第二章『聖剣! 二つのエクスカリバー』

さて、リアス・グレモリーの婚約騒動終結と、アナザーリュウガについて(怪盗としてではなく、前世の知識の関係ない所を)知った事をソーナに伝えてから数日。
球技大会が近づく中、特に部活に参加してない四季達三人は時にはぐれ悪魔退治をしながら過ごしていた。

そんな中で、数体のはぐれ悪魔の退治も終わり、そろそろガチャ券以外の手段でガチャが引ける時が近づいていた。

そんな中で彼等は厄介な事に巻き込まれてしまう事となった。
そもそもの原因はアナザーリュウガの事件とリアスの婚約の一件。
リアス自身、イッセーの頑張りで婚約はなかった事になったが、それでも非公式ながら初のレーディングゲームでの敗北は悔しさと同時に焦りを生んでいた。幾ら相手は何度もゲームの経験があるベテランで、リアス達が初参加の上に人数も揃っていない初心者達とは言え、だ。

そんな中でソーナから伝えられたアナザーリュウガの一件である。自分の眷属を怪物に変えられた謎の怪人に対する注意を促されたのだが、そんな中でリアスは目を付けてしまった。
……四季達に、目を付けちゃったのである。










「そう、そんな事が有ったのね」

「ええ、天地君達のお陰で犠牲者は出ずに、被害も最小限で済みましたが」

婚約騒動が落ち着いた頃、生徒会室に呼んだソーナが、リアスへとアナザーリュウガの一件の事を連絡していた。
四季からの情報を姉のセラフォルー・レヴィアタンへと伝えた結果、彼女から他の魔王達へ、ソーナからは警戒を促す為にリアスへと伝えるようにと言われた為に情報を共有の場が持たれた。

アナザーリュウガに変えられた匙からの目撃情報で、ナイトローグの姿は悪魔勢力の間で凶悪な指名手配犯として扱われる事にになったが、問題はそれが『変身』した姿と言う事も有って、警戒していても、ナイトローグの姿で活動していない限りは発見することも難しいだろう。

(それにしても、そんな力を持ってる子達が、三人も何処の勢力にも所属しないでこんな身近にいるなんて)

アーシアの神器とは違う癒しの力に、中距離型の弓使いに、近距離型の拳士。彼らを眷属に加えれば戦術にも幅が広がるだろう。手持ちの駒の残りがルークとナイトの二人分しかないのが残念な位だ。

弓使いは騎士の駒で機動力を強化してもよく、拳士は戦車の駒で突破力を高めても良いし、機動力を騎士の駒で高まるのも木場とは違ったタイプの騎士として有りだ。
アーシアとは違う癒しの力は戦車の駒で耐久力を高めた上で回復役に回ってもらって良いし、騎士の駒による機動力の強化で素早く回復に回って貰っても良い。
アーシア達二人を己の眷属に選んだ事は後悔などしていないが、ビショップの駒が既に二人分埋まってしまっているのが残念な位な程に、聞けば聞くほど優れた人材達だ。
そんな事を考える。

(もっと早く彼らの事を知っていれば、ライザーとのゲームも結果は違っていたかもしれないのに)

そう思うと、もっと早く知っていれば初出場のレーディングゲームにもっと善戦できたのでは、とも思う。
初のレーディングゲームでの敗北の悔しさからの感情だが、手札が増えればそれだけ出来ることは多くなるのだ。

「このナイトローグと名乗った相手には、貴女も気をつけて下さい」

「ええ、私の眷属達にも気をつけるように伝えておくわ」

そう言って渡されたのは匙の証言と四季経由で怪盗から渡された(という事に四季はしている)映像から書かれたナイトローグの手配書だが、肝心のナイトローグの写真がダークヒーローっぽい外見な為に特撮ヒーロー物の小道具にしか見えなかった。

直接的な被害を被っていないリアスにはナイトローグは、そんな外見から変なコスプレテロリストとしか捉えておらず、危機感を感じられていなかった。
寧ろ興味はソーナ達に加勢した四季達の方へと向かっていた。

























