一章『怪盗と、アナザーライダーと、ナイトローグ』
四季SIDE
さて、アナザーリュウガの一件が終わっても日々は続く。と言うよりも今回の一件はまだ終わっても居ない。
先ず、ソーナ以外の生徒会のメンバーである彼女の眷属達は、アナザーリュウガに変えられていた匙も含めて全員が大きな怪我を負ったものの、雫の癒しの術の力で早めに完治した為、一日で全員が無事に復帰出来た。
そんな訳で、早めにナイトローグについての質問でもされるかと思ったが、魔王……外交担当の会長の姉のセラフォルー・レヴィアタンではなく、内政担当のサーゼクス・ルシファーの方が、妹のリアスの結婚を賭けたレーディングゲームとその後の婚約披露パーティと忙しいらしい。
完全に身内関連だが、私情ではなく一応は内政に関わる事なのでそう疎かにも出来ないのだろう。
そもそも、庶民と違い貴族同士の結婚には家同士の繋がりもある。他家からの乗っ取りを嫌うならば庶民から結婚相手を迎えると言うのもあるだろうが、悪魔側の現状を考えると純潔な悪魔同士の結婚と言うのにも意味はあるのだろう。
……そんなに出生に困っているのなら、人間を転生させる手段よりも、人工授精などの手段でも講じろと思うのは、四季が科学者的な思考をしているからだろうか。
で、そのリアス・グレモリーのレーディングゲームの開催が明日の夜に迫っているらしいのだが、その辺は興味ないので完全に放置していた。
アナザーリュウガを倒した現在は、劣化版自壊機能付きスクラッシュドライバーの制作とドラゴンスクラッシュゼリーの生成に勤しんでいる訳である。
一度は制作するのは劣化版と銘打ったが、通常のドラゴンスクラッシュゼリーにスクラッシュドライバーの破壊時のエネルギーが加われば、クローズマグマ用のフルボトルのベースが手に入るかもしれないから、こうして通常版を生成していた。
SIDE OUT
アナザーリュウガの一件が終わった後、蜘蛛型の監視メカをオカ研の部室のある旧校舎に放って確認していたが、レーディングゲーム開催の時が来た様子だった。
内容には興味も湧かないと割り切って結果だけ確認したところ、健闘虚しくイッセー達は見事に負けたらしい。
この世界についての原作知識と言う名の一種の未来予知が正しければ、リアス・グレモリーの投了によって勝負がついたはずだが、結果として負けたのならば試合内容の細部が変わっていても問題はないだろう。
現在、ライザーから嬲り殺しにされたイッセーは自宅でゲームのダメージのための療養中でアーシアはその治療。
二人と封印中の一人以外の他の眷属達は式の為に冥界に帰ったリアスに付き添って冥界に向かったらしい。
「実行するなら今だけど、治療とかはどうする?」
「あれを治療するのは嫌」
動かなければ困るが、即座にイッセーの治療は雫から拒絶された。
「そ、そうか。まあ、予定は決まっているけど、オレはイッセーの様子見も兼ねて、その下準備に行ってくる」
目撃された時の事を考えて、怪盗用のシルクハットとアイマスクを身に付け手にはガチャで手に入れた、エボルト垂涎の五つのハザードレベル上昇アイテム。
……本当にエボルトが居たら時期によってはくれと言われたかもしれない。
「それじゃ、ちょっと行ってくる」
二人に見送られて怪盗姿で家を出る四季。目指すは兵藤家のイッセーの部屋だ。
窓から外に出て、屋根の上を走りながら人目を避けて目的の場所に着くと、イッセーの部屋が有るであろう位置へと視線を向ける。
アーシアの姿がなく意識の無いイッセー一人である事を確認すると物音を立てずに鍵のかかった窓を開け、部屋の中に忍び込むと簡単にイッセーの容体を確認する。
(こいつの乱入がいつかは知らないが、間に合いそうだな)
間に合ってくれなかったら、せっかく設計して急いで開発した劣化版スクラッシュドライバーが無駄になる。そんな事を考えながら、四季はハザードレベル上昇アイテムをイッセーに使う。
これで、ハザードレベルを持っていなかったイッセーがハザードレベルを会得して一気にレベル5まで上昇してくれた事だろう。
ガチャ産アイテムの機能は自分達以外にも働く事は知っているが、自分達以外に使うのはこれが初めてなのでどうなるかは分からないが。
(これで良し)
準備は終わり、あとはイッセーが目を覚ました頃合いに接触してスクラッシュドライバーを渡すだけだ。
(そうだ、試してみるか)
ふと、思い付いた事があるのでイッセーの胸にレッドダイヤルファイターを乗せる。
『1・2・1』
イッセーに乗せたレッドダイヤルファイターを中心に金庫のようなものが出現すると、その中には赤い籠手の様なものと、赤いチェスの兵士の駒が八つと、先ほど使ったハザードレベル上昇の特典が一つに統合されていた。
他の二つはイッセーの宿した|神器《セイクリッド・ギア》の|赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》、彼を転生させるために使った|悪魔の駒《イーヴィルピース》なのだろう。
(|神器《セイクリッド・ギア》まで抜き取れるのか。下手したら特殊能力とかも奪えるんじゃ無いのか?)
