一章『怪盗と、アナザーライダーと、ナイトローグ』

リアス・グレモリーの婚約騒動に合わせて起こったナイトローグとナイトローグの生み出したアナザーリュウガと言う、本来ならば存在しない上にあり得ない組み合わせと出会った最初の夜が終わった。

「厄介だな」

現状を考え、手持ちのフルボトルを一つ一つ手に取りながらそう呟いてしまう四季。

残念ながら、アナザーリュウガへの対抗策になり得る龍騎フォームになれるフルボトルは手元には無い。
オレンジやライダーカード、モモタロスのフルボトルは有ってもだ。
ナイトローグはビルドドライバーの特殊なベストマッチ、レジェンドミックスと呼ばれるベストマッチを警戒していたが、手持ちにそれが無い以上は、事実上四季にはアナザーリュウガを倒す術は無い。

「あとは、これか?」

次に考えた方法はライダーとは違うスーパー戦隊の力であるダイヤルファイターだ。
原典のダイヤルファイターはギャングラーからルパンコレクションを盗む為に使っていたことから、その力の応用でアナザーリュウガのウォッチを取り出せないかと考えた。
全く異質な力なので不可能と断じる事が出来ないだけで、可能性があるかは分からない。実践して試すしか無いが、ぶっつけ本番では危険な相手だ。

「つまり、完全にお手上げってわけね?」

「そうなる」

ナデシコC内の会議室のテーブルの上に広げられたフルボトルを眺めながら詩乃の言葉にそう返す。

そもそも、アナザーライダーを正面から倒せるのは同じ力を持った仮面ライダーだけ。本人か、ライドウォッチという形で力を受け継ぐしか無い。
例外なのがジオウⅡやゲイツリバイブ、ジオウトリニティなどの一部のライダーだけだ。それに、ジオウやゲイツはライドウォッチの力を借りれば倒せるのだから、ライドウォッチを手に入れさえすれば良いと言える。

だが、四季が変身できるライダーはビルドのみ。レジェンドミックスが出来ない以上対抗手段など無いに等しい。

だが、何も収穫がなかった訳ではない。

「アナザーリュウガを生み出したナイトローグも、オレの手の内を完全に把握している訳じゃないという事か」

奴は四季にアナザーリュウガに対する対抗策が完全にない事を知らず、ビルドのレジェンドのミックスの事を把握して居た。
そもそも、レジェンドミックスはまだ一度も使って居なかった筈なのに、だ。
其れだけならば完全に手の内を把握されていることになるが、同時に手札には存在しないレジェンドミックスを警戒して居たと言う事実。

「どっちにしても、アナザーリュウガを倒すための手札がないのが厄介だな」

考えるまでもなく、ビルドでアナザーライダーを倒す為の唯一の可能性はレジェンドミックスだけで、其れがない以上は完全に倒すことは出来ない。

ならば、後はダメージを与えて強制的に変身解除させてアナザーライドウォッチを排出させるしか手はない。
そして、再起動される前に回収して破壊してしまうだけだ。

「と言うわけで、アナザーリュウガの対処は基本、叩きのめしてライドウォッチの回収で」

「ええ」

「うん」

四季の言葉に賛同する詩乃と雫の二人。二人にはアナザーライダーに対する知識が無いので四季の判断に対する意見はない。

「っと、念の為にあいつの主人に会ったらこれを渡しておいてやるか」

匙がアナザーリュウガに変えられる瞬間の映像を見せれば、有る程度納得してくれるだろうと考える。
まあ、敵の狙いは分からないので飽くまで、会ったら、だ。態々自分達から会いに行く理由はない。

「それじゃあ、今回は手分けしてアナザーリュウガ、若しくはナイトローグ探しだ。どちらかを見つけたらオレに連絡をくれ」

メインの戦力はビルドで有る自分と割り切って詩乃と雫の二人と、自分一人という組み合わせになる。
流石に昼間から怪盗服では目立つので私服での行動だが。

「お兄さんと二人きりでも良かったのに、残念」

「いや、遊びに行くんじゃないから」

雫の言葉にそう返す四季。

「デートという雰囲気じゃないけど、二人きりが良かったって言うのは私も同意見よ」

「一応、戦力的に考えた訳だから」

単独で戦えるビルドで有る自分が一人での行動を選んだのだ、他意はない。





















詩乃と雫の二人と別れて家を出ると最初に駒王学園へと足を向ける。
相手は態々匙を狙ったのだ。単にドラグブラッカーとヴリトラ、黒いドラゴン繋がりで選んだのでなければ、生徒会に属するソーナ達が狙いと考えるのが合理的だと判断したのだ。

