ウルの街防衛戦

「……本格的に妙だな?」

「妙?」

「ああ。龍殺しの魔剣を前にしても、警戒も畏怖も感じた様子がないってのは、どう考えても変だ」

バルムンクは竜殺しの魔剣。その中でも特に強力な、邪竜ファヴニールを倒した英雄ジークフリートの剣だ。
地球には何気に竜殺しの魔剣や聖剣はそれなりの数がある。当然ながら、そんな竜殺しの魔剣など前にすれば、どれだけ強力な力を持っていても、警戒の一つはするだろう。
だが、目の前の黒竜からはバルムンクに対する野生の警戒も理性からの恐怖心も感じられない。

この世界には竜の尻を蹴飛ばすという例えがあるが、それは強靭な龍の鱗が無い部分だそうだ。
地球での逆鱗に近い意味なのかもしれないが、そんな強靭な鱗さえもバルムンクならば切り裂ける。

だが、そんな武器を前にしても目の前の黒竜は何の反応も示さず、黒竜は、空中に上がり、未だ、ユエが構築した防御壁の向こうにいるウィルを狙って防壁の破壊に集中している。

「これで確信が出来たな。あの黒竜、誰かに操られてるぜ」

「……それで?」

京矢の言葉にハジメはそう問いかける。あの黒竜が誰かに操られているから何だというのだと言う意思の困った問いだ。

「確実に、絶対に仕留める理由ができたってだけの話だ」

そもそも、誰かがあんな竜を操って人を襲わせている等という状況から考えて、どう考えても、その先にある目的は禄なことでは無い。

戦争ならば仕方がないとは言え、この近くにあるウルの町は軍事施設でもない単なる観光地。
偶然手に入れた強力な兵器の運用実験が目的という可能性もあるが、そんな場所で目の前の黒竜を操る時点で、

(単なる無差別虐殺だろうが、それは)

魔人族の仕業かは知らないが、殆どが戦う術を持たない者達を一方的に虐殺する様な真似は許すわけにはいかない。

さっさと目の前の黒竜を倒して、操ってる奴に対しても落とし前をつけさせる決心をする。

「そうか。なら、存分にやってやろうぜ!」

「おう!」

京矢が魔剣目録の中からバルムンクを取り出した様に、ハジメもドンナーをホルスターにしまうと、〝宝物庫〟からシュラーゲンを虚空に取り出した。

気による身体能力の強化を行い鎧の魔剣の上から青い陽の気を纏い、バルムンクの竜殺しの力を引き出す京矢と、〝纏雷〟を発動し、三メートル近い凶悪なフォルムの兵器に紅いスパークを迸らせるハジメ。
黒竜は、流石に、二人の次手がマズイものだと悟ったのか、その顎門の矛先を二人に向けた。流石にこの状況は無視出来なかったようだ。

死を撒き散らす黒竜のブレスが放たれたのと、ハジメのシュラーゲンが充填を終え撃ち放たれたのは同時だった。

共に極大の閃光。必滅の嵐。黒と紅の極光が両者の中間地点で激突する。衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、周囲の木々を根元から薙ぎ倒した。
威力だけなら、おそらく互角。しかし、二つの極光は、その性質故に拮抗することなく勝敗を明確に分ける。ブレスは継続性に優れた極光ではあるが、シュラーゲンのそれは、一点突破の貫通特化仕様だ。したがって、必然的にブレスの閃光を突破して、その力を黒竜に届かせた。

ブレスを放っていた黒竜の頭部が突然弾かれた様に仰け反る。ブレスを突き破ったシュタル鉱石製フルメタルジャケットの弾丸が黒竜の顎門を襲ったのだ。しかし、致命傷には程遠かった。

「はぁぁぁぁ!」

だが、ハジメのシュラーゲンの一撃を囮に再度上空に舞い上がった京矢の、竜殺しの魔剣による一閃がはためく片翼を切り落とす。

「取り敢えず、こう言っとくか? 地球の神話舐めんな、異世界!」

「グルァアアアアアアアアアッ!!」

痛みを感じているのか異様な程に必死な悲鳴を上げながら錐揉みして地に落ちる黒竜。
追撃に腹にでも鎧の魔剣から学んだ『大地斬』でも叩き込もうかと思ったが、既に射程範囲外に落ちていた。
そこにハジメが、空中に退避していたのを幸いに、更に空中で逆さまになって〝空力〟〝縮地〟を発動。超速を以て急降下し、仰向けになっている黒竜の腹に〝豪脚〟を叩き込んだ。

ズドンッ! と腹の底に響く衝撃音が轟き、黒竜の体がくの字に折れる。地面は、衝撃により放射状にひび割れた。黒竜が、悲鳴じみた咆哮を上げるがダメージは大きいとは言えないだろう。元々相手はレールガンに耐える装甲なのだ。
それだけに、それを簡単に切り裂く京矢の龍殺しの魔剣の力の程がよく分かる。