ダイヤルファイターが意外と便利である事に驚きながらも、ハザードレベルの回収の方法の目処がたった事には安堵する。
神器と悪魔の駒は流石にどちらも抜いてしまったら、イッセーの命に関わりそうなので、それには触れずに金庫を閉めてダイヤルファイターを外す。
流石にハザードレベル5のまま放置するのは危険であったし、ハザードレベルを下げれば万が一ビルドドライバーが奪われても使われる事はないだろう。
(これで破壊したスクラッシュドライバーを再生されても、使える奴は居なくなる)
あとはイッセーが目を覚ますのを待つだけ、と誰かが来る前に窓から出て行く。
………………出入りに使った窓を開けっ放しで。
数分後、窓が開けっ放しになって居たせいで体が冷えたのか、盛大なクシャミと共にイッセーが目を覚ますのだが、それは四季の知らない事で有った。
リアスの結婚式当日、イッセーの元に来たサーゼクスの|女王《クイーン》のグレイフィアから伝えられたサーゼクスからの言伝。
『妹を助けたいなら会場に乗り込んで来なさい』
の言葉。力及ばずライザーに嬲り殺しにされるイッセーの姿にリアスは耐え切れず投了を宣言した。
(あんな野郎に部長を渡したく無い!)
その一心でイッセーはライザーとの再戦に挑む事を決める。奪還後に使うための魔法陣も渡され、イッセーは会場に乗り込む決意を決める。
『おいおい、一度負けた相手に直ぐに再戦して勝てる訳ないだろ』
そんなイッセーの決意に水を差す様に第三者の声が響く。
先ほどグレイフィアは帰ったので明らかに違うだろう。
誰かと思って声なき声多方向を振り向くと、其処には、窓の縁に腰掛けているレイナーレに襲われた時に助けられた赤い怪盗の姿があった。
「お前は!?」
「よう。レーディングゲームで大怪我したって聞いたけど、元気そうだな」
以前出会った時の事を思い出して睨みつけてくるイッセーだが、そんな彼に気を悪くした様子も見せずにヒラヒラと手を振っている。
「おいおい、俺はお前の命の恩人なんだぜ。そんなに睨むなよ」
「何の用だよ!? オレはこれから……」
「主人の結婚式……いや、婚約披露のパーティーか? まあ、どっちでも良いか。兎に角、それに乱入する、だろ? オレにはどうなろうと興味はないけど、お前にはもっと力が必要なんじゃないのか?」
そう言ってビルドドライバーを取り出してイッセーに見せつける。
「例えば、これとかな」
「っ!?」
『欲しい!』自分よりも強い木場や小猫を簡単に圧倒した目の前の相手の変身した姿、それがあればあんな鳥野郎には負けなかった。そんな考えが浮かんでくる。
「そんなお前に、オレ達のスポンサーからの贈り物だ」
そう言って何処からか取り出したスクラッシュドライバーを投げ渡す。
「な、なんだよ、これ?」
「オレのドライバーの後継機の試作品、名称は|劣化版《プロトタイプ》スクラッシュドライバーだ」
何処かの嘘つき焼き殺すガールがいたら焼かれる程の大嘘である。
実際には試作品ではなく完成品をデチューンした使い捨て版のスクラッシュドライバーだ。
「こ、これが有れば……」
「それと、これが変身用のアイテムのスクラッシュゼリーだ」
新たに投げ渡すのはゼリー飲料を思わせる外見にドラゴンのマークの書かれたドラゴンスクラッシュゼリー。こちらはデチューン等はしておらず、ちゃんとした物だ。
「使い方は簡単。オレのビルドドライバーと違ってそれ一つで変身可能。中央部にそれ差し込んでドライバーのレバーを捻るだけ、だ」
早速試そうとするイッセーだが、
「おっと、それは試作品なんでそう何回も、それも長時間は戦えないから、本番まで使わない方がいい」
そう言って変身してみようとするイッセーを止める。
「おい、それって欠陥品じゃ無いのかよ!?」
「試作品に夢見すぎだって。普通は試作品なんて完成品より劣ってる物だろ?」
四季の注意に噛み付いてくるイッセーに飄々とした態度で返す四季。
