カブトの世界(ガタック編)
世界の破壊者、仮面ライダーディケイド。十の世界を巡り…その瞳は何を見る?
仮面ライダーディケイド
~終焉を破壊する者~
第十話
『戦いの神器・ガタックスティンガー/ガタックの世界』
「おい。確か、お前はクロックアップは使えなかったな?」
「え? あ、はい。」
ガタックがディケイドへと声を掛ける。クロックアップが使えないディケイドでは、カブトとザビーには不利と考えたガタックの判断は一つ。
「オレがカブトとザビーを「…いや、ここはぼくが食い止めるから、亨夜さん。貴方が彼女を安全な所ヘ。」って、おい!」
ディケイドはガタックの言葉を無視してライドブッカーから一枚のカードを抜き出し、ディケイドライバーへと差し込む。
―ATTACKRAID BLAST!―
そして、振り向くと同時に強化されたライドブッカー・ガンモードからの弾丸を後方を囲むゼクトルーパー達へと打ち込む。
「「「うわ!!!」」」
それによって、ゼクトルーパー達がディケイドの放った弾丸を避けた際に左右に分かれた事で逃げ道が開く。
「っ!? お前! お前じゃ、カブト達には…。」
「早く行け!」
ガタックの言葉を遮り、ディケイドはそう叫ぶ。
「……。分かった! 七海ちゃん、乗って!」
「は、はい!」
ディケイドへとそう答えガタックはガタックエクステンダーへと飛び乗り、七海の手を引いて彼女を後部座席へと乗せる。そして、一気にバイクを加速させゼクトルーパー達の間を通って走り去って行く。
「…やれやれ、逃げられたか。」
「………。」
カブトとザビーへと向き直り、ディケイドはライドブッカーから今度は『仮面ライダーキバ』の絵が書かれたカードを抜き出す。
「悪いけど、足止めさせてもらう。変身!」
-KAMENRAIDE! KIVA!―
ディケイドライバー、ライドブッカーを残し、ディケイドの姿がキバの物へと変わる。
「なに、変わっただと!?」
「へえ。」(…マスクドフォーム以上に別系統の姿に…。…あれがディケイドの能力か…。)
キバの姿に変身したD(ディケイド)キバを見て驚いて見せたザビーと、それを冷静に分析するカブト。
「はぁぁぁぁぁぁあ!」
格闘戦に優れたDキバに変身した事で、接近した方が有利と判断し、ザビーとカブトへと一気に近づいていく。Dキバの考えはクロックアップを使われる前にザビーを倒す事。カブトの言葉を信じるのなら、カブトは本気で戦っているのではなく、飽く迄演技なのだから、倒すべきはザビー一人と考え、行動する。
ザビーはそんなDキバの打撃をマスクドフォームの装甲で受け止めつつ、腕のブレスに装着されているザビーゼクターへと触れた時、
「龍牙。」
Dキバの腕をカブトが受け止めていた。
「…ここはオレが引き受けます。亨夜達を追って下さい。」
「そうか、任せたぞ、龍牙。ここはカブトに任せて、ゼクトルーパー部隊はオレに続け。」
ザビーの指示を受けてゼクトルパー達が亨夜達を追いかけていく。そして、完全にザビーとゼクトルーパー達の姿が見えなくなると、カブトはDキバの腕を離して、ベルトからカブトゼクターを外し、変身を解除する。
「やれやれ…やっと居なくなったか。」
「あんたは…ぼくが何の為に…。」
龍牙に抗議しつつディケイドライバーを外し、変身を解除すると、
「あの変身…あれが、クロック・アップ無しでワームに対抗する手段なんだろう? 亨夜には悪いが、今連中に手札を知られたくはなくてな。」
「っ!? クロック・ダウンとか言う奴に対抗する為に…?」
「そう言う事だ。まあ、早く追い掛けた方がいい、今ので少しは時間稼ぎ出来ただろうけど、すぐに追いつかれる。」
「そこまで分かっていてどうして…!?」
「…どうやら、兄さんの偽者は一人じゃない様だ。…クロック・ダウンのシステムについての情報を持っているのは“もう一人の偽者”…お前達が戦おうとしている“小物”の方じゃない。」
「もう一人?」
「…ああ…。残念ながら、そっちにはまだ接触できていない。あの小物をサッサと倒してもう一人を表に引っ張り出す必要が有る。」
勇宇はそこまで聞き、龍牙の言葉の意味を理解する。
「…ぼくのクロックアップへの対抗策は…。」