「それで、私達が合宿で此処を離れている間にそんな事が有ったらしいから、貴女達も気を付けてね」

オカ研の部室、先程ソーナからの渡されたナイトローグと匙が変えられたアナザーリュウガの写真を見せながらリアスも己の眷属達に注意を促す。

「うげ、このコスプレ野郎が、悪魔をこんな怪物に変えたんですか?」

ナイトローグとアナザーリュウガの写真を見ながらイッセーはそんな声を上げる。

「ええ。それと、堕天使や天使とは関係は薄いと言うのが、お兄様達の見解らしいわ」

ナイトローグの姿はコウモリを模した姿。天使や堕天使が、そんな悪魔を連想させる蝙蝠をモチーフとした姿に化けるとは思えないと言うのが見解の様子だ。
悪魔を揶揄してコウモリと言うかも知れないが、態々自分達がそんな姿をするとは思えない。
匙を|怪物《アナザーライダー》に変える時に使ったアナザーライドウォッチを人工神器の一種と推測されたため、堕天使が手下のはぐれエクソシストに仮装させて襲わせた可能性も捨てきれないそうだが、それもあり得ないと考えている。

「ええ、この学園のもう一人の上級悪魔の眷属を、この怪物に変えて主人を襲わせたそうなの」

一枚のプリントに纏められているナイトローグとアナザーリュウガの能力の資料、それを一人一人目を通していく。

「攻撃をしてもそのまま反射される、この能力は厄介ですね」

元々スピードを活かして手数で戦うスタイルの木場にとって、自分の防御力を下回る攻撃を反射できるアナザーリュウガの能力は厄介以外の何者でもない。

「それでも、もう退治されたから心配は要らないわ。それよりも大事なのは、その怪物に変えられてた眷属を助けてくれた、彼等よ」

そう言ってリアスは新たな資料を見せる。そこにあるのは四季達三人の顔写真だ。

「天地の奴に……おお! 一年の詩乃ちゃんと雫ちゃん!?」

四季の写真に微妙な表情を浮かべた後に詩乃と雫の二人の写真を見た瞬間、目を輝かせるイッセー。

「どこの勢力にも所属していない能力者が三人。キッカケも出来た事だし、同じ学園に所属する上級悪魔として私も一度話してみようと思ったのよ」

リアスも三人のうちの二人を空いた自分の眷属に誘いたいとも思ったが、流石にすぐには了承は得られないだろう。
先ずは一度会って三人の人となりを知るべきだと判断したわけだ。
他の眷属達を上手くやっていけるのか、それも助けなければならない。

「ちょうど駒は二つ空いているから、眷属に誘ってみようとは思っているけど、先ずは会って見ないことにはね」

声を掛けはするが、今はまだ飽く迄誘うだけ。命の危機と言う緊急時でもないのだから、先任の眷属達との相性もある。

新たに眷属に加えた者達の相性が悪く、変に眷属の間で派閥が出来て二つに分かれるなんて事になったら問題なのだ。実戦の最中に派閥が違う者同士で協力出来ないなんて事になったら困るのだから。

「詩乃ちゃんと雫ちゃんを眷属に!? オレは賛成です、部長!」(うおー! 良ぉしぃ! 部長から二人を眷属に加えたいって言ってくれるなんて、これってもう神様が……いや、オレは悪魔だから魔王様か? まあ良いや。どっちにしても、オレのハーレムに手を貸してくれてるとしか思えないぜ!)

既に四季のことは頭の中に無く、イッセーはリアスの言葉に賛同しつつ心の中でそう絶叫していた。

「所でこちらの黒い騎士みたいな方は?」

4枚目の写真、仮面ライダーオニキスの姿が目に入った朱乃が疑問の声を上げる。

「黒いドラゴン。なんだがこっちの怪物に似てる気がします」

アナザーリュウガと見比べながら小猫はそんな意見をこぼす。
鋭いとしか言いようが無いだろう。共に仮面ライダーリュウガを原点としてそれを歪めたアナザーリュウガと、全く同じ力を持ちながらダークライダーではなく仮面ライダーと、別のあり方となった仮面ライダーオニキス。
共に仮面ライダーリュウガから生まれた存在なのだ。

「ええ、天地君がこの姿に変身してこっちの怪物と戦って倒したそうよ」

「なら、凄いのはあいつじゃ無くて、変身した奴じゃ無いですか、オレが使ってたらもっと早く解決出来てましたよ」

『凄いのはオニキスの力だけ』と四季が眷属に加わらないように反対するイッセー。空いている席は二人分、可愛い女の子の代わりに男が眷属の仲間に入るのは大反対なのだ。

「そうね、この道具を使ってあの怪物に対抗できる位強くなったのなら、赤龍帝の貴方が使えばもっと強くなれるはずよ」

「はい!」

どんな武器でもただ使っただけで強くなれる訳はないとは思うが、そんなに反対するのならとイッセーの言葉に同意しつつ四季を眷属に誘うと言うのは諦めるリアス。
空いているのも二人なので、此処はイッセーの提案を聞いて詩乃と雫の2人を勧誘する事を決める。

