第1章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「日本君~!!ひ~の~も~と~くん!!」
とある休日の午後。工藤邸に私を呼ぶ声がこだました。
「優作ったら何大声出してんのかしら」
「何かあったんでしょうか?ちょっと行ってきますね」
一緒に立とうとする有紀子さんを静止して、書斎へ向かう。
「先生?どうされました?」
「データ転送がうまくいかなくてね」
書斎の机の上に開かれたノートパソコンを前に、鼻根を抑える先生が居た
先生は最近流行りに乗ってパソコンで執筆を始めたらしく、今までのように重い原稿を編集社に持っていったり、その事で「工藤先生は時代遅れだ」だの「データ化の手間がかかって面倒臭い」だのと愚痴を言われなくなったので、負担が随分楽になった。
差し当たってこんなことを考えているあたり、表の顔として始めたこの仕事に、普通の人間としての楽しさややりがいを感じているのだろうか。
「これですか、うーん…何か設定が違うみたいですね」
「いじってたらこうなっちゃったんだよ」
見てみると、どうやら何かのソフトが見えない様にバックグラウンドで起動しているようだ。慣れないパソコンで、どこかからウイルスをもらってきてしまったんだろうか
「先生、あとは私が入稿しておきますから、どうぞお先にお休みになってください。お疲れ様です。」
どうせまた締め切りに追われて寝ていらっしゃらないのでしょう、と退室を促した。
「すまないね。そうさせてもらうよ」
大きく伸びをしながら部屋を出ていく工藤先生。
扉がしっかりと閉まるのを見てから、ひとつずつチェックする
ああこれだ、バックグラウンドで起動していた『小説執筆おたすけ丸』とかいうよく分からないソフトがことを複雑にしているようだ
閉じようにも閉じられず、仕方なくプログラムを書き換える。
データを編集社に送り、パソコンを閉じた。
「終わりましたので、これから日売テレビに取材の打ち合わせに行ってきます」
「あら、霞ちゃん!ありがとね~!いってらっしゃ~い」
玄関に行く前に居間に顔を出して有希子さんと新一くんに声をかけ、それから家を出た。
_______________________________
「気は済んだのかい?」
遠くで門が閉まる音が聞こえたあと、キッチンからコーヒーを片手に工藤優作が居間に歩いてきた。
「あぁ。名演技だな父さん」
意味ありげに笑うと、新一はリビングを出ていった。
「ふたりで何企んでるのよ~?私も混ぜて!!」
「今回は新一にやらせてみよう。ひとつ勉強だ。僕達では分からない面白い発見があるかもしれないしね」
「どういうこと?」
「君もすぐ分かるよ」
にこりと微笑んで、湯気の立つコーヒーと共に優作は新一の入っていった書斎に向かった。
「何か手がかりはあったかね、ホームズくん?」
「ん、あぁ」
こっちに来てくれと新一の目が訴える。
優作が隣に来ると、彼がはなし始めた。
「まずこれ。博士に作ってもらったハッカー対策アプリが突破されてるんだ」
パソコンの画面を操作して、『小説執筆おたすけ丸』というタブを開いた。
そこには、
「これ、さっきも話したけど並大抵の人間はもちろん、ハッカーすらやぶれないように作られてんだよ」
「ほう、それが突破されてるとなるとかなりコンピュータには詳しいと見て間違いないということになるが……確か彼女の履歴書にはパソコンは最低限の機能しか使えないと書いてあったね」
「あぁ。だから、アイツは謙遜でそのスキルを隠しているかもしくは……。それから、」
ペラリと透明なフィルムをかざす新一。
「指紋を採取して機会があれば警察のデータベースで照合してもらおうと思って、あいつの使ったソーサーに発光薬を塗ってみたんだけど、」
カチリと強い光を放つ懐中電灯のスイッチを入れた。
「それが出来ない。ほら、全部指紋がねーんだ」
黄色く浮かび上がる細長い形の小さな影。
どれも平坦に影がつき、模様は見られない
「ほぅ、それじゃあ彼女がこの家に出入りするのに指紋を残さないようわざわざ指にキャップか何かをしていたということかな」
「アイツなんか隠してるぜ。怪しい」
「面白いね。次の小説の題材にしようかな。秘書は何かを隠してる…実はスパイかもってね」
コーヒーに口をつけて笑う優作
その様子にムキになって新一が反論した
「笑い事じゃねぇよ父さん!!マジで危ねぇかもしれないんだぞ!」
「そうだな。でもまぁ、彼女は少なくとも私たちに危害を加えるような人ではなさそうだよ」
コーヒーを机に置きながら小さく言った。
「…って、まさか父さん知って…?」
にこりと、大先生が微笑んだ