第三章『動き出す闇』

「何、この状況は?」

放課後、軽音部の部室からの帰り道で詩乃が校庭の光景を見て呟く。

目の前にあるのは、数珠繋ぎのニンニクを持った子猫に追いかけられている、初めて見る金髪の少女という妙な構図。

「いや、あれは女の子っぽいけど男だな」

ふと、追いかけられている金髪の少女を見て、四季は喉を指差す。

「微かだけど身体的特徴が男の物だな、彼は」

「え!? 一発で男って見抜いたのか、天地!?」

四季の呟きに反応したのは花壇の手入れの帰りにイッセー達と会っていた匙だった。

「ん、匙か? ああ、実際、細かな部分の身体的な差が明らかに男の物だからな」

実際、変装を見抜く為にも使える部分、主に喉に注目してみれば辛うじてわかる。

「でも、どう見ても詐欺だよな」

「何というかグレモリー先輩の眷属って能力と素質は有っても変わり者が多いよな」

変態のイッセー(新人)を筆頭に、ドSの朱乃に、女装癖の男の娘と。比較的まとも寄りの木場と子猫も精神面での問題を抱えている。
いや、初期のイッセーの前からいるグレモリー眷属は全員精神面に問題はあるので、それは今更だろう。寧ろ、一番マシなのが、イッセーの後に眷属入りしたアーシアだろう。

「それにしても、なんであんな事を」

「聞いた話だけどな……」

匙から金髪の女装少年の事情を聞くと思わず頭を抱える。

「そりゃ、体を鍛えるよりもアレは先ず精神面でのケアとかの問題だろう。間違い無く逆効果だぞ、あれは」

体を鍛える代わりに精神追い詰めてどうする。そんな呆れを込めて呟く。

「……天地先輩には何か考えがあるんですか?」

何時の間にやら休憩にでも入ったのだろう小猫が四季にそう問いかけて来た。
そんな中で、見たことの無い人との遭遇に怯えて、匙から教えられた女装少年『ギャスパー・ヴラディ』が木の影に隠れながら此方を伺っている。

「考えも何も、精神面の問題なら体を鍛えるよりも先にカウンセリングを受けさせるのが先だろう」

もっとも、あの怯えようでは普通の方法では種族関係無く受けさせるのも手間だろう。
そう、普通の方法では、だ。

幸いにも四季には普通では無い方法で彼と似た境遇の者と合わせる方法がある。
……態々それをやってやる義理も無いが。

「うぐっ……。う、うるせー、お前の指図なんて受けるかよ!」

まあ、そんな四季に真っ先に噛み付いてくるのもイッセーだが。四季の言い分も最もだと思ってしまったのだろう、言葉の節々に動揺が見える。

「ああ、指図する気も無いし手伝う気も無いから、そっちの身内の問題は好きにしてくれ」

「……あの、天地先輩、何か方法が有るならアドバイスだけでも頂けませんか?」

だが、イッセーとは違い四季への反発心が無かった小猫は方法が有るなら教えて欲しかった様だ。

どっちにしても目の前でそれを使ったとしても簡単にバレる事は無いだろうから見せてもそれはそれで構わない。
……ナイトローグ達から狙われるかもしれないが、それは今更だ。

どうするかと考えている時だった。


「へぇ、悪魔さん方はここで集まってお遊戯しているわけか」


そんな時、新たな声が響いて来た。校門のところに居たのは何時か会った男、アザゼルだ。

「よー、赤龍帝、龍の魔術師、あの夜以来だな」

「ッ!!! アザゼル……ッ!?」

その男の顔を見た瞬間、|赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》を出現させ臨戦態勢に移るイッセー。
同時に小猫と匙も前へ出て臨戦態勢をとる。後ろに立つのは回復役のアーシア。

「ひょ、兵藤、アザゼルって……?」

「マジだよ。オレはこいつと何度か会ってる」

匙が震える声でイッセーへと問いかける。まさか堕天使のボスとこんな所で遭遇するなど思っても見なかったのだろう、信じられないという言葉をイッセーが否定する。

「ほら、後ろの連中を見習って構えを解きな。下級悪魔イジメをする気はねえ」

そんなイッセー達の戦意も意に介して居ないと言うのがまるわかりな態度で忠告するアザゼル。
その言葉が物語っている。コカビエル相手に手も足も出なかったお前達などオレの敵じゃ無い、と。
そんな言葉に苛立ちを覚えるが、アザゼルの言葉に引っかかる物を感じた。

(後ろの連中?)

