キバの世界

世界の破壊者、仮面ライダーディケイド。十の世界を巡り…その瞳は何を見る?





仮面ライダーディケイド
~終焉を破壊する者~
第六話
『仲間の絆・キバアロー/キバの世界』








「くっ!」



「こいつ!」



キバシャドウDEの振るうガルルセイバーをディケイドがソードモードのライドブッカーで受け止め、バッシャーマグナムの水の弾丸をキバが回避する。



先日の戦い…『スラッシュ』のカードで強化された斬撃を片手で受け止められた事からも理解できる様に、文句無しに強敵と呼べる相手。しかも、攻撃をする事は捕らわれているキバの仲間に対して攻撃する事にも繋がってしまうので、迂闊に攻撃ができない相手…状況は正に最悪。



それにG3やイクサと言った何故か自分を助けてくれている仮面ライダー達…下手に助けに入られても拙いと考える。



この状況を打破するには、キバが打開策を見出すか、仲間達を犠牲にする決断をするしかない。前者は兎も角、間違いなく後者の結論をキバが下す事は出来ないだろう。



(…ダメだ…助ける方法が思いつかない。だったら!)「…シルフィー姉さん…無理させて御免。ディケイド、悪いけど少し時間稼ぎを頼む!」



「っ!? 分かった!」



キバの言葉にディケイドが答え、それと同時にキバが一度後方へと大きく下がる。そして、素早く、バックルから新たに『シルフィーフエッスル』を取りだし、それをキバットへと咥えさせる。それと同時に己の中に座する存在をシルフィーへと変える。



