのだろう
無理やり彼らを集会所に集める形になっても友人になろうと必死だった彼女を憐れんで 仕方なく仮の友人となることを提案したギュスターヴの気持ちを タイムも少しだがわかった気がした
そんなに必死になるようなことなのか その価値があるのか
幸と不幸を目の当たりにし それでも本来の物語の道筋を望む
タイム「よく見ていられる…」
テンプス「想造者は本来そういう存在だ 全部物語 虚構だ 私たちにとってだけ全ては現実なんだ 毎日はページをめくるようなもの 幸も不幸も画面の上でのこと お前とはまた…感じ方が違うのは当然だ あの方は…特別変わった人だがな…」
結局よくわからないと思った
辻褄が合うようで 何かおかしな点があるような気がする
完璧ではないから不具合が起こる 完璧なんてものこの世にないが それにしても作りが甘いようにも思える面が見えることがある
世界は全て思い通りになることはないと そういうことなのだろうか
タイム「…そういうものなんだな」
テンプス「そういうものだ」
今日も 集会所に彼らは集まる
それを彼女が望んだから
それを彼らが受け入れたから
壁を抜け 白い道を進み 扉を開ける
ゼロ「…今日はおしまい」
本を閉じる
END
出会いから13年
タイムの城の中を歩くゼロ
昔 彼と初めて会った時も この道を歩き 彼を探していた
王座に座り目を閉じる彼の前に立ち その姿を見上げる その目が開いた時 ようやく直接見ることのできた青い瞳に見惚れ 言おうと思っていた言葉を失う
彼を目の前に 話をすることができる それに緊張し 立ち尽くす
ずいぶん前のことを思い出していると 道の途中でどこかへ歩いて向かうタイムを見つける
ゼロ「タイム」
タイム「見に来たのか?」
ゼロ「何を?」
タイム「…違うのか」
それだけ言うとタイムは早歩きでどこかへ移動し始める なんのことかわからないゼロは後を追うことにした
ゼロ「どうしたの 何か問題が起きた?」
タイム「今日はフラブジャスの日だと ウィルキンズが…」
ゼロ「じゃあアリスが?」
タイム「帰ってきたのかは…ただもしそうだとしたら ようやくジャバウォッキーが…」
もうそんな頃なのかと思いながら歩く
13年経ったから 確かにその時期といえばそうだが まさか今日がその日だなんて 確認不足だった
低く弔いの鐘が鳴る
移動先を変え タイムは来た道を戻り途中を曲がる
ゼロ「私がここに映そうか それこそあの機械に映すみたいに…」
タイム「…もういい 終わるならそれでいい」
ゼロ「そう…」
生者の部屋につく タイムだけが中に入り 針の止まった時計を探す
目を閉じ 音の止まった時計を見つける
タイム「…ジャバウォッキー」
タイムはじっと時計を見る 針は止まり 中の歯車ももう動いていない
タイムには 何か見えたのか 反射的に目を閉じ 顔を逸らす
タイム「時間切れだ」
パチンッと蓋を閉じる ゼロはその間戦場の様子を見ていた 蓋を閉じた後 ジャバウォッキーは倒された
死者の部屋を後にし またタイムとゼロは歩き始める
今どこに向かっているかはわからないが 聞く気はない
ゼロ「昨日は見なかったの?」
タイム「もう見ないことにしている」
ゼロ「え?なんで…」
タイム「お前に話す必要があるのか?」
そういえば 私自身も全部は話してないなと思い その言葉に対しては そうだねとしか言えなかった
何より絶対に理由を聞いてくれるなと しっかり目を見て言われてしまった
色々と見ているうちに もうこの物語も終わりに近づいているんだと実感していく
残る物語はレ・ミゼラブルとアリス・イン・ワンダーランドだが ゴルボー屋敷に移ったという話 アリスの冒険…
集会所は昔のような 毎日楽しいような場所ではなくなっていた ピレリが死ぬ前の6年間が 一番楽しかったかもしれない まだ誰も悲しみに合わず ただ話し合っていればよかっただけの時間
ピレリは死に テナルディエはほとんど乞食のような生活を続けている
けれど物語がなければ トビーもギュスターヴも 今の幸せを得ることはなかったかもしれない
共に戦い 脅威を退けても ただ集会所が安全になっただけだ…まぁテナルディエは本来あり得ない権利を得たわけだが…
その物語の中で選択肢をあるようにみせて 初めから一本しかない道を選ばせるのが想造者だ 物語の中で生きていたら まるで自分の選択のように思えるが 全て予定調和でしかない
