いのちのはなし
ロットー家はアレンに部屋を用意した
と言っても、物置同然の地下室をアレンに与えたのだが…
「ごめんなさいね…今空いてる部屋がここだけしかなくて…」
奥さんの言葉を聞いたアレンは地下室を見渡す
ロットー家の地下室は広く、ロットー家で一番広いのではないかと思われた
そして地下室とは言ってもちゃんと電気は付くし、掃除をすれば十分に人が住めそうな部屋でもあった
奥さんの言葉を聞いたアレンが声を張り上げた
「嬉しいです、僕今まで自分の部屋なんて与えられた事なかったんです!」
そう言ってうきうきと『初めての自分の部屋』に浮かれているアレンを見て…奥さんは微笑ましい気持ちになった
そしてアレンがロットー家に来てから数日が経った
「御主人様は何の仕事をなさっているんですか?」
ふいに、アレンが部屋の中にいた御主人に質問をした
アレンの質問を聞いた御主人は、アレンの質問に答えるために書斎の本棚から一冊の本を取り出すとこう言った
「僕は小説を書いてるんだ」
御主人はそう言ってアレンに一冊の本を差しだした
中々に凝った装丁の本、帯には『奇才、コムイ・ロットーの描く新たなる世界』と書かれていた
受け取った本をめくり目を通す、アレンの目に内蔵されたカメラが一文字一文字を丁寧に読み込んだ
「どうだい…って言っても君には解らないか」
無表情で本を読むアレンにコムイが声を掛けた
アレンは本からコムイに目を移すと、少々申し訳ないといった顔をした
「すいません、僕には人間の複雑な感情という物が理解できないんです」
「う~ん、そうだろうね」
「でも…」
「でも?」
「御主人さまの文字は美しいです」
「…美しい?」
アレンの口から出た言葉にコムイは目を丸くする
アレンはそんなコムイの顔には気付かずにもう一度本に目を移した
「そうです、例えばこのページ」
そう言ってアレンは自分の見ていたページをコムイに見せる
「このページでは、季節や風景の表現にまるで人間に使うような表現をしています。『風が走り回る』『夏と冬が隣り合わせ』目に見えない物に感情が宿るかの様な表現…あ、もちろん場面の表現だけではなく人物の表現も美しいです。例えば…」
本の感想をゆっくりと、力強くしていくアレン
コムイはアレンの言葉を聞きながら先程から目を丸くしている
「アレン…君は…」
「はい?」
本から目を上げたアレンの表情を見た時、コムイは自分の目を疑った
『アンドロイド』が、単なる家電製品の顔に興奮の色が見えていたからだ
「あ、すいません御主人様…僕の『感想』なんて嬉しくないですよね」
「感想…? アレン、今君は『感想』と言ったかい?」
「はい…僕みたいなアンドロイドの言葉はお役に立ちませんよね…」
アレンの感想、それはアレンが自分で『感じた』事を言葉にしてコムイに伝えたと言う事…それはまるで…
「御主人様?」
「あ、あぁ…ゴメン、ちょっと考え事をしてたんだ」
「そうですか…あの、御主人様」
「ん、なんだい?」
「この本、お借りしてもよろしいですか?」
「え?いいけど…どうしてだい?」
「それはその…続きが気になって…」
アレンの言葉にコムイは言葉を無くす
「あ、勿論仕事中には読みません!充電中や、深夜皆さんが眠っている時に読むつもりなんですけど…」
そう言って、少々申し訳なさそうな顔を見せるアレン
「…いいよ、持って行きなさい」
「本当ですか!ありがとうございます!」
そう言うと本を大事そうに胸に抱えアレンは部屋を出ていった
その背にコムイが真剣な表情を向けていたのをアレンは知らない
アレンが部屋から出て行った後、おもむろにコムイは原稿用紙を取り出した
「アンドロイドに感情…か、ふふ…また新しい話が書けそうだなぁ♪」
そう言って微笑みながらコムイは部屋の机の原稿用紙に向かって何やら文章を書き始めたのだった…