「行くぜ、シルフィーアロー!」



~~~♪



笛の音色が鳴り響く。その音色は奏夜が隠れ家として使っている洋館へと届いていく。









「奏夜様…この命、貴方様と共に。」



その音色を聞いた彼女…一礼と共にシルフィーの服装が緑色のドレスの様な鎧へと変わって行き、両腕に鎖のついた腕輪が現れる。そして、祈るような体制を取ると、そのまま彫像の様な大型の弓へと変わり緑色のオーラに包まれ、何処かへと飛び出して行く。









キバは飛翔してきた弓、『シルフィーアロー』を手に取る。



「………。」



受け止めたシルフィーアローを両腕で一回転させると同時に、キバの体と目が緑色に染まり、鎧も形を変えていく。全身の鎧が一回り軽装な物へと変わり、腰の部分に追加装甲が、背中に緑のマントが現れる。そして、彫像の様な弓『シルフィーアロー』に緑色の光の弦が現れ、それを前方にいるキバシャドウDEへと向ける。



新たな姿『仮面ライダーキバ・シルフィーフォーム』へとその姿を変えた。



(…共に参りましょう…奏夜様。私の命は貴方様と共に。)



シルフィーの声を聞き、キバは緑色の光の弦を引く、それと同時に前方へと光が伸び、それが矢となる。



「ディケイド、下がって!」



その言葉に反応してディケイドが後へと下がる。それを追撃する様にキバシャドウDEがバッシャーマグナムの水の弾丸を放つが、



「ハッ!」



その全てを疾風の矢が撃ちぬいて行く。シルフィーフォームの身体能力は全能力が全フォーム中最弱となる。だが、その反面、最弱の身体能力を補って有り余る特殊能力が身に付くのだ。



時に己の射程範囲まで接近しようとするキバシャドウDEの足元へ、時に撃ち出してくる弾丸を風の矢はその全てを正確に打ち落とし、相手の行動その物を確実に潰して行く。



シルフィーフォームの特殊能力の一つ…それがこの未来予知にも等しい『感知能力』である。また、平成一号ライダー(仮面ライダークウガ)の緑の姿(ペガサスフォーム)とは違い奏夜の身へと掛かる負担が少ないのも特徴である。



さて、シルフィーフォームの詳しい説明は本編での初登場時に任せるとして、このフォーム時は特に『魔力』の流れを強く感知する事が可能なのだ。



(…奴の武器はガルル達じゃない。…とは言っても下手に攻撃して、ガルル達が危ないかもしれない。タツロットがいる様にも見えるけど…あれもタツロットじゃない。)



それは飽く迄可能性の問題なのだが、それでも危険なのは否定できない。



「それで…打開策は出来た?」



沈黙しながら、キバシャドウDEの行動を妨害しているキバSF(シルフィーフォーム)にディケイドはそう問いかける。



「…全ッ然。今奴が持っている武器や表面的に見える武装(みんな)はあの偽者が作り出している物って事くらいかな?」



「それって、現状を打破する手段には…?」



「あはは…何も分からない。」



「うわ、最悪。」



棒読みの台詞で笑って見せるキバSFにディケイドは仮面の中からキバシャドウDEを睨みながら、そう返す。



(あれは!? 奏夜様、お逃げ下さい!)



「ッ!?」



聞こえてくるシルフィーの言葉に反応した瞬間、距離を置いていたキバシャドウDEの放つ光弾が僅かに反応が遅れたキバSFの弓に触れた瞬間、強制的にシルフィーフォームからキバフォームへとフォームチェンジさせられる。



「「「なに!?」」」



ディケイド、キバ、キバットの三人の叫び声が重なり合い、それと同時にキバシャドウDEの前に一枚のカードらしき物が浮かび、そして、シルフィーアローがその中へと取り込まれていく。



「今のは…。」(ぼくのカードみたいに見えたけど?)



「…分かった…奴は…。」



その瞬間…キバがそれを理解した時、阻む物のなくなったキバシャドウが一気にキバとの距離を詰める。



「っ!? しまった!!!」



「うわぁ!!!」



その瞬間、キバットを捕獲しキバシャドウは己の中へと取り込んでいく。



(っ…キバットまで…でも、これで…分かった。)



(…似ている…ぼくのカードに…。)



強制的に変身が解除されると同時に奏夜は慌ててキバシャドウDEの攻撃範囲から離れる。今度の事で完全な確証が得られた。その為に失った物は多すぎたが…。



「…あの中にみんながいる…。それに…。」



「それに?」



本来なら腰の部分にシルフィーのパーツも追加され、完全な『ドガバシエンペラフォーム』とでも呼ぶべき姿となるはずなのだが、今のキバシャドウは何故か『ドガバキエンペラーフォーム』の姿を保ったままなのだ。



「…奴は今の姿が限界のはず…。だったら…。」



奏夜は決意を込めてディケイドへと視線を向ける。



「…頼みが有る…。…ぼくが取り込まれて、奴がまだ動く様なら…遠慮なく奴を倒してくれ…。」



「それって、どう言う…。」



