第一章 出会い そして
それぞれの理由
今日の集会所にはすでにゼロとピレリがいた
あの件以降もピレリは自身の目的とゼロの側にいることの危険性を天秤にかけ
結果ゼロを信頼し 自身の目的を優先することにした
ゼロは一通り 今までのバグと自身の因縁を話し 想造者やバグの発生理由などについても できる限り話した
思えば 集会所で ゼロが自身のことをずっと話しているのは 珍しい光景だった
近況こそ話すが こうも詳しく想造者について語る日が こんなにも早く来るとは ゼロも思ってはいなかった
ピレリ「…俺は お前があえてあいつらに 何も言わないでいることに対して 感謝してる おかげでトビーにも知られないでいる」
ゼロ「それは…今となってはたまたまっていうか…わざわざ言うことでもないでしょ?君が言おうとしない限り 私はそれを…言わないでいるつもりだよ」
ピレリ「お前は俺たちがエターナルに殺されてもいいなんて 思うはずがない そう考えた上でここに来てる ここにいると 本当に…あんな思いも忘れて 穏やかでいられる この場所が好きなんだよ」
2人きりの空間で ピレリは素直に 笑顔で話す
その姿を見て ゼロもほっとした表情だった
ゼロにとっては彼らと過ごす この場所での出来事は ほんの数分でもかけがえのないものだった
想造者としてキャラクターと接するのではなく ゼロとして
仮の友人から ゆっくりと 気づけば本当に友人となっていった3年間
時間の経過だけが 全てではなかったはずだった
そう思いたかった
ピレリ「だがそれでも あいつらがな…また来るかどうかは…」
扉が勢いよく開く 真ん中 レ・ミゼラブルの扉だ
一週間ぶりぐらいのテナルディエは 肩で息をしながら集会所に入ってきた
ティナ「あーくそっ…」
ゼロ「ど…どうしたのテナルディエ」
ティナ「…どうもしねぇよ ちょっと厄介なやつが店に…」
ゼロ「警察でもきた?」
ティナ「ちげぇよ…」
ピレリが立ち上がり 扉へ戻っていく
ピレリ「私は仕事に戻る ゼロ ちゃんと話し合えよ」
ゼロ「うん…わかったよ」
ピレリは椅子に向かうテナルディエを横目に扉を開けて帰って行った
テナルディエは閉まる扉を見た後 少し首を傾げ そのまま椅子に座った
ティナ「なんだ?話があるのか?」
ゼロ「あーいや その まだここ 来てくれるんだなーって話をピレリとしてて…理由聞いてた 私の望みを叶えることなんか 君らには関係ないでしょ?だけど これまで3年もこの場所に来てた」
ゼロが水の入ったコップを出すと テナルディエはそれを一気に飲み干す
自信無さげなゼロを見るテナルディエはずっと不機嫌そうだった
ティナ「…そんなこと 聞かなくてもわかるんだろ?わかってるのに なんでそんなふうに言いやがる」
ゼロ「知ろうと思えば…ね でも 君らの言葉で聞きたいよ せっかく…こうして会えるんだから」
ティナ「だとしても おおかた予想はついてんだろ…」
ゼロ「…え 物語を知りたい…とかじゃないよね」
テナルディエが不愉快だと言わんばかりの表情をしてゼロを睨む
焦った彼女は即座に首を振って 今の発言を否定した
ティナ「最初はそう思ってたけどな 今はただ ここで話してるのが 楽しくなってるってだけだ」
ゼロ「…そっか ピレリと似た感じか…」
ティナ「……ここはいつ来ても変わらないよな」
ゼロ「変わり映えしない?家具増やそうかなーとは思ってるけど あんまり物置いたところでね…あ でも守りだけはとにかく堅めたから!より安心に…したから」
ティナ「わかったわかった とりあえず 水ありがとな…仕事に戻る」
ゼロ「うん ありがと またね」
扉に入る前に わかったから と笑顔で手を振り去っていくテナルディエを見送り ゼロは立ち上がる
ゆっくり部屋の中をぐるっと歩いて回る
ゼロ「…この場所 そんなに居心地いいのかな…ある程度そう思うように想造したけど…結構上手くいったんだなぁ」
左側を向いて なんとなく置いていた黒い木製の三段チェストを見る 中に何も入れていないし 上にも何も乗せていない
何か用途を考えて 思いつかなかった結果だった
ゼロ「…何か ここに置こうかな」
数時間後
ヒューゴの扉が開き ギュスターヴが集会所へやってきた
公安官「ゼロ」