と言っても、物置同然の地下室をアレンに与えたのだが…
「ごめんなさいね…今空いてる部屋がここだけしかなくて…」
奥さんの言葉を聞いたアレンは地下室を見渡す
ロットー家の地下室は広く、ロットー家で一番広いのではないかと思われた
そして地下室とは言ってもちゃんと電気は付くし、掃除をすれば十分に人が住めそうな部屋でもあった
奥さんの言葉を聞いたアレンが声を張り上げた
「嬉しいです、僕今まで自分の部屋なんて与えられた事なかったんです!」
そう言ってうきうきと『初めての自分の部屋』に浮かれているアレンを見て…奥さんは微笑ましい気持ちになった
そしてアレンがロットー家に来てから数日が経った
「御主人様は何の仕事をなさっているんですか?」
ふいに、アレンが部屋の中にいた御主人に質問をした
アレンの質問を聞いた御主人は、アレンの質問に答えるために書斎の本棚から一冊の本を取り出すとこう言った
「僕は小説を書いてるんだ」
御主人はそう言ってアレンに一冊の本を差しだした
中々に凝った装丁の本、帯には『奇才、コムイ・ロットーの描く新たなる世界』と書かれていた
受け取った本をめくり目を通す、アレンの目に内蔵されたカメラが一文字一文字を丁寧に読み込んだ
「どうだい…って言っても君には解らないか」
無表情で本を読むアレンにコムイが声を掛けた
アレンは本からコムイに目を移すと、少々申し訳ないといった顔をした
「すいません、僕には人間の複雑な感情という物が理解できないんです」
「う~ん、そうだろうね」
「でも…」
「でも?」
「御主人さまの文字は美しいです」
「…美しい?」
アレンの口から出た言葉にコムイは目を丸くする
アレンはそんなコムイの顔には気付かずにもう一度本に目を移した
「そうです、例えばこのページ」
そう言ってアレンは自分の見ていたページをコムイに見せる
「このページでは、季節や風景の表現にまるで人間に使うような表現をしています。『風が走り回る』『夏と冬が隣り合わせ』目に見えない物に感情が宿るかの様な表現…あ、もちろん場面の表現だけではなく人物の表現も美しいです。例えば…」
本の感想をゆっくりと、力強くしていくアレン
コムイはアレンの言葉を聞きながら先程から目を丸くしている
「アレン…君は…」
「はい?」
本から目を上げたアレンの表情を見た時、コムイは自分の目を疑った
『アンドロイド』が、単なる家電製品の顔に興奮の色が見えていたからだ
「あ、すいません御主人様…僕の『感想』なんて嬉しくないですよね」
「感想…? アレン、今君は『感想』と言ったかい?」
「はい…僕みたいなアンドロイドの言葉はお役に立ちませんよね…」
アレンの感想、それはアレンが自分で『感じた』事を言葉にしてコムイに伝えたと言う事…それはまるで…
「御主人様?」
「あ、あぁ…ゴメン、ちょっと考え事をしてたんだ」
「そうですか…あの、御主人様」
「ん、なんだい?」
「この本、お借りしてもよろしいですか?」
「え?いいけど…どうしてだい?」
「それはその…続きが気になって…」
アレンの言葉にコムイは言葉を無くす
「あ、勿論仕事中には読みません!充電中や、深夜皆さんが眠っている時に読むつもりなんですけど…」
そう言って、少々申し訳なさそうな顔を見せるアレン
「…いいよ、持って行きなさい」
「本当ですか!ありがとうございます!」
そう言うと本を大事そうに胸に抱えアレンは部屋を出ていった
その背にコムイが真剣な表情を向けていたのをアレンは知らない
アレンが部屋から出て行った後、おもむろにコムイは原稿用紙を取り出した
「アンドロイドに感情…か、ふふ…また新しい話が書けそうだなぁ♪」
そう言って微笑みながらコムイは部屋の机の原稿用紙に向かって何やら文章を書き始めたのだった…