ウルの街防衛戦

「面倒をかけた。本当に、申し訳ない。妾の名はティオ・クラルス。最後の竜人族クラルス族の一人じゃ」

さて、改めてティオ・クラルスと名乗った黒竜は、次いで、黒ローブの男が、魔物を洗脳して大群を作り出し町を襲う気であると語った。
その数は、既に三千から四千に届く程の数だという。何でも、二つ目の山脈の向こう側から、魔物の群れの主にのみ洗脳を施すことで、効率よく群れを配下に置いているのだとか。

「効率的な話だな。それなら一人でも大規模な魔物の連合軍が作れるし、群れのボス以外は動きも悪くならない」

京矢はその男の手際をそう評した。京矢も同じ立場ならば同じ方法を選んでいただろう。
群れのボスを通じて指示を出して群れの魔物を間接的に操る。洗脳した魔物を簡単な指揮官にして他の魔物に指示を出す。そうする事によって完全な上下社会の魔物の群れを意のままに操れると言う訳だ。

魔物を操ると言えば、そもそも京矢達がこの世界に呼ばれる建前となった魔人族の新たな力が思い浮かぶ。それは愛子達も一緒だったのか、黒ローブの男の正体は魔人族なのではと推測したようだ。

しかし、その推測は、ティオによってあっさり否定される。
何でも黒ローブの男は、黒髪黒目の人間族で、まだ少年くらいの年齢だったというのだ。それに、黒竜たるティオを配下にして浮かれていたのか、仕切りに「これで自分は勇者より上だ」等と口にし、随分と勇者に対して妬みがあるようだったという。

「おいおい、あの野郎何をやってんだ……」

京矢は黒髪黒目の人間族の少年で、闇系統魔法に天賦の才がある者。そのキーワードから思い浮かんだ者の正体に頭を抱えたくなる。
ここまでヒントが出れば、流石に京矢以外の地球組の脳裏にとある人物が浮かび上がる。
愛子達は一様に「そんな、まさか……」と呟きながら困惑と疑惑が混ざった複雑な表情をした。
既に白とか黒とか論じる以前に、最早黒を通り越して真っ黒だと思っている京矢もそうだが、愛子達は限りなく彼は黒に近いが、信じたくないと言ったところだろう。

考えられる最悪の状況。既に犯人の正体がそうだとしたら、蘇生手段があるとはいえ地球に帰るまで死んでいてもらう必要がある。

と、そこでハジメが突如、遠くを見る目をして「おお、これはまた……」などと呟きを漏らした。

「ん? どうした? 魔物の群れを見つけたのか?」

「ああ」

ハジメは友人の問いに簡潔に返す。
聞けば、ティオの話を聞いてから、無人探査機を回して魔物の群れや黒ローブの男を探していたらしい。

そして、遂に無人探査機の一機がとある場所に集合する魔物の大群を発見した。その数は……

「こりゃあ、三、四千ってレベルじゃないぞ? 桁が一つ追加されるレベルだ」

「万単位かよ。大体一つの群れが大体百としても、全部で何百体操れるんだよ、あいつは」

勇者への劣等感を持っていた様子だが、既に京矢からの評価は光輝などより高くなっている。
勇者の真価は剣の強さでも魔法の強さでもなく仲間達の希望となり得る存在、魔王を討つことの出来る剣となり得る存在とは言うが、光輝の評価が絶望的なレベルで低い京矢にしてみれば、あれに希望など託したくは無いと言った所だ。
明らかに地球組も考えている人物だとしたら、今頃人間も魔物を操る事で数の劣勢を簡単にひっくり返せた事だろう。戦いは数とはよく言ったものだ。
ハジメの例を考えると、彼も別の神代魔法を会得すれば、万を超えて億の軍勢を操れるであろう、とんでもない力を得ていた可能性だってある。丁度闇属性と相性の良さそうな魂に干渉するのも有るのだし。

……この時点で王国は目先の力に目が眩み、ハジメに続き優秀な人材を逃した事になる。心底、見限ってよかったと思う京矢だった。

「……ホント、物理的に潰しときゃ良かったな……あの王都」

イフの歴史では起こり得たであろうキシリュウジンによる城の物理的な転覆に近づいた瞬間であった。

「っと、それで町に着くまでの猶予はどれくらいだ?」

「このままじゃ、半日もしないうちに山を下るな。1日もあれば町に到達するだろう」

「なら、今から急いで町の住人が逃げれば何とかなるか」

ハジメの報告に全員が目を見開く。既に進軍を開始しているようで、方角は間違いなくウルの町がある方向と言う。

どっちにしても、防衛施設のない観光地など魔物の村に蹂躙された時点で生活方法を失ってしまうのだから、もはや街を捨てるしかないだろう。

「は、早く町に知らせないと! 避難させて、王都から救援を呼んで……それから、それから……」

事態の深刻さに、愛子が混乱しながらも必死にすべきことを言葉に出して整理しようとする。
いくら何でも数万の魔物の群れが相手では、チートスペックとは言えトラウマ抱えた生徒達と戦闘経験がほとんどない愛子、駆け出し冒険者のウィルに、魔力が枯渇したティオでは相手どころか障害物にもならない。
なので、愛子の言う通り、一刻も早く町に危急を知らせて、王都から救援が来るまで逃げ延びるのが最善だ。

