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Story of NBC

ー悪役は王に追われるー


ある日の事である


ここはハロウィンタウン

恐怖と幻想の国ハロウィンワールドにある町の1つ


いつも悲鳴が聞こえるなんて言われるくらい恐ろしい町



「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」


…ほら、今日もまた


悲鳴が聞こえる




「今日こそは殺すぞブギー!!」


そう言いながら走るパンプキンキングのジャック

炎を前を走る者に当てようとしている


「やめろ!やめろ!!」


前を走る者とは悪役ブギーのことである
足が短すぎるため走るのがとても遅い

だからすぐに追いつかれる



ブギー「そういやぁよ!!」
ジャック「なに!?」
ブギー「お前っていつも殺すぞ殺すぞ言って殺してないよな!」
ジャック「殺してほしいの?!」
ブギー「え?ちょっと待て!」


追いかけっこがここで終わり、ブギーは振り向きジャックを見る

この追いかけっこをはらはらしながら見ていた住人達
…まだはらはらは収まらない


ブギー「…俺ってなんで追われてるんだ?」
ジャック「…なんでだっけ」





ジャック「そうだ!サリーに手を出そうとしていたんだよ!」
ブギー「なんでだっけ…」
ジャック「それは知るわけないだろ」

少し考えた後、ブギーはもうわからなくなったので帰ろうかと思った

ブギー「…よし、帰ろう帰ろう」

一息ついてブギーはクルリとジャックに背を向け、ゲートの方へ歩き始めた

だが、すぐにジャックに背中に蹴りをいれられる

ブギー「なにをするんだよ!」
ジャック「なんで帰るんだよ!!」
ブギー「理由がわからなかったからだが」
ジャック「いや、理由もなにも…サリーに手を出そうとしたんだ…このまま帰すわけないだろ」


ブギーとしてはなぜそうなったか覚えてはいない
ただ、もちろん手を出そうとした件に関してジャックが大人しく帰すわけがないことは分かっている

けれどブギーは理由も忘れた今、帰りたかった


ブギー「サリーに手を出しそうになったことなんてどうでもいいだろ、俺は悪役だ、それくらいあるさ」
ジャック「…」

本当は悪かったと思っている、けれどそんなこと言えるわけもない

とりあえず悪役というワードを使ってみた

ジャックのことだしこの後も話は続くだろう、だから言葉を今のうちに色々考えておこう





ジャック「そうか」



ブギー「…ん?」



ジャックはそれだけ言うとクルリと背を向け研究所に行ってしまった。ブギーはただ、その背中を見ているだけだった


ブギー「("そうか"って…そんなんで済むのかよ…)」


ジャックが道を曲がり見えなくなったところでそう思った




ブギー「(…そうかでなんで済むんだよ)」



ジャックのことばかり考えながら去ろうとした


その後何かを思い出したのかその足を研究所に向けた


ーお人形ちゃんは今日、王と会う でも最初に会うのは違う人だー




今日サリーはジャックと会う日であった

互いに色々とあるので会える日会えない日とあるわけだが

今日はそんな会える日なのである


サリー「♪〜」

嬉しそうに鼻歌を歌うサリー
髪をとかし体のほつれを縫って
昨日作ったお菓子をカゴに入れて
これをジャックにあげようと
ニコニコ笑顔で上機嫌だ

準備がと整ってくると鼻歌は"ラ"とか"ン"が主な歌になった

サリー「ジャック喜んでくれるかしら」

最近少し暑いから墓場の夜風のようにヒンヤリしている、そんなクッキーを作ってみた
フィッシュボーンを砕いて混ぜてある
ジャックの好みの味になるといいなって
ジャックを思いながら彼女は作ったのです


