第1章
夢小説設定
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5日後。
「うわぁん!新ちゃん、ちゃんとご飯食べるのよ」
「わーってるよ!ガキじゃあるめぇし1人でもちゃんとやれるって」
空港の国際線、保安検査場の前で有希子さんが新一くんに抱きついていた。
「ホントにホントに大丈夫?蘭ちゃんや作者Aちゃんにも、あんまり迷惑かけないようにね?」
「任せてください、私がちゃんと面倒見ますから!」
お見送りについてきた蘭ちゃんが、有希子さんににっこりとそう告げると、「面倒見るって、オイ」と未だ抱きつかれたままの新一くんがさらに呆れた顔をした。
「蘭くんがいるなら安心して新一を日本に置いていけるな」
「な、親父まで!」
そんな微笑ましいやりとりを一歩ひいて見ていると、工藤先生が突然私の肩に手を置いた。
「改めて、引き受けてくれてありがとう」
「できるかどうかはわかりません。でも、できる事はやります」
「一番信じられる言葉だな」
トントンと私の肩を2回軽く叩くと、有希子さんの方に向き直った。
「そろそろ時間だ。行こう、有希子」
「わかった。じゃあね新ちゃん、蘭ちゃん、作者Aちゃん」
「おう」
「はい!また」
「お気をつけて」
「3人とも見送りありがとう。じゃ、日本くん。頼むよ」
「はい、先生。進捗は電話でちょくちょく確認しますから、投げ出したり逃げたりしないでくださいね」
「アハハ、これは手痛い見送りだな」
「お気をつけて、行ってらっしゃいませ」
笑いながら2人は保安検査場に向かい、人混みに消えてしまった。
蘭ちゃんが振り続けていた手を降ろすのと同時に、
「やっと行った。あー、疲れたぜ」
と伸びをする新一くん。
その姿は心なしか、少し寂しそうだった。
その後、私の車で蘭ちゃんを探偵事務所の下まで送り届け、新一くんと工藤邸に帰った。
コーヒーをいれ、カウンターで本を読む新一くんと椅子ひとつ越しに腰掛ける。
「今後の話をしようか、新一くん」
私が切り出した。
「今後の話?」
本を閉じ、少し眉をひそめて新一くんがこちらを向いた。
私が工藤先生の日本の中継秘書になった話はもう優作さんから聞いてると思う」
「ああ、聞いてる」
眉をひそめたまま、脚を組み替えてコーヒーを口元に持っていく新一くん。
私は言葉を選びながら、慎重に続けた。
「この間も言った通り今はまだ詳しく話せないけど、君が推理したように私は表には言えないような仕事をしている。
優作さんは私の正体を知っていたうえで私を雇い、君を私に任せると言った」
「はぁ?親父が?」
コーヒーのマグを机に置きながら、いかにもわかりかねると言った表情でこちらを見た。
「うん。この辺はややこしいと思うから、気になることは君から優作さんに聞いてもらいたい。私が教えていい範疇を超えてしまうといけないからね」
「それで?」
「それで、今後私は裏稼業をメインに仕事をするから、君やこの家とはしばらく距離を取る。
私は基本、足を探られることのないよう本拠地を持つことはないから、もし、私の力が必要になった時はここに連絡して」
ス、とカウンターの上を滑らせる様に、11桁の番号だけが書かれたカードを渡す。
それを受け取った新一くんはカードを表裏見たり、少し怪しんで机上に戻し、「あの時の親父の頼むぞって、そういう事だったのかよ」と小さくつぶやいた。
「でもよ、護るって具体的に何するんだ?」
「それは護るような機器的状況にならなきゃ分かんないなぁ。とにかく裏から気にかけるようにはするつもり。探偵してて、被害者に逆恨みされて殺されるとか、嫌でしょ?」
「そんなの要らねぇよ」
「まあ、私の存在は新一くんは気にしてなくていいよ。これは私と優作さんの約束だからさ」
私もコーヒーを一口飲んだ。
大人たちが勝手にお守りを決めるというある種の赤ちゃん扱いをされて不服そうな少年は、その後もブツクサと文句を垂れていたが、私が家を出る時にはしっかりと玄関まで見送りに来てくれた。
工藤邸を出て、ふらふらと駅前のホテルに向かって歩く。
工藤先生にも正体が完全にバレていたと判明してしまったし、これでもうもうオンボロアパートに住む必要も無くなったので、大家さんと話をして昨日引き上げてきた。
数ヶ月間毎日通い詰めた場所や普通の生活をするために用意した寝床を急に失って、ちょっとした喪失感を得ている。
また暇でつまらないホテル暮らしに戻ってしまったのかぁ。
なにか新しい暇つぶしを見つけないと……
あ、
ウイスキートリオの教育が始まるんだったな。