……余裕で障害物どころか単独で排除できそうな|奴等《キシリュウジンとヨクリュウオー》がいるが、それを知っているハジメ達は黙っていた。

と、皆が動揺している中、そんなことを知らないであろう、ウィルが呟くように尋ねた。

「あの、ハジメ殿と京矢殿なら何とか出来るのでは……」

その言葉で、全員が一斉にハジメと京矢の方を見る。特にバルムンクの巨大な光の柱。勇者の最大の一撃さえ比べ物にならない奇跡とも呼べるそれを見たのなら、希望を託すには十分すぎる。
彼等の瞳は、もしかしたらという期待の色に染まっていた。ハジメと京矢は、それらの視線を鬱陶しそうに手で振り払う素振りを見せると、投げやり気味に返答する。

「そんな目で見るなよ。俺の仕事は、ウィルをフューレンまで連れて行く事なんだ。保護対象連れて戦争なんてしてられるか。いいからお前等も、さっさと町に戻って報告しとけって」

「ああ。流石に何発も連発出来るモンじゃ無いしな。それに、あれが最大の力を発揮するのは、飽くまで対竜だし、流石に万単位の魔物を殲滅するのは無理だろう。精々千単位が限界だ」

幾ら対軍宝具とは言え万単位の敵を相手など想定されていないだろう。
内心、一方的に殲滅する手段がある癖によく言うな、と思ってるハジメだが、そう簡単に巨大ロボを出す訳にはいかないのは理解できる。

仮に愛子達が居なければ、事情を知らないウィルをハジメ達が引き離して、京矢が偵察に託けて別行動して山の一つと引き換えにキシリュウジンを使って一方的に殲滅出来たかもしれないが、流石に愛子が居ては、京矢一人でそんな事はさせて貰えないだろう。

(流石に教える訳には行かないからな)

余程の非常事態でも無い限りは目立つ場所でのキシリュウジンの使用は控えたいのだ。
ならば、この場で出来るのは街への避難勧告をした上での護衛対象の保護だけだ。丁度ウィルは貴族の子弟であり、愛子達も神の使徒としての名前も有るので街の上役達も真面目に聞いてくれるだろう。今から急げば間に合う可能性も有るのだし。

ハジメと京矢のやる気なさげな態度に反感を覚えたような表情をする生徒達やウィル。
そんな中、思いつめたような表情の愛子がハジメに問い掛けた。

「南雲君、黒いローブの男というのは見つかりませんか?」

「ん? いや、さっきから群れをチェックしているんだが、それらしき人影はないな」

「そりゃ、残念だ。それが見えたら、其処に総攻撃を撃ち込めば、魔物の連合軍は、そのまま大規模な魔物のバトルロワイヤルになって楽だったんだけどな」

「だな。そうなりゃ、1日もあれば逆に桁が一つ下がるな」

愛子は、ハジメと京矢の黒いローブの男を当然の様に始末しようと言う言葉に、また俯いてしまう。
そして、ポツリと、ここに残って黒いローブの男が現在の行方不明の清水幸利なのかどうかを確かめたいと言い出した。
生徒思いの愛子の事だ。このような事態を引き起こしたのが自分の生徒なら放って置く事などできないのだろう。しかも、始末する事を決めている二人もいるのだし。

しかし、数万からなる魔物が群れている場所に愛子を置いていくことなど出来るわけがなく、園部達生徒は必死に愛子を説得する。しかし、愛子は逡巡したままだ。その内、じゃあ南雲や鳳凰寺が同行すれば……何て意見も出始めた。
いい加減、この場に留まって戻る戻らないという話をするのも面倒になったハジメは、愛子に冷めた眼差しを向ける。

「残りたいなら勝手にしろ。俺達はウィルを連れて町に戻るから」

「悪いが、早く街の連中に警告もしなきゃならねえんだ。お前らに付き合って犠牲者を増やしたく無いんでな」

そう言って、ハジメはウィルの肩口を掴み引きずるように、京矢はヒラヒラと手を振りながら下山し始めた。
それに慌てて異議を唱えるウィルや愛子達。曰く、このまま大群を放置するのか、黒ローブの正体を確かめたい、ハジメや京矢なら大群も倒せるのではないか……