「…もう一人の偽者…クロックダウンの一件の裏に居る奴を倒す為に必要になる。オレはオレで、全部調べていない訳だから、迂闊には動けない…。今回の事は下手をしたら、ライダーにとっての致命傷になりかねないからな。」
そう告げると龍牙は勇宇に背中を向けて手を振りながら立ち去っていく。
「それじゃあ、今回の事はお前と亨夜の二人に任せた。オレの手で叩き潰せないのが、心底残念だがな。」
(…任せたって、あの人は…。)
そんな龍牙の背中を見送りつつ勇宇はそんな事を思う。
「っ!? 早く追いかけないと拙いな。」
そう言ってガタックエクステンダーが走って行った方向へと体を向けた瞬間、灰色の世界の壁が現われ、
「ッ!?」
敵かと思い警戒している勇宇を他所に彼の愛車であるマシンディケイダーがそこから現われた。
「…良く分からないけど、好都合…かな?」
マシンディケイダーに乗り込みガタック達を追いかけて走り出す。
廃工場…
「はぁ!」
「ふっ!」
ライダーフォームのガタックの振るう双剣を避けながら、ライダーフォームのザビーの拳がカウンターとして、ガタックへと打ち込まれていく。
「ぐっ!」
「こんな物か、荒谷亨夜?」
体制が崩れた所に放たれたザビーの拳を受け止めながら、亨夜はガタックの仮面の奥でザビーを睨みつける。
「…答えろ…どうしてお前は七海ちゃんを…。」
「上からの命令だ。それ以外に何が理由が有る?」
ザビーの蹴りを後にガタックは大きく跳んで避ける。
「所詮、オレ達は上からの命令に従って戦うだけだ。ワームであろうが無かろうがオレにはどっちでもいい事だ。」
そう告げるとザビーはベルトに触れ、
《Cloock up》
クロックアップの加速状態に入る。
「くっ、クロックアップ!」
《Cloock up》
ザビーに遅れながら、ガタックもクロックアップの中に入る。加速状態で交差する蒼と黄の二人の仮面ライダー。だが、
「ぐぁ!」
「覚悟は良いか?」
《Rider Sting》
クロックアップ前に受けたダメージの影響か、動きが鈍った所でザビーの攻撃が直撃し、ガタックの体制が崩れた瞬間を逃さず、ザビーは必殺技の体勢に入る。
「ライダースティング!」
ザビーゼクターから伸びる針がガタックへと向かう。クロックアップした状態ではガタックを助ける者は居ない…はずだった。
「ぐあ!」
ザビーの必殺技がガタックに直撃する寸前、加速状態のザビーに無数の弾丸が打ち込まれ、ザビーの体制が崩れた瞬間、
《《Cloock Over》》
クロックアップが終わった。
「…今のは?」
立ち上がりながら、ガタックが自分を助けた者の居るであろう方向へと振り向くとそこには、前回彼と戦った時とは違う碧色の姿を持って、変わった形の銃とライドブッカーのガンモードを構えたDキバ・バッシャーフォームの姿が有った。
「今だ!」
「ああ!」
DキバBFの叫びを聞いて、ガタックがザビーへと廻し蹴りを放つ。とっさに腕でガードする事には成功するが、ガタックの廻し蹴りによってザビーゼクターとライダーブレスが外れ、ザビーの変身が解除された。
「くっ!」
「さあ、これでアンタの負けだ。さっさと退いてもらおうか? 七海ちゃんの無実はオレが証明する。」
ガタックダブルカリバーを総司へと着き付けながらガタックは自分の勝利を宣言する。最初からザビーを倒すのではなく変身解除をする事を狙っていたのだ。
「こっちは二人、これでぼく達の方が有利だ。そっちにはもう武器も無い、ぼく達の勝ちだ。退いた方が身の為だ。」
同様にDキバBFもバッシャーマグナムを構えながらそう告げる。
だが、そんな二人の言葉を聞きながら…総司は二人を嘲笑する様に表情を歪める。
「それで勝ったつもりか?」
「武器も無しにどう戦う…っ!?」
総司がそう言った瞬間、彼の体が輝きその姿をブドウネアブラムシの特徴を持ったワーム、『フィロキセラワーム』へとその姿を変え、ガタックとDキバBFが同様を浮かべた瞬間、突き付けられている武器を弾く。
「…ワームが、ZECTの隊長になっていただと!?」
「…龍牙さんの言う通りだったな。」
「っ!? あいつは知ってたのか?」
次の瞬間、フィロキセラワームは加速状態(クロックアップ)に入り、ガタックの体が空中へと舞う。
「ぐあ!」
「亨夜さん! うわ!」
相手の動きに合わせてバッシャーマグナムを向けるが、DキバBFが引き金を引こうとした瞬間、DキバBFの体が空中へと舞う。