追撃とばかりにバルムンクを振り上げながら落下する京矢を近づけさせまいと、黒竜は、片翼に爆発的な魔力を込めて暴風を巻き起こし、その場で仰向け状態から強引に元の体勢に戻った。

「チッ!」

京矢は強引に空中で軌道を変え、その場を退避する。
重力魔法を会得してから、この程度の落ちる事を利用した空中での方向転換は出来る様になったが、変身できない状況ではそれなりに使えると改めて思う。

オスカーの迷宮の最下層での複製RX戦でラウズアブソーバーを手に入れてからは空中戦はブレイドの|JF《ジャックフォーム》をメインに使うかと思っていたが、これならば上手く使えば、他のライダーでも空中戦が可能だろう。

(さて、無視出来なくなってきたなら、存分に試させてもらおうじゃねえか)

(嫌なのじゃぁ!!!)

フルフェイスの兜の奥で笑みを浮かべた京矢の耳に、誰かの悲鳴が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
一直線に相手に向かって落ちながら高速移動する。走る必要もなく、疲れずに高速移動出来るのは便利だが、自分の足で地面を踏みしめないのは性に合わないのであまり多用したくないが、高速移動の際には便利だと思う。
だが、剣を振る際にこれを使うと踏み込みが効かずに斬撃の鋭さが下がる。

だが、それも、

(こう言う状況じゃ便利だな!)

状況による。懐に飛び込み黒竜の腹に向かい、バルムンクの斬撃を撃ち込む。
京矢の斬撃は強靭な筈の竜の鱗を簡単に切り裂く。

「剣身一体。技を借りるぜ、魔剣戦士!」

そのスキルを持って放つ技は鎧の魔剣の存在する異世界に置いて、勇者の編み出した剣技の一つ。

「大地、斬!」

京矢の放つ一撃は黒竜の腹を深々と切り裂き、それにより黒竜は苦悶の咆哮を響かせる。

「南雲ぉ!」

京矢の声に答えるようにハジメは、追撃をかけるため大きく左の義手を振りかぶった。
義手からはキィイイイイイ!!! という機械音が鳴っている。京矢が仕掛ける前に発動しておいた〝振動粉砕〟だ。

ハジメは、大質量・高速で突っ込んで来た岩石をも一撃で粉砕できる破壊の拳を、容赦なく黒竜の腹にぶち込んだ。

くぐもった音が響き、京矢によって切り裂かれた腹の鱗に更に亀裂が入る。
衝撃を伝えることを目的とした攻撃なので内臓にも相当ダメージが入ったようだ、くの字に折れながら黒竜は再び苦悶の声を上げると口から盛大に吐血した。

「旋ぃ!」

京矢の剣掌・旋によって発生した竜巻にハジメはおまけを加える。
竜巻の直撃した腹の下で大爆発が起きる。竜の巨体が、その衝撃で二メートルほど浮き上がったほどだ。ハジメの加えたおまけは〝手榴弾〟である。

「クゥワァアア!!」

直接の斬撃ではない為に竜殺しの魔剣の力は発揮されなかったものの、同じ場所への更なる衝撃に、今度は悲鳴も上げられずくぐもった唸り声を上げることしか出来ない。
耐えるように頭を垂れて蹲る黒竜の口元からはダラダラと血が流れ出している。心なしか、唸り声も弱ってきているようだ。

「チッ! 小技程度じゃ鱗を剥ぐ程度しかできねえか」

バルムンクならば強靭な黒竜の鱗を簡単に切り裂くことが出来るが、矢張り確実に相手を仕留めるには相応の一撃が必要だ。
そして、バルムンクには相応の力を持った一撃がある。

「南雲、今から大技を使う。ちょっと時間稼ぎと……出来れば、準備ができたら頭か腹をオレの方に向けてくれ」

「それで、やれるのか?」

「アイツが北欧の邪竜より強くない限りは、な」

「んじゃ、試してみるか? アイツがファヴニールより上か下か?」

そう言葉を交わして左右に分かれる京矢とハジメ。

黒竜は、ハジメと京矢を脅威と認識したのか、ウィルから目を離し二人に向けて顎門を開いて火炎弾を連射しようとするが、左右に別れたことで狙いをつけられずにいた。

それを見て先ずはゆっくりと己の闘気を抑えて相手の注意を囮役のハジメへと向くようにする。

京矢の存在が消えた事に戸惑いながらも、ハジメへと向け、対空砲火のように空中へ火炎弾を乱れ撃つ。
しかし、その炎はただの一撃もハジメに当たることはなかった。〝空力〟と〝縮地〟を併用し、縦横無尽に空を駆けるハジメは、いつしか残像すら背後に引き連れながら、ヒット&アウェイの要領で黒竜をフルボッコにしていく。