カゴを持ち、軽い足取りで研究所を出た



扉を開けると誰かがそこにいた



サリー「…ブギー?」
ブギー「なっ…!」

随分と驚いた顔をするブギー

誰かが出てくるとは思わずそこにいたのだろうか

というか、なぜこんなところにブギーがいるのだろうか

ブギー「よ…よぉ、お人形ちゃん」
サリー「何の用なの?ブギー」

そう聞くと、ブギーは返答しようとしなかった

サリー「なぜここにいるの?」
ブギー「…別に、理由なんか無い」
サリー「じゃあここにいる必要はないじゃない」
ブギー「ここにいるくらい何が問題なんだ!?」

急に怒鳴られた
問題ではないがこちらとしては何をするつもりなのか恐ろしいのだ

サリー「迷惑…だからよ」
ブギー「…迷惑だと?」


ブギーの声が変わった


怒っているのだろうか


睨んでいる、こちらを睨んでいるのだ


ブギー「まぁそうだろうな」

ニヤリと笑ったその顔は、やはりいつものブギーで

怖い


この人は




やっぱりいるだけで怖いと思ってしまう



サリー「わかっているのならもう帰って」


それを表に出すわけにもいかず、強気な態度で話を続ける



ブギー「…なぁお人形ちゃん」
サリー「…なに」


ダン!!!



