第二章『聖剣! 二つのエクスカリバー』

「ま、まだだぁ!」

ボロボロになり、ダークワイズマンの姿から元の姿に戻りながらなおも戦おうとするコカビエル。

「そ、そんなになっても、まだ戦おうってのかよ?」

「当たり前だ! あの戦争で確かに神も魔王も死んだ! 確かに堕天使は総統も幹部も生きている! だがな、そんなものはどうでも良い!」

ダークワイズマンになっていたとは言えドラゴンブレスと二本のエクスカリバーの真名解放を受けてもなお立ち上がるコカビエルに畏怖を覚えるイッセー。
そんなイッセーの言葉にコカビエルは絶叫しながら答える。今までの余裕がある言葉ではなく、慟哭のような叫びだ。

「どれだけの部下があの戦争で犠牲になったと思っている! それを貴様らに宿る二天龍に乱入され、中途半端なまま和平などと言われて、あいつらの無念はどうなる!?」

そう叫びながらコカビエルはイッセーを睨み付ける。

「そういう意味では赤龍帝の宿主、貴様は忌々しい。貴様の主人がフェニックスの三男と婚約していれば、バラキエルも今頃はこちらに着いていたかも知れんというのに!」

女好きのライザーの性格上、間違いなくリアスの女王の朱乃にも手を出していたことだろう。………………|堕天使幹部の娘《色々とヤバい立場の女》に。
それが原因でバラキエルが加われば好戦派の勢いは大きくなる。最悪の場合、バラキエルに従う形で堕天使勢力の軍部が完全に好戦派一色に染まっていた可能性さえもあるのだ。

何気にイッセー、戦争の回避に一役買っていたのかも知れない。

「こんな所で」



『|白い魔法使い《ワイズマン》』



再度起動させる白い魔法使いのライドウォッチ。
本来ならば再びコカビエルをダークワイズマンへと変えていただろうが、今は違う。



『ビースト』
『メイジ』




新たに現れる二つのライドウォッチと白い魔法使いのウォッチが光で繋がると今度はビーストライドウォッチが四季のウィザードリングと光によって繋がれる。

「っ!? しまった!」

何が起こっているか分からないが、まずいと判断した四季はビーストウォッチから繋がる光をなんとかしようするが、今度は四季のリングとメイジのリングから伸びる。
その光の交わる先へと視線を向けると、そこには学園の屋上から彼らを見下ろしている一つの人影があった。
その人影はゆっくりと屋上から飛び降りると、



『チェンジ、ナーウ』



屋上から舞い降りながら、その人影は金色の魔法使い『仮面ライダーソーサラー』へと姿を変える。

「予定より早くなっちゃいましたね」

その外見からは似合わない美しい声がソーサラーの変身者が女性である事を思わせる。
そして、ソーサラーの指にはめられたソーサラーのチェンジウィザードリングにウォッチとウィザードのリングから伸びる光が繋がれている。

「でも、これで揃いました」

ソーサラーの言葉と共に三つのウォッチと二つの指輪が光に繋がれ、その中央に輝きを放つ一つのウォッチを生み出す。



『コネクト、ナーウ』



「これで、完成ですね」

『クスッ』と笑いながらソーサラーは呟くと自身が手にしたそのウォッチを起動させる。



『インフィニティスタイル』



ウォッチから鳴り響いた起動音は四季にとって想像できていたものではあるが、想定していた中で最悪の音。

「貴方のお陰でこれを完成させる事が出来ました。我々は心から貴方に感謝します、コカビエルさん」

インフィニティスタイルのライドウォッチを手の中に収めながら、満足気にソーサラーはコカビエルに一礼する。

「貴様等、オレを利用していたと言うのか!?」

「利用? それはお互い様だと思ったんですけど? それに、私達は貴方からそれを奪おうとは思いません。それは貴方の手に渡った時点で貴方のものです。どうぞ、ご自由にお使いください」

そこまで言った後、ソーサラーは「ですが」と告げてコネクタの魔法を発動させ、コカビエルの手の中からライドウォッチを奪う。

「貴様!」

そして、コカビエルに見えるようにウォッチのスイッチを入れるが何度押しても起動しない。

「このウォッチは先ほどの彼の攻撃によるダメージで内部が破損していますね。アフターフォローの一環としての修理のため一時預からせて頂きますね」

アフターフォローも万全な妙にサービスの良い悪人だった。その言葉に周囲が何とも言えない沈黙に包まれる。

「修理が完了次第貴方の元にお届けしますので、ご安心ください」

「それを使って逃げるのもご自由に」と、そう言って一礼するソーサラー。
堕天使勢力の本拠地に自由に入り込めると暗に言っているソーサラー。その言葉の意味を正しく理解する者の中で最初に動いたのは白龍皇だった。