ドンナー・シュラークで爪、歯茎、眼、尻尾の付け根、尻という実に嫌らしい場所を中距離から銃撃したかと思えば、次の瞬間には接近して〝振動粉砕〟またはショットシェルの激発+〝豪腕〟のコンボで頭部や脇腹、京矢の斬撃による裂傷をメッタ打ちにした。

「クルゥ、グワッン!」

若干、いや、確実に黒竜の声に泣きが入り始めている。鱗のあちこちがひび割れ、口元からは大量の血が滴り落ちている。

「上手くやってるな、南雲」

兜を脱ぎ、京矢はその様子に笑みを受けながら自身の気を魔力の代用としてバルムンクへと流し込む。

「剣身一体」

再度発動させる剣聖の天職のスキル。流れ込むはバルムンクの主である北欧の大英雄の放つ最大の一撃の情報。

幻影のように京矢の左右に立つのは褐色の肌の男性と小柄な少年。

|邪竜を打ち倒し英雄《ジークフリート》と、彼がサーヴァントとして召喚された聖杯戦争にて彼の心臓を与えられ命を救われたホムンクルスの少年。

「黄金の夢から覚め、揺籃から解き放たれよ」

京矢の宣言ともに左右の使い手達も同じ動きを見せる。

「すげぇ……」

二人の戦闘をユエの後ろという安全圏から眺めていた者達の中で玉井淳史が思わずと言った感じで呟く。
言葉はなくても、他の生徒達や愛子も同意見のようで無言でコクコクと頷き、その圧倒的な戦闘から目を逸らせずにいた。ウィルに至っては、先程まで黒竜の偉容にガクブルしていたとは思えないほど目を輝かせて食い入るように二人を見つめている。

ハジメが、トドメを京矢に任せてシュラーゲンやオルカン等で一気に片をつけないのは、愛子達に自分の戦闘力を見せつけるいい機会だと思ったからだ。
黒竜は確かに頑丈さや一撃の威力は恐るべきものがあるのだが、冷静に戦えば図体がデカイから攻撃が当てやすい上、攻撃は単調なので、まさに〝当たらなければどうということはない〟を実践でき、二人にとってはまだまだ余裕のある相手だった。
なので、愛子達と別れたあと、教会や国、勇者達に愛子から情報がいった場合でも安易に強硬手段に出ることが無いように、自身の実力を示しておこうと思ったのだ。

既に実力が知れ渡っている京矢の場合は勇者を凌駕する圧倒的な力を見せるべきと判断した結果でもあるのだが、それでも、最後を全部京矢任せにするのも面白くないのも事実だ。



















「邪竜、滅ぶべし!」

バルムンクの柄の真ん中にある宝玉がせり出し、剣から膨大な魔力が火柱のように立ち昇る。
それを幻影と共に上段に構える。

北欧の邪竜を葬りし英雄、その最大の一撃、それを解き放つ瞬間を見量る。

そして、黒竜の動きが止まるのが見える。ハジメがやってくれたのだろうと思い笑みを浮かべる。
後は、巨大な光の柱となったバルムンクを黒竜に叩き込むだけ。

「|幻想大剣《バル》……」

その瞬間、


〝アッーーーーーなのじゃああああーーーーー!!!〟


そんな悲痛な絶叫が響き渡った。

「へ?」

思わず惚けた声をあげる京矢に更に変な絶叫が響き渡る。

〝お尻がぁ~、妾のお尻がぁ~〟

黒竜の悲しげで、切なげで、それでいて何処か興奮したような声音に京矢を含む全員が「一体何事!?」と度肝を抜かれ、黒竜を凝視したまま硬直する。

気が抜けたせいで制御を失ったバルムンクの魔力が明後日の方向に飛んで行き、巨大な光の柱を目撃した愛子とウィルとクラスメイト達がその光景に別の意味で唖然とするのだが、それはそれ。

空にジークフリートが「すまない」と言いながら浮かんで消えていった光景さえ幻視させてくれる。

「……何やらかしたんだよ、南雲?」

そんなことを呟いて頭を抱えつつ、バルムンクを下ろして兜を回収し、ハジメ達の元に戻るのだった。

*

妙な叫びが聞こえて気が抜けて、放とうとした魔力を明後日の方向に空打ちしてしまった京矢は何があったのかとハジメ達の所に戻ったのだが……

〝ぬ、抜いてたもぉ~、お尻のそれ抜いてたもぉ~〟

尻に巨大な槍が突き刺さった黒竜の、それはもう何とも情けない声が響いていた。
北の山脈地帯の中腹、薙ぎ倒された木々と荒れ果てた川原に、響くその声に何でそんな事になったのかと疑問に思う。
なお、声質は女だ。直接声を出しているわけではなく、広域版の念話の様に響いている。竜の声帯と口内では人間の言葉など話せないから、空気の振動以外の方法で伝達しているのは間違いない。