ただ現実化したキャラクターは時に想造者の予想を裏切り 望んだ未来を手にすることもある
テナルディエのように 作り上げた時に複数の道がある場合がある
元の物語がある世界だが 彼だけ作り上げる際に色々と混ぜた 本来の彼だと 到底ここで友人になり 仲良くなるなんてできはしないだろうと
彼はテナルディエであって テナルディエでは…
ゼロ「(ダメだ テナルディエのことばかり考えてもその時が来ないとどうにもならないじゃないか…)」
考えごとをすると いつも話が勝手に転がり 余計なことばかり考えてしまう
他のことを考えようと タイムに話しかける
ゼロ「ねぇ 最初に私がテンプス連れて行った時のこと覚えてる?」
タイム「忘れるわけがないだろう 斬りかかってきたんだぞ」
ゼロ「そ…そういえばそうだったね…」
100年近く前
ゼロがタイムに再び会いに行くと 非常に嫌そうな顔をされたが 無理に追い返すことはしなかった
しかしテンプスがどこからか勝手に現れ 手にした剣でタイムに斬りかかる
タイム「なんなんだお前は…」
テンプスの攻撃は空振りしていた
タイムもゼロもその場から動いてはいなかったが 彼の手から剣が消え 何も持たない腕を振っただけになったのだ
テンプス「…何が起きた なぜお前が…剣を」
テンプスの剣はタイムが持っていた
切先を下に向け ジロッとテンプスを見る
唖然とするテンプスだが ゼロの方を見ると彼女はため息をついて呆れ顔をされる
この事態になっても 焦る様子もない
タイム「どうしてお前の守人が私を斬りつけようとする」
ゼロ「君の話をしたら 勝手に危険人物扱いしてて…言い聞かせてきたんだけど 効果なかったみたい…申し訳ない」
時間を止めている間に守人に関する説明は済んだようだった
タイムは至って冷静だが テンプスは何も理解できていなかった
時間を操作されたというのはもちろんそうだろう しかしそれは 同じ時間であるテンプスは即対策しようがある まず操作不可能である場合が多い
そうでないにしても…力を使う反応を感知すれば…だがもうそんな次元ではない 発動のタイミングが全くわからない こっちを向く時にはもう時間が止められていたことになる
ゼロ「彼 私の時間止めたって話したよね…なんで信じないの…」
タイム「…そんなにおかしなことだったのか」
ゼロ「ここの時間が君だとしても…想造者以外からの時間操作は影響ないはずなんだけどね…」
テンプス「危惧していた通りじゃないですか主!」
ゼロ「…だとしても危険じゃない」
タイム「まさかこれから会わされる連中はこんな奴じゃないだろうな」
ゼロ「流石に違う」
二度目はないとだけ凄み タイムはテンプスに剣を返した
普通に武器を返してきたので テンプスは驚いていたが タイムは気にせず仕事に戻って行った
…その話を聞いたギュスターヴとトビーは横で気まずそうに話を聞くテンプスをゼロのような呆れ顔で見ていた
彼らに出会いについて聞いてみたら まさか初対面がそんな酷い有様だったとは…
トビー「どうしていつもそうなんですかテンプス…」
テンプス「お…お前たち相手には斬りつけなかっただろう」
ゼロ「基本バグ退治と時間管理しかしてないからかそのあたりの感覚おかしいよね…タイムとの一件でちょっとマシになったけど…」
テンプス「どれだけこちらが力に影響を受けるか確かめただけです…」
ダステ「急に攻撃されたのにタイムはよく許したな」
ゼロ「ほんとにね…」
3人の目線がチクチク刺さったテンプスは 小さくスミマセンでした…とだけ言い その場から消えた
トビー「それで…その前のゼロとタイムが会った時はどんな感じだったんですか?」
ゼロ「私の時は…色々説明してたら 体の時間止められて 欲しいのはその説明じゃない いい加減にしろって怒られた」
トビー「2人ともタイムとの初対面失敗してるんですね…」
ギュスターヴの方は そういえば 最初に会った時 やけに馴れ馴れしいし 訳の分からない説明ばかりされたし わからないのは仕方ないよなぁみたいな顔されたし その他色々印象最悪ではあったな…と思っていた
テンプスは言わずもがな
トビー「…でも どうしてタイムだけ100年前に会ったんですか?」
ゼロ「あー…いや 私が間違えただけなんだけど…トビーの世界の年代基準で考えてたら そもそも君の時代勘違いしてて 結果的に100年早くこの場所を開いて…いや この話はやめよう」
途中まで話して 顔が暗くなる