「それに、こっちの二人ならアーシアとも良い友達になれる筈ですから!」

「イッセーさん……ありがとうございます」

アーシアの友達になれる。それは一応は本心からの言葉である。5割以上ハーレムに加えたい美少女二人が仲間になって貰いたいだけだとは思うが……。

「それじゃあ、次の放課後にでも二人には来てもらいましょう。ゆ「オレが呼んできます!」……ええ、それじゃあイッセー、お願いするわ」

テンション高めに二人を呼びに行く事に立候補するイッセーに任せる事にした。

二人を呼びに行くのを任されて、『ヒャッホー!』と言った様子で張り切っているイッセーの姿に、元々上級悪魔になって眷属を持てるようになったらハーレムを作りたいと言っていただけに、だからなんだろうなと苦笑するリアスの眷属一同(アーシアと小猫除く)。

「……変態先輩」

そんなイッセーはと向けられた、小猫の呆れたようなそんな呟きがオカ研の部室に響くのだった。





















「「っ!?」」

さて、丁度その頃、地下に武器庫と戦艦の格納庫のある外見だけは一般的な邸宅の天地家のリビングにて詩乃と雫の二人が言い知れぬ悪寒を感じていた。

「ふ、二人とも、どうしたんだ?」

「う、うん、今、何だが」

「物凄い悪寒がした」

震えながら左右から四季に抱きついている二人。

「そ、そうか。それより、今週の末でも前に貰ったチケットを使うか?」

取り敢えず、そんな二人の様子に話題を変えた四季だった。

「チケット?」

「前に詩乃が当てたレストランの無料チケット。せっかくなんで使おうかなって思ってな。……次の事件が起こる前に」

今後の事を考えると、街が一つ壊滅するかもしれない状況で呑気に食事は楽しめないと思って、次の事件が起こる前に行く事に決めた。

「良いわね」

「うん、今から着て行く服とか決めないと」

四季の言葉に賛同する二人。まあ、悩みも有るのだが。

(このレストランのある地名って……米花町なんだよな)

調べてみたが、間違い無くこの世界は名探偵コナンの世界まで両立されているのだ。

(うん、取り敢えず、祈っとこうかな? 神様じゃ無くて、|魔王《オーマジオウ》様とソウル様にでも、何事も起こらないように)

仮面ライダー世界の魔王とスーパー戦隊世界の神様に事件が起こらないように祈る四季だったのだが、


《無理だ》


祈った瞬間、二つほど声が重なって響いた気がしたのだった。

******

その日の放課後、イッセーは授業が終わると同時に教室から飛び出して行った。目指すは一年の詩乃と雫のいる教室。

その素早い行動は教室にいる人間全員を唖然とさせるほどだった。

イッセーの向かうその教室では一年の生徒達が帰宅の準備をして居た。

「おーい」

教室の扉を開けてイッセーが二人に声をかけようとするが、一瞬だけ教室から音が消えた。
まるで津波が起こる前に海が穏やかになる瞬間どころか、海岸線が大幅に下がるように。

そんな状況にイッセーが戸惑っていると……

「いっ……」

誰かの声が零れたのを合図にする様に、


『いやぁー!!!』


教室全体から悲鳴が上がる。以前木場がイッセーを呼びに来た時のとは違う恐怖の感情で、だ。
夜道で変質者に出会った様な叫びが教室中から上がる。

次の瞬間、

「変態三人組の兵藤一誠よ!」

誰かの叫びとともに椅子が投げつけられる。
ってか、相手は後輩なのに先輩の敬称すら付けられて居ない。

「おわぁ!」

そこは流石悪魔と言ったところか? ライザーとのレーディングゲームへ向けての特訓の成果か? 顔面に直撃しそうだった椅子を辛うじて回避する。

「な、なんな……痛え!」

突然の事に戸惑っていると頭を殴打される。其方の方を向くと箒を竹刀のように構えている女生徒が居た。
構えが様になっている姿は恐らく剣道部なのだろうが、恐怖に震えて涙目になっているが、必死に立ち向かおうとして居た。
…………イッセーに。

