ウルの街防衛戦

「チッ!」

アナザーシンの仲間やヒロインと言う言葉も気になるが、今はアナザーシンのライドウォッチを壊すことが先決と考え、バールクスのウォッチとジクウドライバーを取り出そうとしたが、それよりも先にアナザーシンは標的であった愛子に向かおうとする。

明らかに今からベルトを付け直していては間に合わない、そんな状況に舌打ちしつつ、

「変身!」


『turn up』


予め変身可能な状態で装着していたブレイバックルを使いブレイドに変身すると、アナザーシンにブレイラウザーを振り下ろす。

アナザーシンはブレイラウザーを腕の装甲で受け止める。今の一撃で傷一つ付かない装甲の強度を一瞥し、横凪に振るう。
アナザーシンの胸部の装甲はその斬撃さえも受け付けず、反撃とばかりに突進してくる。

「邪魔を……」

「どけ、鳳凰寺!」

アナザーシンの突進を抑えていた京矢は後ろから聞こえたハジメの声に従って横に跳ぶ。すると、ギャレンに変身していたハジメの放ったファイアバレットがアナザーシンに真っ正面から直撃する。

「ナイスだ、南雲!」



『スラッシュ』『サンダー』
『ライトニングスラッシュ』



ファイアバレットが直撃した直後のアナザーシンへと雷光を纏ったブレイラウザーを斬り付ける京矢。

ファイアバレットとライトニングスラッシュ。ギャレンとブレイドの二人の必殺技の直撃を受けたアナザーシンは……







「やりやがったな……」






無傷で両腕を京矢達と愛子達に向ける。その行動に一瞬戸惑うが、先程の魔人族の男の一件でそれが無意味じゃないのは理解してしまう。
その証拠の様に両腕の装甲の一部がスライドし、そこから有機的なミサイルの様な機関が現れる。

アナザーシンの両腕から撃ち出された有機ミサイルは、合計四発。ハジメは素早く有機ミサイルに対してギャレンラウザーの引き金を引き、打ち出された四発の有機ミサイルを誘爆させる。

「はあぁ!!!」

その爆煙に隠れてブレイラウザーで斬りかかる京矢だが、アナザーシンの装甲は傷一つ付いた様子はない。

「邪魔すんじゃねえよ、鳳凰寺ぃ!!!」

「邪魔するに決まってるだろうが!!!」

殴りかかって来るアナザーシンを蹴って再度距離を取る。

「纏めて死にやがれ!」

拳が空振ったアナザーシンの全身の装甲がスライドすると其処から再び有機ミサイルが撃ち出される。両腕から打ち出されたものよりも小型だが、先程のように撃ち落とすのは困難な量だ。

「「えぇ~」」

まあ、大型ミサイルからマイクロミサイルに切り替わった敵の攻撃に唖然と呟くしかない京矢とハジメだった。

だが、小型化されたのなら他の手段での対処も可能だ。大型ならば誘爆させるだけだが、

「旋っ!」

撃ち落とすには数が多いなら、纏めて吹き飛ばせば良いと判断し、京矢が得意の剣掌・旋で竜巻を巻き起こす。

竜巻の中に飲み込まれたマイクロミサイルは互いにぶつかり合い爆発していく。京矢がマイクロミサイルを爆発させて防ぐと、有機ミサイルの発射口が閉じる前に動いたハジメがギャレンラウザーを装甲の隙間に挟み込む。

「この距離でこうなったら、その装甲も意味ないだろ?」

告げると仮面の奥でニヤリと笑いながら2枚のカードを取り出し、アナザーシンの前でギャレンラウザーに読み込ませたいく。

「やっ、やめて……」

その行動が何なのか理解したアナザーシンが懇願するが、



『ファイア』『バレット』
『ファイアバレット』




それを言い切るよりも早く、アナザーシンの懇願を無視し、一切の容赦無くファイアバレットを装甲の隙間から零距離射撃で撃ち込むハジメ。

「があああああぁぁぁぁぁ!!!」

流石に装甲の隙間から零距離で打ち込まれた必殺技は効いたのか、それとも零距離射撃の必殺技で即死しない耐久力に驚愕すべきか、アナザーシンは絶叫を上げて吹き飛ばされる。