ナイトローグはシトリー眷属が狙いだから匙を狙い、彼を彼に見合ったアナザーライダーであるアナザーリュウガに変えた。
そう推理していた。

そんな訳で、先ずは生徒会の様子を見に行こうと誰かが居るであろう可能性の高い学園に足を運んだのだが、全員が出払っている様子で見事に無駄足を踏んでしまった。

「こっちは無駄足だったみたいだな」

恐らく行方不明になった匙や、彼から連絡のあったはぐれ悪魔探し(実際はいないが)に出ているのだろう。

(ミラーワールドから奇襲し放題のアナザーリュウガの能力を考えると、各個撃破のチャンスだな)

ミラーワールドの移動を自在に行えるアナザーリュウガは、アナザーライダーであると同時に新種のミラーモンスターと言ったところだろう。
自我の有無は分からないが、ナイトローグのコントロール下に有ると考えれば、現代社会において無い場所を探すのが難しい鏡面から、自在に襲撃可能の能力と相まって、現状ではバラバラに動いているであろうシトリー眷属を各個撃破するのには最適なアナザーライダーだ。

逆に考えれば生徒会のメンバーを探せばアナザーリュウガもそこに現れるだろうが、当の生徒会メンバーは別行動中の自分達よりも多いのだから、全員はフォローしきれない。



『ふう。ここに現れたと言うことは、流石に私達の狙いの推測は出来ていたと言う事ですか?』



「っ!?」

「先日振りですね、天地四季さん」

何処からか聞こえる声。その声に反応して其方を振り向くと、そこにはナイトローグの姿があった。

「ナイトローグ!?」

素早く引き抜いたVSチェンジャーをナイトローグへと向ける。

「残念ながら、私には君と戦う意思は有りませんよ」

「どう言う意味だ?」

「言葉どおりですよ」

戦う意思が無いと言われて『はい、そうですか』などと納得出来る相手では無い。

「今回の狙いは、消し易いソーナ・シトリーとその眷属達とでも言っておけば安心していただけますか?」

何一つ安心できない。そんな言葉を呑み込んで四季はVSチェンジャーを突き付けながらナイトローグを無言で睨みつける。

「下手に赤龍帝を覚醒させても面倒ですからね。迂闊に刺激して訳の分からない亜種形態になられるよりも、正当に|禁手《バランス・ブレイク》してくれた直後に手を出した方が、寧ろ始末し易いんですよ」

「何で態々そんな事を教えてくれるんだ?」

「君に信用してもらうためですね。私の目的は悪魔でリアス・グレモリーと赤龍帝とソーナ・シトリー、及びその眷属達。人間側で有る君達と敵対する意思は無いと」

そう言って優雅とも言える仕草で一礼してみせるナイトローグ。

「ですが、君達が今回の様に私達の手駒と戦って怪我をするのは、其方の責任ですよ」

「そうかよ」

引き金から手を離してVSチェンジャーを下ろすとナイトローグの姿が消える。
敵対の意思は無いと言う為だけに現れたのかは疑問だが、今学園にはリアス・グレモリーのもう1人の僧侶がいたはずだ。
狙いは其方かとも思ったが学園に戦闘があった様子はない。……時間停止能力があるとは言え、ナイトローグなら簡単に始末できるだろうが、流石に旧校舎にくらい戦闘痕が残っていても良いだろう。

其方の様子も確認するべきかと考えていると、ビルドフォンの着信音が鳴る。

「詩乃か?」

『ううん、私』

ディスプレイの番号から詩乃かと思ったが、聞こえてきたのは雫の声。

『そんな事より、今こっちに』

「アナザーライダーか?」

『うん。生徒会の人達が襲われてたから助けたんだけど……』

「意識は?」

『ある』

その言葉で察した。アナザーリュウガに襲われているところを見つけて、とっさに助けに入ったが、意識があるので変身できないのだと。目の前で変身したら認識阻害効果も意味はない。

「場所は?」

雫から場所を聞くとそのまま全身を強化。ライオンフルボトルを取り出そうとするが、バイクを使うよりも気によって強化した上で最短ルートを言った方が早いと判断する。
パルクールの要領で塀から屋根、屋根から電柱へと飛び移ると、電柱の上を飛び移って一直線に伝えられた場所へと急ぐ。
















(このっ! どうしろってのよ!?)

思わずそう思ってしまう詩乃。はっきり言って、アナザーリュウガの能力は相打ち覚悟の上で戦うしかない厄介なものがある。
仮面ライダー龍騎、仮面ライダーリュウガ共有のドラグクローを模したであろうドラゴン状の腕と、ドラグセイバーを模したであろう剣状の腕による攻撃はまだ良い。
元々の変身者が変身して己の意思で扱っていたアナザーライダーという、龍騎系ライダー三強の一角という純粋な実力は変身者が違うために考慮する必要はない。

