第1章
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3人を連れて部屋に入り、最上階のバーに行く前に運んでおいた妨害電波を発する装置の電源を入れる。
その機械が高い音を発しはじめ、ライが扉を閉めたところで口を開いた。
「皆さん昔から優秀だったようなので既にお気づきだと思いますが、襟の裏、ズボンの裾の裏に盗聴器とGPSがありますので、それらを壊してください」
英語をやめ日本語 で指示をすると、案の定、公安2人は一瞬絶句した後、こちらを怪しんで睨むような目付きになった。対照的に、FBIの男は微笑している。
特にバーボンの目付きは触れれば傷が着きそうなほど鋭い
しかし驚くことに3人とも従順に盗聴器を身から外し始めたのだ。
これは面白い反応だなぁ、こんな密室で、自分の敵の指示の通りに行動するなんて。
普通なら腰のホルスターに入ったソレで、私をすぐ消そうとするだろうに……
「あんた、もしかして俺達の素性が分かってる……のか?」
スコッチが日本語を使っておずおずと聞いてきた。
随分動揺しているようだ。
「皆さん有名人でいらっしゃるので、存じていましたよ。あぁ、それ、ちゃんと壊したらそこの黒いボックスに放り込んでくださいね」
備え付けのアンティークカップにインスタントコーヒーを淹れ、華奢な造りのローテーブルに置いた。
「さて、どうぞおかけになってください。インスタントですが、コーヒーにミルクと砂糖を入れる方は?」
わざと含ませた笑顔を向けてみると、やはりバーボンが食いついてきた。
「コーヒーなんてどうでもいい。俺達の事を調べてどうする気だ?組織に売るか?」
割と喧嘩っ早いのだろうか、この人は。
「そもそも、ライもここに居る時点で組織には既に…」
おろおろとスコッチが呟く。
あれ、3人ともお互いの素性は知り合ってるんじゃないんだ
私と公安の視線がライに集中する。
ライはこれみよがしに大きくため息を吐くと、懐からシガレットケースを取り出した。
「煙草を吸っても?」
「えぇ。火をお貸ししましょうか?」
いや、いい と、細い手巻きの煙草を口に咥えて、マッチでスマートに火をつける。
白い煙が2度空に浮いたところで重々しく彼は口を開いた。
「俺は組織に潜入するNOCだ」
「「 NOC ?!!」」
ナイスシンクロと言いたくなるくらいふたりの声が見事に合わさった。
しばらくピリついた沈黙が続いたあと、話の重点が再び私に戻ってくる。
「それで、聞かせて貰えませんか? 何で貴女は俺達のことを知っていたのか」
「組織の指示か? 組織は俺達をノックだと疑っているのか?」
淹れたコーヒーには手をつけず、スコッチが口を開くと、それに続いてバーボンも半ば噛み付くように問うてきた。
「いえ、たまたま私が情報を持っていただけです」
「たまたま? とぼけるな」
「とぼけてなんていませんよ。私の頭の中には、1000万人を超える人物のデータが入っています」
自分の頭を指で指し示すような動作をすると、すました顔で煙草をふかし続けているライとは裏腹に、公安のふたりが新鮮に驚いてくれる。
私は3人がちっとも飲んでくれない冷めたコーヒーを啜った。
まぁ私が彼らの立場なら飲まないけどね。
「とにかく、私があなた方を知っていようがいまいが、それは些細な問題に過ぎない。私は組織にこの情報を渡す気は無いし、組織の機密をあなた方に売ることもしません」
「組織を潰すために俺たっっ!!! 」
開いたスコッチの唇を少し身を乗り出して人差し指で軽く抑える。
「それが世界の均等情勢を保つための鉄則です。犯せば待つのは……分かりますよね」
出来れば戦争なんて起こさずにおきたいものだ。
平和主義ではないけど、色々と面倒くさそうだからね。
「それで、今日ここにお招きしたのは、」
指を彼の唇から離して、口角を上げる。
「あなたがたと親睦を深めるためです。」
そう言うと、いかにも真意をつかみかねると言った顔を3人同時にした。
「ふざけるんじゃない!さっきから俺達をおちょくってるのか?」
「いいえ。お互いに協力をしましょうというお話です。」
「協力だ?組織の情報は売れないと言った口で何を……」
「バーボン、とりあえず今は彼女の話を聞こう。」
身を乗り出すバーボンをスコッチが止めた。
「今、世界中で横行する組織ぐるみの国際犯罪の数が急激に増加していることはご存知ですよね」
「あぁ」
「その司令塔を置く拠点として世界中の犯罪組織が注目しているのが、四方を海に囲まれていて、インフラが整っており、治安も安定している、ある安全な国です」
「……日本……」
降谷さんが眉間をおさえてソファーの背もたれに埋まったところで、私は膝の上に安置していたカップを机に置き、組んでいた足を解いた。