「……何があったんだ、南雲?」

「ああ、実はな……」

何でも戦闘中にパイルバンカーの杭を「ケツから死ね、駄龍が」と黒竜の尻に突き刺したそうだ。
まあ、鱗に覆われていない、バルムンクの様な鱗を切り裂ける武器を持っていないハジメとしては一番有効な攻撃部位、口の中に攻撃するのも一つの手なのだから、それもアリと言えばアリな判断とは思うが、それを実行した所こうなったそうだ。
それによってケツに杭を撃ち込まれた痛みで膠着した瞬間を好機と思った京矢にも声が聞こえてなかったら、今頃尻に杭を撃ち込まれた姿でバルムンクの真名解放を打ち込まれていただろう。
尻に杭を撃ち込まれた上に龍殺しの一撃の直撃とはなんとも哀れな光景だろう。

そんな哀れな姿に毒気を抜かれ、得られた情報から推測を走らせる。

ディノミーゴの存在から人語を話せる魔物も居るんじゃないかな、とは思っていたが、その上、ハジメのレールガンに耐えたり、逆に同等以上のブレスを吐けるような強力な魔物が、こんな場所にいるはずないのである。
もし生息していたのなら、その危険性故に広く周知されているはずだ。
未知の魔物と言う可能性もあるが、この巨体が見つからないでいるとは考え難い。故に一番あり得そうな可能性は、

「……もしかして、竜人族って奴じゃないのか、これ?」

「……だよな?」

〝む? いかにも。妾は誇り高き竜人族の一人じゃ。偉いんじゃぞ? 凄いんじゃぞ? だからの、いい加減お尻のそれ抜いて欲しいんじゃが……そろそろ魔力が切れそうなのじゃ。この状態で元に戻ったら……大変なことになるのじゃ……妾のお尻が〟

二人がまさかと思いつつ言った言葉に返した黒竜の言葉は予想通りの大正解だった。
二人は、内心己の〝縁〟というものに呆れた。この世界に来て一体何度、〝レアな存在〟と出会うというのか。
ユエは、三百年前の戦争で滅びたはずの吸血鬼族。
シアはこの時代の〝先祖返り(推定)〟。
眼前の黒竜は五百年以上前に滅びたはずの竜人族である。……尻に杭を撃ち込まれた姿は、偉くも誇り高くも見えない。

序でにハジメにしてみれば、元の世界からの友人はリアルに特撮ヒーローになれて巨大ロボまで持っているし、世界的な歌姫とも交流がある。

隣に立つ友人と知り合ったことから縁の始まりだったんだな、と目の前の尻に杭を撃ち込まれた黒竜こと竜人族(推定)を眺めながらシミジミと思うハジメだった。

「……なぜ、こんなところに?」

ハジメが自分に呆れている間に、ユエが黒竜に質問をする。
ユエにとっても竜人族は伝説の生き物だ。自分と同じ絶滅したはずの種族の生き残りとなれば、興味を惹かれるのだろう。瞳に好奇の光が宿っている。

〝いや、そんなことよりお尻のそれを……魔力残量がもうほとんど…ってアッ、止めるのじゃ! ツンツンはダメじゃ! 刺激がっ! 刺激がっ~! ひぃ~、その剣は止めるのじゃ! 近づけるでない! 止~め~て~!〟

ユエの質問を無視して自分の要望を伝える黒竜に、ハジメは「ユエが質問してんだろうが、あぁ?」とチンピラのような態度で黒竜のお尻から生えている杭を拳でガンガンと叩き、京矢が「さっさと答えろ」とペチペチとバルムンクで顔面を叩く。
ハジメによって直接体の内側に衝撃が伝わり悲鳴を上げて身悶え、京矢によって正気に戻ったことでバルムンクの持つ龍殺しの力に対して竜であるが故の反応的な恐怖を抱く黒竜。
最早、出会った当初の死神もかくやという偉容はまるで夢幻だったとでも言うように微塵も見受けられなかった。

「滅んだはずの竜人族が何故こんなところで、一介の冒険者なんぞ襲っていたのか……俺も気になるな」

「そうだな。こんなところに隠れ里を作ってるわけでもないだろうし、こいつらが運悪くそれを発見した訳でも無きゃ。普通なら命なんて狙わないだろ?」

「ああ。本来なら、このまま尻からぶち抜いてやるところを、話を聞く間くらいは猶予してやるんだ。さぁ、きりきり吐け」

「安心しろ。正直に話したら、オレから南雲に打ち抜か無いように説得してやる。黙秘や嘘なんて抜かしたら、尻からぶち抜かれる前に頭から真っ二つだぞ」

バルムンクを前にしたらそれは冗談には聞こえない。
実際に理由によってはハジメを説得もするし、上手くいけば竜人族とも協力関係になれるかもしれない。
既に教会や王族と言った人間族の上層部と魔王を始めとする魔人族の上層部側は敵となっている以上、種族単位での協力関係は有り難い。

