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第一章 出会い そして

写真

出会いから3年と半年ほど…


集会所の夜
そこには5人の姿があった

今日も以前のように なんてことのない 普通の会話で盛り上がっていた
そしてゼロが立ち上がり 部屋に置かれたチェストの上を指差す

ゼロ「実は思い出を残すために みんなで写真撮りたいなーと思ってさ 写真立てだけもう用意しちゃった」
ピレリ「張り切りすぎだろ…まぁ1枚くらい 残してもいいか」
ダステ「なかなか全員集まることもないからな」
ティナ「…写真を撮るって 何をするってことだ?」


ゼロが想造力を発動し 一冊のアルバムを出す
適当なページをバッと開くと ゼロが彼らの知らない誰かと映る写真がページに飾られていた

ゼロ「これは私と守人たちの写真 カメラで撮って この紙に印刷する それが写真…!」
ティナ「見た景色をそのまま 描き写す…ってことか?」
タイム「想造力ではなく 君の時代にはもうある技術なんだったな」
ゼロ「そうそう ピレリとダステは知ってるね」
ダステ「…色のついた写真ばかりだな」
ゼロ「まぁ私の時代じゃ基本こうかな あえての白黒とかセピアとかあるけど…」

ゼロは適当なカメラをパッと出し セッティングをしようと立ち上がる
まず彼らの興味はカメラに向いた
ゼロは何も考えず 自分が知るカメラの形を思い浮かべて作ったために 自身の時代のカメラが出てきた
自身の時代のそれとは違う形状を見るピレリとギュスターヴ そもそもカメラは初見であるテナルディエとタイム

ゼロ「君ら こういうの興味あるんだ」
ピレリ「未来の物をみせられたら 君はこうして見ないのか?」
ゼロ「見るなぁ 見たことないやつすごい気になる」

カメラを置き 机の上の物を片付け 3人にはそのまま座ってもらい ゼロたち側の椅子を奥へ移動させ 座る3人の後ろにゼロとタイムが立つことにした

ティナ「トビーも連れてこいよ なぁピレリ」
ピレリ「嫌だ」
ゼロ「よし連れてくる」
ピレリ「やめろおい!」
ゼロ「トビーだって ここに来てくれてる友達なんだし 仲間外れは可哀想だよ」
ピレリ「…ここにトビーとは…いたくはない」
ゼロ「普段の君の様子を私たちに知られたくないのかも知れないけど まずトビーから聞いてて知ってるから」
ピレリ「ち…違う…違うが…わかったゼロが連れてくるなら…」

ゼロがピレリの扉からトビーを連れて戻ってくる
タイムがピレリからの ゼロが言い出したら止まらないことについての文句を聞いてやっている間に ゼロはテンプスを呼び出し 一緒に入るかシャッターを押すかを選ばせていた

ダステ「…これだけ揃うと 流石のこの場所も騒がしくなるな」
ティナ「ほとんどテンプスのせいだがな」
ゼロ「この日常が続いているなんて 最高だよ テンプスは静かにさせる」

どう撮るか悩んだゼロは 椅子を作り出し
配置してみて 納得いかなかったのかやめてしまう

ゼロ「テンプス うだうだ言ってないで みんなの配置でも決めてよ カメラマンの守人がいた時とか思い出して!」
テンプス「主がおっしゃるなら…やりますが…」

そう言って ゼロの隣にいたギュスターヴとテナルディエの手を引き タイムの扉の前に立たせた
次にトビーとピレリの手を引いて ピレリの左隣にトビーを立たせる
タイムに手招きをして ゼロと一緒に4人の間にタイムは一歩下がってテンプスと並び ゼロはその2人に間に立った

こうして ギュスターヴ テナルディエ タイム ゼロ テンプス ピレリ トビーの順で並ばされた
彼らはテンプスがやり切った顔でゼロに報告するのに対し 急に引っ張るななど文句を言っていた

テンプス「お前たちはそうした方が早い タイムは無駄なことをしない分早いというのに」
ティナ「一言言う時間も惜しいのかよ」
テンプス「私はここを含めいくつもの世界の守護をしなくてはならない そもそも今日は防壁の点検に来ただけなんだぞ!」
ゼロ「姿が変わらないにせよ たまには撮ろうよテンプス」
テンプス「主が言うからやってるだけだからな!」
タイム「喋ってないで起動させろ」