ゼロ「あ ダステ…君も 来てくれたんだ」
公安官は帽子をとりながら チェストの前に立つゼロに近づく
公安官「…君を信頼した上で ここに来たい理由もあったからな テナルディエは来るのか?」
ゼロ「来るってさ この場所気に入ってくれてるらしいよ ありがたいことにね」
ゼロは綺麗に装飾した写真立てを持っていた
その中には何の写真も入っていないが ゼロはチェストの上に置いた
公安官「それは?」
ゼロ「写真立て 今度みんなが揃ったら 写真撮ろうかなって 私の友達が 戻ってきてくれた記念に 今日君が来てくれたから とりあえず 置くって目標は達成かな」
公安官「写真か…」
ゼロはギュスターヴが来たことを喜び とりあえず椅子に座ろうと彼の手をひいて誘導した
ギュスターヴは他の2人が来ないか扉の方を気にしている
ゼロ「ところで…来たい理由って…何?ピレリたちと同じ感じ…?」
公安官「居心地はいいな 確かにここは…それに私が最初に 君の友人になると言ったから この付き合いは始まった…というのも ある ただ…」
ゼロ「ただ?」
ギュスターヴはまた後ろの扉を気にする
左側を向いても 2つの扉は開く気配はない
公安官「私は テナルディエの行く末を見たい この場所で 彼に何か…できたらと思っている 君の言う 私たちを会わせることで起きる変化…何かが 少しだとしても 変わるなら…」
ゼロ「テナルディエのって…君は」
公安官「レ・ミゼラブルを読み終えた だが 彼に言うつもりはない」
ゼロ「そっか…そうか…」
ゼロは 物語の内容を思い起こす
テナルディエの宿屋は 今は金を手にする別の方法があるためか ある程度安定しているようだった
だがこの先どうなるのかを ゼロは確信できていなかった
ゼロ「おそらくは 本来の通りになるのが彼の運命だ でも…」
ゼロが話すことを ギュスターヴは静かに 頷きながら聞いていた
全て読み終え 全て知っても テナルディエに言えることはない
彼の行動の結果を 側で聞いて 知るだけ
運命の道が分かれることもあるのだと 語るゼロだが それがテナルディエ以外に起こり得るとは言わなかった
公安官「…私は友人のために 何かできるだろうか」
ゼロ「いつかは 君がどこまで知っているのか テナルディエが気付く日が来るかもしれない でもそれまでの間 せめて彼がこの場所でだけでも 穏やかでいられるように…いつも通り 接していればいいと思うよ…難しいけどさ…」
ギュスターヴは続けて何か言おうとして 口を開いたが 最初の言葉を口にすることなく 首を傾けて やめてしまった
ゼロ「…何?」
公安官「いや テナルディエには 物語を知った上で何も伝えないと言ってある」
ゼロ「え あー……そうなんだ」
公安官「それと 私はピレリや君…タイムにも 会いたいから ここに来る テナルディエは理由の1つというだけだ」
ゼロ「なに 嬉しいけど らしくない感じ」
公安官「…そんなに変か?」
ゼロ「いや 私が知らなかっただけかもしれない」
物語の中の彼らは 全て描き尽くされているとも限らない ゼロの知るギュスターヴが 彼の全てではない 無意識の補完によって生み出された彼らには まだ知らない部分も多い
ゼロ「これからは もっと互いを知れると思う 私も 君らの信用を裏切りたくない 私はもう 失いたくないから…すぐには難しいけれど 必ず まだ話していないことを 話す 隠すことでも…ないかもしれないし」
ギュスターヴと別れたゼロは タイムの城へ来ていた
また集会は再開される それをタイムに伝えに来た
タイムを探し 城の中を歩いていると 声が聞こえてきた その方向に向かうと やはりタイムだった 広い部屋の中で 何かの機械を動かしている
タイム「…やはり治らないのか?そうか……諦めるな あぁ やれるだけのことはやるんだ……時計はまだ城だろう だから……わかった」
作業の手は止めないが ずっと誰かと話している
…ここには誰もいないが 一体誰との会話なのか それとも独り言? ゼロはゆっくりと部屋に入る
タイム「しばらくしたら また様子を見にいく あぁ…すまないな」
タイムが振り向き ゼロを見る
ふぅ…と息を吐き 機械のレバーを引くと 明かりが消え 機械が止まる
タイム「なんだ」