「どっちにしても、一回だけは確実に使えるのは保証するし、それの性能も保証する」
心の中で通常のクローズ以上、クローズチャージ以下だが。と付け足しておく。
流石に通常のクローズ並みに性能は抑えられなかったのだ。
「それに、新型の完成品を渡してもらえるほど、親しい関係でも無いだろ? オレ達と」
だったらちゃんとした方を寄越せと色々と言いたくなるイッセーの心を読んだ様にそんな言葉を告げられる。
でも、と思うイッセーだったがそれでも手の中にある二つのアイテムは大事な勝利のカギの一つだ。余計なことを言ってこれを取り上げられたく無い。
「分かったよ、これは有難く使わせてもらう」
「オッケー。それじゃ、オ・ルボワール」
こんな奴の思い通りにするのは気に入らないと思いながらも、渡されたドライバーとスクラッシュゼリーは素直に受け取っておくことにしたイッセーだった。
変身できる確信は持っているし、ハザードレベルも強制的にあげたから問題ないだろうし、性能も劣化させたとはいえビルドライバーレベルの性能は保証済みだ。
ライザーとの再戦にてその力はイッセーも実感を持って知る事になるだろう。
『スクラッシュドライバー!』
『ドラゴンゼリー!』
『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』
『ドラゴンインクローズドライグ!』
『ブラァ!』
赤いクローズチャージへの変身を持って。
***
さて、アナザーリュウガの一件が終わっても日々は続く。と言うよりも今回の一件はまだ終わっても居ない。
先ず、ソーナ以外の生徒会のメンバーである彼女の眷属達は、アナザーリュウガに変えられていた匙も含めて全員が大きな怪我を負ったものの、雫の癒しの術の力で早めに完治した為、一日で全員が無事に復帰出来た。
そんな訳で、早めにナイトローグについての質問でもされるかと思ったが、魔王……外交担当の会長の姉のセラフォルー・レヴィアタンではなく、内政担当のサーゼクス・ルシファーの方が、妹のリアスの結婚を賭けたレーディングゲームとその後の婚約披露パーティと忙しいらしい。
完全に身内関連だが、私情ではなく一応は内政に関わる事なのでそう疎かにも出来ないのだろう。
そもそも、庶民と違い貴族同士の結婚には家同士の繋がりもある。他家からの乗っ取りを嫌うならば庶民から結婚相手を迎えると言うのもあるだろうが、悪魔側の現状を考えると純潔な悪魔同士の結婚と言うのにも意味はあるのだろう。
……そんなに出生に困っているのなら、人間を転生させる手段よりも、人工授精などの手段でも講じろと思うのは、四季が科学者的な思考をしているからだろうか。
で、そのリアス・グレモリーのレーディングゲームの開催が明日の夜に迫っているらしいのだが、その辺は興味ないので完全に放置していた。
アナザーリュウガを倒した現在は、劣化版自壊機能付きスクラッシュドライバーの制作とドラゴンスクラッシュゼリーの生成に勤しんでいる訳である。
一度は制作するのは劣化版と銘打ったが、通常のドラゴンスクラッシュゼリーにスクラッシュドライバーの破壊時のエネルギーが加われば、クローズマグマ用のフルボトルのベースが手に入るかもしれないから、こうして通常版を生成していた。
SIDE OUT
アナザーリュウガの一件が終わった後、蜘蛛型の監視メカをオカ研の部室のある旧校舎に放って確認していたが、レーディングゲーム開催の時が来た様子だった。
内容には興味も湧かないと割り切って結果だけ確認したところ、健闘虚しくイッセー達は見事に負けたらしい。
この世界についての原作知識と言う名の一種の未来予知が正しければ、リアス・グレモリーの投了によって勝負がついたはずだが、結果として負けたのならば試合内容の細部が変わっていても問題はないだろう。