「清水くん!?」

容赦など無い京矢とハジメの攻撃に思わず愛子が悲鳴の様に幸利の名前を叫ぶ。流石にあの攻撃を零距離で撃ち込まれたのだから無事では済まないだろうとその場にいた全員が考えていた。

だが、その考えには僅かにズレがある。

京矢とハジメ以外の者達には命が無いのではと言う意味の無事では済まない、であり。
京矢とハジメの二人にとっては、無傷では無いだろうと言う考えだ。

「クソ……」

ヨロヨロとした様子で立ち上がるアナザーシンの体から受けたダメージが巻き戻す様に消えて行く。

「効いてはいる、様子だな」

「問題はあの回復力か?」

まだアナザーシンが生きている事を驚いている愛子達を他所に、京矢とハジメはどうすればアナザーシンを倒し切れるか言葉を交わす。

強靭な装甲に加えての再生力。更に言うならばアナザーライダーの特徴として存在する、例外を除いてアナザーライダーを倒すために必要なウォッチ等存在しない事だ。
流石に今から仮面ライダーシンからライドウォッチを貰ってくる事も、いるか居ないかわからないゾンジスを探してライドウォッチを巻き上げる事も出来ない。内心、今度クォーツァーかレイダーに遭遇したら悪の組織と怪人に人権は無いと言う決断し、絶対にライドウォッチとプラグライズキーを強奪しようと……多分、ハジメも賛同するであろう事を心に誓うのだった。

そんな京矢の心境を他所に、その生命力に息を飲む愛子達。
心配が一転して驚愕に変わった愛子をバイザーの奥の複眼で睨みつけ、両腕のヒレの様な部分が伸びて刃の様な形へと変える。

京矢達の相手よりも先に標的である愛子を狙おうと判断したのか、アナザーシンは愛子達に視線を向ける。

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!!」

そんな中、護衛の騎士の中の一人が恐怖が限界を超えたのか、悲鳴をあげながら剣を抜いてアナザーシンへと斬りかかる。

悲鳴に近い掛け声で振り下ろされた剣はアナザーシンの装甲になす術もなく弾かれてしまう。そして、横薙ぎに振るわれた右の刃を受けた剣が熱したナイフでバターを切ったかの様に切り裂かれていった。

剣を容易く切り裂かれた光景に恐怖に騎士が振りえていると、彼の首に左腕の刃が迫る中、騎士の体が後ろに引かれる。
鎧をエンタープライズに引かれ、騎士はアナザーシンの刃の軌跡からの回避に成功する。

「指揮官、今だ!」

「ああ!」



『キック』『サンダー』『マッハ』




「確か、こうだったよな」




『ドロップ』『ファイア』『ジェミニ』




互いに三枚のラウズカードを使った二人の背後に使用したカードのヴィジョンが現れる。

天高く飛翔するローカストアンデッド、雷を放つディアーアンデッド、そして音速で走るジャガーアンデッド。

其処巨大を翻すホエールアンデッド、炎を放つファイアフライアンデッド、そして二体に分身するゼブラアンデッド。

二人のライダーに三枚のカードが吸い込まれ力となるとブレイドは雷を、ギャレンは炎を片足に宿す。




『ライトニングソニック』
『バーニングディバインド』




音速で駆けながら雷光を纏った飛び蹴りを放つ京矢と、空中に舞い上がり回転しながら二人に分身し踵落としの要領で炎を纏ったキックを叩きつけんとするハジメ。

「来るな! 来るんじゃねえよ!!!」

自身に迫る二つの必殺技の光景に慌てて全身からマイクロミサイルを放つが二人のライダーの必殺技はそれを諸共せずにアナザーシンへと必殺の一撃を叩きつける。

『BOARDダブルライダーキック』と言うべき同時攻撃がアナザーシンへと叩き込まれる。


「ぐ…………グギャァー!!!」

ライトニングソニックとバーニングディバインド、炎と雷の必殺キックを同時に叩き込まれ、後方に吹き飛ばされながら爆散するアナザーシン。
そして、全身を包んでいたと思われる装甲の破片が飛び散り爆散する光景に、今度こそと思いながらベルトを外し、二人は変身を解除する。

「し、清水くん!?」

側から見れば死んだかもしれない光景に絶叫する愛子を他所に、

「……今度こそ、やったか?」

「流石にこれなら変身解除程度には持って行けただろうな?」

最早、既に生かしておくと危険な怪人扱いで、中身がクラスメイトなどと言う配慮は二人には無かった。
フォーゼのゾディアーツでも必殺技を受けた変身者は生きてるので問題はないかとも思うが、ダブルのドーパントは本編前では普通に変身者が死んでいたが、それはそれ。まあ、アナザーライダーの性質上無事だろう。