空中に舞う二人の仮面ライダーを地面に倒れさせる暇さえも与えずに、フィロキセラワームは尚も攻撃を続け、クロックアップが終わった瞬間、二人は地面を転がりながら変身が解除される。
「先輩!」
隠れていた七海が倒れる亨夜に駆け寄る。そんな七海を護る様に背中に庇い、亨夜はフィロキセラワームを睨みつける。
「お前…ワームだったのか?」
「そうだ。だが、それがどうした? オレがワームで有っても、お前達ZECTの「クロックダウン。」…っ!? 何故それを知っている?」
フィロキセラワームの言葉を遮り勇宇の言葉が告げられると、フィロキセラワームの表情に明らかな同様が浮かぶ。
「なんだよ、それは?」
「誰から聞いたのかは秘密。クロックダウンはクロックアップを封じるZECTが作り上げたシステム。だけど、それはライダーのそれを封印するだけの意味のないシステムだけど…ZECTの上層部と手を組んだワームの手にそれが渡った。」
「…嘘だろう…人がワームと手を組むなんて…。」
「それって…あのとき…。」
「…七海ちゃん、知ってるのか?」
「知っているの何も、彼女は偶然にもデータの受け渡し目撃してしまったそうだ。」
亨夜の問いに答えるのはフィロキセラワームの言葉だった。
「可愛そうだが、僅かな憂いも排除すると言うのが決定だ。オレを倒したとしても、ZECTもワームも彼女を殺そうとする。……それでも、守りきれると思っているのか? 最後の忠告だ。「断る!」…その答え、後悔するぞ。」
「後悔するのはどっちだろうな?」
フィロキセラワームの言葉に立ち上がりながら勇宇はそう告げる。
「誰かを守る為に戦う事を後悔する人なんて居ない。そして、彼は絶対に守りぬくはずだ。それが彼の決意だから!」
「…偉そうに、貴様…何者だ?」
フィロキセラワームの言葉に勇宇はライドブッカーの中からディケイドのカメンライドカードを取り出し、
「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」
七海に隠れて居るように言った亨夜と視線を合わせ違いに頷き合い、
「「変身!!!」」
-KAMENRAIDE! DECADE!-
《HEN-SHINN》
互いにカードとガタックゼクターをディケイドライバーとライダーベルトへと差し込み、その姿を仮面ライダーディケイドと仮面ライダーガタック・マスクドフォームへと変える。
次の瞬間、ライドブッカーが開き、赤いカードが一枚、黄色いカードが二枚飛び出してくる。
赤いカードは最初に力が失われている仮面ライダー達のカードの中の一枚『仮面ライダーガタック』のカード。
黄色いカードの一枚はガタックとクワガタに似た武器が描かれたカード。そして、最後の一枚は…ガタックの紋章が書かれた『ファイナルアタックライド』のカード。
「行くぞ!」
「ああ!」
「愚かな。」
自分に向かってくる二人のライダーを嘲笑う様にフィロキセラワームがそう告げると、数人のゼクトルーパー達が姿を見せ、サナギワームへと姿を変える。
「はぁぁぁぁ!!!」
ソードモードのライドブッカーを振るいサナギワーム達の中へと飛び込んだディケイドは次々にサナギワーム達を切り裂いていく。
「はぁ!」
マスクドフォームのパワーを活かしたパンチやキックでガタックは次々とサナギワームを殴り飛ばし、距離を取った所で、
「食らえ!!!」
ガタックバルカンの連射で一掃する。
「くっ。」
サナギワーム達がディケイドとガタックによって一掃されているのを見て、表情を歪めながら、フィロキセラワームはディケイドへと視線を向ける。そして、力を貯めるような体勢を取りクロックアップする。
「悪いけど、それの対策は感覚強化だけじゃない!!!」
―ATTACKRIDE ILLUSION!―
実体を持ったディケイドの分身が、フィロキセラワームを切り裂き、動きが止まった所に別の分身が追撃、最後に本体のディケイドがガンモードのライドブッカーで撃つ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁあ!!! な、なぜオレの動きが…。」
「だって、態々正面からしか来れない位置まで誘導させて貰っただけだよ。」
ディケイドの言葉通り、ディケイドの立っている場所は左右は障害物で回り込めない様になった場所だった。
