第三章 ギュスターヴ・ダステ
リドルフォと会う
出会いから9年
9月ごろ トビーは意を決してリドルフォに友人の話をすることにした
あれ以来話すことも避けていたが 彼が知りたいと思うなら 会いたいと言うなら
これまでの恩もある ぜひそうしたい
しかしそれを教えるということは この世界が物語の世界で 誰もが運命を避けられず そしてピレリの死が 最初から決まっていたことも含め 知るということにも繋がりかねない
トビーは それを気にして生きてはいなかった 何より物語は終わり きっとここからは自由なんだと思っていたかった
リドルフォがそれを知った時 どう思うかはわからなかった ギュスターヴはそれでも自分の選ぶ道で運命は関係ないと思っているが テナルディエは全てがゼロの思い通りだと思っている
実際 現実となった物語の世界で 話の内容以外の部分に関してはゼロは関わっていない
過去の出来事は物語の内容に繋がるための運命だったのが 物語は物語で 過去は一部の出来事を除き それぞれの選択によって起きたことなのか
運命というものの扱い ゼロの意思はどこまで反映されているのか
それによって捉え方も変わる
けれど そんなことを 突然知ることになるとして 果たしてそれはいいことだろうか
リドルフォに教えれば いずれ…
だから伝えられないでいた 何年経っても 考えないようにする 以外方法のないこの問題を リドルフォにも知らせていいのだろうか
トビーは彼らのことを良き友人だと思っていた
友人と接するピレリをリドルフォは知らない
なにより自分にも仲のいい友達がいるのだと伝えたかった
彼を安心させたかった 今 幸せなんだと思って欲しかった
ある夜 食事が終わった後 トビーはリドルフォを呼んだ
トビー「あの リドルフォ 実はピレリさんがあなたに伝えていた友達について話が…」
リドルフォ「あぁあの…」
トビー「実は…会えるかも…ということになってその…別の場所に住んでいるので時間がかかったんですが」
恐る恐る話すトビーに対し リドルフォは優しい顔で話を聞いてあげていた
トビー「ですが あの人たちに会うというのは あなたが知りたくないかもしれない 事実を…知ることになるんです 僕らのいる世界に…ついてとか」
リドルフォ「…よくわからないが それは何か悪いことなのか?」
トビー「良いのか悪いのかもわかりません どう思うかはリドルフォ次第になります でもあの人たちは僕の友達でもあるんです いい人……ばかりではないですが 僕にとっては良い友達なんです それだけは…確かです」
リドルフォは少し考える
トビーが話すということはきっと会わせたいという思いがどこかに確実にあるはずで となるとリドルフォとしては結果がどうであれ 会いに行った方がトビーも喜ぶかもしれないので そうしたかった
リドルフォ「わかった それは頭に入れておこう だが何より 君の友達に会えるというなら 私も嬉しいよ だからぜひ…ね」
トビー「本当ですか!?実は今夜 3人は来ることがわかってるんです 行きましょう 最初は驚くかもしれないですが…!」
トビーはリドルフォをピレリの部屋に連れて行く 何の準備があるのだろうかと思いながらもリドルフォはついていった
トビー「壁の向こうの友人…なので居るのも壁の向こうです」
リドルフォ「…何かの比喩ではなく 実際にそうだと?」
トビー「そうだと知れば 壁はただの壁じゃなくなります 思えばいいんです この壁はすり抜けられると」
トビーは入って目の前の奥の壁を触りながら ベッドのある左側へと移動して行く
リドルフォはその不思議な言動に首を傾げたが トビーの真剣な表情を見て 真面目に話を聞いてみることにした
トビー「別の時代の別の国の人…あと別の世界の人たち それが僕はピレリさんの友達です 何年も前からずっと…この壁を抜けて 集会所に行っていました」
ある場所につくと トビーは壁を触るのをやめる
トビー「ここまではただの壁です でもこの場所 扉一枚と半分ぐらいの幅は…」
触れると 彼の手は壁をすり抜け 飲み込まれているようになる
驚くリドルフォに ちゃんと伝えようと そのまま中に入る
完全にいなくなったトビーを見て リドルフォは慌てて壁の方へ近寄る するとトビーが壁から顔だけを覗かせる