ディケイドの言葉を聞かず奏夜は決意を込めた瞳でキバシャドウDEを睨みつけながら、掌を強く握り締める。それと同時に彼の姿が人の姿から、異形の姿へと姿を変わっていく。



「ッ!? …それは…確か、『ファンガイア』?」



「…まあね…。クォーターとは言っても、ぼくも父さんと同じ様に、ファンガイアの血を引いているからね。」



クワガタ…何処か仮面ライダーを連想させる外見を持った『インペラトールホソアカクワガタ』のファンガイア…それが彼のファンガイアとしての姿インペラトールファンガイアである。



何故、ディケイドがファンガイアの事を知っているのかと言う疑問を浮かべながら、横へと伸ばした手の中に現れるのはクワガタの鋏を連想させる一振りの剣。それを握りしめ、インペラトールファンガイアはキバシャドウへと向かって行く。



ディケイドの振り下ろしたソードモードのライドブッカーをガルルセイバーで受け止めた瞬間、インペラトールファンガイアの剣がキバシャドウDEに振り下ろされる。



(…仲間達も一緒に倒すって決めたのか?)



(…さあ、撃って来い…。)



そう考えながら、ディケイドもキバシャドウDEの体にキックを打ち込み、ディケイドのキックとインペラトールファンガイアの剣を受けた相手から距離を取る。そして、距離を取ったディケイドがライドブッカーからカードを取り出そうとした瞬間、キバシャドウDEが片手を上げ、シルフィーを取り込んだ際に使った光弾を撃ち出した。



「それを待っていたんだ!!!」



そう叫ぶと同時に、撃ち出された光弾へと向かってインペラトールファンガイアが走り出す。



「って、待て!」



「ぐ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」



慌ててディケイドがインペラトールファンガイアを止め様とするが、無常にも絶叫と共にインペラトールファンガイアの姿がキバシャドウの中へと消えて行く。



「奏夜さん!!!」



ディケイドが奏夜の名前を叫んだ瞬間、キバシャドウの姿が…胸と両腕のパーツが金色の物…エンペラーフォームの物へと変わっていく。そして、その手の中に刀身に蝙蝠が噛みついた様になっている一振りの剣ザンバットソードが現れる。



「…敵は最強…。」



完全なる『キバ』となったキバシャドウに向かって、ソードモードのライドブッカーを構えながら、






「居たぞ、こっちだ!」



「あれって、紅くん!」



「ディケイド…それに、紅も。」



「へっ、今度こそブッ倒してやるぜ!」






「…状況は最悪…。」



余計な乱入者達…簡易型イクサとS.E.E.Sの面々と、状況は更なる悪化の一途を辿っていった。



「上等だよ…。…こんな所で旅を終わらせる気はない。」



完全なる三つ巴の状況…だが、その中でも一番不利なのはディケイドなのだ。





「…………。…ここは…?」



意識を取り戻した奏夜は周囲を見回す。周囲を包むのは漆黒の闇、地面と思われる場所には本来の姿であるモンスターの姿となって、ガルル達四魔騎士(アームズモンスター)にキバット、タツロットが倒れていた。












キバシャドウEFの振るうザンバットソードから放たれる衝撃波が周囲に存在する者を全て無差別に薙ぎ払う。



「「「「うわぁー!!!」」」」



イクサに変身していた明彦の変身が解け、イクサナックルがアスファルトの地面へと転がる。ディケイドは転がりながら体勢を立てなおす。



「止めて、紅くん!」



完全なキバの姿をしたキバシャドウEFへと投げかけられるゆかりの言葉…その言葉にディケイドは思わず仮面の奥で歯を食いしばる。



「そうだ! 確かに私達はお前の事をもう仲間と呼ぶ資格はないのかもしれない…だが。」



続けて告げられるのは美鶴の言葉…彼等がどんな思いで自分に戦いを挑んできたのか、それは理解できた。…だが、



「そうだ! オレ達はお前の仲間を傷付けた。その事を許してくれとは言わない。」



「そうだぜ、奏夜! オレ達は…仲間だったんじゃないのかよ!?」



明彦と順平の声が届くはずもないキバシャドウEFへと告げられる。



「…ふざけるな!!! お前達には奴が『紅 奏夜』に見えるのか!? 姿形…お前達は、そんな物に惑わされて見えないのか? お前達の知っているキバは、こんな形で力を振るうような奴だったのか!? なんで気付かない…あれはキバじゃない!!! 仲間を傷つけられる人間じゃないはずだろう!!!」



「「「「ッ!?」」」」



ディケイドの叫びが響いた瞬間、ゆかり達は一斉にキバシャドウEFへと視線を向ける。その瞬間、振り上げたザンバットソードを力任せにアスファルトの大地へと叩きつけた瞬間、地震でも起こったかのように、引き裂かれた。



「おわぁ!」



「きゃあ!」



「くっ!」



「岳羽、伊織、明彦!」



その衝撃によって戦闘メンバーとして立っていた三人が吹き飛ばされる。ダメージから考えて既に戦闘不能だろう。