〝あっ、くっ、ぐりぐりはらめぇ~なのじゃ~。は、話すから! 話すから、その剣もペチペチはやめてぇ~なのじゃ~〟

二人の所業に、周囲の者達が完全にドン引きしていたが彼等は気にしない。
このままでは話が出来なさそうなので、ぐりぐりは止めてやるハジメと、バルムンクを下ろしてやる京矢。
しかし、ハジメの片手は杭に添えられたままだし、京矢もいつでも真っ二つにできるような体制を取っている。
黒竜は、ぐりぐりやらバルムンクによる脅迫が止まりホッとしたように息を吐く。そして、若干急ぎ気味に事情を話し始めた。その声音に艶があるような気がするのは気のせいだろうか。

〝妾は、操られておったのじゃ。お主等を襲ったのも本意ではない。仮初の主、あの男にそこの青年と仲間達を見つけて殺せと命じられたのじゃ〟

黒竜の視線がウィルに向けられる。ウィルは、一瞬ビクッと体を震わせるが気丈に黒竜を睨み返した。ハジメの戦いを見て、何か吹っ切れたのかもしれない。
その黒竜の言葉にやっぱりな、と思う京矢。その言葉にバルムンクを下す。

「どういうことだ?」

「話してくれ」

〝うむ、順番に話す。妾は……〟

黒竜の話を要約するとこうだ。

この黒竜は、ある目的のために竜人族の隠れ里を飛び出して来たらしい。
その目的とは、異世界からの来訪者について調べるというものだ。詳細は省かれたが、竜人族の中には魔力感知に優れた者がおり、数ヶ月前に大魔力の放出と何かがこの世界にやって来たことを感知したらしい。

竜人族は表舞台には関わらないという種族の掟があるらしいのだが、流石に、この未知の来訪者の件を何も知らないまま放置するのは、自分達にとっても不味いのではないかと、議論の末、遂に調査の決定がなされたそうだ。

目の前の黒竜は、その調査の目的で集落から出てきたらしい。
本来なら、山脈を越えた後は人型で市井に紛れ込み、竜人族であることを秘匿して情報収集に励むつもりだったのだが、その前に一度しっかり休息をと思い、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りで休んでいたらしい。
当然、周囲には魔物もいるので竜人族の代名詞たる固有魔法〝竜化〟により黒竜状態になって。

と、睡眠状態に入った黒竜の前に一人の黒いローブを頭からすっぽりと被った男が現れた。
その男は、眠る黒竜に洗脳や暗示などの闇系魔法を多用して徐々にその思考と精神を蝕んでいった。

当然、そんな事をされれば起きて反撃するのが普通だ。
だが、ここで竜人族の悪癖が出る。そう、例の諺の元にもなったように、竜化して睡眠状態に入った竜人族は、まず起きないのだ。それこそ尻を蹴り飛ばされでもしない限り。
それでも、竜人族は精神力においても強靭なタフネスを誇るので、そう簡単に操られたりはしない。

では、なぜ、ああも完璧に操られたのか。それは……

〝恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。そんな男に丸一日かけて間断なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった……〟

一生の不覚! と言った感じで悲痛そうな声を上げる黒竜。
しかし、一同は冷めた目でツッコミを入れる。

「それはつまり、調査に来ておいて丸一日、魔法が掛けられているのにも気づかないくらい爆睡していたって事じゃないのか?」

「いや、油断しすぎだろうが」

「流石にそれは無防備が過ぎませんか?」

「休むにしても警戒の一つはしておくべきだろう」

上からハジメ、京矢、ベルファスト、エンタープライズの順である。全員の目が、何となくバカを見る目になる。黒竜は視線を明後日の方向に向け、何事もなかったように話を続けた。
ちなみに、なぜ丸一日かけたと知っているのかというと、洗脳が完了した後も意識自体はあるし記憶も残るところ、本人が「丸一日もかかるなんて……」と愚痴を零していたのを聞いていたからだ。もう、その男も丸一日も黒竜を相手に洗脳を掛け続けたと言う度胸にも感心してしまう。

そうして、ローブの男に従い、二つ目の山脈以降で魔物の洗脳を手伝わされていたのだという。
そして、ある日、一つ目の山脈に移動させていたブルタールの群れが、山に調査依頼で訪れていたウィル達と遭遇し、目撃者は消せという命令を受けていたため、これを追いかけた。
うち一匹がローブの男に報告に向かい、万一、自分が魔物を洗脳して数を集めていると知られるのは不味いと万全を期して黒竜を差し向けたらしい。