トビー「大丈夫です この先には道があるだけですから」
そう言ってリドルフォの手を引いて 彼も壁の中へ入れる
うわっと小さな声を出すリドルフォだが トビーの言う通り壁はすり抜けられ 先には白い道と壁と天井があるだけ
中は2人並べるぐらいの幅があり そのまま奥の扉へと進む
リドルフォ「…別世界の物語?」
扉の上の文字を読むリドルフォに トビーは頷いた
トビー「多分 もうみんないると思います 開けますよ」
リドルフォ「あ…あぁ」
リドルフォはこの体験に対し 逆に何にも思考が働かないでいたので パッと見は落ち着いている様子だった
扉が開く 中には椅子に座った3人
女性1人男性2人…
トビー「みんな!リドルフォを連れてきましたよ」
明るく声をかけるトビーと 今現在起きていることに理解が追いつかないリドルフォ それを見る3人
ゼロが手を握って開く動作を2回した おそらくリドルフォがこちらの言葉を理解できるよう想造力をかけたのだろう
リドルフォ「どういう…ことなんだ デイビーと同じ顔…が」
ゼロ「こんばんはリドルフォ その様子だとまだあまり説明を受けてないようだね…とりあえず座って話をしよう」
言われるままリドルフォは普段テナルディエの座る真ん中の席を案内される
部屋を見回す 壁の向こう側の空間のおかしさを実感する
ゼロが一瞬で紅茶を出し 勧めるので困惑させてしまう
リドルフォ「…その 申し訳ないが…確かにまだよくわかっていなくて…」
ゼロ「いつも通りの説明でいいかな」
トビー「お願いします…」
ゼロはこの場所のこと それぞれの扉や物語のことを軽く説明する
あまりに現実離れしすぎた世界の話だが この場所ではゼロの力が働くおかげか 一応 飲み込めはする
そして物語の名前を知り ゼロが直接的に話さなくても彼には分かってしまったようだった
ピレリやトッドの運命…その全てを
リドルフォ「…またあの子の顔を見て声を聞く日が来るとは思わなかった」
リドルフォは少し落ち着こうと また部屋の中を見る 説明にあった扉 物語の名前…写真立て
写真には色がついていて その姿をそのまま写していた
友人たちと楽しそうに笑顔で写る姿を見て この場所でピレリは楽しく過ごせていたのだと わかった
リドルフォ「デイビーは良き友人と出会えていたんだな…」
アドルフォ以外の友人についてを知らなかったリドルフォにとって 安心できる話だった
6年もの間 彼はここで 友人たちと過ごしていた
トビー「みなさんはピレリさんを改心させようと 何度も話をしていてくれました それに僕が前を向けたのはみなさんのおかげでもあるんです」
リドルフォ「そうか…君にとっても良い出会いなんだな」
トビー「あなたに伝えたくて…すみません 驚かせてしまって」
リドルフォ「いや 教えてくれてありがとうトビー…」
リドルフォは優しくトビーを抱きしめる
リドルフォ「…彼らと話をしていいだろうか 君に…席を外してもらって」
トビー「もちろん!先に寝ています おやすみなさい」
トビーは嬉しそうに駆け出し 帰って行った
見送った彼らは リドルフォが話すのを待つ
リドルフォ「改めて デイビーとトビーのことは感謝したい…私にはできなかったことを あなたたちはしてくださっている」
ゼロ「私たちの方こそ あなたやトビーのおかげでピレリのことを知ることができた それにトビーには私のほうこそ助けられてる」
ダステ「私たちには無いものを持つ子だ」
タイムも頷く
リドルフォは彼らがトビーのことを確かに友人として接していると安心した
互いを尊敬し 感謝し合う
亡き友人を思い出す 彼らには幸多きことを願わずにいられない
きっとトビーは 自分がいなくなっても 良き友人たちがいるから大丈夫だろう リドルフォは安堵した
穏やかな心になる 不思議な場所で リドルフォは我が子のように大切な彼らの 親しい友たちと出会った
リドルフォ「ところでもしかして デイビーはここでもアドルフォ・ピレリと名乗っていたのか?」
タイム「最初からそう名乗っていた 訂正する機会を見失ったんだろう」
リドルフォ「…ま…まってくれ あなたのその頭…どうなっているんだ!?」
ゼロ「あぁ彼は半人間半機械なんだよ」
リドルフォ「説明に…なってないと思うんだが…」
ダステ「…そういうものだと割り切った方がいい」