ハジメが、溜息を吐き若干苛立たしげに、京矢は頭を抱えながら、愛子達を振り返った。

「さっきも言ったが、俺の仕事はウィルの保護だ。保護対象連れて、大群と戦争なんかやってられない。仮に殺るとしても、こんな起伏が激しい上に障害物だらけのところで殲滅戦なんてやりにくくてしょうがない。真っ平御免被るよ」

「ああ。こんな所で殲滅戦なんて被害を考えたら、面倒な事この上ねえな。大体さっきも言っただろ? 町への報告、今はこれが最優先だろうが。愛子先生、生徒思いなのは良いけど、アンタはその為に街の人達を全滅させても良いのか?」

「ああ。万一、俺達が全滅した場合、町は大群の不意打ちを食らうことになるんだぞ?」

「大体万単位の相手がオレ達を無視して進軍する方を選択した場合は如何するんだよ? 後ろから撃つのは楽だろうが、数が数だ、撃ち漏らしなんて出ない方が可笑しい」

「ちなみに、魔力駆動二輪は俺や鳳凰寺じゃないと動かせない構造だから、俺達に戦わせて他の奴等が先に戻るとか無理だからな?」

理路整然と自分達の要求が、如何に無意味で無謀かを突きつけられて何も言えなくなる愛子達。

「まぁ、ご主じ……コホンッ、彼等の言う通りじゃな。妾も魔力が枯渇している以上、何とかしたくても何もできん。まずは町に危急を知らせるのが最優先じゃろ。妾も一日あれば、だいぶ回復するはずじゃしの」

押し黙った一同へ、後押しするようにティオが言葉を投げかける。若干、ハジメに対して変な呼び方をしそうになっていた気がするが……気のせいだろう。
愛子も、確かに、それが最善だと清水への心配は一時的に押さえ込んで、まずは町への知らせと、今、傍にいる生徒達の安全の確保を優先することにした。

ティオが、魔力枯渇で動けないのでハジメが首根っこを掴みズルズルと引きずって行く。
実は、誰がティオを背負っていくかと言うことで男子達が壮絶な火花を散らしたのだが、それは女子生徒達によって却下され、ベルファストが背負おうとしたが、ティオ本人の希望もあり、何故かハジメが運ぶことになった。

だが、そこで背負ったり、抱っこしないのがハジメクオリティー。
面倒くさそうに顔をしかめると、いきなりティオの足を掴みズルズルと引き摺りだしたのだ。

愛子達の猛抗議により、仕方なく首根っこに持ち替えたが、やはり引き摺るのはかわらない。
何を言ってもハジメは改めない上、何故かティオが恍惚の表情を浮かべ周囲をドン引きさせた結果、現在のスタイルでの下山となった。

「……指揮官、彼女は、その……」

「言うなよ、南雲の奴、変な扉を開いたな……」

「……シリアスの同類か?」

「……広義的に言えばそうなるんだろうな……方向性は違うけど」

ハジメに恍惚として引き摺られていくティオを眺めながら、エンタープライズの言葉に頷いてしまう京矢。

一行は、背後に魔物の大群という暗雲を背負い、妙な扉を開いた駄竜を引き摺りながら急ぎウルの町に戻る。

***

魔力駆動四輪とサイドカータイプの魔力駆動二輪が、状況的に行きよりもなお速い速度で帰り道を爆走し、整地機能が追いつかないために、天井に磔にしたティオには引切り無い衝撃を、荷台の男子生徒にはミキサーの如きシェイクを与えていた。
行きの時は最悪ウィルが死んでいても綺麗に残っていれば蘇生が可能だったのだが、今回は本気で時間との勝負なのだ。

と、その時、ウルの町と北の山脈地帯のちょうど中間辺りの場所で完全武装した護衛隊の騎士達が猛然と馬を走らせている姿を発見した。
ハジメの〝遠見〟には、先頭を鬼の形相で突っ走る他の騎士と比べて冒険者の様にしか見えない装備の軽装のデビッドや、その横を焦燥感の隠せていない表情で併走するチェイスの表情がはっきりと見えていた。

京矢にバラバラにされた剣と鎧はもう使えないので、新しい物をウルの町で急いで買い揃えた為、デビッドの見た目は完全に騎士と言うより、その辺の冒険者である。
しかも、愛子が居なくなっている事に気が付いて急いで買い揃える必要が有った為、店側に足元を見られたりしている事を付け加えておこう。

しばらく走り、彼等も前方から爆走してくる上に京矢を乗せたよく分からない物と並走する黒い物体を発見したのかにわかに騒がしくなる。
彼等から見ればどう見ても四輪も二輪も魔物にしか見えないだろうから当然だろう。側から見れば京矢達が魔物を使役して別の魔物を追撃している様にしか見えない。
武器を取り出し、隊列が横隊へと組み変わる。対応の速さは、流石、超重要人物の護衛隊と賞賛できる鮮やかさだった。