「え……えっと……」

さて、積み重ねた名声も一瞬で崩れることが有るが、積み重ねた汚名は寧ろ時間があっても中々消えない。
入学後から覗きなどの常習犯であったイッセー達三人。当然一年の中にも被害者はいる訳で。

教室の女生徒の何人かが武器になりそうなものをイッセーへと構えている。



はっきり言おう。オカ研に入部……と言うよりも悪魔に転生してから周りに美少女が多かったから教室での変態発言や行動は大分治まっていたが、過去の悪行は消える事は無い。
寧ろ、まだ卒業すればイッセーと関わらないで良い三年生よりも、今後イッセーが卒業するまで関わらなきゃならない一年生の生徒には一番嫌われている。

具体的には礼儀とは言え目上として扱わなきゃならないストレスやら、下手したら卒業するまで被害に合いそうな事とか(憐れにもイッセー達三人は一年の生徒の間では留年すると予想されている。本人の意図か、散々続けた変態行為の代償かと説は別れているが)。

余談だが、作者の原作でのイッセーの他の学年からの序盤での評価はこんな物だと推測している。(主に球技大会での殺意の向き方とか)



「ちょ、ちょっと待って……オレは……」

もう、恐ろしい悪魔に勇気を振り絞って立ち向かう勇者とその仲間達みたいな構図に本気でビビっているイッセーは説得を試みるが、イッセーは転生悪魔なので悪魔に立ち向かう構図というのは間違って居ない。

「出てけー!」

誰かの叫びとともに後ろに居た投擲組が一斉に持って居た物を投げつける。

「ぎゃー!」

投擲組からの一斉射撃に思わず頭を守って動きが止まった瞬間、前衛組が一斉に殴りかかる。
入学後から被害を受けた生徒達、序でにその中には変態三人が怖くて不登校になった生徒もいる。
被害者というつながりの元に正に以心伝心というチームワークでイッセーを袋叩きにしている。

「ちょ、ちょっと待ってくれ、オレは……ヒデブ!」

説得を試みて一人の手首を掴んで動きを止めて話を聞いて貰おうと、取り敢えず手を止めて貰おうと思った瞬間、イッセーの顔面にボールが直撃する。

足元に転がってきたボールを詩乃が投げつけたのだ。
正確な射撃では無くこの場合は、正確な投擲技術によって顔面のど真ん中へとヒットしていた。

「みんな、今の内に逃げるわよ」

「後ろから逃げて、生徒会か先生を呼んで来て」

イッセーが顔面へのボールの直撃に悶絶していると詩乃と雫がイッセーからの避難を促す。完全に襲撃して来た変質者への対応で有る。
……ってか、学園の生徒なのに教師を呼ばれるとは。

「待ってくれ、オレは……うわっ!」

「キャァー!」

真っ先に殴りかかって来た剣道部の子を呼び止めて話を聞いて貰おうと思うが、肩を掴んだ瞬間足元に投げ捨てられた武器に足を取られて彼女を巻き込んで倒れこむ。
……完全に押し倒した形だ。

「ひぃ……」

(おおぉ、事故とは言え夢みたいなシュチエーションに。うん、これは事故だ。事故なんだから仕方ないよな)

怯える押し倒された少女と自己弁護をしている押し倒したイッセーの図。

「逃げて! 今の内にみんな逃げてぇ!」

悲鳴に近い形でその少女が他の生徒に今の内に逃げる様に促す。

「おーい、一体なんの騒ぎだ!?」

「詩乃、雫迎えに……」

そんなタイミングが悪すぎる時に詩乃達を迎えに来た四季と、騒ぎを聞きつけた匙の二人が教室に入ってきた。

「「「……」」」

その瞬間、三人の男の間に沈黙が流れた。嫌な沈黙だった。『あの変態、白昼堂々女の子押し倒して何やってんだ?』そんな考えが四季と匙に浮かんでくる。そして、

「せい、やぁー!」

「ゲフゥ!」

四季の飛び蹴りがイッセーを蹴り飛ばし、少女から遠ざける。

「あ、天地、何しやがる!?」

「匙、今の内にその子を」

「おお、良くやった! こっちは任せろ!」

「ああ!」

突然蹴り飛ばされて四季に対して抗議の声を上げるが、そんなイッセーを他所に四季は押し倒されていた少女を逃す様に匙に指示を出して、匙もそれに応えて少女を立ち上がらせてイッセーから逃す。
四季と匙の対応に本格的にどういう状況か自覚したのか、顔色が悪くなるイッセー。

