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第四章 ゼロ・イストワール

テンプス・ホルロージュ・パンデュール

出会いから13年

ようやく部屋を借りることができたテナルディエ…今はジョンドレットを名乗る一家はオピタル大通りにあるあばら屋に住んでいた

テンプス「ゴルボー屋敷にしたのか」
ティナ「急に出てくるんじゃねぇよ!」

壁を繋げた途端 テンプスが中から出てきた
オピリタル大通りから少し離れたひと目につかない小路を選んでいたから問題なかったが 待ち構えていたのか偶然繋がったのを見たのか

ゼロといい 心臓に悪い連中だと心の中で舌打ちしながら テンプスを壁の中へ押し込もうとする

テンプス「静かにしろ…見つかるじゃないか…どこに壁を繋げたかと思えば…ずいぶん陰湿なところだな」
ティナ「悪かったなこんな場所にしか住めなくて…」
テンプス「真冬に橋の下で寝てると知った時よりは驚かないな」
ティナ「どうせ助けてくれねぇならごちゃごちゃ言うんじゃねぇというか帰れ!」

押し込もうとするテナルディエの腕を掴み 壁のなかへ引きずりこむ 体勢を崩すのもお構いないしに集会所へ向かう

テンプス「もちろん私はお前は助けない 不幸にもお前の家族となった奴らの方が まだ助ける気になる」
ティナ「何してんだよ俺はこれから…」
テンプス「どうせ悪事をするくらいなら 私の仕事を手伝え まともな仕事に正しい報い…それくらいならしてやる…あぁお前たちの神は お前を許すのだろうか」
ティナ「俺らの神はゼロだろ 全部 ゼロだ」

集会所についたが テンプスはテナルディエの発言に怒り出し そのまま立ち止まって説明を始めた

テンプス「主は神ではない 想造者だ 一緒にするな あの方はお前たちの信仰の対象じゃない ギリシャ神たちだって 想造者とは別の存在として いるのだから」
ティナ「…神話も物語扱いなのか」
テンプス「…そのあたりはよくわからないが 信仰と主は別だ 神が世界を作ったなら その神を存在するという現実自体を作るのが主だ 神の神でもない 想造者は想造者だ」

テンプスが集会所の机の上に広げた紙を指差す
そこに書かれた内容を ゆっくりとだが読む
運命の契約書…

テンプス「主に頼まれていたことがあってな お前との契約を確実なものにするため サインしてくれ あと血を」
ティナ「血?」
テンプス「名字しか書けないなら 一滴の血がいる 私がとってやるから 痛みはないぞ」
ティナ「…そうかい」

テンプスに言われる通り契約書にサインをする
そしてテンプスが一滴分の血を抜き 契約書に垂らす
血は名前を書いたインクと混じる

テンプスはため息をつきながら間違いはないか確認し くるくると紙を丸め 一瞬で消してしまう…どこかに転送したのだろうか

ティナ「テンプスはどうしてあいつに従ってるんだ あいつが嫌がってる様見てると 望んでお前をそうしたわけじゃなさそうだが」

テンプスはパァっと明るい顔になる 聞くかそれを?とうきうきしている
想造者を褒め出すと長いし面倒だが ゼロやテンプスのことを知るいい機会だ
奴らばかりこちらのことを知っているのは 気に食わない

テンプス「あの方は始まりの想造者 最も強い想造力 全てを作り上げた存在 そして 決して裏切らない守人として私をご自身の世界唯一のキャラクターとして生み出した 私は想造者以外で唯一 想造者の記憶が消えようと消えたりしない守人だ」
ティナ「それはすごい…な」

テナルディエはよくわかっていない

テンプス「私は契約を交わしていない 私は心からあの方を守りたいと思っている あの方のおかげで 私は生まれることができたのだから…」

そこまで話したところで笑顔が消える
話しているうちに 何か別の 嫌なことでも思い出したのだろうか

テンプス「だが本当に 主の厄介な設定さえなければ…」

いつも明るく話すのに 暗い顔を見せる
彼女に文句を言う時も ほんの軽い思いでしかないとアピールするように 冗談ぽく怒ってみせるのに 心の底からの文句が出てきた ただ意味はよくわからないが…

テンプス「…主は退屈を凌ぐため そして孤独を埋めるため 世界を生み出す だがあの方は悪役の方を好むのがな…」

テンプスはため息をつき テナルディエの方を見る
お前のことでもあるんだぞと 目で訴える

テンプス「主はどうしてお前を助けようとするんだか…エターナルがお前に近づいたとはいえ…想造力を使えば…」
ティナ「なんでお前はそんなに俺を嫌うんだ」
テンプス「私はな 守人として使命を果たすため 守ってやることにはしたが やはりお前とピレリは理解できん」

最初に会った時から嫌悪感をあらわにされるが あまりに露骨でこっちも嫌になる程だ

テンプス「共に戦ってくれたことには感謝している だが私はお前のような悪人を受け入れるわけにはいかない 主がなぜお前のような悪党を好み ここへ呼ぶのか理解できない 全くもって…」