《Cloock Over》
クロックオーバーの電子音が響くと同時に彼が担当していたワームを全滅させたのだろう、ライダーフォームのガタックが現われる。
「さあ、残ったのはお前だけだ。」
「覚悟は良いね。」
ガタックがガタックダブルカリバーを、ディケイドがライドブッカーのソードモードを構えた瞬間、二人は左右に吹き飛ばされる。
「くっ…。」
「なにが…。」
「あ、あなたは…。」
壁に叩き付けられたガタックとディケイドがフィロキセラワームの元へと視線を向けた瞬間、カブトムシを想像させる外見を持ったワーム『ビートルワーム』が振り返る様に二人に視線を向けていた。
そして、フィロキセラワームに『今の内に逃げろ』とでも言う様な仕草で天井を指差す。
「は、はい!」
フィロキセラワームの背中に羽が現われそのまま天井を突き破って逃げ出して行く。それを見届けるとビートルワームもクロックアップし、その場から離れて行った。
「逃げられたか!?」
「まだもう一体の方は逃げられてない。…って、あの子は?」
「ああ、サナギを倒した後に外のガタックエクステンダーの所に…。拙い!」
そんな会話を交わした後二人は慌てて外へと飛び出す。
「七海ちゃん、無事か!?」
「あ、はい。大丈夫ですけど。」
ガタックエクステンダーの元で待っていた七海がガタックの言葉にそう返事をした。
「良かった。」
「それに、まだあいつにも逃げられてない。」
ディケイドの指差した先には背中から出した羽で空を飛んで逃げ様としているフィロキセラワームの姿が有った。
「逃がすか!」
ガタックエクステンダーに乗り、中央部からガタックエクステンダーが変形し、飛行形態になる。
「そうだね、逃がす気は無いよ。」
ディケイドは一枚のカードを取りだし、ディケイドライバーへと装填する。
―FAINAL FORMRIDE! GA・GA・GA・GATACK!―
「な、なにを…。」
「ちょっとくすぐったいよ!」
ガタックの背中に回りその背中を扉の様に開くと、蒼い長刀型の刃が左右非対称についた連結刃な武器『ガタックスティンガー』に超絶変形する。
「せ、先輩!!!」
「行くよ。」
ガタックの明らかに人体の構造を無視した変形に驚いている七海を他所にディケイドはガタックエクステンダーに飛び乗り、ガタックスティンガーを構える。
その瞬間、ディケイドはクロックアップする。
「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「っ!?」
クロックアップした世界を知覚出来る故にフィロキセラワームは驚愕する表情を浮かべながら、ガタックスティンガーの刃に動けない空中で何度も切り裂かれる。
『ちょっと待て!!!』
何度も振りまわされるガタックスティンガーから苦情の声が上がるが、それを無視して真上から振り下ろす。
そして、地面にフィロキセラワームを叩き落すと、ガタックの紋章の掛かれた黄色いカードを取り出し、
―FAINAL ATTACKRIDE! GA・GA・GA・GATACK!―
真上に放り投げたガタックスティンガーがクワガタをイメージさせる鋏型の武器へと変わると、それを両腕で受け止め、
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
鋏の様に刃の部分が左右に広がると同時に伸びた二枚の光の刃がフィロキセラワームを挟み込む。
「「ディケイドバニッシュ!!!」」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
巨大な光の鋏に切り裂かれ、フィロキセラワームは悲鳴を上げながら爆散した。
フィロキセラワームを倒した事を確認するとガタックスティンガーを真上に投げると、それは変形しガタックへと戻った。そして、二人はベルトを外し、変身を解除する。
「せ、先輩、大丈夫でしたか?」
変身を解除した亨夜に慌てて駆け寄る七海…。
「…何と言うか…痛かった上に目が回る。」
「あー…何と言うか…ごめんなさい。」
そう言いつつデジカメのシャッターが押された事に気が付いた。
(…カブトのカードには力が戻ってはいないけど…この世界でするべき事は一段落ついたって事かな?)