「オイコラ、兵藤! 白昼堂々と女生徒を襲うなんて何考えてやがる」

「ま、待ってくれ、それは事故なんだ!? オレはリアス部長の使いで詩乃ちゃんと雫ちゃんを呼びに……」

「取り敢えず、寝てろ!」

匙の言葉に慌てて弁明するイッセーだったが、場の鎮圧を優先した四季がイッセーの弁明を聞かずにイッセーの前に飛び出していく。

「ゲフゥ!」

彼の懐へと飛び込み腹部への掌打から始まり龍星脚へと流れる一連の連続攻撃が決まり、壁へと叩き付けられイッセーは気絶する。

「よーし、話は生徒会室で聞かせて貰うぞ。天地、今日は助かった」

「当然の事だ、気にするな」

女生徒達から歓声が上がる中、事情聴取の為に気絶したイッセーを引きずって生徒会室に連行する匙と、問題解決とばかりに詩乃達と帰宅する四季。

『駒王の|皇帝《エンペラー》』そんな渾名が四季に着いた瞬間で有る。















さて、イッセーが女生徒達に殴られたのは日頃の行いが原因なのは良いとして、リアスの使いだった事は早々に証明された。ソーナがリアスに確認をとったからだ。
流石にイッセーが今までの行いが原因で嫌われている事を忘れていたリアスにも非が有ったりする。そもそも、一年の生徒になんて悪いところしか知られていない。
その事についてはソーナは後で徹底的に注意すると心に誓ったのは余談として、イッセーが女生徒を襲っていたという状況だが……。

殆どが女子の生徒会メンバーからゴミを見る視線が向けられる中、必死にあれは事故だと弁明するイッセー。
最早彼が有罪となるのは時間の問題と思われる中、イッセーが女生徒を押し倒していたのは事故であることを証明してくれたのは小猫であった。

流石に一年生の小猫は一年の間でのイッセーの評判を知っていた為に、一抹の不安を覚え自身の使い魔に詩乃と雫の教室の様子を見て貰っていた。

……結果、教室に入った瞬間声をかけることもできずに袋叩きに合い、最終的にその中の一人を押し倒してしまった事を小猫経由でリアスに伝えられ、その事をソーナへと伝えられてイッセーは誤解だと証明できた。

当然ながら助けに入った四季にはお咎めなし。殴りかかったり一斉攻撃に参加した生徒達も普段の彼の行いからお咎めなし。普段の行いが悪い為に事故で押し倒してしまったイッセーも“今回は”お咎めなしとなった。

流石に何もしていないのに殴りかかった側がお咎め無しなのは彼の主人であるリアスは憤ったが、転生前に積み重ね続けた悪行が原因と言われれば納得するしか無かった。




……教訓、普段の行いには気をつけよう……。





『……オレ、変なのに宿っちゃったか?』

相棒であるドライグもイッセーの惨状に呆れたように呟くのだった。まあ、相棒である以上一蓮托生、覚醒後のイッセーの名声はドライグの名声にもなるだろうが、悪名もドライグに付属する。
後に呼ばれる事になる『乳龍帝おっぱいドラゴン』、それは邪竜にさえも恥と思われないか心配である。






「そう言えば、イッセーの奴、詩乃と雫の事を呼んでたような……」

「四季、嫌な事言わないで」

「あの人には近づかれたくない」

取り敢えず、ルパンレンジャー時の怪盗衣装の時は正体知られないだけマシだが素顔の時は嫌なようだ。

最近|洋服崩壊《ドレスブレイク》なんて技まで会得したせいで余計に近づかれたく無くなったそうだ。

「考えられる事は……アナザーリュウガの時の事か?」

「四季だけじゃ無くて私達も力を見せちゃったし」

「あれが原因だったら……」

一瞬見捨てた方が良かったかと思ってしまう詩乃と雫の二人だった。

「ま、まあ、助けたのは緊急時だったから」

「それは分かってるけど……その上でも近づかれたくないのよ」

詩乃の言葉に同意する雫。仕方ないと思いつつも、イッセーの行動には注意を払っておこうと思う四季だった。

(……万丈さん、貴方のボトルの成分、あんなのに使わせてすみませんでした)

序でに心の中で謝る四季であった。
1/12ページ
スキ