さっさと再変身前にライドウォッチを取り上げようと思う中、『それ』は現れた。

『ヤリヤガッタナ……』

爆煙の中から聞こえてきた声に背筋が寒くなる。
アナザーシンの暴れ方を見た愛子親衛隊の何人かの腰が抜けて、その場に座り込んでしまう。

『絶対ニコロシテヤルゥ!!!』

全身の装甲が破壊され露わになった異形の体は肥大化しバッタに似た顔の巨大な腕を持つ怪物の様な姿に変貌していた。
胸の中央にはシンのアナザーライドウォッチが現れ、胸の部分には、仮面ライダーどころかアナザーライダーですら無い怪物と変わったそれが、尚もアナザーシンという事を表す様に真と1992の字が浮かんでいた。

「何処まで化け物になる気だよ?」

二人の必殺技の直撃にも耐えたアナザーシンを見据えながら、ハジメは呆れた声を上げる。
相手がアナザーライダーならば、流石にこれ以上は京矢に任せた方が吉と考え、後は任せたとばかりにユエ達の元へと下がる。

「トドメは任せたぜ、鳳凰寺」

「ああ、任された」

それがアナザーライダーと呼べる者なのか疑問な姿に変わったアナザーシンを一瞥し、プレイバックルからジクウドライバーに着け変える。

「いい加減、楽にしてやる」

『バールクス!』

「変身!」

『ライダーターイム! 仮面ライダー! バールクース!』

改めてバールクスに変身するとジクウドライバーの中央に手を翳し剣を出現させる。

己に迫るアナザーシンを一瞥しながらゆっくりと構えを取り、アナザーシンのライドウォッチを破壊しようとした、そんな時だった。
RXライドウォッチの輝きと共にブランクのライドウォッチが輝き、砕け散った装甲や相手の胸部に浮かぶアナザーシンのウォッチの力を吸収する様にその形を変える。
そのウォッチの外見は歪んだアナザーシンとは対極の綺麗に整った物であり、描かれた絵は整った姿とは逆の異形の怪物を思わせる絵に。

「アンタもこんなふうに自分の力を使われるのは嫌って事か?」

RXの力の起こした奇跡に呼応した仮面ライダーシンの力の対抗だろう。

「その力、有り難く使わせて貰う!」

『シン!』

京矢がシンライドウォッチを起動させ、ゆっくりと刀身を滑らせると緑色の光が剣を包む。

『ガァァァァア!!!』

方向をあげながら向かってくるアナザーシンに、バールクスは八相の構えで剣を構えながらそれを見据える。

「剣掌奥義……」

放つは己の最も使い慣れた技。剣掌の奥義。遠心力を懸けて剣先に乗せた剄力と共にシンの力を幾重にも放つ。

「円空旋!!!」

京矢の一閃に沿って真っ二つに切り裂かれるアナザーシンウォッチ。
爆散するウォッチと共に、ライドウォッチの影響なのか昆虫の様な触覚と微かに緑色の体色に変わった幸利が崩れ落ちる。

「清水くん!」

愛子が倒れた彼に駆け寄ろうとするが、デビットや生徒達に止められている間に京矢が幸利に近づく。

助けようしてくれるのかと思った愛子を他所にバールクスの姿のまま彼の腹を踏み付けて無理矢理意識を戻させる。

そんな京矢の行動に愛子が抗議の声を上げる前に京矢が声を上げる。

「答えろ、お前にその力を渡したのは誰だ?」

「し、死にだくない……だ、だずけ……こんなはずじゃ……ウソだ……ありえない……」

「答えろって言ってんだろうが!?」

踏み付ける足に力を込めて怒鳴りつける。

「わ、分かった……お、俺、どうかしてた……もう、しない……何でもする……何でも答える……助けてくれたら、あ、あんた達の為に軍隊だって……作って……女だって洗脳して……ち、誓うよ……あんたに忠誠も誓う……何でもするから……助けて……」