そう考えながら、勇宇は亨夜と七海の二人に向かってシャッターを切る。勇宇の撮った写真は『亨夜の姿を優しく見守る女性が写った写真』が撮れた事を追記しておこう。
「……完全には終わった訳じゃないけど…これで、この世界は一段落…。」
テーブルの上に置かれている灰色から赤に変わった数枚のカードに視線を向けつつ柴月はそう呟く。
「…まだこの世界には…ディターンの欠片が残ってる…。…でも…今はそれは回収できない…。…もう一度来る必要が有る…。」
そう呟き、柴月は『』の中にそのカードを収めた。
「…………………この話し、私の出番…少ない………グスン。」
つづく…
仮面ライダーディケイド
~終焉を破壊する者~
第十話
『戦いの神器・ガタックスティンガー/ガタックの世界』
「おい。確か、お前はクロックアップは使えなかったな?」
「え? あ、はい。」
ガタックがディケイドへと声を掛ける。クロックアップが使えないディケイドでは、カブトとザビーには不利と考えたガタックの判断は一つ。
「オレがカブトとザビーを「…いや、ここはぼくが食い止めるから、亨夜さん。貴方が彼女を安全な所ヘ。」って、おい!」
ディケイドはガタックの言葉を無視してライドブッカーから一枚のカードを抜き出し、ディケイドライバーへと差し込む。
―ATTACKRAID BLAST!―
そして、振り向くと同時に強化されたライドブッカー・ガンモードからの弾丸を後方を囲むゼクトルーパー達へと打ち込む。
「「「うわ!!!」」」
それによって、ゼクトルーパー達がディケイドの放った弾丸を避けた際に左右に分かれた事で逃げ道が開く。
「っ!? お前! お前じゃ、カブト達には…。」
「早く行け!」
ガタックの言葉を遮り、ディケイドはそう叫ぶ。
「……。分かった! 七海ちゃん、乗って!」
「は、はい!」
ディケイドへとそう答えガタックはガタックエクステンダーへと飛び乗り、七海の手を引いて彼女を後部座席へと乗せる。そして、一気にバイクを加速させゼクトルーパー達の間を通って走り去って行く。
「…やれやれ、逃げられたか。」
「………。」
カブトとザビーへと向き直り、ディケイドはライドブッカーから今度は『仮面ライダーキバ』の絵が書かれたカードを抜き出す。
「悪いけど、足止めさせてもらう。変身!」
-KAMENRAIDE! KIVA!―
ディケイドライバー、ライドブッカーを残し、ディケイドの姿がキバの物へと変わる。
「なに、変わっただと!?」
「へえ。」(…マスクドフォーム以上に別系統の姿に…。…あれがディケイドの能力か…。)
キバの姿に変身したD(ディケイド)キバを見て驚いて見せたザビーと、それを冷静に分析するカブト。
「はぁぁぁぁぁぁあ!」
格闘戦に優れたDキバに変身した事で、接近した方が有利と判断し、ザビーとカブトへと一気に近づいていく。Dキバの考えはクロックアップを使われる前にザビーを倒す事。カブトの言葉を信じるのなら、カブトは本気で戦っているのではなく、飽く迄演技なのだから、倒すべきはザビー一人と考え、行動する。
ザビーはそんなDキバの打撃をマスクドフォームの装甲で受け止めつつ、腕のブレスに装着されているザビーゼクターへと触れた時、
「龍牙。」
Dキバの腕をカブトが受け止めていた。
「…ここはオレが引き受けます。亨夜達を追って下さい。」
「そうか、任せたぞ、龍牙。ここはカブトに任せて、ゼクトルーパー部隊はオレに続け。」
ザビーの指示を受けてゼクトルパー達が亨夜達を追いかけていく。そして、完全にザビーとゼクトルーパー達の姿が見えなくなると、カブトはDキバの腕を離して、ベルトからカブトゼクターを外し、変身を解除する。
「やれやれ…やっと居なくなったか。」
「あんたは…ぼくが何の為に…。」
龍牙に抗議しつつディケイドライバーを外し、変身を解除すると、
「あの変身…あれが、クロック・アップ無しでワームに対抗する手段なんだろう? 亨夜には悪いが、今連中に手札を知られたくはなくてな。」
「っ!? クロック・ダウンとか言う奴に対抗する為に…?」
「そう言う事だ。まあ、早く追い掛けた方がいい、今ので少しは時間稼ぎ出来ただろうけど、すぐに追いつかれる。」
「そこまで分かっていてどうして…!?」
「…どうやら、兄さんの偽者は一人じゃない様だ。…クロック・ダウンのシステムについての情報を持っているのは“もう一人の偽者”…お前達が戦おうとしている“小物”の方じゃない。」
「もう一人?」
「…ああ…。残念ながら、そっちにはまだ接触できていない。あの小物をサッサと倒してもう一人を表に引っ張り出す必要が有る。」
