クラスメイト達との再会

|巨人《キシリュウジン》の放つ消滅の光の柱が|巨大な魔獣《EXタイラント》を消し去る光景にホルアドの街にいた者達全員が歓喜の声をあげる。

最早、逃げ場も無く、死以外に道は無かった彼等の絶望を打ち払う姿はこの世に生まれた新たな神話に等しいだろう。

(それにしても。怪獣まで持ち出してくるなんてな)

そんな街の人々を他所に、京矢はそんな事を思う。
はっきり言ってこっちが巨大ロボットを持っていなかったら完全に詰んでいた。それ以前に、既に魔人族を勝たせようと思えば、簡単に勝利させる事は可能であるだろう。
極論で言って仕舞えば、レッドキング級の怪獣一体でも居れば、この世界の人間側の力では成す術無く滅ぼされるのがオチだろう。少なくとも、京矢ならばキシリュウジンを使えば一日も有れば城を落とせる。ヨクリュウオーと合わせればもっと早くなるだろう。
タイラントレベルの怪獣をあんなに簡単に送り込めるのならば、並の怪獣を王国の城の目の前に呼び出す程度の事はやっても不思議ではない。

そこから考えると、間違い無く敵の仮面ライダー達は、一見魔人族に協力している様に見えるが、明らかに手を抜いている可能性もある。と言うよりも、やろうと思えばいつでも王国などの人間族側の国を滅ぼせるのに間違い無く手を抜いている。

先ずはアナザーライダーやトリロバイトマギアの様な怪人達。京矢も解放者達の様に反逆者扱いされたら、適当に王国の中に幾つかT2メモリをばら撒いて内部に混乱でも起こそうと対王国用の戦術を考えたが、アナザーライダーでも同じ事は可能だ。

次に怪獣達、此方はさらに簡単だ。適当に呼び出すだけでも、比較的弱い怪獣でもこの世界では脅威だ。タイラント、それもEXタイラントレベルを呼び出せておいて、出来ないはずがない。

その事を考えると明らかに手を抜いている。

「こりゃ、少し調べる必要が有るかもな」

丁度、魔人族側にも大迷宮は有るのだし、別行動をして一時的に神代魔法の会得の為の魔法陣を機能停止させておくのも悪く無いだろう。その点はミレディ相手に再起動の方法も含めて確認済みだし。

ふと、ハジメ達に視線を向けると二人の世界を作り始めたハジメとユエに、シアがツッコミを入れ、ミュウが構ってくれとハジメに飛びつき、ティオが変態発言をしてハジメに冷たくされてハァハァする。ハジメを中心に繋がり合ういつもの光景がそこにはあった。

「平和だね〜」

背景のEXタイラントのスタンピングの余波による連続小規模地震の影響で崩れている建物や崩れ掛けの建物も多いが、それでも人的被害は無いそうだ。街の住人全員が外に出てEXタイラントとキシリュウジン、ヨクリュウオーの戦いを見ていたからという理由からだが、それは幸いと言えるだろう。

(後は、白崎か)

正直、自分で戦う事を選んだのだから、投げ出すなと言いたいが、断ってもついてきかねない。はっきり言って光輝とそれに最初に追従した三人については、元の世界に帰る方法が見つかったとしても、此方の世界に置いていく事は前提なので反対だが、そこはハジメに丸投げすることに決めた。

要するに、香織の同行については既にハジメの選択に全面的に任せたと言う訳だ。恋愛感情も絡んでくるので、その辺は当事者同士の問題だ。

「ハジメくん、私もハジメくんに付いて行かせてくれないかな? ……ううん、絶対、付いて行くから、よろしくね?」

「………………は?」

丁度、そんな事を考えていると京矢の予想の上を行って、第一声から、前振りなく、挨拶でも願望でもなく、ただ決定事項のみを伝えるという展開には、ハジメの目も点になっていた。

「……京矢様、あれは」

「指揮官、アレは」

「言わなくても良い」

ベルファストとエンタープライズの言葉はなんと無く分かる。来るなと言ったらいつかのハウリア族の様に言い出しそうだなとも思う。

(……考えてみれば、あの女、地球にいた時からそう言う気質あったな)