「そこまで言われて逃すと思うか?」

「うーん、わたしは逃した方が良いと思うんですけどね~。貴方じゃ今の私には勝てませんし」

挑発とも取れる言葉。仮にも堕天使の幹部を捕らえる為に送られた以上はその実力は堕天使側の中でも上位に位置するだろう。
そんな相手に対して自分には勝てないと言い切るソーサラーに対して、

「なら、試してみるか?」

そう言って白龍皇がソーサラーへと仕掛けるが、

「仕方ないですね~」



『インフィニティスタイル』



ライドウォッチの起動音が響いた瞬間、白龍皇が吹き飛ばされる。

そして、それを成したであろうソーサラーの手は逆さまになった斧のような剣を振り下ろしていた。

それを見た瞬間、四季は『アックスカリバー』と言うソーサラーの持った武器の名前を呟きそうになるが、その言葉を飲み込む。
ソーサラーの手の中に何故ウィザードの最強の武器があるのかと言う疑問は既に疑問ですらない。インフィニティスタイルのライドウォッチの力だろう。

「だから言ったじゃないですか、私には勝てないって」



『テレポート、ナーウ』



それだけ告げてソーサラーの姿は魔法陣の中に消える。

「さて、コカビエル、あんたを無理矢理にでも連れて帰るように言われてるんだ」

「ああ。抵抗はしない」

先程とは打って変わって抵抗する意思の消えたコカビエルは大人しく白龍皇に連行される様子だ。

『……無視か、赤いの』

そんな時、白龍皇の翼から先程とは異なる声が響く。それがドライグと対になる本当の意味での白龍皇、アルビオンの声なのだろう。

『……』

何故かドライグは返事をしない。

『起きているのは気付いているぞ。ついさっき、禁手寸前まで力を高めておいて今更寝たふりとはな』

『っ!? 気付いていたのか、白いの!?』

『あそこまで力が高まっていて気付かない訳がないだろう』

心底知られたくなかったと言う意思が声に出ているドライグだった。まあ、状況が知られてないだけマシな方だが。

『せっかく出会ったのにこんな状況とはな』

『いいさ、いずれ戦う事もある』

『しかし、以前の様な敵意が伝わってこないが?』

『そちらも敵意が段違いに低いじゃないか。お互い戦い以外の興味対象が有ると言うことか?』

『そう言う事だ。暫く独自に楽しませてもらうよ。偶には悪くないだろう? また会おう、ドライグ』

『それも一興か。じゃあな、アルビオン』

取り敢えず、言葉とは裏腹にライバルに呆れた理由で力を高めた事を知られずに済んで心から安堵したドライグだった。
なお、そんな会話についていけていなかったイッセーが「お前のせいで部長の乳が吸えなくなった」と叫んでいるが、

「フフフ、全てを理解するには力が必要だ。オレも必ずあの屈辱を返す為に強くなる。だから君も強くなれよ、いずれ戦う宿敵君」

そう言った後四季へと視線を向け。

「君ともいずれ戦って見たいな龍の魔法使い君」

そう言い残してコカビエルを連行して言って飛び去っていく。

「……もしかしてオレも目を付けられた?」

「そう見たいね」

四季の言葉に詩乃が答える。|戦闘狂《バトルマニア》に目を付けられた現状に思わず頭を抱えたくなる四季だった。

「まあ、今は無事に終わった事を喜びましょう」

「確かに」

白龍皇が去って言った事を確認して二本のエクスカリバーをタクティカルベストのポケットの中に、次にウィザードライバーとリングをしまって行く。

後に残ったのは戦いの傷跡を残す廃墟寸前の学園とバルパーの屍、四季の本物のエクスカリバーによって砕かれた統合聖剣と聖魔剣の欠片と……完全に打ちのめされている木場と言った戦いの痕。

「四季お兄さん、これ」

「ありがとう」

雫が拾っておいてくれたのだろう、何度も投げ飛ばされたオニキスのカードデッキ。それを受け取ってポケットの中に仕舞う。

「しかし、本当にどうなってんだ、そのポケット」

「オレもよく分からない」

明らかに入らないサイズの剣や変身用のベルトまで綺麗に全部収納しているタクティカルベストのポケットに疑問が尽きない様子のクリスだが、実際の所どう言う原理でそうなってるのか四季もよく分かっていない。