急に迫られたかと思えばサリーは壁に背がつき、ブギーは腕を壁に背がついたサリーの頭の上あたりに強く叩きつけた

ブギー「俺を怖いと思ってないのか?」


ずいっと顔を近づけられる

喋る口からはいつだか見た中身の虫がうじゃうじゃと動いている


サリー「…思ってないわよ」


本当は怖くてしかたがない

何度か恐ろしい目にあわされたことがあるからというのもあるかもしれないが

ブギーは悪役といえど才能は確かなのだ


才能ある者はその恐気だけで十分誰もが恐怖する



もう逃げたいが近づかれているうえに、放つ恐気が恐ろしくて、表情が怖くて

動きを止められサリーはブギーに本心を悟られぬようにジッと彼を睨むしかなかった


ブギー「そうか」
サリー「("そうか"って…そうかで済むことなの…)」

突然ブギーの恐気は消え、表情も怖くなくなった

ブギーは離れようとしたのだろう、まず腕をどけた…


その時である



「ブギー」


ゾッとする声がブギーの少し後ろから聞こえた

声の主はわかった、けれどいつも聞かないような
風のように耳を通り抜けるやわらかい声、ニッコリと笑顔で喋っている時の優しい声

けれど…恐ろしさがあった…



ブギー「ジ、ジャック…」
ジャック「なにを…してるの?」


目は丸く、笑顔で口は開かれ


なんだか黒いオーラでも見えてきそうな



ブギー「ちょっとお人形ちゃんと話してただけ…だが」
ジャック「手を出そうとしてたよね」

ブギーの言葉に「そう」とも言わず話は続く

ブギー「いや…まぁ…」


そしてジャックは恐ろしい笑顔でこう言った





ジャック「まぁ死ね」










ブギー「え」







サリー「(ジャックが死ねって言うなんて)」




ジャックはすぐに炎をその手におこし、ブギーめがけて投げつける



ブギー「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」








サリー「あ、ジャック!」



ブギーがすぐに逃げ、ジャックがその後を追ってしまったため何も話しかけることが出来なかった


サリー「…!」


今わかったことがある




ブギーが近づいてきた時


驚いた拍子にカゴを落としてしまっていて


カゴはひっくり返ってしまって



ビックリしてすぐにカゴを持ち上げると

クッキーを入れていた瓶の破片とともにザラザラとクッキーがカゴから全部出てしまった




サリー「あ…」



しまった、逆さになっているんだから上に持ち上げてはいけないに決まっている


サリーはすごく落ち込んだのだった…







ー本日の王は笑ったり怒ったり…いつものことかー



今日のジャックの朝は機嫌よく始まった
昨日の晩から機嫌は良いが、今朝はそれに増して上機嫌だった

ジャック「ゼロー、今日はサリーと会う日なんだ、すまないが今日は夜まで帰れないんだ」
ゼロ「ワン!」


愛犬ゼロもジャックがこの日を楽しみにしているのはわかっているので、2人の楽しい時間の邪魔はできないと、いつも1人のんびり好きにしている

ジャック「この前見たムーンバグの話をしようかな…それとも…」


サリーに何を話そうか考えながら家を出る支度をする

着替えも終わりいくつか話したい事も決め、ジャックは家を出て研究所へ向かう


ジャックはサリーに町の外のいろんな話をよくする。いつか一緒に行こうねって言って

1人見るよりサリーと見た方がもっと楽しいだろうし幸せな時間となるはずだ…と


研究所はすぐそこだ
扉を開けてゆっくり歩いて行く

…すると目にはいったのは


サリー


それにブギーだ

何かを話しているようだが聞こえない

ブギーの腕がある部分は凹んでしまっている。腕を強く叩きつけたのだろう

…サリーを攻撃しようとして?



…あぁ、僕は今怒ってるんだ



この気持ちは怒りだ






なぜかは知らない、けれどサリーを傷つけようとしたんだ




何度サリーを傷つけようとするんだろう



何故サリーなんだろう









どうして僕じゃないんだろう





何故僕はこんなにも笑顔なのかな






ジャック「ブギー」







…あぁ、怒りは収まらない





カゴが落ちている

ガラス瓶の破片が少し見える




…サリーが大事にしている瓶の模様じゃないか





さぁ










この虚偽の悪役に






ちょっとした成敗を







ー王は知っていてもそうは言わないのだー





ジャック「…サリー」
サリー「ジャック、ブギーはどうしたの?」
ジャック「あいつなら帰ったよ」



まだ少し、怒りは残る


サリーは瓶の破片を拾い集めていた



それと…クッキー?


さっきは見えなかった



ジャック「サリー、それは…」
サリー「え、これ?買ったのよ、貴方と食べようと思って…美味しそうだったから」
ジャック「…」
サリー「フィッシュボーンが砕いて生地に混ぜてある…墓場の夜風みたうにヒンヤリするクッキー…見つけたから…」


まだ拾いきれてないクッキーをヒョイと手に取る

サリー「あ、いいのよジャック。私が全部拾うから…少し待って…」


ジャックは少しクッキーを見ると、パクリと食べた


サリー「ジャッ…」
ジャック「あぁ…本当だ、ヒンヤリしてるね。今日みたいに暑い日のおやつにはちょうどいい」

ジャックはニッコリと笑った

残りのクッキーや瓶の欠片を全部集めると、ジャックもサリーも立ち上がった


ジャック「おいしかったよサリー」





そう言ったジャックはとても優しい声をしていた






ジャック「でも…割れちゃったね」
サリー「いいのよ、新しいのを買い直せば。気に入っていたけど、いつかは壊れるものなのよ」
ジャック「…うん」







ーあの悪役は虚偽の悪を貫くのかー






ジャック「じゃあまたね!サリー!」


夜も更けた頃、ジャックはサリーに別れを告げ研究所を去った


サリーはジャックに手を振り、博士の待つ研究所の扉の前まで歩いた


その扉の前に、確か墓場に埋めてきた瓶が綺麗に…直されて置かれているではないか


サリー「(直した跡があるから…買ったわけじゃないってことよね…いったい誰が…?)」


ジャックとはさっきまでずっと一緒にいた、そんな暇はないはずであった

あと瓶が割れたことを知り得ることが出来たであろう人物は…













サリー「…ブギー?」






…ブギーの顔が思い浮かんだ




今日の彼の…作り笑顔が…








ブギーは何故、研究所にいて



扉の前で何をしていたのだろう














それを知るのは…











彼だけ…











ここはハロウィンタウン

恐怖と幻想の国ハロウィンワールドにある町の1つ


いつも悲鳴が聞こえるなんて言われるくらい恐ろしい町








でも…







何も恐ろしい事ばかりではない









モンスター達は恐ろしい事ばかり考えているわけではないのだから








こういう事もあるのだ











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