そう思うと今は亡き檜山とはお似合いでは、と思う。
彼らは知らない事だが、実は今も魔人族達の所で頭だけになり改造されて苦しみ続けている檜山の事を思い出したのだった。

ポカンとするハジメに変わってユエが進み出たので、ハジメの周辺での話し合いをして貰おうと思っていると、

「……お前にそんな資格はない」

「資格って何かな? ハジメくんをどれだけ想っているかってこと? だったら、誰にも負けないよ?」

ユエの言葉に平然と言い返してからの告白と言う流れ。まあ、当然好きな女が居るからと断るハジメと、そんな一連の流れであった。
まあ、ハジメとユエの視線に冷たいものが有るのにはヒートアップしているために気付いていないのだろう。

ハジメがどう断るかと考えていると、そんな香織の意志に異議を唱える者が……もちろん、〝勇者〟天之河光輝だ。

「ま、待て! 待ってくれ! 意味がわからない。香織が南雲を好き? 付いていく? えっ? どういう事なんだ? なんで、いきなりそんな話しになる? 南雲! お前、いったい香織に何をしたんだ!」

「……何でやねん」

「ってか、あいつ今まで何やってたんだ?」

香織の告白の騒動の前にさっさとキシリュウジン達は分離からの回収を終えていたが、今まで光輝の顔を見ないのですっかり存在が頭から抜けていた。
と言うよりも気にしても頭が痛くなるだけになりそうなので、気にしてもいなかったが。
…………何か、頭に生ゴミが乗っているのは頭を突っ込んでいた樽がゴミ箱だったのだろうか? 結局、龍太郎が頭から突っ込んだ樽を破壊して救出したのだろうか?

どうやら、光輝は、香織がハジメに惚れているという現実を認めないらしい。いきなりではなく、単に光輝が気がついていなかっただけなのだが、光輝の目には、突然、香織が奇行に走り、その原因はハジメにあるという風に見えたようだ。
本当に、どこまでご都合主義な頭をしているのだと思わず関西弁でツッコミを入れてしまうハジメと、内心で呆れてしまう京矢。

完全に、ハジメが香織に何かをしたのだと思い込み、半ば聖剣に手をかけながら憤然と歩み寄ってくる光輝に、雫が頭痛を堪えるような仕草をしながら光輝を諌めにかかる前に、仕方ないとばかりに京矢が暗黒剣月闇を首筋に添える。僅かでも動けば問答無用で首を斬ると言う意思表示だ。

「鳳凰……」

「取り敢えず、剣から手を離せ。話はそれからだ。それ以外の行動してみろ、喉笛を斬るぞ」

京矢から本気の殺気を向けられて震えながら聖剣から手を離すと、用は済んだとばかりにさっさと光輝から離れて、暗黒剣月闇の刀身を拭う。本当に生ゴミの中にダイブしていたのだろう、微妙に悪臭が漂っていた。ちょっと生ゴミの汚れが暗黒剣月闇に付いてしまった。

「光輝。冷静に考えなさい。今帰ってきたばかりの南雲君が何かできるわけないでしょ? あんたは気がついてなかったみたいだけど、香織はもうずっと前から彼を想っているのよ。それこそ、日本にいる時からね。どうして香織が、あんなに頻繁に話しかけていたと思うのよ。それに……ただの幼馴染の光輝に私達の行動を決める権利はないわ」

改めて雫が光輝を諌めるが。

「雫……何を言っているんだ……あれは、香織が優しいから、南雲が一人でいるのを可哀想に思ってしてたことだろ? 協調性もやる気もない、オタクな南雲を香織が好きになるわけないじゃないか」

その、なんだかんだ言ってもハジメを見下していた事の分かる台詞に眉を顰める京矢とハジメ。

そこへ、光輝達の騒動に気がついた香織が自らケジメを付けるべく光輝とその後ろのクラスメイト達に語りかけた。

「光輝くん、みんな、ごめんね。自分勝手だってわかってるけど……私、どうしてもハジメくんと行きたいの。だから、パーティーは抜ける。本当にごめんなさい」

そう言って深々と頭を下げる香織に、鈴や恵里、綾子や真央など女性陣はキャーキャーと騒ぎながらエールを贈った。永山、遠藤、野村の三人も、香織の心情は察していたので、気にするなと苦笑いしながら手を振った。
……と言うか、ハジメ達からの同行への了承ももらって無いのだが。