その辺は天才物理学者の頭脳でも簡単には理解できない代物なのだし、四次元ポケットの様な物と納得して置くことにしておく。

役目は終わったとその場から立ち去ろうとするが、

「ちょっと良いかしら」

リアスに呼び止められる。

「そっちの騎士の行動については咎める気は無いし、復讐が果たせなかったことについても謝る気はないぞ、グレモリー先輩」

木場の作った聖魔剣が敵に使われたのは単なる事故と言うことで納得しておく事にした。

「そう言ってもらえるとありがたいけど、私は一つ聞きたい事が有るの」

そう言った後、リアスは言葉を続ける。

「本物のエクスカリバーを二本も持っているのも聞きたいけど、あの金色の魔術師はソーナの眷属の|兵士《ポーン》を怪物に変えた犯人の仲間よね。……貴方があの魔術師と同じ力を持っているのは何故?」

「へえ?」

思わぬ質問に興味深そうな笑みを浮かべる。
流石にテロ組織(まだ禍の団の事は知られていないが)の構成員と同じ力を持っているとなれば聞かなければならないだろう。

「ウィザードライバーの事か? ああ、あれはオレが作った」

THE大嘘。
一応、ビルドドライバーやスクラッシュドライバーは作れるのであながち嘘ではない上に、ウィザードライバーは元々現代で作られた変身システムなのだ。
アーキタイプのビーストと違いある程度の分析と改造は可能だろう。構造を完全に理解するのには時間が掛かったが、材料さえ揃えば新規に作成するのも可能だろう。
……ファントムや魔法石のリングの存在無しで作った所で意味があるとは思えないが。

「原型となるものの開発段階の研究資料の写しを手に入れて、それを参考にな」

入手してから万が一に備えて修理が出来るようにウィザードライバーを始めとして、ウィザードの装備については分析済みだ。念の為にノートに資料としてメモしてある。

「序でに言うと研究者の名前は『|笛木《ふえき》  |奏《そう》』って言うそうだ」

この世界には居ない仮面ライダーウィザードを生み出した真の白い魔法使いの名を告げるのも忘れずに。

「見た所、あの金色の奴が使ったのは研究データをそのまま完成させたタイプで、オレのはオレが使いやすい様にカスタマイズしたタイプだな」

「そう」

四季の説明に納得したのかは不明だがその説明で引き下がってくれた様子だった。
今はそれよりも優先する事が有るのだろうし、まだ正式に結ばれて居ないとはいえ不可侵の契約の話もある以上、その資料についても譲ってもらう事は無理と判断したのだろう。




こうして、一つの脅威の存在を確認して聖剣を巡る一つの事件は終わった。

復讐を果たせぬままに終わった、心身共に打ちのめされた一人の騎士を残して。










なお、

「……あっ、聖剣の核、渡すの忘れてた」

統合聖剣を破壊した際に回収した聖剣の核をゼノヴィアに渡すのを忘れて居た事に気が付いたのは翌日の朝の事だった。

















「早速だが、この四人で同好会を立ち上げようと思う」

激闘の後も日々は続く。
コカビエル戦の翌日、四季はそんな提案を三人にして居た。
理由は簡単、どこの勢力にも所属して居ないのは裏関係以外にも学園内の人間関係に於いても、だ。

所属する部活動、或いは同好会に所属していれば学園内でも揃って行動し易いと考えたからだ。

条件としてはオカルトに一切関係する要素がない事。
迂闊に活動内容が被って仕舞えば後々吸収合併されかねない。権力者の後ろ楯相手には下手な理由を持ち出されない方が吉だ。

そんな訳で四季達は学園内での活動する立場として『軽音楽同好会』を結成する事になったのだが、

















翌日、

「それでしたら、私の方から足りない部員と顧問を用意するので正式に軽音部として設立しませんか?」

生徒会に同好会の申請をしに行ったらソーナからそんなことを提案されてしまった。

「部員と顧問ですか?」

「はい」

ソーナの目的は分からないが、部活動として確立させて仕舞えばそれはそれで学園での活動拠点を得る事が出来る。

「それでその部員というのは?」

「それでしたら……」

ソーナが言葉を続けようとした時生徒会室のドアが開き一人の少女が入ってくる。

「やあ」

「ゼノヴィア? どうしてココに?」

駒王学園の制服を着たゼノヴィアだった。原点の世界ではリアスの眷属になって居たはずの彼女なのだが、

「神がいないと知ったんでね。破れかぶれで悪魔に転生した。ソーナ・シトリーから|兵士《ポーン》の駒を頂いて、この学園にも編入させてもらった。今日から君と同じ二年生だ」