別に、攻撃されたところで、ハジメとしては突っ切ればいいし、向こうにも二輪に乗る京矢の姿は確認出来ているので問題なかったが、愛子はそんな風に思える訳もなく、天井で妙に艶のある悲鳴を上げるティオや青い顔で荷台の端にしがみつく男子生徒達が攻撃に晒されたら一大事だと、サンルーフから顔を出して必死に両手を振り、大声を出してデビッドに自分の存在を主張する。

いよいよ以て、魔法を発動しようとしていたデビッドは、高速で向かってくる黒い物体の上からニョッキリ生えている人らしきものに目を細めた。
普通なら、それでも問答無用で先制攻撃を仕掛けるところだが、デビッドの中の何かがストップをかける。言うなれば、高感度愛子センサーともいうべき愛子専用の第六感だ。

手を水平に伸ばし、攻撃中断の合図を部下達に送る。
怪訝そうな部下達だったが、やがて近づいてきた黒い物体の上部から生えている人型から聞き覚えのある声が響いてきて目を丸くする。
デビッドは既に、信じられないという表情で「愛子?」と呟いている。

一瞬、まさか愛子の下半身が魔物に食われていて、それを助ける為に京矢達が追い掛けているのでは!? と顔を青ざめさせるデビッド達だったが、当の愛子が元気に手をブンブンと振り、「デビッドさーん、私ですー! 攻撃しないでくださーい!」と張りのある声が聞こえてくると、どうも危惧していた事態ではないようだと悟り、黒い物体には疑問を覚えるものの愛しい人との再会に喜びをあらわにした。

シチュエーションに酔っているのか恍惚とした表情で「さぁ! 飛び込んでおいで!」とでも言うように、両手を大きく広げている。隣ではチェイス達も、自分の胸に! と両手を広げていた。

騎士達が、恍惚とした表情で両手を広げて待ち構えている姿に、ハジメと京矢は嫌そうな顔をする。
なので、愛子達は当然デビッド達の手前でハジメが止まってくれるものと思っていたのだが……ハジメは魔力を思いっきり注ぎ込み、京矢は冷たく笑いながら、更に加速した。

距離的に明らかに減速が必要な距離で、更に加速した黒い物体に騎士達がギョッとし、慌てて進路上から退避する。

ハジメと京矢の魔力駆動四輪と魔力駆動二輪は、笑顔で手を広げるデビッド達の横を問答無用に素通りした。
愛子の「なんでぇ~」という悲鳴じみた声がドップラーしながら後方へと流れていき、デビッド達は笑顔のまま固まった。そして、次の瞬間には、「愛子ぉ~!」と、まるで恋人と無理やり引き裂かれたかのような悲鳴を上げて、猛然と二台を追いかけ始めるのだった。

愛子は車内に戻りハジメに抗議している様だが、京矢達には聞こえていないので知った事じゃ無い。
この場で騎士達への状況説明は明らかに二度手間になる上に、無駄な時間を余計に取られる。
何より、

「京矢様、素晴らしい判断だと思います」

「ありゃ、気持ち悪かったからな」

「確かに、あれはな」

三人揃って駄目だしされている騎士達だった。

なお、真横にある四輪の車体に括りつけられたティオが、ダメージの深い体を更に車体の振動で刺激され続け恍惚の表情を浮かべていたのだが、誰もが見なかったことにしたらしい。特に知り合いに同類がいるエンタープライズとベルファストも深く関わりたくないらしい。
……一族の者が見たら間違い無く泣くであろうティオの姿に今頃、ユエの持っていた龍人族への憧れがサラサラと崩れている事だろう。


























一行が二台のマシンを爆走させ、ウルの町に着くと、四輪から飛び出して愛子達は足をもつれさせる勢いで町長のいる場所へ駆けていった。
四輪はかなり揺れて車酔いで歩くのも辛いとは思うが、時間の猶予も無い緊急事態への意識がそれを上回っている様子だ。
京矢達としては、このまま愛子達とはここで別れて、さっさとウィルを連れてフューレンに行ってしまおうと考えていたのだが、むしろ愛子達より先にウィルが飛び出していってしまったため仕方なく後を追いかけた。
町長達への説明が終わる頃合いで行こうと言う京矢の言葉に同意してノンビリと町の見物に入った。

町の中は、今日も活気に満ちている。料理が多彩で豊富、近くには湖もある町だ。自然と人も集う。まさか、一日後には、魔物の大群に蹂躙されるなどは夢にも思わないだろう。
京矢達は、そんな町中を見ながら、そう言えば昨日から飯を喰っていなかったと、屋台の串焼きやら何やらに舌鼓を打ちながら町の役場へと向かった。幾つかはベルファストも認める美味しさらしい。味付けの分析を始めている。

「いや、お前らが行けば十分だろ?」

「鳳凰寺、お前、人に面倒な事を押し付けんなよ」

説明はハジメが行けば十分と判断して更に屋台の食べ歩きをしようとしていた、コミュ力高くて戦闘型の天職なのにリーダーを押し付けている京矢を引っ張りながら町の役場に向かうハジメだった。