だが、アナザーリュウガとしての能力である攻撃の反射だけは厄介なのだ。
ジオウの劇中でも、圧倒的なスペックの高さによる理由でジオウⅡの攻撃は跳ね返せなかったが、それ以外の攻撃は全て反射していた。ゲイツが相打ちを覚悟して倒すと言う選択を選ぶほどに危険な相手だ。
そのために二人は四季から見つけたら牽制に留めて絶対に攻撃を当てるなとも言われていた。

少なくとも生身で反射を受けるのは当たりどころが悪ければ命に関わる。

ルパンレンジャーへの変身は雫が治療している生徒会メンバーでソーナの眷属の二人、戦車である『由良 翼紗』と騎士の『巡 巴柄』の二人が大怪我を負ったものの意識がある為に出来ない。
その為、攻撃能力のある詩乃はアナザーリュウガに攻撃を当てる訳には行かないのだ。

「このっ」

牽制のためとはいえ当てられない攻撃で確実にアナザーリュウガの動きを止めているのは、与えられた桜井小蒔の弓術の技だけでなく、彼女自身の射撃の技術によるものだろう。

だが、攻撃を当てずに相手の動きを止めるなどと言う芸当を長時間繰り返しているのだ、何れ綻びは出る。



だが、



「詩乃っ! 雫っ!」


幸いにも詩乃の限界よりも先に救援が来た。
真上から四季の声が響くと、アナザーリュウガの頭に四季の掌打が叩きつけられる。
それによって一瞬頭部への打撃によるダメージからアナザーリュウガの動きが止まり、その隙に四季は詩乃とアナザーリュウガの間に立つ。

次の瞬間、龍の顔を象った紋章らしきものが現れ、そこに映った四季の鏡像が先ほどの本人と同じ動きで四季へと襲い掛かる。

「ぐっ!」

能力を知っている以上予想はしていたので、それを防御する事には成功した。
鏡像での反射が避けれないのなら身体能力の強化による防御、それならばうまく防げるかと考え攻撃が直撃した後から行なっていたのだ。

「うまく行ったな」

「風よ、お願い」

同時に雫の声が響くと痛みが消えていく。回復能力のある雫の存在を考えれば反射能力も回復でダメージをゼロにすれば良いと考えたのだが、うまく行った様子だ。

(そう何度も試したく無い手だけどな)

流石に、アナザーリュウガの防御力を上回るダメージを与えられ無い代わりに選んだ苦肉の策だが、それは対処療法的な手段でしかない。
ライダーキックも跳ね返してくる原典の能力の事を考えると、根本的な解決にすらなっていない。

「四季、大丈夫なの?」

「取り敢えず、何度も試したく無いけど、今のところ一応は大丈夫」

下手したら自分の攻撃が雫の回復力を上回ってもアウトな上に、そんな攻撃では絶対にアナザーリュウガの防御力は上回れ無い。

「詩乃、お前はそのまま倒れてる二人と雫を守っててくれ」

「それは良いけど、何をする気なの?」

「かなり危険な|賭け《ギャンブル》」

そう伝えると地面を踏み砕くほどの震脚でアナザーリュウガに接近し、

「破ぁ!」

掌打の乱撃をアナザーリュウガへと浴びせる。少なくとも、それが変身でき無いのだと現状では四季の使える最強の徒手空拳技《陽》の技。
アナザーリュウガの体勢が崩れた瞬間、気を最大限まで高めた一撃を放つ、

「八雲っ!」

八重の雲のごとく神速の乱撃を浴びせ最大の一撃でトドメを刺す技、八雲。

だが、直ぐにアナザーリュウガの真横に鏡像が現れ四季へと襲いかかる。

「っ!」

技の直後で無防備なところに鏡像の己が襲いかかる。先程のアナザーリュウガと同様に神速の掌打の嵐が四季へと襲いかかる。

「お兄さんっ! 守護を!」

敢えて自分の技に吹き飛ばされ様とするが鏡像も同じように付いてくる。だが、最後の一撃が当たる前に雫の防御技が間に合った。

「がはぁっ!」

だが、それでもダメージは大きい。吹き飛ばされて近くにあった木に叩き付けられる。
意識が飛びそうな痛みに、流石は自分の現時点の最高の技だと思ってしまう。

「がぁ、がぁ……か、会長……」

相手の動きを警戒していると、一瞬だけアナザーリュウガの姿が匙の物に変わり、そのまま近くにあった鏡面からミラーワールドへと退散していく。

「なんとか、助かった、な」

そのアナザーリュウガの姿を見て気が緩んだのがいけなかったのか、そのまま意識を失ってしまう。

******

「……知らない天井だ」

意識を取り戻した時、なんとなくそう呟いて見たくなった。こんな発想が出来る時点で、五体満足で無事だろうと思う。

(っ……くっ。それにしても、自分の技で気絶するなんて、我ながら情け無い)

それでも考えてみれば技を放った直後に同じ技を打ち込まれるのだから、技を放った直後の隙が大きい大技であればあるほど自分の受けるダメージは大きいのも当然だ。

(ホント、あれを倒したって、どれだけチートなんだよ、ジオウⅡって?)