現在、ライザーから嬲り殺しにされたイッセーは自宅でゲームのダメージのための療養中でアーシアはその治療。
二人と封印中の一人以外の他の眷属達は式の為に冥界に帰ったリアスに付き添って冥界に向かったらしい。
「実行するなら今だけど、治療とかはどうする?」
「あれを治療するのは嫌」
動かなければ困るが、即座にイッセーの治療は雫から拒絶された。
「そ、そうか。まあ、予定は決まっているけど、オレはイッセーの様子見も兼ねて、その下準備に行ってくる」
目撃された時の事を考えて、怪盗用のシルクハットとアイマスクを身に付け手にはガチャで手に入れた、エボルト垂涎の五つのハザードレベル上昇アイテム。
……本当にエボルトが居たら時期によってはくれと言われたかもしれない。
「それじゃ、ちょっと行ってくる」
二人に見送られて怪盗姿で家を出る四季。目指すは兵藤家のイッセーの部屋だ。
窓から外に出て、屋根の上を走りながら人目を避けて目的の場所に着くと、イッセーの部屋が有るであろう位置へと視線を向ける。
アーシアの姿がなく意識の無いイッセー一人である事を確認すると物音を立てずに鍵のかかった窓を開け、部屋の中に忍び込むと簡単にイッセーの容体を確認する。
(こいつの乱入がいつかは知らないが、間に合いそうだな)
間に合ってくれなかったら、せっかく設計して急いで開発した劣化版スクラッシュドライバーが無駄になる。そんな事を考えながら、四季はハザードレベル上昇アイテムをイッセーに使う。
これで、ハザードレベルを持っていなかったイッセーがハザードレベルを会得して一気にレベル5まで上昇してくれた事だろう。
ガチャ産アイテムの機能は自分達以外にも働く事は知っているが、自分達以外に使うのはこれが初めてなのでどうなるかは分からないが。
(これで良し)
準備は終わり、あとはイッセーが目を覚ました頃合いに接触してスクラッシュドライバーを渡すだけだ。
(そうだ、試してみるか)
ふと、思い付いた事があるのでイッセーの胸にレッドダイヤルファイターを乗せる。
『1・2・1』
イッセーに乗せたレッドダイヤルファイターを中心に金庫のようなものが出現すると、その中には赤い籠手の様なものと、赤いチェスの兵士の駒が八つと、先ほど使ったハザードレベル上昇の特典が一つに統合されていた。
他の二つはイッセーの宿した|神器《セイクリッド・ギア》の|赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》、彼を転生させるために使った|悪魔の駒《イーヴィルピース》なのだろう。
(|神器《セイクリッド・ギア》まで抜き取れるのか。下手したら特殊能力とかも奪えるんじゃ無いのか?)
ダイヤルファイターが意外と便利である事に驚きながらも、ハザードレベルの回収の方法の目処がたった事には安堵する。
神器と悪魔の駒は流石にどちらも抜いてしまったら、イッセーの命に関わりそうなので、それには触れずに金庫を閉めてダイヤルファイターを外す。
流石にハザードレベル5のまま放置するのは危険であったし、ハザードレベルを下げれば万が一ビルドドライバーが奪われても使われる事はないだろう。
(これで破壊したスクラッシュドライバーを再生されても、使える奴は居なくなる)
あとはイッセーが目を覚ますのを待つだけ、と誰かが来る前に窓から出て行く。
………………出入りに使った窓を開けっ放しで。
数分後、窓が開けっ放しになって居たせいで体が冷えたのか、盛大なクシャミと共にイッセーが目を覚ますのだが、それは四季の知らない事で有った。
リアスの結婚式当日、イッセーの元に来たサーゼクスの|女王《クイーン》のグレイフィアから伝えられたサーゼクスからの言伝。
『妹を助けたいなら会場に乗り込んで来なさい』
の言葉。力及ばずライザーに嬲り殺しにされるイッセーの姿にリアスは耐え切れず投了を宣言した。
(あんな野郎に部長を渡したく無い!)
