第1章
夢小説設定
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「レディを待たせるなんて、どんな言い訳が聞けるかしら?」
22時20分
銀の長髪をなびかせて颯爽とバーを歩く黒ずくめの男がひとり。
「“仕事”が予定より長引いたんだ」
そんなに知りたきゃ“仕事”の内容を聞くか?と鳥肌が立ちそうな笑みを浮かべた。
「結構。それより例の件だけど」
「そう事を急くな。会わせたいヤツが居ると言っただろう?先に面を合わせろ」
そう言うと、ジンはどこかに電話を1本入れた。
「突き当たりの左のテーブルだ」
それだけ言って電話を切った数秒後、不敵な笑みを携えている目の前の男越しに 細身なスーツを着こなす3人の男性が入口から歩み寄って来るのが見えた。
「ひとりじゃないのね」
全員アジア系の顔をしている。
ひとりは完全な日本人だろうが、あとの2人はおそらく日本人と外国人……ヨーロッパ系統のハーフだろう。
テーブルの近くまでやってきた彼らをにこやかに迎える。
「貴女がかの有名な情報屋、魅惑のアドラー…」
「お会いできて光栄です」
褐色にブロンドの彼が私の手を取って軽く口付けた。
「どうも、こんばんは」
にこり、と微笑んでジンに話を向ける。
「で、こちらの殿方たちは?」
「新しくコードネームを持つ奴らだ。まだ正式に与えられたわけじゃねぇが、大方既に決まっている。バーボン、ライ、スコッチだ」
「あら、3人仲良くウィスキー・トリオじゃない。かわいいわね。よろしく」
真ん中の長髪の彼、ライ以外はにこやかに微笑んでいるが、3人それぞれの顔には見覚えがあり、うち1人に関しては、面識があった。
それは以前たまたま会った事があるだとかそんな偶然ではない。
彼らの情報は私の頭の中にあった。
「これからコイツらにお前と取引させる機会が多くなるだろう。顔を覚えておけとの指示だ」
そう言って煙草をふかし始めるジン。
カクテルグラスを揺らし口角を上げながらも、頭の中では思索に耽っていた。
なるほど、“彼ら”はとうとうこの組織にも手を伸ばし始めたのか…
となると今後は忙しくなるかもしれない。
インターネット上で本籍管理をするのは現代社会では当たり前のようになってきている。が、やはりいくら厳重な警備でも抜け穴は必ず存在してしまう。
まぁ紙面であれば盗まれれば終わりだ。
どの道避けられない事ではある。
「バーボンはハニートラップで、あとのふたりは狙撃ってところかしら」
全員が席につき、彼らにファーストグラスが行き渡ったところでそう言い当てると、驚いたような表情を見せる3人。
「バーボンは男も落とす無双だ。ライは700ブチ抜く。スコッチは組織の中じゃ悪くねぇ動体視力をしている。3人とも狙撃じゃキャンティやコルンより使える」
バーボン……彼の本当の仲間が知ったら腰を抜かすだろうな、きっと。
いや、もしかして男が趣味なのかも。
「随分彼らを褒めるのね」
付き合いの長い私でさえこんなベタ褒め無いのに、と笑うと、スコッチが口を開いた。
「でもまさか、有名なアドラーが東洋系の方だったなんて思ってもなかったです。それに俺らよりもずっと若い様だし」
「えぇ。このテーブルにいる人はみんな日本の血が流れているんじゃないかしら?」
そう言った一瞬だけ、鋭い視線をそれぞれから感じた。
「アドラー。無駄話は早く切り上げて、そろそろ本題に入ろうぜ」
1本吸い終わったジンがギラギラとした目でこちらを見る。
「そうね。これがその名簿」
カバンから取り出した封筒を ス、と机の上を滑らせてあちら側まで渡した。
「報酬は早期料金含め2割増でいいわ。お得でしょ?」
「チッ、抜け目のない奴だ」
ジンはなぜか満足そうに笑い、こちらはゴトリと自立しそうな程詰め込まれた封書が置かれた上に更に札束が2つ積み上げられた。
「あまり急かされるのは嫌いなの。催促の電話はかけてこないでちょうだいね」
総額を厚みで判断し、鞄の中に仕舞う。
「俺は引き上げる。アドラー、後は好きにしてくれて構わない」
「へぇ。それって、彼らを“味見”しろってこと?」