勇宇はそこまで聞き、龍牙の言葉の意味を理解する。
「…ぼくのクロックアップへの対抗策は…。」
「…もう一人の偽者…クロックダウンの一件の裏に居る奴を倒す為に必要になる。オレはオレで、全部調べていない訳だから、迂闊には動けない…。今回の事は下手をしたら、ライダーにとっての致命傷になりかねないからな。」
そう告げると龍牙は勇宇に背中を向けて手を振りながら立ち去っていく。
「それじゃあ、今回の事はお前と亨夜の二人に任せた。オレの手で叩き潰せないのが、心底残念だがな。」
(…任せたって、あの人は…。)
そんな龍牙の背中を見送りつつ勇宇はそんな事を思う。
「っ!? 早く追いかけないと拙いな。」
そう言ってガタックエクステンダーが走って行った方向へと体を向けた瞬間、灰色の世界の壁が現われ、
「ッ!?」
敵かと思い警戒している勇宇を他所に彼の愛車であるマシンディケイダーがそこから現われた。
「…良く分からないけど、好都合…かな?」
マシンディケイダーに乗り込みガタック達を追いかけて走り出す。
廃工場…
「はぁ!」
「ふっ!」
ライダーフォームのガタックの振るう双剣を避けながら、ライダーフォームのザビーの拳がカウンターとして、ガタックへと打ち込まれていく。
「ぐっ!」
「こんな物か、荒谷亨夜?」
体制が崩れた所に放たれたザビーの拳を受け止めながら、亨夜はガタックの仮面の奥でザビーを睨みつける。
「…答えろ…どうしてお前は七海ちゃんを…。」
「上からの命令だ。それ以外に何が理由が有る?」
ザビーの蹴りを後にガタックは大きく跳んで避ける。
「所詮、オレ達は上からの命令に従って戦うだけだ。ワームであろうが無かろうがオレにはどっちでもいい事だ。」
そう告げるとザビーはベルトに触れ、
《Cloock up》
クロックアップの加速状態に入る。
「くっ、クロックアップ!」
《Cloock up》
ザビーに遅れながら、ガタックもクロックアップの中に入る。加速状態で交差する蒼と黄の二人の仮面ライダー。だが、
「ぐぁ!」
「覚悟は良いか?」
《Rider Sting》
クロックアップ前に受けたダメージの影響か、動きが鈍った所でザビーの攻撃が直撃し、ガタックの体制が崩れた瞬間を逃さず、ザビーは必殺技の体勢に入る。
「ライダースティング!」
ザビーゼクターから伸びる針がガタックへと向かう。クロックアップした状態ではガタックを助ける者は居ない…はずだった。
「ぐあ!」
ザビーの必殺技がガタックに直撃する寸前、加速状態のザビーに無数の弾丸が打ち込まれ、ザビーの体制が崩れた瞬間、
《《Cloock Over》》
クロックアップが終わった。
「…今のは?」
立ち上がりながら、ガタックが自分を助けた者の居るであろう方向へと振り向くとそこには、前回彼と戦った時とは違う碧色の姿を持って、変わった形の銃とライドブッカーのガンモードを構えたDキバ・バッシャーフォームの姿が有った。
「今だ!」
「ああ!」
DキバBFの叫びを聞いて、ガタックがザビーへと廻し蹴りを放つ。とっさに腕でガードする事には成功するが、ガタックの廻し蹴りによってザビーゼクターとライダーブレスが外れ、ザビーの変身が解除された。
「くっ!」
「さあ、これでアンタの負けだ。さっさと退いてもらおうか? 七海ちゃんの無実はオレが証明する。」
ガタックダブルカリバーを総司へと着き付けながらガタックは自分の勝利を宣言する。最初からザビーを倒すのではなく変身解除をする事を狙っていたのだ。
「こっちは二人、これでぼく達の方が有利だ。そっちにはもう武器も無い、ぼく達の勝ちだ。退いた方が身の為だ。」
同様にDキバBFもバッシャーマグナムを構えながらそう告げる。
だが、そんな二人の言葉を聞きながら…総司は二人を嘲笑する様に表情を歪める。
「それで勝ったつもりか?」
「武器も無しにどう戦う…っ!?」
総司がそう言った瞬間、彼の体が輝きその姿をブドウネアブラムシの特徴を持ったワーム、『フィロキセラワーム』へとその姿を変え、ガタックとDキバBFが同様を浮かべた瞬間、突き付けられている武器を弾く。
「…ワームが、ZECTの隊長になっていただと!?」
「…龍牙さんの言う通りだったな。」
「っ!? あいつは知ってたのか?」
次の瞬間、フィロキセラワームは加速状態(クロックアップ)に入り、ガタックの体が空中へと舞う。
「ぐあ!」
「亨夜さん! うわ!」
相手の動きに合わせてバッシャーマグナムを向けるが、DキバBFが引き金を引こうとした瞬間、DキバBFの体が空中へと舞う。