END
出会いから9年
9月ごろ トビーは意を決してリドルフォに友人の話をすることにした
あれ以来話すことも避けていたが 彼が知りたいと思うなら 会いたいと言うなら
これまでの恩もある ぜひそうしたい
しかしそれを教えるということは この世界が物語の世界で 誰もが運命を避けられず そしてピレリの死が 最初から決まっていたことも含め 知るということにも繋がりかねない
トビーは それを気にして生きてはいなかった 何より物語は終わり きっとここからは自由なんだと思っていたかった
リドルフォがそれを知った時 どう思うかはわからなかった ギュスターヴはそれでも自分の選ぶ道で運命は関係ないと思っているが テナルディエは全てがゼロの思い通りだと思っている
実際 現実となった物語の世界で 話の内容以外の部分に関してはゼロは関わっていない
過去の出来事は物語の内容に繋がるための運命だったのが 物語は物語で 過去は一部の出来事を除き それぞれの選択によって起きたことなのか
運命というものの扱い ゼロの意思はどこまで反映されているのか
それによって捉え方も変わる
けれど そんなことを 突然知ることになるとして 果たしてそれはいいことだろうか
リドルフォに教えれば いずれ…
だから伝えられないでいた 何年経っても 考えないようにする 以外方法のないこの問題を リドルフォにも知らせていいのだろうか
トビーは彼らのことを良き友人だと思っていた
友人と接するピレリをリドルフォは知らない
なにより自分にも仲のいい友達がいるのだと伝えたかった
彼を安心させたかった 今 幸せなんだと思って欲しかった
ある夜 食事が終わった後 トビーはリドルフォを呼んだ
トビー「あの リドルフォ 実はピレリさんがあなたに伝えていた友達について話が…」
リドルフォ「あぁあの…」
トビー「実は…会えるかも…ということになってその…別の場所に住んでいるので時間がかかったんですが」
恐る恐る話すトビーに対し リドルフォは優しい顔で話を聞いてあげていた
トビー「ですが あの人たちに会うというのは あなたが知りたくないかもしれない 事実を…知ることになるんです 僕らのいる世界に…ついてとか」
リドルフォ「…よくわからないが それは何か悪いことなのか?」
トビー「良いのか悪いのかもわかりません どう思うかはリドルフォ次第になります でもあの人たちは僕の友達でもあるんです いい人……ばかりではないですが 僕にとっては良い友達なんです それだけは…確かです」
リドルフォは少し考える
トビーが話すということはきっと会わせたいという思いがどこかに確実にあるはずで となるとリドルフォとしては結果がどうであれ 会いに行った方がトビーも喜ぶかもしれないので そうしたかった
リドルフォ「わかった それは頭に入れておこう だが何より 君の友達に会えるというなら 私も嬉しいよ だからぜひ…ね」
トビー「本当ですか!?実は今夜 3人は来ることがわかってるんです 行きましょう 最初は驚くかもしれないですが…!」
トビーはリドルフォをピレリの部屋に連れて行く 何の準備があるのだろうかと思いながらもリドルフォはついていった
トビー「壁の向こうの友人…なので居るのも壁の向こうです」
リドルフォ「…何かの比喩ではなく 実際にそうだと?」
トビー「そうだと知れば 壁はただの壁じゃなくなります 思えばいいんです この壁はすり抜けられると」
トビーは入って目の前の奥の壁を触りながら ベッドのある左側へと移動して行く
リドルフォはその不思議な言動に首を傾げたが トビーの真剣な表情を見て 真面目に話を聞いてみることにした
トビー「別の時代の別の国の人…あと別の世界の人たち それが僕はピレリさんの友達です 何年も前からずっと…この壁を抜けて 集会所に行っていました」
ある場所につくと トビーは壁を触るのをやめる
トビー「ここまではただの壁です でもこの場所 扉一枚と半分ぐらいの幅は…」
触れると 彼の手は壁をすり抜け 飲み込まれているようになる
驚くリドルフォに ちゃんと伝えようと そのまま中に入る
完全にいなくなったトビーを見て リドルフォは慌てて壁の方へ近寄る するとトビーが壁から顔だけを覗かせる