ジオウⅡ、アナザーリュウガを圧倒できる基礎能力に未来予知に時間操作に未来創造、しかも、これでまだ上のフォームのある中間フォームと言うチート振りである。

まあ、原典のアナザーリュウガはアナザーライダーでありながら、本物の仮面ライダーリュウガとの相違点は一つ、本物ではない事だけだ。素のスペックもあの時点のアナザーライダー達の中では最強と言って良いだろう(アナザーオーズも変身者は仮面ライダーだった者だが、そちらは歴史が失われて経験を失っている上にオーズではなくゲンムの変身者である)

アナザーライダー対策になりそうなジクウドライバー等のジオウの装備がガチャの中に入ってないかな、と思いつつも、現在の手札でのアナザーリュウガ撃退の手段へと思考を向ける。

(下手な大技じゃ回復が間に合わないだけか。やっぱり、一番必要なのは……奴の、アナザーリュウガの防御を超える程の攻撃力)

最後の手段としてハザードトリガーが頭に浮かぶ。
暴走の危険があるとはいえ、ハザードフォームはビルドの中間フォームの中ではスパークリングよりも強力な力を持ったフォームだ。それを使えばアナザーリュウガの防御力を上回れるかもしれない。
飽く迄仮定の域を出て居ない話だが、手持ちの札でアナザーリュウガに対抗できるのは此れだけだろう。

理想を言えば、龍騎系ライダーのカードデッキを入手して、確実にアナザーリュウガを倒せる力が欲しいが、それは現時点では無理だろう。

「(それよりも今は)ここは?」

ベッドの上で体を起こし周囲を見回す。明らかに駒王学園の保健室だ。
体に痛みはない為に雫が治癒してくれたのだろうという事がわかる。
最初の不意打ちから終始自分からしか攻撃してない為に、自分の攻撃を跳ね返されただけで済んでいるが、はっきり言って生身でアナザーライダーの攻撃など受けたくない。

(そう言えば、二人は?)

詩乃と雫の姿が見えない事を疑問に思いながらベッドから出ようとした時、保健室のドアが開くと、

「四季!」
「お兄さん!」

詩乃と雫の二人が保健室の中に飛び込んでくる。

「詩乃、雫。二人とも怪我は」

「私達なら大丈夫よ。それより、私達のことより今は自分の心配をしなさいよ!」

「オレも大丈夫。反射される事が分かってたから、無意識に加減していたんだと思う」

そう、最初から攻撃を反射される事が分かっていたから、生身での攻撃では変身解除に繋がらないと分かっていたからこそ、無意識のうちに加減してしまっていた。
だからこうして、雫の回復の術の効果範囲のダメージで留められたのだろう。
それでも、心配したのだと言う表情で詩乃からは睨まれている。

「天地さん、気が付いたようで何よりです」

二人に続いて新しい人物が入ってくる。この学園の生徒会長の『|支取 蒼那《しとり そうな》』、本名はソーナ・シトリー。
現魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタンの妹である駒王学園のもう一人の上級悪魔だ。

「この度は貴方達には私の眷属の二人を助けていただいた上に、匙の事も……」

彼女はそう言って頭を下げる。ふと詩乃と雫の方に視線を向けるとどこか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

「あの、あの映像はどちらで?」

「ルパンレッドと名乗ってた自称怪盗から渡されたんだ。オレも映像を見せてもらったけど、匙だっけ? 生徒会役員で、コウモリ男に変な時計みたいなものを埋め込まれて、あの黒い怪物に変えられたのは」

ナイトローグやアナザーリュウガの名前を出さずにそう問いかける。

「ええ、先日から行方不明になって居ます。これであの子の無事は確認できましたが」

「このままだと、はぐれ悪魔にされてしまう。ですか?」

「はい」

仮面ライダーを歪めた怪人の姿。しかも、黒い人型のドラゴンなどはぐれ悪魔になった匙と言われても納得できるだろう。

「えーと、ルパンレッドから、強いダメージを受ければ体内の時計のような物が排除されて元に戻るとか言っていたから」

「ですが、そこの二人から、今の匙には匙の|神器《セイクリッド・ギア》にも無かった能力があると」

アナザーリュウガの反射能力がある為に迂闊に攻撃できないと言いたいことはよく分かる。
反射能力と鏡面を介しての神出鬼没な移動能力と、下手したら魔王の眷属を動かしても被害は出るような能力だ。