京矢達が、ようやく町の役場に到着した頃には既に場は騒然としていた。
ウルの町のギルド支部長や町の幹部、教会の司祭達が集まっており、喧々囂々たる有様である。
皆一様に、信じられない、信じたくないといった様相で、その原因たる情報をもたらした愛子達やウィルに掴みかからんばかりの勢いで問い詰めている。

普通なら、明日にも町は滅びますと言われても狂人の戯言と切って捨てられるのがオチだろうが、何せ〝神の使徒〟にして〝豊穣の女神〟たる愛子の言葉である。
そして最近、魔人族が魔物を操るというのは公然の事実であることからも、無視などできようはずもなかった。

ちなみに、車中での話し合いで、愛子達は、報告内容からティオの正体と黒幕が清水幸利である可能性については伏せることで一致していた。
ティオに関しては、竜人族の存在が公になるのは好ましくないので黙っていて欲しいと本人から頼まれたため、黒幕に関しては愛子が、未だ可能性の段階に過ぎないので不用意なことを言いたくないと譲らなかったためだ。

愛子の方は兎も角、竜人族は聖教教会にとっても半ばタブー扱いであることから、混乱に拍車をかけるだけということと、ばれれば討伐隊が組まれてもおかしくないので面倒なことこの上ないと秘匿が了承された。
……下手したら京矢が見せた光の柱やらハジメの重火器やらに討伐隊が蹂躙される姿が浮かんだわけではない。…………無いったらない。

そんな喧騒の中に、ウィルを迎えに来た一行がやって来る。周囲の混乱などどこ吹く風だ。

「おーい、報告終わったらそろそろ行くぞー」

「おい、ウィル。勝手に突っ走るなよ。自分が保護対象だって自覚してくれ。報告が済んだなら、さっさとフューレンに向かうぞ」

そのハジメの言葉に、ウィル他、愛子達も驚いたように京矢達を見た。
他の、重鎮達は「誰だ、こいつ?」と、危急の話し合いに横槍を入れたハジメと京矢に不愉快そうな眼差しを向け、後から入ってきたエンタープライズとベルファストに一瞬目を奪われた。

「な、何を言っているのですか? ハジメ殿、京矢殿。今は、危急の時なのですよ? まさか、この町を見捨てて行くつもりでは……」

信じられないと言った表情で二人に言い募るウィルに二人は、やはり面倒そうな表情で軽く返す。

「いや、最初から避難の一択しか選択肢なんて無いだろ? オレには今すぐにでも町の奴等を逃さないで無駄話してる時点で信じられねえよ」

「ああ。見捨てるもなにも、どの道、町は放棄して救援が来るまで何処かに避難するしかないだろ? 観光の町の防備なんてたかが知れているんだから……どうせ避難するなら、目的地がフューレンでも別にいいだろうが。ちょっと、人より早く避難するだけの話だ」

「そ、それは……そうかもしれませんが……でも、こんな大変な時に、自分だけ先に逃げるなんて出来ません! 私にも、手伝えることが何かあるはず。ハジメ殿も、京矢殿……」

「バカか? お前に出来ることは此処にはねえだろうが」

〝お二人も協力して下さい〟そう続けようとしたウィルの言葉は、京矢の冷めきった眼差しと凍てついた言葉に遮られた。

「……はっきり言わないと分からないのか? 俺達の仕事はお前をフューレンに連れ帰ること。この町の事なんて知ったことじゃない。いいか? お前の意見なんぞ聞いてないんだ。どうしても付いて来ないというなら……手足を砕いて引き摺ってでも連れて行く」

そして、更にハジメの冷たい言葉に切り捨てられる。

「なっ、そ、そんな……」

「安心しな」

「京矢殿……」

「南雲が手足を折る前にオレがお前を気絶させる。もう一度言ってやる。半人前にすらなってないお前に出来ることも、護衛を理由にオレ達を此処の防衛戦略にする事も不可能だ」

二人の醸し出す雰囲気から、その言葉が本気であると察したウィルが顔を青ざめさせて後退りする。
その表情は信じられないといった様がありありと浮かんでいた。ウィルにとって、ゲイル達ベテラン冒険者を苦もなく全滅させた黒竜すら圧倒したハジメと京矢は、ちょっとしたヒーローのように見えていた。なので、容赦のない性格であっても、町の人々の危急とあれば、何だかんだで手助けをしてくれるものと無条件に信じていたのだ。
なので、二人から投げつけられた冷たい言葉に、ウィルは裏切られたような気持ちになったのである。

「それに、お前は大事な事を二つも見失ってる」

更に京矢は更にウィルの心を折る言葉を続ける。

「一つは、半端な希望は余計に命を奪う事だ。全員で力を合わせて守りましょうなんて言っても町の男連中は全滅。後には壊れた町と辛うじて生き残った老人と女子供。どっちにしても、復興は不可能だろう?」