「ええ、丁度お姉様から変異の駒を交換して貰っていたんです」

彼女の眷属は学園所属の者は全員が生徒会の役員だが、現状その席は埋まっているので新しく入ったゼノヴィアには役職がない事となる。

「要するに、オレ達への鈴の役割という訳ですか?」

「ええ、そう思って貰っても構いません」

流石に悪魔側としてもコカビエルを撃退してみせた四季達を放置して置く事は出来ないという事だろう。
不干渉の契約があるとは言え下手に監視としてオカ研に入部させられるのは本気で嫌がるだろうし。……特にクリスが。
ならば、一応自分達の縄張りに監視役を引き込んで於いた方がまだ良い。
学園での活動拠点の確保と考えても、部員と顧問を用意してくれて部活動として承認してくれるのならそれはそれで楽で良いのだし。

「分かった、その話に乗ろう」

申請の用紙にゼノヴィアが名前を書くと改めてそれを受け取るソーナ。

「これで、同じ部活の仲間だな。よろしくね、四季くん」

「……いや、真顔で可愛い声を出すな」

表情を変えずに真顔で可愛い声でそう言うゼノヴィアにツッコミを入れる四季。

「イリナの真似をしたのだが、うまくいかないものだな」

「そう言うのは笑顔でやるモンだ」

失敗して落ち込んでる様子のゼノヴィア。こうして、無事に部活動の申請は完了したのだった。
それでも、先程から敢えて触れていなかった点が一つある。

「ところで、そちらの用意すると言う顧問と言うのは」

そう、顧問の影が見えなかったオカ研の事を考えても普通は部活動には顧問が必要だろう。

「その点については心配はいりませんよ。悪魔側の関係者ではないことは保証します」

「悪魔側の関係者……ではない。それって、他の勢力の関係者という意味にも聞こえますけど?」

「ええ、この駒王等の悪魔側が借り受けている土地には、何処も日本神話の監督役が居るんですが」

まあそれも当然だろう。悪魔の領地と言っても駒王の土地は日本神話からの借地、領事館の様なものなのだろう。
今は廃墟とは言え教会もあった事から悪魔だけでなく聖書の勢力全体の、という可能性もあるが。

そして、日本神話の勢力下の中には、その聖書勢力を監視する役割の者も存在する。
今回四季達の部活の顧問になってくれたのはその監視役の人物という事になる。

何の為に、とは言わなくても分かる。どの勢力にも属していない、コカビエルを倒せる力を持った者を初めとして強力な力を持った者が四人。
どこの勢力としても四季達を放って置くことはできないだろう。

「そう、私はもう悪魔だ。後戻りは出来ない。いや、これで良かったのか? うぅむ、しかし、神がいない以上私の人生は破綻した訳だ。……だが、元敵の悪魔にくだるというのはどうなのだろうか?」

やぶれかぶれで元敵の悪魔になったと言う現状を思い悩んでいるゼノヴィア。
盲目的に信じていた頃に比べれば良い傾向なのだろう。

「まあ、悩むのは大事な事だからな、存分に今は悩めば良い。案外、行き当たりばったりに行動するのも悪くないかもしれないぞ。ところで、イリナだったか? もう一人はどうしたんだ?」

「イリナなら私のエクスカリバーとバルパーの遺体を持って本部に帰った。流石に完全な本物のエクスカリバーを相手に核を完全に破壊された以上任務には失敗してしまったが」

「悪用されるよりはマシ、か」

ゼノヴィアから視線を逸らしつつ内心を気付かれないように言葉を続ける。実際は回収した核を返すのを忘れていた訳だが。

「返して良かったのか?」

「一応あれは返しておかなければ拙い。デュランダルと違い使い手は他に見繕えるからね。私にはデュランダルがあれば事足りる」

「堕ちたモンだな、伝説の聖剣も」

エクスカリバーの伝説を考えると紛い物とは言え、簡単に使い手を見繕えるというのは本当に堕ちた物である。

「だが、その事については君には迷惑をかけてしまうかもしれない。流石にイリナの立場を考えると完全破壊された経緯を説明しない訳にはいかなかった」

イリナからの報告で教会に完全なエクスカリバー二本を所持している者がいる事を知られてしまったと言う事だ。
確かにイリナの立場を考えると説明しないという訳には行かないだろう。
エクスカリバー(偽)の破壊には成功したもののコアを含めての完全破壊になってしまった時点で完全に与えられた任務は失敗なのだ。
失敗した際の詳細な報告は必要な事である以上報告する必要がある。