後ろを見てみるとアーシアよりも後ろに下がってイッセー達を眺めている四季と詩乃の姿があった。

「天地、おまえ何やってんだよ!?」

「いや、アザゼルに戦意は無かったしな」

戦う気がないならそれで良い。とばかりに、悪魔と堕天使の関係には興味なかった四季は我関せずを貫き、詩乃もその四季の判断に従った訳だ。

「そういうこった。それより、聖魔剣使いは何処だ? ちょっと見に来たんだが」

「木場はいない! 木場を狙ってるならそうはさせない!」

「ここに居ないなら、この時間なら、居るなら部室とかじゃないのか?」

「天地、お前!」

アザゼルの言葉に敵意をむき出しにするイッセーだが、そんな、イッセーの態度を他所に四季は旧校舎を指差しながら、木場がいるであろう場所を態々推測ではあるが教える。

「態々堕天使のボスが直々に悪魔への宣戦布告みたいな事をするくらいなら、白龍皇を使ってコカビエルを止めはしないだろ?」

要するに珍しい禁手に至った神器を見たいだけだろうと考えて、下手に邪魔をせず、さっさと用件を済ませてお帰り願いたかったわけだ。

「……ったく、そっちの龍の魔術師ならともかく、コカビエルにも勝てなかったくせにオレと勝負できるわけねえだろ」

そんな呆れの篭った声でイッセーに告げると、

「そうか、聖魔剣使いは居ないのか。つまんねえな」

興味のあった亜種の禁手の持ち主がいない事を知り残念そうに呟くと木の陰に隠れて此方を伺っているギャスパーの姿に気付く。

「おい、そこのヴァンパイア」

「ヒッ!」

「『|停止世界の邪眼《フォービドゥン・バロール・ビュー》』の持ち主だろう? 五感から発動する|神器《セイクリッド・ギア》は持ち主のキャパシティが足りないと暴走することがあり危険な代物だ。不足している要素を補助具で補えば良いと思うが……悪魔側は|神器《セイクリッド・ギア》の研究が進んで居なかったな」

そこまで言うとアザゼルはどうしたものかと思って考えると今度は匙を、正確には彼の腕の|神器《セイクリッド・ギア》を視界に入れる。

「そっちのお前、それ『|黒い龍脈《アブソーブション・ライン》』だろ? それ使って練習してみろ。あいつに接続して神器の余分なパワーを吸い取りつつ発動すれば暴走も少なく済むだろう?」

「なるほど、強力過ぎる神器の力を匙の神器で吸収することで、適度に抑制して特定の物を止める練習をさせるわけか。同時に匙の訓練にもなりそうだな」

「おっ、分かるか、龍の魔術師」

アザゼルの言葉の意味を理解した四季の呟きに嬉しそうに反応するアザゼル。

「……オレの神器、相手の神器の力も吸えるのか?」

「ったく、これだから最近の神器所有者は……。自分の力を碌に知ろうとしない」

「匙、武器の基本的な使い方と応用方法を探すのは強くなる基本だぞ」

「ぐぅ」

アザゼルの言葉に同意する四季に落ち込んだような顔を見せる匙。以前に自分を襲ったナイトローグにさえ自分の神器の応用的な使い方を解説された事を思い出してしまったのだ。

その後、匙の神器の事を研究者のアザゼルから解説される。今まで知らなかった事に何気に高揚感を覚える匙だった。

「吸収なんて力を除いても、お前の神器は丈夫なワイヤーとしても使えるから、そっちの使い方も調べた方が良いんじゃないのか」

続いて四季がそう提案する。

「建物の中なら天井を伝って自在に動けるだろうし足場の悪いところでもうまく使えば自在に動けるようになるだろう」

「いや、そんな事を言われてもワイヤーの使い方なんて分かんねえよ」

「まあ、最初はワイヤーじゃなくて鞭みたいな武器と考えれば良い。先ずは狙った場所に正確に巻きつけたりして武器を奪ったり出来るようにしたりとかな。それに」

匙の言葉に笑みを浮かべながら懐からそれを取り出す。

「ある偉い人は言っていた。映画はなんでも教えてくれる、とな」

『スパイダーマン』とあるDVDを匙に渡す。
……後日レーディングゲームで、匙はまだ未熟ながらスパイダーマンを思わせる動きで襲いかかる匙の姿が見られるのだった。

「その吸血鬼に赤龍帝を宿した者の血を飲ませるのが能力をあげるのに一番手っ取り早いんだが、まあ後は自分達でやってみろや。精神面は……龍の魔術師に方法があるって言うなら間違い無く任せた方が良いぜ」