空中に舞う二人の仮面ライダーを地面に倒れさせる暇さえも与えずに、フィロキセラワームは尚も攻撃を続け、クロックアップが終わった瞬間、二人は地面を転がりながら変身が解除される。
「先輩!」
隠れていた七海が倒れる亨夜に駆け寄る。そんな七海を護る様に背中に庇い、亨夜はフィロキセラワームを睨みつける。
「お前…ワームだったのか?」
「そうだ。だが、それがどうした? オレがワームで有っても、お前達ZECTの「クロックダウン。」…っ!? 何故それを知っている?」
フィロキセラワームの言葉を遮り勇宇の言葉が告げられると、フィロキセラワームの表情に明らかな同様が浮かぶ。
「なんだよ、それは?」
「誰から聞いたのかは秘密。クロックダウンはクロックアップを封じるZECTが作り上げたシステム。だけど、それはライダーのそれを封印するだけの意味のないシステムだけど…ZECTの上層部と手を組んだワームの手にそれが渡った。」
「…嘘だろう…人がワームと手を組むなんて…。」
「それって…あのとき…。」
「…七海ちゃん、知ってるのか?」
「知っているの何も、彼女は偶然にもデータの受け渡し目撃してしまったそうだ。」
亨夜の問いに答えるのはフィロキセラワームの言葉だった。
「可愛そうだが、僅かな憂いも排除すると言うのが決定だ。オレを倒したとしても、ZECTもワームも彼女を殺そうとする。……それでも、守りきれると思っているのか? 最後の忠告だ。「断る!」…その答え、後悔するぞ。」
「後悔するのはどっちだろうな?」
フィロキセラワームの言葉に立ち上がりながら勇宇はそう告げる。
「誰かを守る為に戦う事を後悔する人なんて居ない。そして、彼は絶対に守りぬくはずだ。それが彼の決意だから!」
「…偉そうに、貴様…何者だ?」
フィロキセラワームの言葉に勇宇はライドブッカーの中からディケイドのカメンライドカードを取り出し、
「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」
七海に隠れて居るように言った亨夜と視線を合わせ違いに頷き合い、
「「変身!!!」」
-KAMENRAIDE! DECADE!-
《HEN-SHINN》
互いにカードとガタックゼクターをディケイドライバーとライダーベルトへと差し込み、その姿を仮面ライダーディケイドと仮面ライダーガタック・マスクドフォームへと変える。
次の瞬間、ライドブッカーが開き、赤いカードが一枚、黄色いカードが二枚飛び出してくる。
赤いカードは最初に力が失われている仮面ライダー達のカードの中の一枚『仮面ライダーガタック』のカード。
黄色いカードの一枚はガタックとクワガタに似た武器が描かれたカード。そして、最後の一枚は…ガタックの紋章が書かれた『ファイナルアタックライド』のカード。
「行くぞ!」
「ああ!」
「愚かな。」
自分に向かってくる二人のライダーを嘲笑う様にフィロキセラワームがそう告げると、数人のゼクトルーパー達が姿を見せ、サナギワームへと姿を変える。
「はぁぁぁぁ!!!」
ソードモードのライドブッカーを振るいサナギワーム達の中へと飛び込んだディケイドは次々にサナギワーム達を切り裂いていく。
「はぁ!」
マスクドフォームのパワーを活かしたパンチやキックでガタックは次々とサナギワームを殴り飛ばし、距離を取った所で、
「食らえ!!!」
ガタックバルカンの連射で一掃する。
「くっ。」
サナギワーム達がディケイドとガタックによって一掃されているのを見て、表情を歪めながら、フィロキセラワームはディケイドへと視線を向ける。そして、力を貯めるような体勢を取りクロックアップする。
「悪いけど、それの対策は感覚強化だけじゃない!!!」
―ATTACKRIDE ILLUSION!―
実体を持ったディケイドの分身が、フィロキセラワームを切り裂き、動きが止まった所に別の分身が追撃、最後に本体のディケイドがガンモードのライドブッカーで撃つ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁあ!!! な、なぜオレの動きが…。」
「だって、態々正面からしか来れない位置まで誘導させて貰っただけだよ。」
ディケイドの言葉通り、ディケイドの立っている場所は左右は障害物で回り込めない様になった場所だった。
《Cloock Over》
クロックオーバーの電子音が響くと同時に彼が担当していたワームを全滅させたのだろう、ライダーフォームのガタックが現われる。
「さあ、残ったのはお前だけだ。」
「覚悟は良いね。」