「つまり、日本での情報の需要が高くなるから、俺たちみたいな警察系の組織の人間と仲良くしてるとアンタにも俺達にもメリットがある、ってことか?」
スコッチが少し動揺しながら言った。
「まさに。私も近々拠点を日本に移そうと思っていますので」
私はそう言って、確実に冷めた3人のコーヒーをテーブルの端に寄せて、クラッチバッグから名刺入れを取り出す。
「ほう、天下の情報屋が日本に……面白くなりそうだな」
「本当に情報だけが目当てか?他に目的があるんじゃないのか」
未だに鋭い目を向けてくるバーボン。
本当にこの人は愛国心の塊だな…
どれだけ災いを持ち込みたくないのやら
「これ以上、いまお話出来ることはありません。これは私の仕事用のメールアドレスと携帯番号です」
名刺入れから3枚連絡先を取り出して、机の上を滑らせながら3人に渡す。
「対価次第でいつでもお力になります。まぁご連絡無くてもこれから嫌という程顔を合わせることになるかもしれませんしね」
怪しんで名刺に触れようとしない3人。
「名刺には何も仕込んでいませんよ。それから言わなくてもお分かりだと思いますが、その連絡先を追跡しても無駄ですからね」
にこり、と音がつきそうな位口角を上げた。
「今日はお話しできてよかったです。お引き止めしてしまってすみません、こんな時間ですからタクシーを呼びますね」
「結構だ。自分で拾う」
「そうですか。ではお気をつけて。また」
バーボンが立ち上がると、スコッチが続いた。最後にライがタバコを灰皿に押し付けてから立ち、3人で連なって部屋を出ていった。
彼らを見送った後、結局誰も手をつけなかった冷めたコーヒーを眺めながら、大きなため息をつき目を閉じた。
「ふふ」
体の奥から笑いが溢れてしまう。
新鮮だ。
あんな人間と話すのは久々だった。
彼らの目にはどんな景色が映っているんだろう。
言葉の端々に感じる正義感や愛国心、
自分はどうなってもいいから守らなきゃいけないものを守り通すという自己犠牲心。
そんなの今まで実際に感じた事はなかった。
世の中にはヒーローみたいな人間がいるという御伽噺のような認識だったからなぁ。
そういえば、何で私は彼らにこんなにお節介を妬いているのだろう。
仕事割合の大きな取引先を潰そうとしている人達なのに。
やっぱり、こんな私にも、陽の光の下で普通に生きたいと願う気持ちはあるんだろうか。
馬鹿馬鹿しい。
きっと今までろくに遊んでこなかったから、少し息抜きで面白いことがしたいだけ。
最後には利用し利用される“顧客”に落ちゆくのだから、
どうせなら少しくらい……
自分の思い通りにならない面白さを味わっても
罰は当たらないよね。
その機械が高い音を発しはじめ、ライが扉を閉めたところで口を開いた。
「皆さん昔から優秀だったようなので既にお気づきだと思いますが、襟の裏、ズボンの裾の裏に盗聴器とGPSがありますので、それらを壊してください」
英語をやめ
特にバーボンの目付きは触れれば傷が着きそうなほど鋭い
しかし驚くことに3人とも従順に盗聴器を身から外し始めたのだ。
これは面白い反応だなぁ、こんな密室で、自分の敵の指示の通りに行動するなんて。
普通なら腰のホルスターに入ったソレで、私をすぐ消そうとするだろうに……
「あんた、もしかして俺達の素性が分かってる……のか?」
スコッチが日本語を使っておずおずと聞いてきた。
随分動揺しているようだ。
「皆さん有名人でいらっしゃるので、存じていましたよ。あぁ、それ、ちゃんと壊したらそこの黒いボックスに放り込んでくださいね」
備え付けのアンティークカップにインスタントコーヒーを淹れ、華奢な造りのローテーブルに置いた。
「さて、どうぞおかけになってください。インスタントですが、コーヒーにミルクと砂糖を入れる方は?」
わざと含ませた笑顔を向けてみると、やはりバーボンが食いついてきた。
「コーヒーなんてどうでもいい。俺達の事を調べてどうする気だ?組織に売るか?」
割と喧嘩っ早いのだろうか、この人は。
「そもそも、ライもここに居る時点で組織には既に…」
おろおろとスコッチが呟く。
あれ、3人ともお互いの素性は知り合ってるんじゃないんだ
私と公安の視線がライに集中する。
ライはこれみよがしに大きくため息を吐くと、懐からシガレットケースを取り出した。
「煙草を吸っても?」
「えぇ。火をお貸ししましょうか?」
いや、いい と、細い手巻きの煙草を口に咥えて、マッチでスマートに火をつける。
白い煙が2度空に浮いたところで重々しく彼は口を開いた。
「俺は組織に潜入するNOCだ」
「「 NOC ?!!」」
ナイスシンクロと言いたくなるくらいふたりの声が見事に合わさった。
しばらくピリついた沈黙が続いたあと、話の重点が再び私に戻ってくる。
「それで、聞かせて貰えませんか? 何で貴女は俺達のことを知っていたのか」