テンプスがレンズを見ろ!とテナルディエたちに指示をする

テンプス「……待て 顔が硬いぞお前たち!主のようにちゃんと笑顔でやるんだ!撮る気あるのか!」
ピレリ「笑顔固定しろってことか…?」
ゼロ「押したらすぐ撮れるから さぁ笑顔!」

ピレリが隣にいるせいで 表情の固いトビーに対し ゼロが会話をして緊張をほぐしてみたり ギュスターヴがずっとしかめっ面のままだと騒ぐテンプスが彼の作った笑顔を見て お前はいい と急に冷静になって諦めたり

ようやくテンプスがもう一度

テンプス「さぁ撮るぞ!」

と言ったので なんだかんだノリノリだなこいつ と思いながら 全員前を向き シャッター音が鳴った


……早速現像したゼロは まるで修学旅行中にクラスで並べられて撮った集合写真のように 少し堅くなってしまった気がする写真を眺めてから 用意していた額の中に入れた


振り返ると 全員がそれぞれ何か話し合って 笑っていたり 何か文句を言っているようだったり
真剣に話していたり
いろんな表情だった

テンプスも基本何か文句を言っているようだが 話し方は打ち解けてきたようだし
トビーとピレリの様子を見ても 以前とは違い 若干トビーの方の緊張も緩んできてはいるようだった

少しずつ 変わっていく

親友と呼べるまでになれればと ゼロは思うが
関係性の呼び名が変わることを気にするより 今という時間を 彼らと過ごす方が大切なのかもしれない

この先 誰もが物語の運命に抗えぬまま 良い未来も悪い未来も等しく訪れることを
知っていた 知っているはずだった



…数日後 タイムの城


タイムは大時計の点検を行なっているウィルキンズたちの様子を見るため 城内を歩き 大時計へと向かっていた

そこへゼロが現れ 何か言う前に 忙しいとタイムに言われてしまったため 大時計へ向かう彼の後ろについていき 用事が終わるのを待つことにした

すると 城内に低い鐘の音が一回鳴り響いた

ゼロ「この音…」

タイムはすぐさま方向転換し 生者と死者の部屋がある方向へ向かった
先ほど聞こえた音は 生者の部屋で時計が止まった時に鳴る弔鐘のようなものだった タイムに知らせるための音でもある

ゼロ以外は まだタイムがどのように 生者と死者の部屋を管理しているのか知らなかった

ついていっていいものかわからず ゼロは手前で立ち止まり 部屋へ向かうタイムを見送り 先に大時計の方へ行くことにして そのまま先へ進んだ


思っているより 遅いタイミングでタイムがやってきて ウィルキンズから報告を聞いた後 2人はまた一緒に歩いていた

ゼロ「そういえば 最近アンダーランドの様子のぞいてなかったな…」
タイム「何か興味を引くものでもあるのか?」
ゼロ「ウィッツエンドなら 多少は…君との縁も深いしね 時計屋は最近どう?数年前は後継者探ししてたけど」
タイム「あぁ それなら孫が継ぐらしい 」

ふーん…と言いながら 前を向いていて 目線の合わないタイムの顔を見ようとする
チラッと青い目がこちらを見るが 何も言わずまた前を向く

ゼロ「…ねぇタイム」
タイム「なんだ」
ゼロ「私のこと 頼ってくれてもいいからね 何か困った時とか 何か…話を聞いて欲しい時とか 何もしなくても そばにいるとかもできるから」
タイム「…急にどうしたんだ」
ゼロ「別に…なんとなく言っておきたかっただけ」