「奏夜…今、ぼくが貴方を開放する!!!」



そう叫んだ瞬間、ライドブッカーが開き一枚のカードが飛び出してくる。



「…そうか…これなら!」



手に取った瞬間、そのカードの効果を理解し素早くディケイドライバーへとそのカードを装填する。







―ATTACKRAID SEAL―





そのカードの力がディケイドライバーからガンモードのライドブッカーへと流れて行く。そう、そのカードこそ…ディケイドが終焉(ディターン)の力を封じる事の出来る唯一のカードにして、最強の対抗手段。



「行けぇ!!!」



「!!!」



ザンバットソードから放たれた衝撃波がディケイドを、ディケイドの撃ち出した弾丸がキバシャドウEFへと直撃する。



「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」



「!?」



その衝撃によってディケイドの変身が解除され、勇宇の姿へと戻る。そして、勇宇の放った弾丸が渦を描く様に広がって行き、キバシャドウEFが奏夜達を取り込んだ時と同じ現象が起こる。



「…脱出の道は開いた…これが最後のチャンスだ…。」












奏夜SIDE



「…みんな…なんで今更…そんな事を…あの時は…次狼さんを…力さんを…ラモンさんを…シルフィー姉さんを傷つけたくせに今更仲間面か!!!」



キバシャドウの中に居る奏夜にもその言葉は届いていた。だが、奏夜の中に有る意思は拒絶のみ。






『本当にそれでいいのか?』






「誰だ!?」



聞き覚えのない声が奏夜の耳へと届く。






『だったら、何でお前はこいつと戦う時、一人で戦う事を選んだんだ?』






「それは…足手纏いは要らない…あんな奴らは邪魔になる…だから…。」






『違うな、こいつと戦うのが危険だから、巻き込まない為に一人で戦う事を選んだ。』






先程とは別の声が響く。









「…ふざけるな!!! お前達には奴が『紅 奏夜』に見えるのか!? 姿形…お前達は、そんな物に惑わされて見えないのか? お前達の知っているキバは、こんな形で力を振るうような奴だったのか!? なんで気付かない…あれはキバじゃない!!! 仲間を傷つけられる人間じゃないはずだろう!!!」






外から聞こえてくる勇宇の…ディケイドの言葉が奏夜へと響く。









『君は彼等の事を仲間だと思っているはずだよ。だから、どれだけ自分が傷つけられても…仲間を傷つけられても…『仲間』を憎めなかった。』



また違う声が…奏夜へとそう告げる。






「っ!?」



奏夜の真後ろに光が見えてくる。それは外と繋がっている事が人目でわかる。だが…巨大なカードの様な物が脱出を阻む様に立ちはだかっている。






『さあ、ディケイドが与えてくれたチャンスを無駄にするな。』



声が奏夜へとそう告げられた。



「………。キバット! タツロット! 次狼さん、ラモンさん、力さん、シルフィー姉さん! 起きて!!!」



「ん? あれ、オレ達って、あいつに…ここは?」



「あ、あれれ!? ここって何処なんですか、奏夜さん!?」



キバットとタツロットが目を覚ます。



「奏夜様……?」



「オレ達は一体?」



「ここ、は?」



「ぼく達、あのキバの偽者に…。」



続いて目を覚ましたのは四魔騎士達(アームズモンスター)…。



「みんな…時間がないから、話しは後だ。急いでここを脱出する。行くよ…みんな!!!」



奏夜のその言葉にその場に居た全員が頷く。奏夜は気付いていない…奏夜の中に座する物が新たな姿へと進化した事に…。奏者と死神…二つの仮面は一つとなって…救世主となる。



「行くぜ! ガブ!!!」



「行きますよー! テンションフォルテッシモ!!!」



キバへと変身する奏夜。そして、その周りを飛びまわるタツロットが全身のカテナを解き放ち、エンペラーフォームへの変身のプロセスへと入る。そして…奏夜のペルソナのカードを砕く様にタツロットが潜り抜け、腕に装着された瞬間…黄金の鎧は白金の鎧へと変わっていく。



「ザンバット!!!」



そして、タツロットより召喚したザンバットソードにアームズモンスター達が一つとなったモンスター『ザンバット』が一つとなり、その剣を手に取る。



皇帝(エンペラー)から救世主(メシア)へ……これこそが奏夜の変身する彼の真なるキバの姿…『仮面ライダーキバ・メシアフォーム』!!!






『』






最後に何かが聞こえた気がした。今までの声もそうだったが…全ての声が懐かしく聞き覚えのない声だった。…そして…絶対に忘れては行けない…そんな気がした。












SIDE OUT




















キバシャドウEFの姿が砕け散り、灰色のキバ…キバシャドウへと戻った瞬間…七つの異形の影が飛び出してきた。