そんなふうに言われて気分がいいはずがない テナルディエはテンプスに文句を言おうと彼を睨みつける

テンプス「テナルディエ なぜそんな顔ができる 私が何か間違ったことを言ったか お前は自分が今まで何をしてきたか理解しているだろう」

そう言われ テナルディエは何も言い返さない
友の誰もが 彼のやることを否定したことはなかった 肯定したこともない いつも流してきた その全てを

テンプス「物を盗み人を騙し少女を苦しめ哀れな母を追い詰め 挙句血のつながった家族まで冷たく当たる なぁテナルディエ 貧困はお前たちだけのせいじゃないかもしれない…それでも今のままでは全て失う」
ティナ「……黙れ」
テンプス「ゼロ様たちは甘い 家族への仕打ちを見てみろ なぜお前はあの日…パリを出た」
ティナ「黙れ!テメェに何がわかる!この苦しみを 味わったこともねぇだろうが!全部知ってやがるな!?あの日のことを知ってやがる!」

テンプスが強く叫びそうになり 一度自分を落ち着かせる 何を言っても響かない相手だとして ただおちていく姿を見過ごせなかった

テンプス「大切にすべき物を誤るな 間違った道を歩めば 途端に全て失う 行動次第だテナルディエ 何を大切にするのか 守るべきものは何か…理解していなければ クロノスフィアはすぐに奪われただろう」

テンプスは 生まれた時から守人だった
常に守人としての役目を持ち ゼロを守り キャラクターたちを救ってきた
全ての物語を知っている 管理のために その過去も全て

ティナ「大事なのは 金だ」
テンプス「金か 今のお前では そうだろう」
ティナ「じゃあなんだ 助けてくれるってのか?金がないんじゃ何もできない 俺はな 今日生きるので精一杯なんだよ ようやく寝床にありつけたが それだけだ この先のことなんか…未来を見る余裕のある守人様は羨ましい限りだ 俺の手に残る金なんざない!」
テンプス「時計はどうした」

テナルディエは ポケットに手を伸ばす
懐中時計と一本のナイフが 彼の持ち物だった

ティナ「……ボロボロだ 値がつかねぇ ガラクタだ」
テンプス「だがお前にとってはどうだ テナルディエ…余裕がないのは…わかる だがよく思い出せ 若い頃のお前の思いを…私だってな 苦しむ姿が見たいわけじゃないんだ 救えるなら救いたい だが私は慈善家じゃないし 徳を積むためにお前に金や物を渡すようなこともできない」
ティナ「…慈善家ね…確かにお前はそんなことしないだろうよ」
テンプス「考えを変えろ 危険を犯すばかりではいつか終わりが来る」
ティナ「は…なるほど」

慈善家か とテナルディエは小さく呟く

テンプス「さて…話を戻すが 資料整理の手伝いはしてくれるか」
ティナ「タバコをくれりゃあやってやる」
テンプス「…紙とペンをと思ったんだが」


テンプスがテナルディエと別れて数時間後 ゼロが城に戻ったテンプスの元へやってきた

ゼロ「君 テナルディエに何を言ったの」
テンプス「警告を少し 運命を変えるために過去へ戻るくらいなら 最初から道を正すべきでしょう」
ゼロ「未来を知られる可能性があった 別のところに思考を移せたからよかっただけで…」
テンプス「ゼロ様 あなたはテナルディエを救いたくはないのですか」
ゼロ「…今更遅いよ 舞台は整った 道はひとつだ」

しばらく黙っている時間が続いた後
テンプスはゼロの前に跪く

テンプス「主 私はずっとあなたについていきます 例え…何度記憶が消えようと その度世界の修復を手伝いましょう 今のあなたが私を作ったあなたでなくとも 必ず…」

ゼロは何も返さない 強く拳を握り 口は固く閉じられている

テンプス「ですが危険をそのまま野放しにするのは見過ごせません 私は何度あなたを失えばいいのか」
ゼロ「危険って何さ 今のところ確認できているバグは全部排除したじゃないか」
テンプス「タイムのことです もちろんお忘れではないでしょう 我々が会った日のことを…」
ゼロ「彼は危険じゃない 友達だよ」
テンプス「本来接触すべきではないはずです 時間は人の友ならず…想造者にとっても脅威でしかない 彼はあなたを友人とは思っていないでしょう」
ゼロ「それは…もういいよ やっぱり君は…守人でしかない」
テンプス「そうでなければ あなたはまた 同じことを繰り返す…それでは 仕事に戻ります」

ゼロはテンプスの城から集会所に戻る
誰もいない 静かな部屋の中


目覚めた時 森の中だった
側にはテンプスと 守人をしていた想造者
嫌な記憶だ

ゼロ「…テンプスが謝ってこないなんてな…それだけタイムが…はぁ…あんまり考えたくない…」

タイムか…と思い 彼の城の中へ向かう
この城に初めて足を踏み入れた日…

こっちも いい思い出かと言われると そうでもないのかもしれない…


END
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