立ち止まるゼロを気にすることなく タイムはその場を離れていった
見送ったゼロは振り返り 集会所の方へ向かった

ゼロ「…さて…次は…どうなるかな」

集会所への扉を開ける
中には誰もいない

ゼロ「テンプス・ホルロージュ・パンデュール」

その名前を呟くと ゼロの横に 跪いた状態でテンプスが現れた

テンプス「どうされましたか 主」

ゼロが彼をフルネームで呼ぶのは 召喚の言葉のようなもの そうして呼ばれたテンプスは 即座に状況を確認し その後テレポートしてくる

ゼロ「報告をまだ聞いてなかったから」
テンプス「タイムのことですね 厄介な能力です 本来このような力を持つような描写がないにも関わらず…です」
ゼロ「あの王笏に機能を足したのは影響してる?」
テンプス「関係はなさそうです おそらくはタイムという存在が特殊であり難解ですので 余白が多く 補完の際に想定以上のことが起こったのだと思います」

そう言ったあと テンプスの姿は集会所から消え
目線を机に向けたままジッと動かないゼロだけが残された

ほとんど無音の集会所の中で 彼女のため息が聞こえた

ゼロ「(戦えるのは 私とタイム 死ぬわけにはいかないのも私とタイム…エターナルは必ずまた来る そうなった時に…)」

難しい顔をしたまま 悩む
じっと座っていられなくなり 立ち上がって集会所の中をうろうろする

ピレリの扉が開く音に気づき ほぼ反対側あたりにいたゼロは 体をその方向に向ける
そのため ピレリが集会所に入った時 2人は目が合った

ピレリ「お前1人か」
ゼロ「今のところね 私もさっきまで城にいたんだけどさ」
ピレリ「そうか…」
ゼロ「トビーは?」
ピレリ「客が来るまで休憩させている 外は大雨だから…ほとんど人が来ないんだ」

相変わらず ピレリはトビーとここに来たがらない 今に関しては 店番をさせているので来てないが それ以外の時も 2人は別々できていた

ピレリ「…一緒に来るなんて 今更できないと言ってるだろ」
ゼロ「変わっていこうよ 今までのことはもうどうしようもないし 許されないだろうけど これからだって 君らは一緒にいるんだろうしさ」
ピレリ「そうは言ってもな…」

仕事をしている時は非常に明るい話し方をするのだが ここへ来ると落ち着いている
こっちの方が気を抜いているだろうから 仕事中はあえて陽気な感じを演出しているのだろうが
それにしてもギャップがある
最初の印象では ピレリは普段もそれなりに明るいやつだと思っていた

ゼロ「ここに来る来ない以前に…やっぱり 君の行為はあまりにも…」
ピレリ「わかっている それは…前々から…」
ゼロ「ならせめて 彼を蹴飛ばすのだけでもやめなよ 今より良い関係にはなれなくても このままじゃ君が救われない トビーも もちろん」

ピレリはゼロやギュスターヴが色々言ったおかげなのか 自身の今までの行為を反省し 改善しようとしているようで トビーから相談されていた 彼の暴力はだいぶ減ったようだったが 叩く蹴るだったのが 何か失敗した時には蹴飛ばされる になった程度らしく
ゼロは彼と顔を合わせるたびに そのことを必ず話題に出して 注意し続けていた

ピレリが即座にそれをやめないのは もちろんそもそも時代が違うせいで 認識に大きな違いがあるのだが
それ以外の理由があるから なのだが ゼロはそれを知った上で そしてピレリはゼロがそれを知っていることを知った上で この話をしている

ただピレリはトビーに対してそのような態度をとる理由の方に対して 身勝手でしかない とは思っている…ようだったが

ゼロとしては 今のままでいてほしくはなかった
トビーを救いたいのはもちろんあるが 先ほどピレリに言った通り その問題を抱えたままでは 彼にとっても良い未来はない…と考えていたので
多少嫌われる覚悟で 口酸っぱく言っていた

時代という問題は ある上で…ではあったが
ピレリも少し考えているようなので とりあえず このままやってみよう というのが現状だった

ゼロ「…会うたびこの話じゃ 色々思い出すこともあるだろうけど…でも そういえば 過去を知ってるっていうの 怒らなかったね 君」
ピレリ「言ったところでどうなんだ やろうと思えばいくらだってできるだろ?」
ゼロ「まぁ 確認するために過去に戻ることぐらい 簡単だけど」



知っていた 知っているはずだった
その先の全てを…



END
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