ガタックがガタックダブルカリバーを、ディケイドがライドブッカーのソードモードを構えた瞬間、二人は左右に吹き飛ばされる。
「くっ…。」
「なにが…。」
「あ、あなたは…。」
壁に叩き付けられたガタックとディケイドがフィロキセラワームの元へと視線を向けた瞬間、カブトムシを想像させる外見を持ったワーム『ビートルワーム』が振り返る様に二人に視線を向けていた。
そして、フィロキセラワームに『今の内に逃げろ』とでも言う様な仕草で天井を指差す。
「は、はい!」
フィロキセラワームの背中に羽が現われそのまま天井を突き破って逃げ出して行く。それを見届けるとビートルワームもクロックアップし、その場から離れて行った。
「逃げられたか!?」
「まだもう一体の方は逃げられてない。…って、あの子は?」
「ああ、サナギを倒した後に外のガタックエクステンダーの所に…。拙い!」
そんな会話を交わした後二人は慌てて外へと飛び出す。
「七海ちゃん、無事か!?」
「あ、はい。大丈夫ですけど。」
ガタックエクステンダーの元で待っていた七海がガタックの言葉にそう返事をした。
「良かった。」
「それに、まだあいつにも逃げられてない。」
ディケイドの指差した先には背中から出した羽で空を飛んで逃げ様としているフィロキセラワームの姿が有った。
「逃がすか!」
ガタックエクステンダーに乗り、中央部からガタックエクステンダーが変形し、飛行形態になる。
「そうだね、逃がす気は無いよ。」
ディケイドは一枚のカードを取りだし、ディケイドライバーへと装填する。
―FAINAL FORMRIDE! GA・GA・GA・GATACK!―
「な、なにを…。」
「ちょっとくすぐったいよ!」
ガタックの背中に回りその背中を扉の様に開くと、蒼い長刀型の刃が左右非対称についた連結刃な武器『ガタックスティンガー』に超絶変形する。
「せ、先輩!!!」
「行くよ。」
ガタックの明らかに人体の構造を無視した変形に驚いている七海を他所にディケイドはガタックエクステンダーに飛び乗り、ガタックスティンガーを構える。
その瞬間、ディケイドはクロックアップする。
「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「っ!?」
クロックアップした世界を知覚出来る故にフィロキセラワームは驚愕する表情を浮かべながら、ガタックスティンガーの刃に動けない空中で何度も切り裂かれる。
『ちょっと待て!!!』
何度も振りまわされるガタックスティンガーから苦情の声が上がるが、それを無視して真上から振り下ろす。
そして、地面にフィロキセラワームを叩き落すと、ガタックの紋章の掛かれた黄色いカードを取り出し、
―FAINAL ATTACKRIDE! GA・GA・GA・GATACK!―
真上に放り投げたガタックスティンガーがクワガタをイメージさせる鋏型の武器へと変わると、それを両腕で受け止め、
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
鋏の様に刃の部分が左右に広がると同時に伸びた二枚の光の刃がフィロキセラワームを挟み込む。
「「ディケイドバニッシュ!!!」」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
巨大な光の鋏に切り裂かれ、フィロキセラワームは悲鳴を上げながら爆散した。
フィロキセラワームを倒した事を確認するとガタックスティンガーを真上に投げると、それは変形しガタックへと戻った。そして、二人はベルトを外し、変身を解除する。
「せ、先輩、大丈夫でしたか?」
変身を解除した亨夜に慌てて駆け寄る七海…。
「…何と言うか…痛かった上に目が回る。」
「あー…何と言うか…ごめんなさい。」
そう言いつつデジカメのシャッターが押された事に気が付いた。
(…カブトのカードには力が戻ってはいないけど…この世界でするべき事は一段落ついたって事かな?)
そう考えながら、勇宇は亨夜と七海の二人に向かってシャッターを切る。勇宇の撮った写真は『亨夜の姿を優しく見守る女性が写った写真』が撮れた事を追記しておこう。
「……完全には終わった訳じゃないけど…これで、この世界は一段落…。」
テーブルの上に置かれている灰色から赤に変わった数枚のカードに視線を向けつつ柴月はそう呟く。
「…まだこの世界には…ディターンの欠片が残ってる…。…でも…今はそれは回収できない…。…もう一度来る必要が有る…。」
そう呟き、柴月は『』の中にそのカードを収めた。
「…………………この話し、私の出番…少ない………グスン。」
つづく…