火力に劣るソーナの眷属たちには打つ手がないのが現状だろう。まあ、リアスの眷属も含めて当たったとしても勝ち目はないだろうが。

「だから、それを知っても何もできない。そう言うことか?」

「はい。ですが、このまま匙の事を放ってはおけません。早急にあの子を助けないといけませんから」

そう言った後、ソーナは四季達へと一礼し、

「後日、貴方達の力の事も詳しく聞きに行くと思いますが」

「オッケー、話せる事なら話そう」

そんな会話を交わすとソーナは保健室を出て行く。後に残された四季達は、

「いいの?」

詩乃が四季へと問いかけてくる。色々な意味の篭った『いいの?』と言う問いだろう。

「オレ達の力についてなら、な」

彼女の問いに言外にそれ以外の事は黙っていると告げる。飽く迄今回見せた力についてなら、見せてしまった以上は話したところで問題はない。
まあ、四季の力については伏せておく部分は多いが。

「とは言え、現状だとオレ達にも、アナザーリュウガに対抗する手段は……何一つ無いんだよな」

「もう絶対にあんな無茶はやらないでよ」

「うん、あれはもうダメ」

「分かってる。流石に、相打ち前提での作戦はもうやらない」

二人に泣きそうな目で睨まれればもう無茶は出来ない。そんな事を考えていると四季のビルドフォンにメールの着信がなる。

何かと思って確認してみると、其処には

「っ!? これは……」



『ドラゴンナイト系ライダー確定チケット一枚配布』



そこに書かれていた、そんなタイトルのメールに思わず黙り込み四季。そんな四季の様子を不思議に思ったのか、詩乃と雫もビルドフォンの画面を覗き込む。

「「ドラゴンナイト?」」

「設定を変えて、海外でリメイクされた海外版の仮面ライダー龍騎のタイトルだけど……」

変身システムは変わらない。いや、龍騎の並行世界の存在こそがドラゴンナイトだとすれば、それでアナザーリュウガに対抗できるのかと言う疑問はあるが、一応の希望は出来た。

「賭ける価値はあるな」

外れたところで可哀想だが、匙がはぐれ悪魔になるだけである。非常な選択だがこのチケットから出てきたものを見なかったことにして対抗手段なしとして。
主にインサイザー(シザース)とかセイレーン(ファム)とか。
最弱の蟹ではリュウガには勝てず、女装する羽目になるセイレーンは精神的に耐えられない上に詩乃や雫に正面からの戦闘を任せるには気がひけるし、ファムの死因はそもそもリュウガなので相手が悪すぎる。

「しかも、この場で引けるか」

態々家に帰らずにメールに添付された画像に触れるだけで引くことが出来る様子だ。
内心この状況で外れたら精神的に耐えられそうもないので、このまま見なかったことにしたい。

「引かないの、それ?」

「13分の2で最弱を引いた場合の絶望感と、オリジナルのリュウガが直接の死因になったライダーを引く可能性を考えると、ちょっと悩む」

「それは、確かに悩むわね」

使っても負ける可能性が高すぎるものが二つもあると言われると流石に四季の態度も納得してしまう詩乃さんでした。

ラスやウイングナイト、ドラゴンナイトなら対抗も容易いだろうが、逆に弱い部類のライダーを引き当てたら勝ち目など無い。アナザーだがリュウガはリュウガなのだ。龍騎系ライダーの中ではオーディンに次ぐ最強格だ。

「じゃあ、3人でやる?」

不安を感じていると、そんな意見を上げるのは雫だった。引かないで放置もあれなので彼女の意見を採用。メールに添付されているチケットを使うと書かれた画像に三人で触れる。





ビルドフォンから光の球体が現れメールに添付されていた画像が消える。ゆっくりとその光に触れると、四季の手の中にカードデッキが現れる。

その表面に書かれていたライダークレストに思わず笑みを浮かべる。
それはガチャのラインナップの中から、間違いなくアタリを引き当てることができたと確信出来る。

「オレ達が幸運なのか、それとも匙が幸運なのかは分からないけど、これなら行ける」

新たに手にした力に笑みを浮かべる。相手に対抗できるだけのカードを手にしたのなら勝ち目はある。
一人でわずかに及ばないのなら、三人でなら超えられる。

「匙を助ける事のリスクは、悪魔側に目を付けられる。態々今まで怪盗姿で正体を隠してた意味がなくなる」

「でも、それは今更じゃ無い?」

四季の言葉に既にソーナの眷属の二人を助けた時点で力の事は知られている。見捨てなかった時点で今更だと詩乃は答える。

「正体を隠すのにも意味はあると思う」

「なら、怪盗と素顔。バトルスタイルは変えるのは丁度良いか」

続いて雫の言葉に四季は答える。





三人の考えは最初から決まっている。
ここまで関わった以上は、助けないなどという選択肢など、有り得ない!