暗に全滅させる事は可能と言っている京矢だが、ウィルにはそんな事に気づく余裕すらない。

「もう一つは、お前自身にできる事、お前にしかできない事を放棄している。考えてさえいない事だ」

「出来る……事? それは!」

「急いでオレ達と一緒に町に戻ってギルドマスターに頼み、逃げてきた町の連中の保護と護衛をフューレンの冒険者への緊急依頼を頼む。早く合流出来れば、早いほど逃げる最中の連中が魔物や盗賊の犠牲になるのを防げるぞ」

「うっ……」

そんな事は考えもしなかったと言う表情を浮かべるウィル。

「それに、ギルドマスターの後は貴族の両親に頼んでしばらくの間の難民になった連中の食事と、野宿の際や安全が確認された町への帰還のための護衛。それもお前からしか、貴族で有る親への説得なんて出来ないだろうが」

吐き捨てる様にウィルにしかできない事を、彼が考えていなかった事を突きつける京矢。

「目の前の英雄的な行動に目を奪われてたか? 憧れていた冒険者とやらの想像みたいな状況に酔ってたのか? お前にしか、貴族の子供にしかできない事を考えもしないで、お前は憧れに酔ってただけなんだよ」

どっちにしてもウルの町は観光地として死ぬ。ならば、最悪の選択肢で少しでもマシな方を選ぶしか無いのだ。特にウィルは自分の立ち位置を考えれば、己にしかできない事は二つもあった。

***

己にしか出来ない事を見ていなかったと言う事に言葉を失い、崩れ落ちるウィルにハジメが決断を迫るように歩み寄ろうとする。京矢は興味を失ったのかウィルに背中を向けて彼から離れていく。
一種異様な雰囲気に、周囲の者達がウィルとハジメを交互に見ながら動けないでいると、ふとハジメの前に立ちふさがるように進み出た者がいた。

愛子だ。彼女は、決然とした表情でハジメと京矢を真っ直ぐな眼差しで見上げる。

「南雲君、鳳凰寺君。君達なら……君達なら魔物の大群をどうにかできますか? いえ……できますよね?」

愛子は、どこか確信しているような声音で、ハジメと京矢なら魔物の大群をどうにかできる、すなわち、町を救うことができると断じた。
その言葉に、周囲で様子を伺っている町の重鎮達が一斉に騒めく。

愛子達が報告した襲い来る脅威をそのまま信じるなら、敵は数万規模の魔物なのだ。それも、複数の山脈地帯を跨いで集められた。それは、もう戦争規模である。そして、一個人が戦争に及ぼせる影響など無いに等しい。それが常識だ。
それを覆す非常識は、異世界から召喚された者達の中でも更に特別な者、そう勇者だけだ。
それでも、本当の意味で一人では軍には勝てない。勇者と言えど人間族を率いて仲間と共にあらねば、単純な物量にいずれ呑み込まれるだろう。
なので、勇者ですらない目の前の少年が、この危急をどうにかできるという愛子の言葉は、たとえ〝豊穣の女神〟の言葉であってもにわかには信じられなかった。

京矢は、愛子の強い眼差しを飄々とした態度に手で払う素振りを見せると、誤魔化すように否定する。

「何言ってんだよ、先生。一騎当千なんて言葉はあるけど、流石に万単位相手だぜいくら何でも無理だろ?」

「ああ、先生。鳳凰寺の言う通り、無理に決まっているだろ? とてもとても……」

「でも、山にいた時、ウィルさんの二人なら何とかできるのではという質問に〝できない〟とは答えませんでした。それに〝こんな起伏が激しい上に障害物だらけのところで殲滅戦なんてやりにくくてしょうがない〟〝こんな所で殲滅戦なんて被害を考えたら、面倒な事この上ねえな〟とも言ってましたよね? それは平原なら殲滅戦が可能という事ですよね? 被害話考えなければ殲滅戦が出来ると言う事ですよね? 違いますか?」

「……よく覚えてんな」

「流石先生、生徒の言葉をよく聞いててくれるな」

愛子の記憶力の良さに、下手なこと言っちまったと顔を歪めるハジメと、それに対して観念して自分の発言を素直に認める京矢。
愛子は、今更誤魔化しても仕方ない、とばかりにだから如何したと問いかける様な顔の京矢と、顔を逸らしたハジメに更に真剣な表情のまま頼みを伝える。

「南雲君、鳳凰寺君。どうか力を貸してもらえませんか? このままでは、きっとこの美しい町が壊されるだけでなく、多くの人々の命が失われることになります」

「如何する、南雲? お前がやらないなら、急いでオレが始末してくるぜ。地形の一つ二つと、黒ローブの男の跡形も纏めて、になるけどな」

その京矢の言葉に出来るのか?と言う疑問もクラスメイト達には湧かない。
勇者は愚か教育係のメルドとさえ最初から互角に渡り合っていた京矢だ。最弱だったハジメがあれだけ強くなったのだから、最強だった京矢がどれだけ強くなっていても疑問には思わない。