「フッ……さあな。だが今のうちにやることは済ませておけ。……忙しくなるぜアドラー」
不気味に笑うと、彼は銀髪を揺らして帰って行った。
22時20分
銀の長髪をなびかせて颯爽とバーを歩く黒ずくめの男がひとり。
「“仕事”が予定より長引いたんだ」
そんなに知りたきゃ“仕事”の内容を聞くか?と鳥肌が立ちそうな笑みを浮かべた。
「結構。それより例の件だけど」
「そう事を急くな。会わせたいヤツが居ると言っただろう?先に面を合わせろ」
そう言うと、ジンはどこかに電話を1本入れた。
「突き当たりの左のテーブルだ」
それだけ言って電話を切った数秒後、不敵な笑みを携えている目の前の男越しに 細身なスーツを着こなす3人の男性が入口から歩み寄って来るのが見えた。
「ひとりじゃないのね」
全員アジア系の顔をしている。
ひとりは完全な日本人だろうが、あとの2人はおそらく日本人と外国人……ヨーロッパ系統のハーフだろう。
テーブルの近くまでやってきた彼らをにこやかに迎える。
「貴女がかの有名な情報屋、魅惑のアドラー…」
「お会いできて光栄です」
褐色にブロンドの彼が私の手を取って軽く口付けた。
「どうも、こんばんは」
にこり、と微笑んでジンに話を向ける。
「で、こちらの殿方たちは?」
「新しくコードネームを持つ奴らだ。まだ正式に与えられたわけじゃねぇが、大方既に決まっている。バーボン、ライ、スコッチだ」
「あら、3人仲良くウィスキー・トリオじゃない。かわいいわね。よろしく」
真ん中の長髪の彼、ライ以外はにこやかに微笑んでいるが、3人それぞれの顔には見覚えがあり、うち1人に関しては、面識があった。
それは以前たまたま会った事があるだとかそんな偶然ではない。
彼らの情報は私の頭の中にあった。
「これからコイツらにお前と取引させる機会が多くなるだろう。顔を覚えておけとの指示だ」
そう言って煙草をふかし始めるジン。
カクテルグラスを揺らし口角を上げながらも、頭の中では思索に耽っていた。
なるほど、“彼ら”はとうとうこの組織にも手を伸ばし始めたのか…
となると今後は忙しくなるかもしれない。
インターネット上で本籍管理をするのは現代社会では当たり前のようになってきている。が、やはりいくら厳重な警備でも抜け穴は必ず存在してしまう。
まぁ紙面であれば盗まれれば終わりだ。
どの道避けられない事ではある。
「バーボンはハニートラップで、あとのふたりは狙撃ってところかしら」
全員が席につき、彼らにファーストグラスが行き渡ったところでそう言い当てると、驚いたような表情を見せる3人。
「バーボンは男も落とす無双だ。ライは700ブチ抜く。スコッチは組織の中じゃ悪くねぇ動体視力をしている。3人とも狙撃じゃキャンティやコルンより使える」
バーボン……彼の本当の仲間が知ったら腰を抜かすだろうな、きっと。
いや、もしかして男が趣味なのかも。
「随分彼らを褒めるのね」
付き合いの長い私でさえこんなベタ褒め無いのに、と笑うと、スコッチが口を開いた。
「でもまさか、有名なアドラーが東洋系の方だったなんて思ってもなかったです。それに俺らよりもずっと若い様だし」
「えぇ。このテーブルにいる人はみんな日本の血が流れているんじゃないかしら?」
そう言った一瞬だけ、鋭い視線をそれぞれから感じた。
「アドラー。無駄話は早く切り上げて、そろそろ本題に入ろうぜ」
1本吸い終わったジンがギラギラとした目でこちらを見る。
「そうね。これがその名簿」
カバンから取り出した封筒を ス、と机の上を滑らせてあちら側まで渡した。
「報酬は早期料金含め2割増でいいわ。お得でしょ?」
「チッ、抜け目のない奴だ」
ジンはなぜか満足そうに笑い、こちらはゴトリと自立しそうな程詰め込まれた封書が置かれた上に更に札束が2つ積み上げられた。
「あまり急かされるのは嫌いなの。催促の電話はかけてこないでちょうだいね」
総額を厚みで判断し、鞄の中に仕舞う。
「俺は引き上げる。アドラー、後は好きにしてくれて構わない」
「へぇ。それって、彼らを“味見”しろってこと?」
「フッ……さあな。だが今のうちにやることは済ませておけ。……忙しくなるぜアドラー」
不気味に笑うと、彼は銀髪を揺らして帰って行った。