「まあ、完全破壊したのはオレだし、それは仕方ないか」

正確には回収した核を返すのを忘れていたと言う方が正しいが、なるべくこの話題から離れたいと思う四季だった。

「と、ところで、よくデュランダルとセットで使い手を手放せたな、教会も」

「あちらへ神の不在を知った事に関して述べたら何も言わなくなったよ」

「そうか」

暗い雰囲気でそう答えるゼノヴィア。デュランダルの使い手とはいえ神の不在を知ってしまったらその時点で異端者という事なのだろう。
まあ、次代のデュランダル使いのための研究材料やら母体やらにされると言うよりは追放された方がマシなのだろうが。

「アーシア・アルジェント。彼女には謝らなければならないな。彼女の時と同じだ」

尊敬されていた聖剣使いから異端の徒への転落。アーシアと同じ立場になったからこそその気持ちも理解できたと言うことだろう。

その点はイリナは運が良い。決戦前に戦線離脱してしまった為にコカビエルによる神の不在の暴露を聞かずに済んだのだから。

「ただ、私が悪魔になった事はとても残念がっていた。次にイリナと会う時は敵同士かな」

「神の不在の事は教えられないからな」

それなりに仲が良かった様に見える二人だったのだから、そんな形での別れは何とも言えない。
それでも、教えたらイリナも追放に巻き込んでしまうことを考えると、理由を伝える事など出来ないのだから無理もない。

「で、グレモリーの騎士の事は単なる事故で済ませたけど、イッセーの利敵行為についてはどうなったんだ?」

暗くなった空気を変えるのに重くするのはどうかと思うが、他に話題もないのでそれを上げる。

飽く迄裁くのは向こうとイッセーの利敵行為については任せたのだが、

「それについてはリアスの所で行われる様子ですが……」

「やっぱり、魔王の妹の眷属の立場と、赤龍帝の名前が公的なお咎めに対する盾になってるか」

「はい」

まあ、公的なお咎めは無しにしてもイッセーには夏休み中、勝手な行動をしてはぐれになりかけた騎士の再教育と合わせての徹底的に眷属教育が行われるらしい。イッセーの夏休みには休みは無さそうだ。
特に最近眷属になったばかりのイッセーとアーシアには必要な事だろう。本来なった直後に行われると考えると考えれば遅い可能性もある。

だが、問題は別にある。

「表向きには悪魔側からはヒーロー扱いで、か」

「……はい」

そう言って目を落としたのは冥界の新聞の一節。
駒王町に堕天使の幹部が侵入。リアス・グレモリーとその眷属達がコカビエルを堕天使側からの戦力が到着するまで迎え撃った。とある。
まるで活躍した様に書かれているが、戦えていたとは一切書かれていない。
……逆にそのにはコカビエルを倒した四季達のことには一切触れられていない。
まあ、何処の勢力にも属していないフリーの人間四人と教会のエクソシストのゼノヴィアと、堕天使から送られてきた白龍皇が活躍して、悪魔側の赤龍帝は利敵行為で邪魔をしました、等とは悪魔側としては書けないだろう。

(逆にこの対応はこっちにも都合はいいか)

向こうの対応に内心で笑みを浮かべて後々の動きを考える。これを巧く利用すれば夏休みに態々行きたくもない冥界旅行から逃げられるかもしれない。

(せめて夏休みくらいは事件に巻き込まれずに過ごしたいしな)

この時期に起こる事件と言えば小猫と姉の再会だけだろうし、あとは特訓とレーティングゲームだけだ。
精神的なダメージの残る木場にリアスじゃなくてソーナの眷属になっているゼノヴィア。ゲームの結果が変わるかもしれないが、それだけだ。

「それで、近いうちに三勢力の代表が会議を開くそうなのですが、そこに貴方達も出席して欲しいそうです」

「断る。何にもしていないオレ達が出る意味は無い。そうでしょう、会長?」

向こうが何もしないのならば此方も向こうに礼を払う必要も無い。言外にそう告げる四季の言葉にソーナも仕方ないとばかりに「そうですね」と答える。

「それじゃ、他に話もないならオレはこの辺で」

そう言って四季は手を振りながら生徒会室を後にする。
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