そんな事実も頭にない光輝は香織の言葉に納得出来ない。

「嘘だろ? だって、おかしいじゃないか。香織は、ずっと俺の傍にいたし……これからも同じだろ? 香織は、俺の幼馴染で……だから……俺と一緒にいるのが当然だ。そうだろ、香織」

「いや、結局他人だろうが。今時、ラブコメでも、ラノベでも幼馴染にそんな特別性は無いだろう? 何年前の恋愛ドラマなんだ、お前の頭の中は」

流石に、と思った京矢の一言でバッサリ切り捨てられる。怒りの篭った目で睨んでくるが、京矢は何も気にせず、寧ろ指差して笑っている。

そんな京矢の態度に光輝だけで無く龍太郎も顔を真っ赤にして怒りを浮かべているが、何一つ気にも止めていない。

召喚されなくてもDVとかで訴えられるそうだな、と思いながら笑ってると、光輝からどんどん険悪なオーラがでてくる。
 
「香織。行ってはダメだ。これは、香織のために言っているんだ。見てくれ、あの南雲を。女の子を何人も侍らして、あんな小さな子まで……しかも兎人族の女の子は奴隷の首輪まで付けさせられている。黒髪の女性もさっき南雲の事を『ご主人様』って呼んでいた。きっと、そう呼ぶように強制されたんだ。南雲は、女性をコレクションか何かと勘違いしている。最低だ。人を傷つけることに対してなんとも思ってないし、強力な武器を持っているのに、仲間である俺達に協力しようともしない。香織、あいつに付いて行っても不幸になるだけだ。だから、ここに残った方がいい。いや、残るんだ。例え恨まれても、君のために俺は君を止めるぞ。絶対に行かせはしない!」

光輝の相手のことを思っているようで微塵も相手のことを考えていない独りよがりの演説は続く。
 
「君達もだ。これ以上、その男達の元にいるべきじゃない。俺と一緒に行こう! 君達ほどの実力なら歓迎するよ。共に、人々を救うんだ。シア、だったかな? 安心してくれ。俺と共に来てくれるなら直ぐに奴隷から解放する。ティオも、もうご主人様なんて呼ばなくていいんだ」

そんな事を言って爽やかな笑顔を浮かべながら、ユエ達に手を差し伸べる光輝。雫は顔を手で覆いながら天を仰ぎ、香織は開いた口が塞がらない。そろそろ面倒になってきた京矢が時限バカ弾でも、この二人に使って揃ってバカ踊りしてる間に行こうかと思っていると。

「指揮官、あれは何を言っているんだ?」

「理解に苦しみますね」

「理解しない方が良い。アレの頭の中を理解できたら終わりだ」

最早揃って何処ぞの神話のヤバい魔導書レベルの思考だ。理解した瞬間汚染される。……最早、その他のレベルではお似合いなので、迷惑だから光輝の妄想通り二人くっ付いてくれてれば、楽だったのにな、とも思う。

以前、光輝は祖父の影響を受けたと言っていたが、

「どれだけ碌でもない老害だったんだ、アイツのジジイは?」

光輝を作った張本人なのだ。もう亡くなっているのなら、無理矢理あの世からでも降霊させて霊剣の応用でぶん殴った上で文句も言いたい。高齢なら気は引けただろうが、霊体なら死なないだろうし。

まあ、そんな京矢の呟きは当然光輝にも聞こえていた。ユエ達に視線を合わせてもらえないどころか、気持ち悪そうにハジメの影にそそくさと退避する姿に、若干のショックを受けた上に、聞き捨てならない言葉。最早、光輝の沸点は限界だった。