「お前の忠誠も、俺の為の軍隊もいらねえから、聞かれたことだけさっさと答えろ。……お前にその力を与えたのは、何者だ?」

まさか、トータスにタイムジャッカーでも居るのかと言う疑問からの警戒。幸利は震えながら京矢の言葉に答える。

「あ、ああ、あれは……」

だが、それは言い切る事はなかった。





『狼煙霧虫! 』
『煙幕幻想撃!』






その音に反応して京矢が横に跳ぶと、幸利が答えようとした時聞こえた音と共に放たれた赤い刃が、幸利の体を真っ二つに上半身と下半身に切り裂く。

誰もがその突然の出来事に言葉を失ってしまう。

「……どうして?」

最初に口を開いたのは愛子だった。
呆然と、死出の旅に出た清水の亡骸を見つめながら、そんな疑問の声を出す。
ハジメは、清水から視線を逸らして愛子を見た。愛子の瞳には、怒りや悲しみ、疑惑に逃避、あらゆる感情が浮かんでは消え、また浮かんでは消えていく。

「誰だ!」

赤い刃が飛んできた方向にドンナーを向けるハジメ。

「あははー、そんなに怒鳴らなくても出て行きますよー」

そんな場に似合わない少女の軽い声が響くと二人の仮面の戦士が現れる。
魔法使いを思わせる金色の仮面戦士と、サーベルを持った仮面の剣士。

新たに現れた特撮ヒーロー……仮面ライダーの姿に緊張が走る中、その二人は変身を解除する。

「あははー、始めまして。私は倉田サユリ。仮面ライダーソーサラーです」

フードを被った少女サユリが隣に立つ少女の背中を押して名乗る様に促す。

男子生徒達はそのその二人少女の容姿に場違いながら見惚れていた。

後ろでリボンで束ねた長い艶やかな黒髪に幼い顔つきに、それに反した抜群のスタイルに背の高さはサユリと名乗った少女と同じ位の少女は、その手に持ったサーベルと腰に刺した剣を持ち。

「……私は仮面ライダーサーベラで仮面ライダーデュランダル。……川澄マイ」

地球の現代の日本の高校の制服を着こなしながら、魔法使いの様なフードと剣士を思わせる二人の少女。

「私は、組織の敵を討つ者」

その少女はそう宣言する。

***

「先ずはご挨拶させて頂きますね」

ソーサラーとサーベラ……サユリとマイは京矢達に一礼する。

「始めまして、|創世の王《バールクス》とそのお仲間の皆さん。私達が彼をアナザーライダーに変えた者達です」

優雅ささえ感じさせる態度で京矢達に対してそう名乗るサユリ。

「おい、そんな事をわざわざ教えるなら……何でコイツを殺した」

ドンナーを突き付けながらハジメはサユリへと問い掛ける。

「うーん、それはですね。用済みになった事と、その方が彼にとって幸せだと判断したからですよ」

「幸せ?」

「アナザーシンのウォッチは使用者の体を異形の怪物に変える副作用が有るんですよ。特に再生する度に。魔物の軍団を手にした後から、もう体の内側は完全に人間じゃなくなっていた筈ですよ?」

そんな事をペラペラと話してくれる彼女に思わず言葉を失う一同。
幸利に対する口封じですらない、読み終わった雑誌でも処分するかの様に、用が済んだからちょっとの善意を込めて殺しだけと笑顔で告げる少女に背筋が寒くなる。

「そのシンのライドウォッチは私達から貴方への贈り物です。どうぞ、お納め下さい」

返せと言われても連中に返す気は無いが、贈り物と言われ、幸利を何故アナザーライダーに変えたのか理解出来る。

「どうして……どうして、清水君を!?」

愛子はそう叫ぶ。
問わずには居られない。何故幸利が利用されなければならなかったのか? 何故彼が死ななければならなかったのか? 教師としてだけでは無い。

「利用した理由は誰でも良かった。偶々、彼に目を付けた魔人族が居たから、一応協力者の立場の私達ですから、他の人を探すのも面倒でしたし、彼を使うのが丁度いいかな? って思ったんですよー」

そんな理由で、と愛子が叫びそうになる瞬間、




『ボルケーノ……ナウ』
『コネクト……ナウ』




サユリはワイズドライバーに続け様に二つの指輪をかざす。
その行動の意味を理解した京矢が幸利の死体から離れると魔法陣と共に現れた炎の中に飲み込まれていく。骨だけを残し灰に変わった彼の横に仕上げとばかりに壺を置く。