何か話せないようなことがあったのか この場所を100年早く開いたせいで起こることがなんなのか想像もできないので 考えようがないが
とにかくゼロはそれ以上口を開かないので知りようがなかった
ゼロ「話変わるけど…エターナルの攻撃さ 結局テンプス以外の誰も受けてないよね」
トビー「思えば僕 名字変わってたんでした」
ゼロ「名字が?なんで?」
トビー「リドルフォの養子になったので」
となると エターナルに致死攻撃されても 問題なかったということになる
本名にフルネームに名字変更に…なるほど 吹き飛ばされる危険性以外に関しては 鉄壁だった可能性がある
トビー「今はトビアス・ピレリです」
ゼロ「そっか ピレリか…」
ダステ「だからあの時通じなかったのか…」
納得いったところで 今日は解散 ということになった
…100年早くこの場所を開いたことに気づいたのは もう手遅れになった頃だった
トッドの扉は時代がその分早く設定されていたが 他の扉はトッドの世界に合わせて年代を設定しているため 今と同じだった
それが良くなかった 不具合が起きた
あの日のことを思い出すと 胸が苦しくなる
初めて目を覚まして 全てを聞かされた時のように
自分のしたことの結果に 胸を痛める 過ちを繰り返してしまったことに気づく もう取り返しがつかないと思っていた
あの楽しい時間は 帰ってこない なんとか修復はできたが 崩壊の原因には逃げられた 元凶である自分は とにかく必死だった
次は逆にもっと救える術はないかと作り変えた 出会いの全てを忘れ もう一度やり直そうと
続くはずだったものを 途中で終わらせてしまったから
今度こそ 最後まで…
城の中で 集会所のある斜塔の方を見ながら テンプスはため息をつき タイムに話しかける
テンプス「これが仮に失敗したら どうすると思う」
タイム「さすがにもうやり直さないだろう」
テンプス「あの方に限界が来たらどうなるか 知っているだろう」
タイム「そんなことで いちいち傷つくのか?望んだものなのに 簡単に手放すのか?」
テンプスは目を細め 過去を思い出す
タイムに伝わるように 舌打ちをする
テンプス「手放すから 困っているんだろう あの設定があるから選択できる」
タイム「…その時に私が側にいれば止めてやろう」
テンプス「そんなことできない」
タイム「お前ですら できないからか?」
テンプス「黙れ 今度こそ斬るぞ」
タイム「次やれば容赦しないつもりだ」
悔しそうにタイムを睨むが 彼には一切効果はない
テンプスは時計を取り出し 時間を確認する また時計をしまい 余裕そうな表情で見下ろすタイムをもう一度 ギッと睨む
タイム「…ゼロは本当に私たちと友人になりたくてこの世界を作ったのか?」
テンプス「もちろん それが一番の理由だ だが あの方は昔から物語の世界に強い憧れを持っている 想造者はまさに理想の存在だ 頭の中にある世界が現実になり そこに触れることができる あの方はずっと望んでいた お前たちに会うことを…」
タイム「何が…彼女をそうさせるんだ」
テンプス「…ただ一つの 強い感情だけだ」
集会所の中では 今きっとまた明るい話をするよう努めているのだろう
無理やり彼らを集会所に集める形になっても友人になろうと必死だった彼女を憐れんで 仕方なく仮の友人となることを提案したギュスターヴの気持ちを タイムも少しだがわかった気がした
そんなに必死になるようなことなのか その価値があるのか
幸と不幸を目の当たりにし それでも本来の物語の道筋を望む
タイム「よく見ていられる…」
テンプス「想造者は本来そういう存在だ 全部物語 虚構だ 私たちにとってだけ全ては現実なんだ 毎日はページをめくるようなもの 幸も不幸も画面の上でのこと お前とはまた…感じ方が違うのは当然だ あの方は…特別変わった人だがな…」
結局よくわからないと思った
辻褄が合うようで 何かおかしな点があるような気がする
完璧ではないから不具合が起こる 完璧なんてものこの世にないが それにしても作りが甘いようにも思える面が見えることがある
世界は全て思い通りになることはないと そういうことなのだろうか
タイム「…そういうものなんだな」
テンプス「そういうものだ」
今日も 集会所に彼らは集まる
それを彼女が望んだから
それを彼らが受け入れたから
壁を抜け 白い道を進み 扉を開ける
ゼロ「…今日はおしまい」
本を閉じる
END