そのローブの男の行動には怒りは覚えるが、目の前の、丸一日洗脳されてるのに眠り続けていた黒竜よりも馬鹿では無いなと思う京矢だった。
最早、目の前の黒竜への戦意のかけらも湧いてこない。

で、気がつけばハジメと京矢にフルボッコにされており、バルムンクを撃ち込まれるたびに竜殺しの力によって洗脳を本能が上回り始め、このままでは死ぬと思いパニックを起した。それがあの魔力爆発だ。

そして、洗脳された脳に強固に染み付いた命令とバルムンクへの本能的な恐怖に板挟みになり、更に京矢が真名開放をしようとした事で、その本能的な恐怖が最大級に膨れ上がった後、尻に名状し難い衝撃と刺激が走って一気に意識が覚醒したのである。
正気に戻れた原因は、洗脳を吹き飛ばす程の恐怖を打ち込んだバルムンクの力と、名状し難き尻への一撃による相乗効果なのだろう。

「……ふざけるな」

事情説明を終えた黒竜に、そんな激情を必死に押し殺したような震える声が発せられた。
皆が、その人物に目を向ける。拳を握り締め、怒りを宿した瞳で黒竜を睨んでいるのはウィルだった。

「……操られていたから……ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを! 殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

どうやら、状況的に余裕が出来たせいか先輩冒険者達を殺されたことへの怒りが湧き上がったらしい。激昂して黒竜へ怒声を上げる。

〝……〟

対する黒竜は、反論の一切をしなかった。ただ、静かな瞳でウィルの言葉の全てを受け止めるよう真っ直ぐ見つめている。その態度がまた気に食わないのか、

「大体、今の話だって、本当かどうかなんてわからないだろう! 大方、死にたくなくて適当にでっち上げたに決まってる!」

〝……今話したのは真実じゃ。竜人族の誇りにかけて嘘偽りではない〟

なお、言い募ろうとするウィル。嘘ではないと思うが、判断材料のない京矢にはそれに口を挟まない。それに口を挟んだのはユエだ。

「……きっと、嘘じゃない」

「っ、一体何の根拠があってそんな事を……」

食ってかかるウィルを一瞥すると、ユエは黒竜を見つめながらぽつぽつと語る。

「……竜人族は高潔で清廉。私は皆よりずっと昔を生きた。竜人族の伝説も、より身近なもの。彼女は〝己の誇りにかけて〟と言った。なら、きっと嘘じゃない。それに……嘘つきの目がどういうものか私はよく知っている」

ユエは、ほんの少し黒竜から目を逸らして遠くを見る目をした。
きっと、三百年前の出来事を思い出しているのだろう。孤高の王女として祭り上げられた彼女の周りは、結果の出た今から思えば、嘘が溢れていたのだろう。
もっとも身近な者達ですら彼女の言う〝嘘つき〟だったのだから。その事実から目を逸らし続けた結果が〝裏切り〟だった。それ故に、〝人生の勉強〟というには些か痛すぎる経験を経た今では、彼女の目は〝嘘つき〟に敏感だ。
初対面でハジメに身を預けられたのも、それしか方法がないというのも確かにあったが、ハジメ自身が一切の誤魔化しをしなかったというのが、大きな理由だったのだろう。

どうやら、この黒竜はユエと同等以上に生きているらしい。
しかも、口振りからして世界情勢にも全く疎いというわけではないようだ。今回の様に、時々正体を隠して世情の調査をしているのかもしれない。その黒竜にして吸血姫の生存は驚いたようだ。周囲の、ウィルや愛子達も驚愕の目でユエを見ている。
ユエが、薄らと頬を染めながら両手で何かを抱きしめるような仕草をする。ユエにとって竜人族とは、正しく見本のような存在だったのだろう。話す言葉の端々に敬意が含まれている気がする。ウィルの罵倒を止めたのも、その辺りの心情が絡んでいるのかもしれない。
ユエの周囲に、何となく幸せオーラがほわほわと漂っている気がする。皆、突然の惚気に当てられて、女性陣は何か物凄く甘いものを食べたような表情をし、男子達は、頬を染め得も言われぬ魅力を放つユエに見蕩れている。ウィルも、何やら気勢を削がれてしまったようだ。

*

だが、それでも親切にしてくれた先輩冒険者達の無念を思い、言葉を零してしまう。

「……それでも、殺した事に変わりないじゃないですか……どうしようもなかったってわかってはいますけど……それでもっ! ゲイルさんは、この仕事が終わったらプロポーズするんだって……彼らの無念はどうすれば……」