「組織の指示か? 組織は俺達をノックだと疑っているのか?」
淹れたコーヒーには手をつけず、スコッチが口を開くと、それに続いてバーボンも半ば噛み付くように問うてきた。
「いえ、たまたま私が情報を持っていただけです」
「たまたま? とぼけるな」
「とぼけてなんていませんよ。私の頭の中には、1000万人を超える人物のデータが入っています」
自分の頭を指で指し示すような動作をすると、すました顔で煙草をふかし続けているライとは裏腹に、公安のふたりが新鮮に驚いてくれる。
私は3人がちっとも飲んでくれない冷めたコーヒーを啜った。
まぁ私が彼らの立場なら飲まないけどね。
「とにかく、私があなた方を知っていようがいまいが、それは些細な問題に過ぎない。私は組織にこの情報を渡す気は無いし、組織の機密をあなた方に売ることもしません」
「組織を潰すために俺たっっ!!! 」
開いたスコッチの唇を少し身を乗り出して人差し指で軽く抑える。
「それが世界の均等情勢を保つための鉄則です。犯せば待つのは……分かりますよね」
出来れば戦争なんて起こさずにおきたいものだ。
平和主義ではないけど、色々と面倒くさそうだからね。
「それで、今日ここにお招きしたのは、」
指を彼の唇から離して、口角を上げる。
「あなたがたと親睦を深めるためです。」
そう言うと、いかにも真意をつかみかねると言った顔を3人同時にした。
「ふざけるんじゃない!さっきから俺達をおちょくってるのか?」
「いいえ。お互いに協力をしましょうというお話です。」
「協力だ?組織の情報は売れないと言った口で何を……」
「バーボン、とりあえず今は彼女の話を聞こう。」
身を乗り出すバーボンをスコッチが止めた。
「今、世界中で横行する組織ぐるみの国際犯罪の数が急激に増加していることはご存知ですよね」
「あぁ」
「その司令塔を置く拠点として世界中の犯罪組織が注目しているのが、四方を海に囲まれていて、インフラが整っており、治安も安定している、ある安全な国です」
「……日本……」
降谷さんが眉間をおさえてソファーの背もたれに埋まったところで、私は膝の上に安置していたカップを机に置き、組んでいた足を解いた。
「つまり、日本での情報の需要が高くなるから、俺たちみたいな警察系の組織の人間と仲良くしてるとアンタにも俺達にもメリットがある、ってことか?」
スコッチが少し動揺しながら言った。
「まさに。私も近々拠点を日本に移そうと思っていますので」
私はそう言って、確実に冷めた3人のコーヒーをテーブルの端に寄せて、クラッチバッグから名刺入れを取り出す。
「ほう、天下の情報屋が日本に……面白くなりそうだな」
「本当に情報だけが目当てか?他に目的があるんじゃないのか」
未だに鋭い目を向けてくるバーボン。
本当にこの人は愛国心の塊だな…
どれだけ災いを持ち込みたくないのやら
「これ以上、いまお話出来ることはありません。これは私の仕事用のメールアドレスと携帯番号です」
名刺入れから3枚連絡先を取り出して、机の上を滑らせながら3人に渡す。
「対価次第でいつでもお力になります。まぁご連絡無くてもこれから嫌という程顔を合わせることになるかもしれませんしね」
怪しんで名刺に触れようとしない3人。
「名刺には何も仕込んでいませんよ。それから言わなくてもお分かりだと思いますが、その連絡先を追跡しても無駄ですからね」
にこり、と音がつきそうな位口角を上げた。
「今日はお話しできてよかったです。お引き止めしてしまってすみません、こんな時間ですからタクシーを呼びますね」
「結構だ。自分で拾う」
「そうですか。ではお気をつけて。また」
バーボンが立ち上がると、スコッチが続いた。最後にライがタバコを灰皿に押し付けてから立ち、3人で連なって部屋を出ていった。
彼らを見送った後、結局誰も手をつけなかった冷めたコーヒーを眺めながら、大きなため息をつき目を閉じた。
「ふふ」
体の奥から笑いが溢れてしまう。
新鮮だ。
あんな人間と話すのは久々だった。
彼らの目にはどんな景色が映っているんだろう。
言葉の端々に感じる正義感や愛国心、
自分はどうなってもいいから守らなきゃいけないものを守り通すという自己犠牲心。
そんなの今まで実際に感じた事はなかった。
世の中にはヒーローみたいな人間がいるという御伽噺のような認識だったからなぁ。
そういえば、何で私は彼らにこんなにお節介を妬いているのだろう。
仕事割合の大きな取引先を潰そうとしている人達なのに。
やっぱり、こんな私にも、陽の光の下で普通に生きたいと願う気持ちはあるんだろうか。
馬鹿馬鹿しい。
きっと今までろくに遊んでこなかったから、少し息抜きで面白いことがしたいだけ。
最後には利用し利用される“顧客”に落ちゆくのだから、
どうせなら少しくらい……
自分の思い通りにならない面白さを味わっても
罰は当たらないよね。