「鳳凰寺京矢! 俺と決闘しろ! 武器を捨てて素手で勝負だ! 俺が勝ったら、彼女達も全員解放してもらう!」

「良いぞ、別に」

素手の勝負にしたのは、仮面ライダーに変身されれば自分が不利だと分かっているからに違いない。
香織達迷宮組も龍太郎を除いて光輝にドン引きし、ユエ達の光輝を見る目は既に路地裏の吐瀉物を見るものと変わらない。

だが、光輝は完全に自分の正義を信じ込んでおり、京矢達に不幸にされている女の子達や幼馴染を救ってみせると息巻き、ユエ達処か仲間達からも自分の評価が下がりまくっている事に気付いていない。元々の思い込みの強さと猪突猛進さと“嫉妬”が合わさり、完全に暴走している様だ。

そんな光輝の一連の行動は、自分達の非を棚に上げて命の恩人である京矢達を非難しまくった挙句、自分が片思いしていた女の子がハジメに告白したら、その現実を認めたくなくてありもしない事実を頭の中で捏造してハジメを責め立てたと思ったらユエ達をナンパして当然のように拒否され、思い通りにならなかった現実に激昂して八つ当たりをしているようにしか見えない。
特に彼らに、鋼の巨人を操り、現れた強大な死の具現から救われた町の住人や、冒険者達からは「こんなのが俺達の希望?」と思われている。
信仰とか上回るほどのショックの連続であるのだから仕方ないのかもしれない。

しかも、ユエ達の意見を一切聞かずに勝手にユエ達を決闘の戦利品扱いしている始末だ。先程ハジメの事を「女性をコレクションだと思っている最低な奴」と罵倒していた癖に、どの立場で物を言っているんだとしか言いようがない。もう言葉のブーメランとか自分を棚に上げるとかそう言うレベルを越えている。

なお、矛先が京矢に向いたのは先程の聞き捨てならない言葉が聞こえたからだろう。

まあ、そんな中で意外だったのは京矢が光輝からの決闘を簡単に受けた事だ。

「お、おい、鳳凰寺。熱でも有るのか?」

「いや、あの馬鹿がやっとオレには剣じゃ一生勝てないって学習したんだ。その、ご褒美に決闘位受けてやっても良いかなって思ってな」

指差しての馬鹿扱いに、ご褒美と言う言葉。そして、極め付けは。

「まっ、こっちが勝った時の条件は勘弁してやるよ。どうせ負けないからな」

素手だろうが負けるわけが無いと、ケラケラと笑う京矢に、更に顔を真っ赤にして怒る光輝は、

「巫山戯るな! そう言うなら剣を使え!」

「んじゃ、ちょっと遊んでやるよ。ああ、そこの取り巻きと小悪党共」

そう言って龍太郎と全裸の三人を指差して。

「俺が剣を使うんだ以上、阿保へのハンデだ、お前らも纏めて相手をしてやる」

光輝と会話するよりも決闘でも何でも受けて物理的に黙らせた方が早いと判断した結果でもあるが、それはそれ。
素手よりも剣の方が手早く済むと判断した結果で有る。

そんな、京矢の言葉に反応したのは檜山亡き(改造人間となった後を生きていると評して良いのなら違うが)小悪党一味だ。
中野、近藤、斎藤の三人は京矢の言葉に顔を見合わせる。そして、言葉の意味を理解してしまう。そして、その後の行動は早かった。

「「「すいませんでした!!!」」」

小悪党であるが故に、序でにハジメに対して個人的な恨みのある檜山がいない事から、即座にそれを即座に実行に移した。
地球でだってハジメ関連の事には檜山に巻き込まれて、毎回酷い目に遭って来たのだし。

そして、彼らの選んだ行動は即座の降伏である。彼らの中で最上位に京矢とハジメがランクインしたのだった。
要するに長い物に巻かれろと言う言葉、そのままに、二人の側に立つべきだと決断した訳だ。