その一心でイッセーはライザーとの再戦に挑む事を決める。奪還後に使うための魔法陣も渡され、イッセーは会場に乗り込む決意を決める。
『おいおい、一度負けた相手に直ぐに再戦して勝てる訳ないだろ』
そんなイッセーの決意に水を差す様に第三者の声が響く。
先ほどグレイフィアは帰ったので明らかに違うだろう。
誰かと思って声なき声多方向を振り向くと、其処には、窓の縁に腰掛けているレイナーレに襲われた時に助けられた赤い怪盗の姿があった。
「お前は!?」
「よう。レーディングゲームで大怪我したって聞いたけど、元気そうだな」
以前出会った時の事を思い出して睨みつけてくるイッセーだが、そんな彼に気を悪くした様子も見せずにヒラヒラと手を振っている。
「おいおい、俺はお前の命の恩人なんだぜ。そんなに睨むなよ」
「何の用だよ!? オレはこれから……」
「主人の結婚式……いや、婚約披露のパーティーか? まあ、どっちでも良いか。兎に角、それに乱入する、だろ? オレにはどうなろうと興味はないけど、お前にはもっと力が必要なんじゃないのか?」
そう言ってビルドドライバーを取り出してイッセーに見せつける。
「例えば、これとかな」
「っ!?」
『欲しい!』自分よりも強い木場や小猫を簡単に圧倒した目の前の相手の変身した姿、それがあればあんな鳥野郎には負けなかった。そんな考えが浮かんでくる。
「そんなお前に、オレ達のスポンサーからの贈り物だ」
そう言って何処からか取り出したスクラッシュドライバーを投げ渡す。
「な、なんだよ、これ?」
「オレのドライバーの後継機の試作品、名称は|劣化版《プロトタイプ》スクラッシュドライバーだ」
何処かの嘘つき焼き殺すガールがいたら焼かれる程の大嘘である。
実際には試作品ではなく完成品をデチューンした使い捨て版のスクラッシュドライバーだ。
「こ、これが有れば……」
「それと、これが変身用のアイテムのスクラッシュゼリーだ」
新たに投げ渡すのはゼリー飲料を思わせる外見にドラゴンのマークの書かれたドラゴンスクラッシュゼリー。こちらはデチューン等はしておらず、ちゃんとした物だ。
「使い方は簡単。オレのビルドドライバーと違ってそれ一つで変身可能。中央部にそれ差し込んでドライバーのレバーを捻るだけ、だ」
早速試そうとするイッセーだが、
「おっと、それは試作品なんでそう何回も、それも長時間は戦えないから、本番まで使わない方がいい」
そう言って変身してみようとするイッセーを止める。
「おい、それって欠陥品じゃ無いのかよ!?」
「試作品に夢見すぎだって。普通は試作品なんて完成品より劣ってる物だろ?」
四季の注意に噛み付いてくるイッセーに飄々とした態度で返す四季。
「どっちにしても、一回だけは確実に使えるのは保証するし、それの性能も保証する」
心の中で通常のクローズ以上、クローズチャージ以下だが。と付け足しておく。
流石に通常のクローズ並みに性能は抑えられなかったのだ。
「それに、新型の完成品を渡してもらえるほど、親しい関係でも無いだろ? オレ達と」
だったらちゃんとした方を寄越せと色々と言いたくなるイッセーの心を読んだ様にそんな言葉を告げられる。
でも、と思うイッセーだったがそれでも手の中にある二つのアイテムは大事な勝利のカギの一つだ。余計なことを言ってこれを取り上げられたく無い。
「分かったよ、これは有難く使わせてもらう」
「オッケー。それじゃ、オ・ルボワール」
こんな奴の思い通りにするのは気に入らないと思いながらも、渡されたドライバーとスクラッシュゼリーは素直に受け取っておくことにしたイッセーだった。
変身できる確信は持っているし、ハザードレベルも強制的にあげたから問題ないだろうし、性能も劣化させたとはいえビルドライバーレベルの性能は保証済みだ。
ライザーとの再戦にてその力はイッセーも実感を持って知る事になるだろう。
『スクラッシュドライバー!』
『ドラゴンゼリー!』
『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』
『ドラゴンインクローズドライグ!』
『ブラァ!』
赤いクローズチャージへの変身を持って。
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