「良いのか?」

「最悪は教会の崇めてるえひとさま~とやらと違う神様が生まれるだけだろ?」

要するに街に到達する前に、謎の巨人、否巨大な|戦神《イクサガミ》が街を襲う悪しき魔物を絶対的な力で打ち滅ぼしたと言う神話の様な光景を演出するつもりの様だ。

わかり易いまでの絶対的な力と圧倒的な巨大な肉体が空を舞うと言う奇跡的な光景。其処に新たな神を見たと考えても不思議では無いだろう。

そんな訳で、防衛には向かない京矢だが、一人なら加減さえしなければ簡単に殲滅はできる。
魔物達が街に到達する前に、キシリュウジンジェットで真上から必殺技を撃ち込めば大半は吹き飛ばせ、あとは空中の魔物を叩き潰し、足元の魔物を踏み潰すだけの簡単なお仕事だ。
当然、取りこぼしは出るだろうが、その程度はこの町の連中に任せれば良い。万から百から十に単位を減らしたのだから、その程度はしてくれと言った所だ。

だからこそ、京矢ならば簡単にそれは出来る。最大の問題点はキシリュウジンと言う人智を超えた巨大ロボの存在を知られる危険だ。

なので、それは飽くまで最後の手段。最低限のリスクで全滅させるにはハジメの協力は必須だ。だからこそ、京矢は判断をハジメに委ねた。

「それでも、取りこぼしは出るだろうし、被害の規模が如何なるかも保証しないし、原因の究明までは出来ないのは、最初に断っておくぜ」

暗に、黒いローブの男は間違い無く死ぬと言う言葉に詰まる愛子。

「それから、それでも観光地としては死ぬかもしれないけどな」

ウルの町の関係者に一瞥してそう告げる京矢の言葉に黙り込む町長を始めとした一同。

「良いのか?」

「敵対するなら容赦しねえし、優先順位も低いが、やろうと思えば多少のリスクで救えるんだ。紛いなりにも、偉大な人から託された物がある以上、やらないって選択肢は、オレには無えな」

既に見捨てる範囲を定めてはいるが、この世界の人間の行動は促す程度の事はするし、多少の手助けはする。
生きる為にお前達で考えて行動しろ、その手助けはすると言った所だ。

ガチャから力を貰ったとは言え、仮面ライダーであり、|不屈の騎士《七人目のリュウソウジャー》なのだから。

だから、既に避難先を決める話し合い程度には移行していると思っていたところで、まだ信じられないとばかりに、現実を受け入れずに町の中心人物達が、愛子達を問い詰めていたのを見て呆れていた程だ。

「……あんたは生徒の事が最優先なのだと思っていた。色々活動しているのも、それが結局、少しでも早く帰還できる可能性に繋がっているからじゃなかったのか? なのに、見ず知らずの人々のために、その生徒に死地へ赴けと? その意志もないのに? まるで、戦争に駆り立てる教会の連中みたいな考えだな?」

京矢にとっては死地でも何でも無い事は知っているが、それを知らない愛子の立場では死地に赴けと言っている様な者だ。

ハジメの揶揄するような言葉に、しかし、愛子は動じない。その表情は、ついさっきまでの悩みに沈んだ表情ではなく、決然とした〝先生〟の表情だった。
近くで彼等の会話を聞いていたウルの町の教会司祭が、ハジメの言葉に含まれる教会を侮蔑するような言葉に眉をひそめているのを尻目に、愛子はハジメに一歩も引かない姿勢で向き直る。

「……元の世界に帰る方法があるなら、直ぐにでも生徒達を連れて帰りたい、その気持ちは今でも変わりません。でも、それは出来ないから……なら、今、この世界で生きている以上、この世界で出会い、言葉を交わし、笑顔を向け合った人々を、少なくとも出来る範囲では見捨てたくない。そう思うことは、人として当然のことだと思います。もちろん、先生は先生ですから、いざという時の優先順位は変わりませんが……」

愛子が一つ一つ確かめるように言葉を紡いでいく。

「南雲君、あんなに穏やかだった君が、そんな風になるには、きっと想像を絶する経験をしてきたのだと思います。そこでは、誰かを慮る余裕などなかったのだと思います。君が一番苦しい時に傍にいて力になれなかった先生の言葉など…南雲君には軽いかもしれません。でも、どうか聞いて下さい」