ゼロ「…誰と話してたの?」
タイム「お前には関係のない相手だ 気にするな…それで 用事はなんだ?」
ゼロ「彼らはまた集まるよ エターナルの脅威はあるけれど 私を信用してくれた」
タイム「そうか それは良かったな」
ゼロ「…それで みんなに今でも集会所に来てくれる理由を聞いてたら…君の理由も気になっちゃってさ」
照れくさそうに聞いてくるゼロに対し タイムはため息をつき 彼女の横を通り部屋を出ていく
道中一切照明器具が設置されていないタイムの城だが
城中薄暗い明かりのおかげで照明はなくとも道は見える
ただ 入り組んだ構造になっているため タイムを見失うと 探すのが大変になる
答えを知りたいゼロは 彼を見失わないように急いでついていく
ゼロ「君が一番 私の力の影響を受けないんだから あの場所に来るのは 君の意思でしょ?」
タイム「…私はお前が来いというからいくだけだ どうせたまに顔を出すだけでお前は満足するしな」
ゼロ「えぇ…嫌なら…別に…」
タイム「嫌とは言っていない 奴らの様子も たまには確認しないとな」
ゼロ「なんでさ」
タイム「…困るのはお前だけではない わかったな」
ゼロはきょとんとした顔のまま タイムの後ろをついていく 全てを説明するのは時間の無駄だと思われたらしく 話はそこで終わってしまった
どれだけ長く一緒にいようと 今のタイムは ギュスターヴたちほどゼロと仲は良くないようだった
黙ったまま歩いていると タイムの体から普段は小さな音で聞こえにくい機械音も よく聞こえる
足を前に出して進むたびに カラカラキリキリ音がして その音に耳を傾ける
ゼロ「タイムは 彼らを友人だと 思ってる?」
静かな空気の中 再び質問され タイムはしばらく考えているらしい様子を見せた
一応 ゼロの言葉に対しては 律儀に返事をしようとするので タイムは少しは心を開いているようにも思えた
タイム「前に 友人になったろう あの日の言葉…彼らと話をするのは楽しいだろ?」
ゼロ「…うん いい時間を過ごしてるって 思える…良い友人だよ 悪いところのが多いやつもいるけど…」
タイム「……それは 前からだろう」
END
今日の集会所にはすでにゼロとピレリがいた
あの件以降もピレリは自身の目的とゼロの側にいることの危険性を天秤にかけ
結果ゼロを信頼し 自身の目的を優先することにした
ゼロは一通り 今までのバグと自身の因縁を話し 想造者やバグの発生理由などについても できる限り話した
思えば 集会所で ゼロが自身のことをずっと話しているのは 珍しい光景だった
近況こそ話すが こうも詳しく想造者について語る日が こんなにも早く来るとは ゼロも思ってはいなかった
ピレリ「…俺は お前があえてあいつらに 何も言わないでいることに対して 感謝してる おかげでトビーにも知られないでいる」
ゼロ「それは…今となってはたまたまっていうか…わざわざ言うことでもないでしょ?君が言おうとしない限り 私はそれを…言わないでいるつもりだよ」
ピレリ「お前は俺たちがエターナルに殺されてもいいなんて 思うはずがない そう考えた上でここに来てる ここにいると 本当に…あんな思いも忘れて 穏やかでいられる この場所が好きなんだよ」
2人きりの空間で ピレリは素直に 笑顔で話す
その姿を見て ゼロもほっとした表情だった
ゼロにとっては彼らと過ごす この場所での出来事は ほんの数分でもかけがえのないものだった
想造者としてキャラクターと接するのではなく ゼロとして
仮の友人から ゆっくりと 気づけば本当に友人となっていった3年間
時間の経過だけが 全てではなかったはずだった
そう思いたかった
ピレリ「だがそれでも あいつらがな…また来るかどうかは…」
扉が勢いよく開く 真ん中 レ・ミゼラブルの扉だ
一週間ぶりぐらいのテナルディエは 肩で息をしながら集会所に入ってきた
ティナ「あーくそっ…」
ゼロ「ど…どうしたのテナルディエ」
ティナ「…どうもしねぇよ ちょっと厄介なやつが店に…」
ゼロ「警察でもきた?」
ティナ「ちげぇよ…」
ピレリが立ち上がり 扉へ戻っていく
ピレリ「私は仕事に戻る ゼロ ちゃんと話し合えよ」
ゼロ「うん…わかったよ」
ピレリは椅子に向かうテナルディエを横目に扉を開けて帰って行った