トビー「大丈夫です この先には道があるだけですから」
そう言ってリドルフォの手を引いて 彼も壁の中へ入れる
うわっと小さな声を出すリドルフォだが トビーの言う通り壁はすり抜けられ 先には白い道と壁と天井があるだけ
中は2人並べるぐらいの幅があり そのまま奥の扉へと進む
リドルフォ「…別世界の物語?」
扉の上の文字を読むリドルフォに トビーは頷いた
トビー「多分 もうみんないると思います 開けますよ」
リドルフォ「あ…あぁ」
リドルフォはこの体験に対し 逆に何にも思考が働かないでいたので パッと見は落ち着いている様子だった
扉が開く 中には椅子に座った3人
女性1人男性2人…
トビー「みんな!リドルフォを連れてきましたよ」
明るく声をかけるトビーと 今現在起きていることに理解が追いつかないリドルフォ それを見る3人
ゼロが手を握って開く動作を2回した おそらくリドルフォがこちらの言葉を理解できるよう想造力をかけたのだろう
リドルフォ「どういう…ことなんだ デイビーと同じ顔…が」
ゼロ「こんばんはリドルフォ その様子だとまだあまり説明を受けてないようだね…とりあえず座って話をしよう」
言われるままリドルフォは普段テナルディエの座る真ん中の席を案内される
部屋を見回す 壁の向こう側の空間のおかしさを実感する
ゼロが一瞬で紅茶を出し 勧めるので困惑させてしまう
リドルフォ「…その 申し訳ないが…確かにまだよくわかっていなくて…」
ゼロ「いつも通りの説明でいいかな」
トビー「お願いします…」
ゼロはこの場所のこと それぞれの扉や物語のことを軽く説明する
あまりに現実離れしすぎた世界の話だが この場所ではゼロの力が働くおかげか 一応 飲み込めはする
そして物語の名前を知り ゼロが直接的に話さなくても彼には分かってしまったようだった
ピレリやトッドの運命…その全てを
リドルフォ「…またあの子の顔を見て声を聞く日が来るとは思わなかった」
リドルフォは少し落ち着こうと また部屋の中を見る 説明にあった扉 物語の名前…写真立て
写真には色がついていて その姿をそのまま写していた
友人たちと楽しそうに笑顔で写る姿を見て この場所でピレリは楽しく過ごせていたのだと わかった
リドルフォ「デイビーは良き友人と出会えていたんだな…」
アドルフォ以外の友人についてを知らなかったリドルフォにとって 安心できる話だった
6年もの間 彼はここで 友人たちと過ごしていた
トビー「みなさんはピレリさんを改心させようと 何度も話をしていてくれました それに僕が前を向けたのはみなさんのおかげでもあるんです」
リドルフォ「そうか…君にとっても良い出会いなんだな」
トビー「あなたに伝えたくて…すみません 驚かせてしまって」
リドルフォ「いや 教えてくれてありがとうトビー…」
リドルフォは優しくトビーを抱きしめる
リドルフォ「…彼らと話をしていいだろうか 君に…席を外してもらって」
トビー「もちろん!先に寝ています おやすみなさい」
トビーは嬉しそうに駆け出し 帰って行った
見送った彼らは リドルフォが話すのを待つ
リドルフォ「改めて デイビーとトビーのことは感謝したい…私にはできなかったことを あなたたちはしてくださっている」
ゼロ「私たちの方こそ あなたやトビーのおかげでピレリのことを知ることができた それにトビーには私のほうこそ助けられてる」
ダステ「私たちには無いものを持つ子だ」
タイムも頷く
リドルフォは彼らがトビーのことを確かに友人として接していると安心した
互いを尊敬し 感謝し合う
亡き友人を思い出す 彼らには幸多きことを願わずにいられない
きっとトビーは 自分がいなくなっても 良き友人たちがいるから大丈夫だろう リドルフォは安堵した
穏やかな心になる 不思議な場所で リドルフォは我が子のように大切な彼らの 親しい友たちと出会った
リドルフォ「ところでもしかして デイビーはここでもアドルフォ・ピレリと名乗っていたのか?」
タイム「最初からそう名乗っていた 訂正する機会を見失ったんだろう」
リドルフォ「…ま…まってくれ あなたのその頭…どうなっているんだ!?」
ゼロ「あぁ彼は半人間半機械なんだよ」
リドルフォ「説明に…なってないと思うんだが…」
ダステ「…そういうものだと割り切った方がいい」
END