まあ、流石にこの行動には光輝も唖然としてしまう。

「鳳凰寺さん、南雲さん、これまでの事は深くお詫びします」

一同を代表して中野が頭を下げて謝罪する。

「「すいませんでした!」」

「あ、ああ」

「お、おう」

余りの素早すぎる行動に京矢もハジメもそう返すしかなかった。

「って、事でコイツらは不参加らしいけど、お前はどうするんだ、ゴリ……脳筋?」

「ふざけんな! オレは力を貸すぜ、光輝!」

己なのか光輝なのかは分からないが、馬鹿にされていると言う事だけは理解した龍太郎は京矢の言葉に怒りも露わにそう叫ぶ。

そもそも、京矢には馬鹿になどしていない。面倒だから挑発して殴り飛ばして気絶させるのが、初めて関わる羽目になってからの京矢の光輝に対する対応なのだ。
相手にするだけ面倒で、一番手間の掛からない対応が、適当に挑発して向こうから決闘だの挑ませてから気絶させる。それが一番楽な方法だ。
元々こう言う格式貼った決闘とかが大好きな奴なのはよく知っているので、毎回その手で光輝は黙らせるのが一番楽なのだ。
毎回気絶させられているのに懲りずに挑んでくる点には心底迷惑と思っている。多分、自分を正当化させる言い訳でもして居るのだろうから、二度と挑ませないには腕を折る位しなければダメだろう。魔法の存在を考えると、今回は片腕を切断しても問題ないかな、とも考えている。

それに、今回はそんな甘い手段ではない。確実に徹底的な敗北を刻む。少しはこいつの甘えを消しておかないとこの先何人犠牲が出るか分からないからだ。
一応、まだクラスメイト達には地球に連れ帰ってやる、と言う情位はあるし、自分達だけ帰っても周りからの言葉が煩くなるのだ。その声は気にしないとしても、少ない方が良いのも間違いないのだし。

「で、敢えて数には入れなかったけど、お前らはどうする?」

好き好んで女相手に剣は向けない京矢だが、光輝の味方をしたいと言うのなら相手になる。そんな視線を、EXタイラント デスボーンの怨念の渦に飲み込まれかけた後遺症で震えている上に顔を真っ青にしている恵里とそれに寄り添っている鈴に向けるが、鈴は首を横に振る。少なくとも、京矢にとって勇者に味方しそうな連中の中で一番やりにくいのがこの二人なので不参加は正直嬉しい。……逆に龍太郎は一番楽な相手だ。仮に力加減を間違えても平気だろうし。
なお、恵里が顔を真っ青にしているのは京矢からの言葉によるものだが、その事には誰も気づいていない。

雫については不参加なのは目に見えてるので敢えて問わない。幼馴染に嫌われたく無くて胡麻を擦ってる奴なのだし、この場合味方するのは同性の香織の方だろう。

「んじゃ、そのゴリラと纏めて遊んでやるよ、阿保。お互い何でも有りだ、待ってやるから好きな武器を何でも用意しろ」

京矢のバカにする様な言葉に怒りを覚える光輝に対して、龍太郎はその言葉に頭に上った血が一気に落ちて行ったりする。

先程の京矢の台詞を思わず反芻してしまったのだ。お互いに、何でも有りだと言った。好きな武器を用意しろと言う言葉。そして、京矢とハジメが操った二体の巨大ロボを思い出す。

『何処からでもかかってこい』と宣言する巨大ロボに挑む自分と光輝の姿を想像して真っ青になる。間違いなく勝てない。

「ぶ、武器だよな!? 兵器は使わないよな!? 流石にあれは使わないよな!?」

「あー、ああ。オレは剣しか使わねえから安心しろ」

キシリュウジンだけじゃ無くて戦車やらミサイルやらを持ち出されては流石に死ぬと考えたのか、何かを叫び出しそうな光輝を必死に抑えて叫ぶ龍太郎の言葉にそう返した。

心底ホッとする龍太郎に不思議そうな顔を浮かべる何も知らない光輝。だからだろう、街の住人達からの視線が心底冷たいのも気が付かない。

自分達を救ってくれた救世主である京矢。町の住人達、ミュウを狙ってボコられた後、絡もうとしたチンピラ達からさえ、救世主の様に見られてるのに対して、メルドさえもこれが俺達の希望なのか……と呆れている。

流石に街のど真ん中で暴れる訳にも行かないので、決闘に適した広い場所に移動する一行。
9/11ページ
スキ