「こうして、バールクスさんからの質問に答えているのに、彼を始末した理由は先程答えた通りですけど、一つ言ってなかった事が有るんですよねー」

笑顔を浮かべながらサユリは無邪気に、そして残酷に答える。

「ダークゴーストから頼まれてたんですよー。自分のヒロイン扱いされて気持ち悪いって」

彼女から告げられる理由に思わず言葉を失ってしまう愛子。
自分の生徒が、そんな理由で利用されて、そんな理由で命を奪われたのだ。無理は無いだろう。

「そんな事より、私達は貴方を歓迎致します、バールクスさん」

遂にはそんな事と言い切る彼女に怒りさえ覚える愛子とクラスメイト達。そんな彼女達を他所にサユリは話を続けて行く。

「もう既にお気付きかと思いますが、私達には地球への移動手段が有ります。私達の仲間になるのなら、貴方方を地球に連れて行って差し上げますよ」

「断る」

地球への移動方法と聞き騒めくクラスメイト達を他所に京矢はサユリの言葉をそう切り捨てる。
別にトータスの人間族の事を考えた訳では無い。サユリの言葉には妙に引っかかるところがあるのだ。

「別にこれまで通り魔人族に味方しなくても良いんですけどねー。私達の組織の一員になってくれるだけで……」

「お前が言ってるのはオレ達の地球とは別の地球かもしれないだろ? 連れて行く、としか言って無いんだからな」

「ふぅ……。ええ、その通りですよ」

隠す事はないとばかりに、それをアッサリと肯定するサユリ。

「ですが、私達には異世界間の移動手段があるのは事実ですよ」

他の神代魔法を求めなくとも、トータスでの旅の目的が、地球に戻る可能性は確かに目の前にある。

「ああ、南雲ハジメさん。良ければ貴方も私達の仲間になりませんか? 今なら、地球への帰還方法の他に、新しいライダーシステムと専用マシンも付けますよ?」

「っ!?」

そう言って彼女が何処からか取り出したのはドライブドライバー。後ろに魔法陣の中から現れる一台の車ネクストライドロン。

「この、仮面ライダーダークドライブの装備一式を、今ならプレゼント中ですよ?」

「…………………………………………………………………………断る!」

物凄く心が動かされてないかと言う間の後、彼女からの誘いを断るハジメ。

「そうですか。では、気が変わったら何時でも言って下さいねー」

ハジメの返答に残念そうに首を振りながら、二人の少女の後ろに複数の巨大な魔法陣が現れる。

「ですが、私達としても、彼に対して、情けくらいは有るんですよー」

笑いながら告げる言葉には信用など出来ない。だが、

「ですから、彼の目的のウルの街の壊滅位は代わりにやり遂げて上げますよ」

魔人族の協力者という事でまた魔物の群でも呼び出すのかと思う京矢達の予想を裏切り、

「present for you」

その言葉と共にその場にいた全員の度肝を抜く物が魔法陣より出現する。

地上に現れた魔法陣から飛び出したのは2台の迷彩色のトレーラー。
上空に現れた五つの魔法陣からはそれぞれ形の違う五機の戦闘機。

剣と魔法の世界に似つかわしくないそれらは、

「さあ、蹂躙しなさい」

サユリの宣言と共に、

「マルス、マグネスファイブ」

車体を起こし迷彩色の人型に変形する2台のトレーラー。
上空で形を変えて、頭、胸部と腕、腰、下半身、足首となり合体する戦闘機達。

「巨大ロボぉ!?」

「嘘だろ!?」

「剣と魔法の世界でそんなの有りかよ!?」

特撮ヒーローの次は巨大ロボと言う光景に思わず絶叫する愛子親衛隊の男子生徒達。

だが、京矢のおかげで耐性ができたユエとシアを除くトータスの住人達は、突如して現れた鋼鉄の巨人達に言葉にならない程の驚愕を浮かべている。

「紹介しましょう、これが私達の巨大戦力。量産型ダイモス、マルス。超電磁ロボ能力統合機マグネスファイブです」

そう言って彼らの驚愕を他所にサユリは目の前で一礼をしてみせる。

「それでは、またお会いしましょう、バールクス」

そう言い残して足元に出現した魔法陣に消えて行く二人の少女達。

ウルの街を襲った災害は、まだ終わりを告げない。
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