神器は持ち主の思いによって左右される。力を恐れる乱れた心のままでは、力を抑えたところで暴走の危険は何時までもなく無くならない。そう告げる。

「そうそう、ウチの白龍皇が勝手に接触して悪かったな。あいつは変わったやつだが今すぐおっ始めようと思っちゃいないさ」

思い出したようにヴァーリの行動を笑いながら謝るアザゼル。

「まあ、今現在で、宿敵との実力の差が天と地ほどにあるからな。もう少し強くならないと向こうにも戦う価値も無いだろう」

「うるせーよ、天地! 大体、あんたも人のこと言えないだろう! それは悪いと思わないのか!?」

「思わねえよ。これはオレの趣味だ」

イッセーの言葉に表情1つ変えず、悪びれた様子もなくそう告げてアザゼルは立ち去っていく。

「さて、オレ達も帰るか」

「待ってくれ!」

「ん?」

アザゼルも帰った事なので帰ろうと思った時イッセーが四季を呼び止める。

「…………さっきは悪かった。頼む、力を貸してくれ」

イッセーがそう言って頭を下げてくる。

「あ、あの、是非お願いします!」

「……私からもお願いします、天地先輩」

続いてそう頼んでくるアーシアと子猫の二人。

「……契約の事が有るのは分かってます。だけど、何か方法があるなら、対価はお支払いしますから、お願いします」

そう言って頼んでくる子猫の姿に四季は詩乃へと視線を向ける。

「何とかしてあげられない?」

詩乃からもギャスパーへの対応を頼まれてしまった。ギャスパーの姿は詩乃にとっても何処か他人事には思えなかったのだろう。

「はぁ、仕方ない。即効性がある訳じゃないし、効くかはわからないのは理解しておいてくれ」

流石に子猫にそこまで頼まれては無下にはしにくいし、詩乃にまで頼まれたのでは断れない。

「ヒッ!」

四季の視線が向くと怯えて木の影に隠れてしまう。

「何もしないし、すぐに済むから安心してくれ」

そう言ってポケットの中からキバライドウォッチを取り出し怯えているギャスパーにそれを渡す。

「それのスイッチを押せばそれで終わりだ」

「は、はいいいいいぃ!」

四季から受け取ったライドウォッチを受け取りそのスイッチを押す。




『キバ!』




「あう!」

そのまま倒れ伏してしまうギャスパー。その手からはキバライドウォッチが落ちる。

「ギャスパー! おい、お前、何をしたんだよ!」

「そんなに騒ぐなよ。上手くいかなくてもすぐに目を覚ますから安心しろ」

そう、四季が考えたのは同じ境遇だった者に相談に乗せる事だ。
仮面ライダーキバ、紅渡。彼ならば適任だろう。
キバライドウォッチの中に歴史と共に存在しているであろう彼ならばギャスパーのカウンセリングにはもってこいだろう。


意識を失っていたのは一瞬でも十分に会合はできた事だろう。あとは目を覚ました後のギャスパー次第だと考えてキバライドウォッチを回収すると詩乃と共にその場から立ち去っていく。




***


小猫から聞いた話ではキバライドウォッチを使ったカウンセリングは効果は出たそうだった。
他にも色々と会った様子だが、目の部分だけ開いた紙袋を被った変質者そのままの姿を気に入ったのはどうかと思う。

そんな事のあった週の休日、四季は神社に呼び出されて居た。

「また面倒な事に」

どうも、サーゼクスは他の勢力に四季達との契約の事は知らせていないのだろう。今回は天使側からの呼び出しである。
まあ、聖書勢力と四季達は呼んでいるが、彼らは自らの事を三大勢力と呼んでいる。つい最近まで戦争していた者達同士にそんな頻繁に連絡取り合える手段があるとは思えないので仕方ないといえば仕方ないが。仮に連絡を取り合っていたとしても、別勢力である以上は悪魔の契約とは関係ないとも言えるが。

内心溜息を吐きながら神社の石段を登っていくと、鳥居の所に二人の人影が見えた。イッセーと朱乃の二人だ。

「ゲッ、なんでお前が居るんだよ、天地」

「それはこっちの台詞だ」

「ええ、実はここでお出迎えしなければならない方が是非天地くんと会いたいと仰ってまして」

「オレもその人に呼ばれたわけだ。文句だったらそっちに言ってくれ」

イッセーの言葉を切り捨てて新たに現れた気配へと視線を向ける。

「それで、なんでオレを呼んだのか聞かせて貰えますか?」

四季の視線の先にいるのは天使の翼を背負った金色の鎧を着た男。

「初めまして、赤龍帝、兵藤一誠くんと、龍の魔術師、天地四季くん。私はミカエル、天使の長をしております」

四季の言葉に答えるように柔らかく微笑みながら挨拶を告げたのはミカエル。天界のトップである。

「なるほど、このオーラの質は正しくドライグの物。懐かしい限りです」

(お迎えって……天使の長を!? チョー大物じゃないですか……ッ!?)