頷きあうと三人でハイタッチを決める。

「行こう」

「ええ」

「うん」


















「ああああああああああぁ!!!」

絶叫を上げて暴れ回るアナザーリュウガ。アナザーリュウガに変えた匙へとナイトローグが下した最優先の命令は一つ。眷属の仲間と主人を始末しろと言うもの。
最初は自分の意思に反して命令を実行しようとする体に抵抗していたものの、アナザーリュウガと言う大きな力の濁流に匙と言う意識は時間と共に飲み込まれていく。

「さ、匙……」

「ガアァ!」

ソーナ達の警戒を嘲笑うように、ミラーワールドの中を悠々と移動しながら再度襲撃してきたアナザーリュウガ。
今回は四季が気絶している内に詩乃からアナザーリュウガに変えられた匙が襲撃してくる危険性を伝えられていた事で、動ける生徒会役員の眷属全員で揃っていたと言うのに成すすべなく全員が地に伏していた。

反射能力で自分達の攻撃は撃ち返される上に相手の戦闘力は高い。しかも、何者かに操られている自分達の仲間と言う悪条件が重なっているのだ。

全員がアナザーリュウガの攻撃で一方的にボロボロにされたわけでは無い、自分達の攻撃を撃ち返されて負った傷もある。
アナザーリュウガの能力に似た能力を持った|神器《セイクリッド・ギア》を宿した眷属の女王で生徒会副会長の椿姫、彼女が一番傷が酷い。

「匙、目を覚まして下さい!」

「ガァア!」

ソーナからの説得の言葉も匙を支配しているアナザーリュウガの力には届かない。右腕のドラゴンを模した手甲から青い炎を撃ち出す。
心の中で匙の意思は必死にやめろと絶叫するが、アナザーリュウガは止まらない。ドラグクローを模した手甲から撃ち出された青い炎がソーナと倒れた彼女の眷属を飲み込もうとするが、



「精霊の燃える盾よ、守護を!」



雫の声と共に現れた守護の壁が青い炎の余波を防ぐ。爆発音と共に上空を泳ぐ一匹の東洋龍の放つ炎がアナザーリュウガの炎を相殺させたのだ。

「間に合ったか」

ソーナ達に駆け寄る四季と詩乃と雫の三人。

「天地くん、朝田さん、北山さん、貴方達どうしてここに?」

「話は後。今は匙を止める事が先決だ」

そう言って取り出したのは先ほど手に入れたカードデッキ。それを翳すと腰にベルトが出現する。

「詩乃、雫。会長達のことは任せた」

「うん、任せて」

「そっちは任せたわよ」

「ああ」

雫がソーナ達の治癒をしているのでもう大丈夫だろう。後はするべきことは一つ。

「KAMEN RIDER!」

そう叫んでベルトへと黒いドラゴンのエンブレムの刻まれた黒いカードデッキを装填すると、四季の姿がアナザーリュウガと似た姿に変わる。





『仮面ライダーオニキス』





ドラゴンナイトに登場するリュウガを元にして誕生した十三人目の仮面ライダーであり、原典の仮面ライダー龍騎では主人公の影として登場したリュウガとは対照的に、主人公が変身したドラゴンナイトの後継機とも言える存在だ。

方やダークライダーのリュウガを歪めた存在であるアナザーリュウガ。
方や別の世界でリュウガを元に誕生した本物の仮面ライダーとして生まれて、ダークライダーではなく仮面ライダーとして戦ったオニキス。

奇しくも仮面ライダーリュウガから派生して誕生したアナザーライダーと仮面ライダーが対峙した瞬間である。









***



先に動いたのはオニキスの方だ。

『SWORD VENT』

素早くカードデッキからカードを抜き出し、それをブラックドラグバイザーへと装填、ドラグセイバーを召喚する。

召喚されたドラグセイバーを構え、アナザーリュウガへと斬りかかる。

「はぁ!」

「ガァ!」

互いにドラグセイバーとドラグセイバーを模した剣を切り結ぶ。
だが、力任せに振るうだけのアナザーリュウガの剣をオニキスは斬り払い、そのまま斬撃を浴びせ、蹴り飛ばすことで距離を取る。

地面を転がり立ち上がるアナザーリュウガの横にリュウガのライダークレストの形をしたオニキスを写した鏡面が現れるが、それはオニキスの攻撃を反射する事なく砕け散る。

「反射されない?」

「今の四季の攻撃が強過ぎて、反射できないのね」

「やった」

反射能力が不発に終わった事に驚くソーナを他所に、詩乃と雫は四季の狙いが当たっていたことに納得する。

これでアナザーリュウガの反射能力による戦闘での不利は無くなった。
後は正面から打倒する。それだけだ。

そう考えてドラグセイバーを構えながら、オニキスはゆっくりとアナザーリュウガとの距離を詰める。

「グゥ……」

己の不利を感じて逃げようと鏡面に向かって走るアナザーリュウガだが、飛び込んだ瞬間に鏡面から弾き出される。

「グガァ!」

鏡面の中で一匹の黒龍がアナザーリュウガを威嚇する様に咆哮を上げる。
オニキスのアドベントビースト『ドラグブラッカー』が鏡面に陣取っているのた。

龍騎はミラーワールドで、ドラゴンナイトは異世界ベンタラで戦うのだが、そのどちらも鏡面を移動に利用している。
その二種のライダーの特性を利用し、ベンタラへのゲートに変えた鏡面からアナザーリュウガを逃さない為にドラグブラッカーを配置していた。