そのゲイルと言う男も、見事な死亡フラグを立てたものだと思いながら、京矢は回収した遺品のロケットペンダントを取り出すと、それをウィルに見せる。

「受け取れ、せめてゲイルって奴が最後まで思ってたって、その恋人に伝えてやれ。それが残されたやつに出来ることだ」

そう言って、京矢は取り出したロケットペンダントをウィルに放り投げた。
ウィルはそれを受け取ると、マジマジと見つめ嬉しそうに相好を崩す。

「え? これ、僕のロケットですよ。良かった! 失くしたと思ってたのに、拾ってくれてたんですね。ありがとうございます!」

「え? 何? それ、お前の?」

「はい、ママの写真が入っているので間違いありません!」

「マ、ママぁ?」

予想が見事に外れた挙句、見当違いなカッコいい台詞を言った挙げ句、斜め上を行く答えが返ってきてポカーンとする京矢。

飄々とした余裕ある態度の京矢には珍しい、物凄くレアな表情の京矢に注目する一同。

「い、いや、それ、お前の母親って言うには若くねえか?」

「せっかくのママの写真なのですから、若い頃の一番写りの良いものが良いじゃないですか」

写真の女性は二十代前半と言ったところなので、疑問に思いその旨を聞くと、まるで自然の摂理を説くが如く素で答えられた。その場の全員が「ああ、マザコンか」と物凄く微妙な表情をした。女性陣はドン引きしていたが……

「鳳凰寺、良い台詞だったぜ」

遂にはハジメも京矢の肩を叩いて笑いを堪えながらそんな事を宣ってくれた。

恥ずかしさのあまり絶叫する京矢の叫びが響き渡った。
なお、ゲイルとやらの相手は〝男〟らしい。そして、ゲイルのフルネームはゲイル・ホモルカというそうだ。ゲイにホモと名は体を表すとはよく言ったものである。





















母親の写真を取り戻したせいか、随分と落ち着いた様子のウィル。何が功を奏すのか本当にわからない。
だが、落ち着いたとは言っても、恨み辛みが消えたわけではない。ウィルは、今度は冷静に、黒竜を殺すべきだと主張した。また、洗脳されたら脅威だというのが理由だが、それが建前なのは見え透いている。そもそも洗脳するにも丸一日もかかるのだから、爆睡していない限り、そう簡単に再洗脳はされない事は分かる。主な理由は復讐だろう。

そんな中、黒竜が懺悔するように、声音に罪悪感を含ませながら己の言葉を紡ぐ。

〝操られていたとはいえ、妾が罪なき人々の尊き命を摘み取ってしまったのは事実。償えというなら、大人しく裁きを受けよう。だが、それには今しばらく猶予をくれまいか。せめて、あの危険な男を止めるまで。あの男は、魔物の大群を作ろうとしておる。竜人族は大陸の運命に干渉せぬと掟を立てたが、今回は妾の責任もある。放置はできんのじゃ……勝手は重々承知しておる。だが、どうかこの場は見逃してくれんか〟

黒竜の言葉を聞き、その場の全員が魔物の大群という言葉に驚愕をあらわにする。
自然と全員の視線がハジメに集まる。このメンバーの中では、自然とリーダーとして見られているようだ。決断を委ねるのは自然な流れと言えるだろう。

そのハジメの答えは、

「鳳凰寺、どうする?」

「オレに振るなよ。オレは敵意のない奴を斬る剣は持ってねえし、流石に呆れ過ぎてヤル気が失せた。それに」

そう言ってウィルの方へと視線を向けて、

「他人の復讐の代行なんざゴメンだ。やるなら、人に押し付けるな、お前がやれ」

「っ!? そんな、復讐なんて……」

「違うとは言わせねえぜ」

京矢の指摘に図星を突かれたウィルは黙り込んでしまう。

「そう言う訳だ。南雲、トドメ刺すなら任せる」

「そうか。なら、お前の都合なんざ知ったことじゃないし。散々面倒かけてくれたんだ。詫びとして死ね」

「おお、流石のハジメクオリティって奴か?」

そう言って義手の拳を振りかぶった。

〝待つのじゃー! お、お主、今の話の流れで問答無用に止めを刺すとかないじゃろ! 頼む! 詫びなら必ずする! 事が終われば好きにしてくれて構わん! だから、今しばらくの猶予を! 後生じゃ!〟

ハジメは冷めた目で黒竜の言葉を無視し拳を振るおうとして、そんなハジメを京矢も煽っている。
だが、それは叶わなかった。振るおうとした瞬間、ユエがハジメの首筋にしがみついたからだ。驚いて、思わず抱きとめるハジメの耳元でユエが呟き、ハジメの行動を止める。

ユエが止めるだろうと思ったので敢えて説得はしなかった京矢はハジメを放置していた。
どうやら、ユエ的には黒竜を死なせたくないらしい。ユエにとっては、竜人族というのは憧れの強いものらしく、一定の敬意も払っているようだ。