一勢力のトップの登場に内心で驚きの声を上げるイッセー。そんな彼を他所に内心悪魔側の契約の穴を探るような行動に心の中で溜息を吐く。

(大体想像できるけど、何でオレまで呼ばれたんだ?)

そう、呼ばれた理由は大体想像できるが何故自分が呼ばれたのか考えて頭を抱えてしまう四季だった。

そんな中、先ずはイッセーへの用事を済ませようと神社の一室に案内される。

「先ずは、貴方にこれを授けようと思いましてね」

「こ、このオーラは……聖剣!?」

その部屋の中央に浮かぶのは一振りの剣。その剣の放つオーラは四季のエクスカリバーには劣るがまさしく聖剣の物。

「これはゲオルギウス、聖ジョージの持っていた|龍殺しの聖剣《ドラゴンスレイヤー》『アスカロン』です」

龍殺しの聖剣なんて、ドラゴンの神器を宿した転生悪魔のイッセーには毒以外の何者でもないのではとは思ったが……

「特殊儀礼を施しているので、悪魔の貴方でもドラゴンの力が有れば扱えるはずです」

一応その辺のことは考えてある様子だった。
白龍皇との因縁を考えると龍殺しの聖剣は良い武器になるだろう。問題は剣を扱ったことも無いイッセーが使えるかどうかだが……

「貴方が持つというよりは|赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》に同化させると言った感じでしょうか?」

「そんなことが可能なんですか……?」

『神器は思いに応える。お前が望めば出来るだろう』

ミカエルの言葉をドライグが肯定する。
其方も問題はなかった様子だ。籠手と一体化していれば剣として使わなくてもタダ殴るだけでも聖のオーラや龍殺しの力を宿した攻撃ぐ可能になるだろう。
特に全身鎧になる禁手まで使えば全ての攻撃が龍殺しの効果を得る可能性もある。

(ドラゴンに龍殺しの武器って……何処のウォーグレイモンだ?)

そんな感想を持ってしまう四季であった。

「そんな貴重な物を何で手間をかけてまでコイツに?」

「私は今度の会談は三大勢力が手を取り合う大きな機会だと思うのです。我らは創造主の神を、悪魔は旧魔王達を先の戦争で失い、堕天使も大きな犠牲を払いました。アザゼルもまた戦争は起こしたく無いと建前では口にしています。これは好機なのですよ」

ミカエルの言葉は、そこだけ聞けば寧ろ堕天使が被害が少ない様にしか聞こえない。残酷な言い方だが、質はともかく数は時間があれば幾らでも回復できる。
それに対して、魔王と神と言う代わりのいない勢力の大きな支柱を天使と悪魔は失っているのだ。
いや、サーゼクスやセラフォルーと言った次世代の育っていたことを考えると悪魔の被害も天使ほど大きくなかった可能性だってあるのだ。

そして、堕天使の幹部の一人の暴走とそれを止められなかったアザゼルの失態。表向きはコカビエルの暴走を三大勢力の者が協力して止めたという事になっている今回の事件。
今回の会談を機に終戦の落とし所を模索しようという事なのだろう。

「つまり、正式に三大勢力から聖書勢力になる、と?」

「ええ、それが出来れば理想ですね。このまま小規模な争いが断続的に続けば何れ滅ぶ。ましてや、他の勢力の懸念も有りますし」

(他の勢力、ね)

ミカエルの語る他の勢力と言う言葉に納得する。ナイトローグ達がそれを名乗って既に活動しているが、禍の団の存在は天界側も掴んでいるのだろう。

「この聖剣は天使側から悪魔側への贈り物です。勿論堕天使側にも贈りました。悪魔側からも聖魔剣を十数本頂きましたしね」

珍しい聖と魔の力を宿した剣だが、敵に使われた挙句四季の異世界のエクスカリバーにアッサリと切り捨てられた品なのだが、十数本になれば価値的にも釣り合うのだろう。

「そうそう、分からないって顔してるから教えてやる。本来、聖書以外にも神話勢力は存在していて……お前のドライグもエクスカリバーも聖書とは関係無いドラゴンと聖剣だぞ」