戦闘面で優位を取られる反射能力、そしてミラーモンスター特有の鏡面世界への移動を封じる事に成功する。

「反射能力は封じた。逃走経路は潰した。後は……お前を倒すだけだ」

「ガァア!」

その存在を歪められたアナザーリュウガを仮面ライダーとして人々を守ったオニキスの力を持って倒す。
元がダークライダーなだけに在り方はアナザーリュウガの方がリュウガに近いのだろうと思うと内心苦笑してしまう。


『STRIKE VENT』


オニキスの腕にブラックドラグクローが装着されるとアナザーリュウガもドラグブラッカーを模した片腕を向けてパンチモーションを取る。

「はぁ!」

「ガァ!」

ドラゴンの咆哮の様な音が二つ同時に重なり、同時に打ち出された炎が両者の中央でぶつかり合う。

「っ!?」

押し返されては居ないが、二つの炎が拮抗している為にオニキスもまた動けない。

ならば取る手段は一つだ。

「詩乃っ、頼んだ!」

「ええ」

オニキスの言葉に応えるのは詩乃。弓に矢を番えアナザーリュウガを狙う。
技の記憶の中から使うべき技を選択する。

「任せて、絶対に外さないから」

体内の気を鏃へと集め、矢を放つ。長距離を射抜く『通し矢』。

「ガァッ!?」

アナザーリュウガに直撃した矢によって一瞬だけ拮抗が崩れる。
アナザーリュウガの能力で鏡が出現し、詩乃の矢が反射されるが、その前に続け様に直撃するオニキスの炎によって鏡は砕け散る。

「オラっ!」

その隙を逃さずオニキスはアナザーリュウガに肉薄するとブラックドラグクローを装着した腕でパンチを叩きつける。

「ガァッ!」

その攻撃でヨロヨロと後退させられたアナザーリュウガは、オニキスを近付けさせまいと滅茶苦茶に剣を振りながらオニキスから離れようとする。

一瞬動きを止めて後退させられたオニキスを他所に、アナザーリュウガのドラグブラッカーの頭を模した腕から何かが伸びる。
アナザーライダーに変えられた匙の持って居た|神器《セイクリッド・ギア》の|黒い龍脈《アブソーション・ライン》がアナザーリュウガに変えられた事で変化したのだろう。
力に支配されて暴れている状況では細かい使い方はできなかったのだろうが、それでも大味な応用は出来る。
単純に遠くに巻きつけての逃走などの応用技は可能だという事だろう。

「悪いけど、逃さないわよ」

その狙いに気付いた詩乃が巻き付けた先にある枝を狙い撃つ。神器の側は壊さなくても、それ以外の物ならば壊す事は簡単に出来る。

|黒い龍脈《アブソーション・ライン》が巻き付いて居た先が無くなりそのまま地面に落ちるアナザーリュウガ。
立ち上がった瞬間に接近したオニキスの掌打が叩き付けられる。

「一人で互角でも、三人なら余裕で超えられる」

僅かにアナザーリュウガの動きが鈍った隙に上段蹴り、そのままブラックドラグクローを装着した腕でのパンチを叩き込む。

「はあ!」

トドメとばかりに放たれた『龍星脚』に吹き飛ばされるアナザーリュウガ。
更に近づくオニキスの『八雲』による掌打の連続攻撃で動きが鈍っていくアナザーリュウガは、トドメの一撃により殴り飛ばされた衝撃で距離を取ると、ヨロヨロとした様子で立ち上がるとドラグブラッカーを模した腕を振り上げ、振り上げた腕から吐き出した黒炎を全身に纏う。

「っ!? まさか其れ迄使えるのか」

だが考えてみれば、原典のアナザーゴーストはディケイドゴーストと共にゲイツゴーストアーマーに対してダブルライダーキックを使っているのだから、他のアナザーライダーがオリジナルの仮面ライダーの必殺技に対応する技を持って居ないわけがなかった。

そうなれば次に取るべき行動は一つしかない。

「だったら、迎え撃つまでだ!」


『FINAL VENT』


アナザーリュウガに応じるように、オニキスもブラックドラグバイザーに新たにカードを装填する。

オニキスの背後に現れるドラグブラッカーを背に中国拳法のようなポーズをとり、そのままドラグブラッカーと共に上空に舞い上がり、一回転しながら飛び蹴りの体制を取る。
同時に黒煙に包まれたアナザーリュウガの体がゆっくりと浮かび上がり上空で飛び蹴りの体制を取る。