小型のドラゴン『タツロット』とキバット…キバの従者達アームズモンスター、ガルル、バッシャー、ドッガ、シルフィーの姿が…。



「奏夜さん!」



最後に飛び出してきた異形の影…インペラトールファンガイアの姿に対して勇宇がその名を呼ぶ。



「紅くん…なの?」



驚愕と共に告げられるゆかりの言葉…他の仲間達も勇宇の言葉に驚愕を隠せない。そして、インペラトールファンガイアは勇宇の言葉を肯定する様に…人の…奏夜の姿に戻って行く。



「そうか…お前がファンガイアの「その通りです。ファンガイア一族最後の生き残りにして、気高き王の証たるキバの鎧の後継者…それが、奏夜様です。」」



美鶴の言葉を遮り、彼女の言葉を補足するシルフィー。



「そうですよ、先輩。ぼくも『化け物』の仲間…ファンガイアです。だから『違います!』…山岸さん?」



通信を通して聞こえてくる声…キバの事を最初に知った少女『山岸 風花』の声が響く…。それに驚愕していると動き出そうとしているキバシャドウを何かが牽制する。



「コロマル?」



「ワン!」



それはナイフを咥えた白い犬…仲間の一人(一匹?)である『コロマル』だった。



「そうですよ、奏夜さん。奏夜さんが何者でも…ぼく達のリーダーで、仲間です!」



身長以上の長い槍を持った少年…最年少のペルソナ使い『天田 乾』から告げられた言葉に思わず奏夜は黙ってしまう。



「山岸、天田…お前達…どうしてここに?」



美鶴が後方にいた風花にそう聞くが…。



「リーダーが…紅くんが帰って来てくれる…そんな気がしたから…だから、お帰り…紅くん。」



「うん。お帰り。」



今にも流れそうになる涙を堪えながら笑顔を浮かべて風花がそう告げ、ゆかりが続ける。



『お帰り、リーダー。』



「みんな。」



奏夜を仲間として受け入れてくれる者達の祝福の言葉…。それを聞き微笑を浮かべると、表情を引き締め、キバシャドウへと向き直る。



「天田くんとコロマルに、桐条先輩は岳羽さん達やガルル達の回復と護衛を…。」



「はい!」



「ワン!」



「分かった!」



それぞれが臨戦体勢を取り奏夜の言葉に答える。



「山岸さんはサポートを。」



「はい!」



「キバット…行けるね?」



「オウ! キバって行くぜ! ガブ!」



「えーと…無視しないで貰いたいんだけどね…ぼくも。」



掌に噛みついたキバットを手に取り、ベルトを出現させると同時に今までの感動の再開に水を刺さない様に黙っていた勇宇が奏夜の隣へと並ぶ。



「あはは…ごめん。君のお蔭で本当に助かったよ。ありがとう。それで…君は?」



そう言われて自分が名乗っていない事に気が付くと、勇宇はライドブッカーから一枚のカードを取り出してそれを奏夜へと向ける。



「そうだったね。ぼくは『門矢 勇宇』。…通りすがりの…仮面ライダーだ!」



「「変身!!!」」







-KAMENRAIDE! DECADE!―





並び立つは二人の戦士…仮面ライダー達。仮面ライダーキバ、仮面ライダーディケイド。



そして、次の瞬間、ライドブッカーが開き、赤いカードが一枚、黄色いカードが二枚飛び出してくる。



赤いカードは最初に力が失われた仮面ライダー達のカードの中の一枚『仮面ライダーキバ』のカード。



黄色いカードの一枚はキバとキバットに似た武器が描かれたカード。そして、最後の一枚は…ディケイドの紋章の変わりにキバの紋章が書かれた『ファイナルアタックライド』のカード。



「行くよ!!!」



「ああ!!!」



ライドブッカーを構えるディケイドと両腕を広げて屈み込むような体制になるキバ…共にファイティングポーズを取り、キバシャドウへと向かって行く。



「はぁ!!!」



ディケイドの振るうライドブッカーの斬撃をキバシャドウが受け止めた瞬間、キバのラッシュからキックへと続く連続攻撃、そして、離れた瞬間、素早く至近距離からガンモードに切換えたライドブッカーの引き金を引き、キバシャドウの体へ直撃させる。






『気を付けて、大きいのが来ます!』






風花からの警告が響くと同時にキバが、それに遅れてディケイドがキバシャドウから離れて、防御体制を取った時、キバシャドウの周囲の空間が炎に包まれた。



「…最上級火炎魔法(マハラギダイン)以上の破壊力の広範囲の火炎魔法…。」



キバは知らない事だが、その魔法の名は『メルトダウン』と言う。そして、それで致命傷になるとは考えなかったのであろう、キバシャドウは次の瞬間、右足のヘルズゲートが開放する。



「…ダークネスムーンブレイクまで使えるのか、あいつは!?」



「ちょっと待て、奏夜! それだけじゃないぜ!」



奏夜の言葉をキバットが訂正する。キバシャドウが使おうとしているのはダークネスムーンブレイクではない…。炎、冷気、電撃、風、そして、万魔…存在する魔法攻撃の属性全てがキバシャドウのヘルズゲートを中心に渦を巻いている。