アーサー王がキリスト教徒だったかどうかは別にしても別神話の勢力下のドラゴンと聖剣である。

「付け加えるなら、白龍皇、ヴァーリの言っていたトップ10にランクインするほどの猛者がいるのがインド神話だな」

「????」

その強さランキングのトップ10の強さが想像ができないのだろう、イッセーは?マークを浮かべている。
文字通り次元の違う強さの上位の2つのムゲンだけでなく、文字通りなったばかりの転生悪魔のイッセーとは次元の違う力を持つ存在の強さは想像出来ないという事だろう。

「過去我々と敵対した『赤い龍』が悪魔になった事を知りましてね。ご挨拶と共に悪魔側への私達からのプレゼントの1つとして、あなたにこの剣をお渡しするのです。あなたはこれから龍王クラスのドラゴンや『白い龍』に狙われるでしょう」

そう、既に二天の龍の片割れを宿したイッセーを殺す事は相応の価値が出てしまっている。
単純に危険だから、赤龍帝を殺して名を上げるため、そしてその力の引き寄せる因縁。
少なくとも荒事のタネは尽きない。

「歴代の中で人間に負けた『最も弱い宿主』と噂の貴方にとって良い補助武器になると思いまして」

にこやかに精神に突き刺さる事を言ってくれる天使の長でした。しかも、本人には一切の悪意がなかったから余計に精神に突き刺さる。

(最弱でごめんなさい! これでも努力してるんですけどね……。ってか、天地!? 爆笑してんじゃねえよ!?)

悪意の一切ないミカエルの言葉に心底落ち込んでいるイッセーの姿と、悪意の一切ない言葉に爆笑している四季であった。

三大勢力はかつて二天龍との戦いにおいて一度だけ力を合わせ戦った事があり、今度はその二天龍の片割れの神器を宿したイッセーに、その時の様に再び手を取り合える様にと願を掛けたのだと語る。

そして、アスカロンに籠手で触れるとイッセーの籠手とアスカロンは一体化して無事合体した様だ。

「上手くいった様ですね。それでは、次は貴方への用事なのですが……」

それを確認するとミカエルは四季へと向き直る。

「貴方の持っている異世界のエクスカリバーを我々に譲って頂けませんか?」

「それなら二本とも要件が済んだみたいで、持ち主の使いが引き取りに来ましたよ」

ミカエルのその言葉に即座に予め用意していた嘘を返す。
流石に異世界の事など知りようがないだろうし、確かめる方法などないだろう。

「そうですか。それでは仕方ないですね」

その嘘を信じたかは分からないが、ミカエルはそう言って諦める。
2振りのエクスカリバー。それも、特別に強力であろう型月世界の物なのだから、欲したとしても無理はない。

「それではもう一つ……君達の勧誘だったんですが」

「お断りします」

即座にそう返す。天界の勢力に入った所で利益もないのだ。

「もう少し考えてくれても、良いと思うんですけどね?」

そんな四季の言葉に苦笑しながらそう返すミカエル。

「ですが、君達の力は無視出来ないほどの物である事は覚えておいて下さい。その力は何処の勢力も欲する筈です」

「それについては自覚しています」

「貴方達自身の力だけでなく、貴方達の持っている武具に使われている技術についても」

「……」

「特に教会の技術者達はクリスさんでしたか? 彼女の武器に興味を持っています。同じカケラを使った武器と言うのに、此方の|聖剣《エクスカリバー》を遥かに超える強力な武器に仕上がっているのですから」

「いや、それについては開発者にコンタクトを取ってくれ」

そう言って『フィーネ』の名を告げておく。どっちにしてもこの世界にいない奴の名前を教えた所で問題はないだろう。

それでも、クリスのイチイバルの技術を研究したいと考える者は多いそうだ。カケラからでもあれ程強力な武器が作れるのならば、大量生産も容易いのではと。

この世界でシンフォギアを再現出来るかは心底疑問だし、何より適合者の問題は出てくる。その点について敢えて教える義理もなければ、筋合いも無いが。

それだけ言ってミカエルは立ち去っていく。そんなミカエルにイッセーは何か言いたいことがある様子だったが、会談の時に聴くと言って立ち去って行った。
4/6ページ
スキ