「ドラゴン、ライダァー……キィィック!」

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」

オニキスはドラグブラッガーが吐き出した黒炎を纏いながら、アナザーリュウガは己の吐き出した黒炎を纏いながら、同時に放たれた二人のキックがぶつかり合う。

「ガッ! ガァア!」

黒炎を纏いながら二つの必殺技を撃ち合った結果、その二つの必殺技は、拮抗する事もなく押し勝ったのはオニキスの方だった。

ドラゴンライダーキックがアナザーリュウガを打ち抜き爆散する中、オニキスは地面へと着地する。
それに遅れて気絶した匙とアナザーリュウガウォッチが地面に落ちる。

「匙!」

慌てて匙に駆け寄るソーナ。アナザーリュウガに変えられる前にナイトローグに暴行を受けた傷や、先ほどのオニキスとの戦いでボロボロになっているが命に別状はない様子だ。

「雫、匙の治療を」

「うん、分かった」

ベルトからカードデッキを外しながら雫に匙の治療を頼むと、それに答えて匙に駆け寄って治療の術をかける。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

ソーナの感謝の言葉を受けながら雫は匙へと治癒の術を施す。
ボロボロになって居た匙の体は雫の治療の術を受けた影響で、表面的な傷は無くなっていく。

「うん、骨折とかが無くて良かった」

骨折した状態では、今彼女の使える術では正しく嵌めた後ではないと歪な形に固定されてしまう恐れがある為だ。
また使えない最上位の術ならば文字通りの完全回復をさせることの出来る奇跡に近い物であるのでその心配もないのだが、今の雫には使えないので、それは幸いだった。

匙だけで無く他の眷属も治癒してくれた雫に何度も感謝しているソーナを他所に四季はアナザーリュウガのライドウォッチへと視線を向ける。

「どうしたの?」

そんな四季の姿を怪訝に思った詩乃が問いかけてくる。

「いや、アナザーリュウガのウォッチが」

『完全に破壊されて居ない』と言葉を続ける四季の視線の先には、罅こそ入っているが砕ける様子もなく転がっているアナザーリュウガのウォッチが有った。

「っ!?」

念の為に回収しようとそれに触れた瞬間、アナザーリュウガのウォッチは輝きと共に砕け散る。



『龍騎!』
『リュウガ!』



アナザーライドウォッチが砕けた後には先ほどまでの怪物然とした姿では無く、騎士甲冑を思わせる赤い仮面ライダーの顔の描かれたライドウォッチと、オニキスによく似た仮面ライダーの顔の描かれた二つのウォッチが落ちて居た。

その二つのウォッチは龍騎ウォッチとリュウガウォッチだ。
両方ともアナザーライダーの物では無く、正式なライドウォッチの方である。

その二つを手に取った瞬間、黒い影が四季を襲う。

「っ!?」

「四季!」

突き飛ばされた自分を支えてくれた詩乃に感謝しつつ、襲いかかって来た影へと視線を向ける。

「ナイトローグ!」

「ふう、奪えたのはリュウガウォッチの方だけでしたか」

影の正体ナイトローグを睨みつけながらその名を叫ぶ四季を他所に、ナイトローグは手にしたリュウガウォッチを眺めながらそう呟く。

「まあ良いでしょう。暫くその龍騎ウォッチは貴方に預けておきましょう」

手の中にあるリュウガウォッチに触れるとウォッチの形が変形して『2002』の数字とリュウガのクラストが現れる。

それを確認すると四季へとその言葉を残して背中から羽を広げ、ナイトローグは飛び去っていく。

「あいつ、ライドウォッチが目的だったのか?」

四季の手の中にあるのは龍騎のライドウォッチとオニキスのカードデッキの二つ。
敵の狙いは二つのライドウォッチだった、そう考えるとそれ以外に選択肢はなかったとはいえ敵の思惑通りに動いてしまった感がある。

例えようのない不安を感じてしまうが、それでも何とかなったことは素直に喜ぶべきだろう。


























「この度は本当にありがとうございました」

雫に治療されたが、念の為にと匙を含めた眷属が病院に運ばれた後、ソーナは改めて四季たちへと感謝の言葉を述べる。

「別に気にしなくても良い。今回は偶々オレの手元に解決させる手段があっただけだ」

「いえ、それでも私たちが助けられたのは事実です。それと、申し訳ないのですが」

ナイトローグやアナザーリュウガの危険性を考えて姉に報告する為、後日四季たちの持っているナイトローグの事について教えてもらいたいと言ってソーナは立ち去っていった。

生徒会役員である眷属全員が入院する羽目になったのだから、暫くは悪魔の活動だけでなく生徒会の仕事もソーナ一人で回していく必要がある為、大変だろう。

こうして、多くの謎を残しながらも、ナイトローグとの初遭遇になった一件は、新たにオニキスの力を手に入れ、敵が残した龍騎ウォッチを入手した結果でアナザーリュウガの事件は解決したのだった。
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