『あれは拙いです、はやく止めないと!』






(…拙いと言われても…ダークネスムーンブレイクで相殺できるか?)



「だったら、こっちも相当の大技で行かないとね。」



相打ちを覚悟でウェイクアップフエッスルを取り出そうとしたキバを制する様にディケイドが新たなカードをディケイドライバーに装填する。







―FAINAL FORMRIDE! KI・KI・KI・KIVA!―





「ちょっとくすぐったいよ!」



「な、何が?」



「ほら!」



戸惑うキバの背中に回り込み、その背中を扉の様に開く。すると、キバの背中にキバットの顔の様な物が現れ、それと同時にキバの姿がキバットを模した巨大な弓矢『キバアロー』へと姿を変えた。






「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇえ!!! 変わったァ!?」」」」」」」



ディケイドとキバを除く一同から驚愕の叫び声が響く。



「…奏夜様…私とおそろいですね。」



「いや、あれっておそろいなの!?」



「それに、関係ないと思うんですけど…。」



顔を赤くして嬉しそうにそう言うシルフィーに素早く何処か不機嫌そうな、ゆかりと風花のツッコミが入る。






「これは?」



「これがぼく達の新しい力だ。…行くぞ!」



「ああ!」



最後にキバの紋章の書かれた黄色いカードを装填する。







―FAINAL ATTACKRIDE! KI・KI・KI・KIVA!―





「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」」」



上空にいるキバシャドウを狙いキバアローをディケイドは強く引き絞る。それと同時に先端の矢の部分に魔力が集中して行く。



「キバって…いっくぜぇ!!!」



そして、それが最高潮まで高まった瞬間、キバットの叫び声と共に矢のヘルズゲートに巻きついていた鎖が砕け散り、開放される。




-カオスティックムーンブレイク!!!-



「「「ディケイドファング!!!」」」


キバアローから撃ち出された光の矢がキバシャドウの足と接触する。均衡する二つの必殺技。だが、ディケイドファングは一度撃ち出してしまえば、後は標的へと一直線に飛ぶだけ。ディケイドもキバも駄目押しは可能なのだ。



「行くよ…勇宇!」



「ああ、奏夜さん!」



キバが元の姿に戻ると、ディケイドは最後のライドカードを…キバは赤いフエッスルを取り出す。










―FAINAL ATTACKRIDE! DE・DE・DE・DECADE!―



「ウェイク! アップ!!!」








同時に電子音と笛の音が響き、ディケイドの前に透明なライドカードの列が現れ、キバの右足のヘルズゲートのカテナが解き放たれた。



「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」



大地を蹴りディケイドファングとカオスティックムーンブレイクで拮抗しているキバシャドウへと向かって、二人のライダーの必殺技が放たれる。




「ディメンションキック!!!」
「DARKNESS MOON BREAK!!!」


ディケイドのディメンションキックとキバのダークネスムーンブレイクがキバシャドウへと突き刺さり、それにより拮抗が崩れたディケイドファングがキバシャドウを撃ちぬき、キバシャドウは爆散する。



最後に爆散するキバシャドウの中から一枚のカードが吹き飛び、引き寄せられる様にディケイドの元へと飛んでくる。



(…これが、終焉の欠片。)



ディケイドファングの直撃に傷一つないそれをディケイドが手に取った瞬間、それはディケイドのカードとは逆に色彩を失って行く。否、一度だけかすかに絵と文字が変わってから色彩を失って行ったのだ。



変身を解き、勇宇はそれをライドブッカーへと収め、その場を後にする。奏夜の仲間達との再会を邪魔しない様に…。だが…勇宇はまだ気付かなかった…彼の持っていたカメラのシャッターが切られた事に…それが新しい世界への鍵を得た瞬間だった。












「…良かった…勝てたんだ…勇宇…。」



紫月は自宅の椅子に座りながら、彼女の目の前に置かれている三枚のカードの周りの色が灰色から赤へと変わっていくのを確認するとそれを全て手に取り『』へと収める。



「ただいま、紫月。」



「…うん、お帰り、勇宇。」



お互いに微笑を浮かべながらそう言葉を交わすと、勇宇の体から力が抜けた様に崩れ落ちる。それを受け止めながら、紫月は優しく囁くのだった。



「…お疲れ様…勇宇。…今はゆっくり休んで…。」







つづく…
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