テナルディエは閉まる扉を見た後 少し首を傾げ そのまま椅子に座った
ティナ「なんだ?話があるのか?」
ゼロ「あーいや その まだここ 来てくれるんだなーって話をピレリとしてて…理由聞いてた 私の望みを叶えることなんか 君らには関係ないでしょ?だけど これまで3年もこの場所に来てた」
ゼロが水の入ったコップを出すと テナルディエはそれを一気に飲み干す
自信無さげなゼロを見るテナルディエはずっと不機嫌そうだった
ティナ「…そんなこと 聞かなくてもわかるんだろ?わかってるのに なんでそんなふうに言いやがる」
ゼロ「知ろうと思えば…ね でも 君らの言葉で聞きたいよ せっかく…こうして会えるんだから」
ティナ「だとしても おおかた予想はついてんだろ…」
ゼロ「…え 物語を知りたい…とかじゃないよね」
テナルディエが不愉快だと言わんばかりの表情をしてゼロを睨む
焦った彼女は即座に首を振って 今の発言を否定した
ティナ「最初はそう思ってたけどな 今はただ ここで話してるのが 楽しくなってるってだけだ」
ゼロ「…そっか ピレリと似た感じか…」
ティナ「……ここはいつ来ても変わらないよな」
ゼロ「変わり映えしない?家具増やそうかなーとは思ってるけど あんまり物置いたところでね…あ でも守りだけはとにかく堅めたから!より安心に…したから」
ティナ「わかったわかった とりあえず 水ありがとな…仕事に戻る」
ゼロ「うん ありがと またね」
扉に入る前に わかったから と笑顔で手を振り去っていくテナルディエを見送り ゼロは立ち上がる
ゆっくり部屋の中をぐるっと歩いて回る
ゼロ「…この場所 そんなに居心地いいのかな…ある程度そう思うように想造したけど…結構上手くいったんだなぁ」
左側を向いて なんとなく置いていた黒い木製の三段チェストを見る 中に何も入れていないし 上にも何も乗せていない
何か用途を考えて 思いつかなかった結果だった
ゼロ「…何か ここに置こうかな」
数時間後
ヒューゴの扉が開き ギュスターヴが集会所へやってきた
公安官「ゼロ」
ゼロ「あ ダステ…君も 来てくれたんだ」
公安官は帽子をとりながら チェストの前に立つゼロに近づく
公安官「…君を信頼した上で ここに来たい理由もあったからな テナルディエは来るのか?」
ゼロ「来るってさ この場所気に入ってくれてるらしいよ ありがたいことにね」
ゼロは綺麗に装飾した写真立てを持っていた
その中には何の写真も入っていないが ゼロはチェストの上に置いた
公安官「それは?」
ゼロ「写真立て 今度みんなが揃ったら 写真撮ろうかなって 私の友達が 戻ってきてくれた記念に 今日君が来てくれたから とりあえず 置くって目標は達成かな」
公安官「写真か…」
ゼロはギュスターヴが来たことを喜び とりあえず椅子に座ろうと彼の手をひいて誘導した
ギュスターヴは他の2人が来ないか扉の方を気にしている
ゼロ「ところで…来たい理由って…何?ピレリたちと同じ感じ…?」
公安官「居心地はいいな 確かにここは…それに私が最初に 君の友人になると言ったから この付き合いは始まった…というのも ある ただ…」
ゼロ「ただ?」
ギュスターヴはまた後ろの扉を気にする
左側を向いても 2つの扉は開く気配はない
公安官「私は テナルディエの行く末を見たい この場所で 彼に何か…できたらと思っている 君の言う 私たちを会わせることで起きる変化…何かが 少しだとしても 変わるなら…」
ゼロ「テナルディエのって…君は」
公安官「レ・ミゼラブルを読み終えた だが 彼に言うつもりはない」
ゼロ「そっか…そうか…」
ゼロは 物語の内容を思い起こす
テナルディエの宿屋は 今は金を手にする別の方法があるためか ある程度安定しているようだった
だがこの先どうなるのかを ゼロは確信できていなかった
ゼロ「おそらくは 本来の通りになるのが彼の運命だ でも…」
ゼロが話すことを ギュスターヴは静かに 頷きながら聞いていた
全て読み終え 全て知っても テナルディエに言えることはない
彼の行動の結果を 側で聞いて 知るだけ
運命の道が分かれることもあるのだと 語るゼロだが それがテナルディエ以外に起こり得るとは言わなかった