しかも、今回は殺し合いになったと言っても、終始、黒竜は殺意や悪意を京矢達に向けなかった。
今ならその理由もわかる。文字通り意志を奪われており、刷り込まれた命令を機械の如くこなしていたに過ぎない。それでも、殺しあった事に変わりはないが、そもそも黒竜はウィルしか眼中になく、京矢達と戦闘になったのは、京矢とハジメが殺意を以て黒竜に挑んだからである。

ハジメの説得の後にいい雰囲気になった二人を眺めながら、相変わらずだなと思っていると黒竜から再び声が届く。

〝いい雰囲気のところ申し訳ないのじゃがな、迷いがあるなら、取り敢えずお尻の杭だけでも抜いてくれんかの? このままでは妾、どっちにしろ死んでしまうのじゃ〟

「ん? どういうことだ?」

〝竜化状態で受けた外的要因は、元に戻ったとき、そのまま肉体に反映されるのじゃ。想像してみるのじゃ。女の尻にその杭が刺さっている光景を……妾が生きていられると思うかの?〟

その場の全員が、黒竜のいう光景を想像してしまい「うわ~」と表情を引き攣らせた。特に女性陣はお尻を押さえて青ざめている。

「良かったな、何もしなくても出来るぞ、復讐」

「えっと……そんなのは望んでないと言うか……」

肩を叩いて言ってくる京矢に答えに戸惑うウィル。
はっきり言って、そりゃどんな復讐なのかとツッコミを入れたくなる光景だった。先輩達の墓前への報告にも困るだろう。

〝でじゃ、その竜化は魔力で維持しておるんじゃが、もう魔力が尽きる。あと一分ももたないのじゃ……新しい世界が開けたのは悪くないのじゃが、流石にそんな方法で死ぬのは許して欲しいのじゃ。後生じゃから抜いてたもぉ〟

「流石に妙な死に方されても困るから、抜いてやってくれ」

「ああ」

若干、気になる言葉があったが、その弱々しい声音に本当に限界が近いようで、どうやら二人が考えている時間はないらしい。
ハジメは、片腕にユエを抱いたまま、迷うくらいならパートナーと友人の言葉に従っておこうと決める。

ハジメはそう考えて空いている方の手で黒竜の尻に刺さっている杭に手をかけた。そして、力を込めて引き抜いていく。

〝はぁあん! ゆ、ゆっくり頼むのじゃ。まだ慣れておらっあふぅうん。やっ、激しいのじゃ! こんな、ああんっ! きちゃうう、何かきちゃうのじゃ~〟

みっちり刺さっているので、何度か捻りを加えたり、上下左右にぐりぐりしながら力を相当込めて引き抜いていくと、何故か黒竜が物凄く艶のある声音で喘ぎ始めた。ハジメは、その声の一切を無視して容赦なく抉るように引き抜く。

ズボッ!!

〝あひぃいーーー!! す、すごいのじゃ……優しくってお願いしたのに、容赦のかけらもなかったのじゃ……こんなの初めて……〟

そんな訳のわからないことを呟く黒竜は、直後、その体を黒色の魔力で繭のように包み完全に体を覆うと、その大きさをスルスルと小さくしていく。そして、ちょうど人が一人入るくらいの大きさになると、一気に魔力が霧散した。

黒き魔力が晴れたその場には、両足を揃えて崩れ落ち、片手で体を支えながら、もう片手でお尻を押さえて、うっとりと頬を染める黒髪金眼の美女がいた。
腰まである長く艶やかなストレートの黒髪が薄らと紅く染まった頬に張り付き、ハァハァと荒い息を吐いて恍惚の表情を浮かべている。
中々に京矢としては好みのタイプだが、関わり合いに成りたくない空気を纏っている。

見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあるだろう。エンタープライズやベルファストにも劣らない見事なプロポーションを誇っており、息をする度に、乱れて肩口まで垂れ下がった衣服から覗く二つの双丘が激しく自己主張し、今にもこぼれ落ちそうになっている。シアがメロンなら、黒竜はスイカでry……

黒竜の正体が、やたらと艶かしい美女だったことに特に男子が盛大に反応している。思春期真っ只中の男子生徒三人は、若干前屈みになってしまった。このまま行けば四つん這い状態になるかもしれない。女子生徒の彼等を見る目は既にゴキブリを見る目と大差がない。

「ハァハァ、うむぅ、助かったのじゃ……まだお尻に違和感があるが……それより全身あちこち痛いのじゃ……ハァハァ……痛みというものがここまで甘美なものとは……」

危ないことこの上ない発言をしてくれる黒竜に最早外観上の割と好みという上方修正を無視しても京矢が、関わりたくないと思った理由を理解してしまった。

「南雲、やっちまったな」

変な扉を開いてしまったと言うことだ。流石に変なモノに目覚めた奴には関わりたくない。
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