ハジメは黙ったまま、先を促すように愛子を見つめ返す。

「南雲君。君は昨夜、絶対日本に帰ると言いましたよね? では、南雲君、君は、日本に帰っても同じように大切な人達以外の一切を切り捨てて生きますか? 君の邪魔をする者は皆排除しますか? そんな生き方が日本で出来ますか? 日本に帰った途端、生き方を変えられますか? 先生が、生徒達に戦いへの積極性を持って欲しくないのは、帰ったとき日本で元の生活に戻れるのか心配だからです。殺すことに、力を振るうことに慣れて欲しくないのです」

「……」

「南雲君、君には君の価値観があり、君の未来への選択は常に君自身に委ねられています。それに、先生が口を出して強制するようなことはしません。ですが、君がどのような未来を選ぶにしろ、大切な人以外の一切を切り捨てるその生き方は……とても〝寂しい事〟だと、先生は思うのです。きっと、その生き方は、君にも君の大切な人にも幸せをもたらさない。幸せを望むなら、出来る範囲でいいから……他者を思い遣る気持ちを忘れないで下さい。元々、君が持っていた大切で尊いそれを……捨てないで下さい」

一つ一つに思いを込めて紡がれた愛子の言葉が、ハジメに伝わるのかは分からないが、恐らくは伝わっているのだろうと静かに聞いていた京矢は思う。
町の重鎮達や生徒達も、愛子の言葉を静かに聞いている。特に生徒達は、力を振るってはしゃいでいた事を叱られている様な気持ちになりバツの悪そうな表情で俯いている。
それと同時に、愛子は今でも本気で自分達の帰還と、その後の生活まで考えてくれていたという事を改めて実感し、どこか嬉しそうな擽ったそうな表情も見せていた。

もし、今のまま帰っていたら、京矢は最悪ハジメとの敵対は避けられないと思っていた。

ハジメは、例え世界を超えても、どんな状況であっても、生徒が変わり果てていても、全くブレずに〝先生〟であり続ける愛子に、内心苦笑いをせずにはいられなかった。
それは、嘲りから来るものではない、感心から来るものだ。愛子が、その希少価値から特別待遇を受けており、ハジメの様な苦難を経験していない以上、「何も知らないくせに!」とか「知った風な口を!」と反論するのは簡単だ。
あるいは、愛子自身が言ったように、〝軽い〟言葉だと切り捨ててしまってもいいだろう。

「まっ、アホ勇者の様に正しさの押し付けじゃ無いんだ、オレは先生に手を貸すぜ」

「指揮官、私も従おう」

「私もお供します、京矢様」

京矢は協力を決め、それにエンタープライズとベルファストも賛同する。

これで光輝の様に正しさの押し付けで協力しろと言われたのならば、さっさとウィルを気絶させて住人達へ避難勧告だけして出て行くのも選択肢もあった。
勿論、途中で一度ハジメ達と別れて、キシリュウジンで群の半分を吹き飛ばすくらいはしておいただろうが。
だが、愛子は一度も〝正しさ〟を押し付けなかった。その言葉の全ては、ただハジメの未来と幸せを願うものだ。

ハジメはユエとシアへと視線を向けた後、協力を決めた京矢達へと視線を向ける。
京矢にとってもトータスは牢獄であっても、既にセフィーロで一度異世界を経験している京矢にとっては、この世界の人や物事に心を砕くのはハジメとは違い簡単な事だ。奈落の底で、故郷へ帰るために他の全てを切り捨てて、邪魔するものには容赦しないと心に刻んだ価値観はそう簡単には変わらない。だが、〝他者を思い遣る〟ことは難しくとも、行動自体はとれる。その結果が、大切な者……ユエやシアに幸せをもたらすというのなら、一肌脱ぐのも吝かではない。

その意図を理解したのかハジメへと拳を向けた京矢と拳をぶつけ合う。

「……先生は、この先何があっても、俺達の先生か?」

それは、言外に自分達の味方であり続けるのかと問うハジメ。

「当然です」

それに、一瞬の躊躇いもなく答える愛子。

「悪いが、オレ達がどんな決断をするかなんて保証しないし、それが先生の望まない結果になるかもしれないぜ」

「言ったはずです。先生の役目は、生徒の未来を決めることではありません。より良い決断ができるようお手伝いすることです。鳳凰寺君が先生の話を聞いて、なお決断したことなら否定したりしません」

京矢の問いに答える愛子に対して、その言葉に偽りがないかと言う探るような視線を向ける。
ハジメが態々言質をとったのは、ハジメも愛子と敵対したくなかったからだろう。

「南雲、先に行ってるぜ。あと、町長さん、逃げたい奴らは早めに護衛をつけて逃しといた方が良いぞ。空飛んでる奴らが2、3匹は突破されるかもしれないからな」

そんな奴はエンタープライズに撃ち落としてもらうつもりだが、念のために警告しておく。
それに何より当日に余計な混乱を起こさない為という理由もある。

愛子の目に偽りがないと確信した京矢は、ヒラヒラと手を振りながらエンタープライズとベルファストを伴って出入り口に向かった。
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