公安官「…私は友人のために 何かできるだろうか」
ゼロ「いつかは 君がどこまで知っているのか テナルディエが気付く日が来るかもしれない でもそれまでの間 せめて彼がこの場所でだけでも 穏やかでいられるように…いつも通り 接していればいいと思うよ…難しいけどさ…」
ギュスターヴは続けて何か言おうとして 口を開いたが 最初の言葉を口にすることなく 首を傾けて やめてしまった
ゼロ「…何?」
公安官「いや テナルディエには 物語を知った上で何も伝えないと言ってある」
ゼロ「え あー……そうなんだ」
公安官「それと 私はピレリや君…タイムにも 会いたいから ここに来る テナルディエは理由の1つというだけだ」
ゼロ「なに 嬉しいけど らしくない感じ」
公安官「…そんなに変か?」
ゼロ「いや 私が知らなかっただけかもしれない」
物語の中の彼らは 全て描き尽くされているとも限らない ゼロの知るギュスターヴが 彼の全てではない 無意識の補完によって生み出された彼らには まだ知らない部分も多い
ゼロ「これからは もっと互いを知れると思う 私も 君らの信用を裏切りたくない 私はもう 失いたくないから…すぐには難しいけれど 必ず まだ話していないことを 話す 隠すことでも…ないかもしれないし」
ギュスターヴと別れたゼロは タイムの城へ来ていた
また集会は再開される それをタイムに伝えに来た
タイムを探し 城の中を歩いていると 声が聞こえてきた その方向に向かうと やはりタイムだった 広い部屋の中で 何かの機械を動かしている
タイム「…やはり治らないのか?そうか……諦めるな あぁ やれるだけのことはやるんだ……時計はまだ城だろう だから……わかった」
作業の手は止めないが ずっと誰かと話している
…ここには誰もいないが 一体誰との会話なのか それとも独り言? ゼロはゆっくりと部屋に入る
タイム「しばらくしたら また様子を見にいく あぁ…すまないな」
タイムが振り向き ゼロを見る
ふぅ…と息を吐き 機械のレバーを引くと 明かりが消え 機械が止まる
タイム「なんだ」
ゼロ「…誰と話してたの?」
タイム「お前には関係のない相手だ 気にするな…それで 用事はなんだ?」
ゼロ「彼らはまた集まるよ エターナルの脅威はあるけれど 私を信用してくれた」
タイム「そうか それは良かったな」
ゼロ「…それで みんなに今でも集会所に来てくれる理由を聞いてたら…君の理由も気になっちゃってさ」
照れくさそうに聞いてくるゼロに対し タイムはため息をつき 彼女の横を通り部屋を出ていく
道中一切照明器具が設置されていないタイムの城だが
城中薄暗い明かりのおかげで照明はなくとも道は見える
ただ 入り組んだ構造になっているため タイムを見失うと 探すのが大変になる
答えを知りたいゼロは 彼を見失わないように急いでついていく
ゼロ「君が一番 私の力の影響を受けないんだから あの場所に来るのは 君の意思でしょ?」
タイム「…私はお前が来いというからいくだけだ どうせたまに顔を出すだけでお前は満足するしな」
ゼロ「えぇ…嫌なら…別に…」
タイム「嫌とは言っていない 奴らの様子も たまには確認しないとな」
ゼロ「なんでさ」
タイム「…困るのはお前だけではない わかったな」
ゼロはきょとんとした顔のまま タイムの後ろをついていく 全てを説明するのは時間の無駄だと思われたらしく 話はそこで終わってしまった
どれだけ長く一緒にいようと 今のタイムは ギュスターヴたちほどゼロと仲は良くないようだった
黙ったまま歩いていると タイムの体から普段は小さな音で聞こえにくい機械音も よく聞こえる
足を前に出して進むたびに カラカラキリキリ音がして その音に耳を傾ける
ゼロ「タイムは 彼らを友人だと 思ってる?」
静かな空気の中 再び質問され タイムはしばらく考えているらしい様子を見せた
一応 ゼロの言葉に対しては 律儀に返事をしようとするので タイムは少しは心を開いているようにも思えた
タイム「前に 友人になったろう あの日の言葉…彼らと話をするのは楽しいだろ?」
ゼロ「…うん いい時間を過ごしてるって 思える…良い友人だよ 悪いところのが多いやつもいるけど…」
タイム「……それは 前からだろう」
END