ほんの少しだけ

「え?」
思わず聞き返してしまったミランダ、照れたように口を開くアレン



「好きです、ミランダさん」



違う
違うわ…要らぬ希望なんて持っちゃ駄目…アレン君の好きは…‥

「わ、私も好きよ」

そうだ、
友人としての、
万人に向けた
好き だろう

「違います!僕の好きは‥!」
激昂 アレンは叫ぶような声を上げた

駄目よ私じゃアレン君に相応しくない 私みたいな女じゃ…

「だっ駄目よ!?大人をからかっちゃ?」

「からかってなんかいません!」

「!!」
ミランダの目を見据えてアレンは言う

「僕は貴女を愛しています」

「わっ私何一つ人並みに出来ないのよ?」

「愛しています」

「そ、それに10も歳が離れているのよ」

「愛しています!」

「それに、それに…」

「ミランダさん!」
アレンが叫ぶ、そして…

「僕じゃあ貴女の好きな人になれませんか?」
「あ…」

アレンは泣いていた
歳相応の、ミランダの前だけで見せる己の弱い部分
全てを隠さずに自分の気持ちに嘘を付かずに

「だって…‥!」
ミランダは恐れていた
それは今まで生きてきた中で一番の恐怖だった
自分の救世主、自分の総てそんな存在である少年が自分を愛してるとまで言っている 今までの人生ではありえなかった幸福が目の前にある そこにミランダはある種の恐怖を覚えていた
「わっ私は‥」(駄目よ)
「アレン君が」(駄目よ)
「…‥!」(言っては駄目!戻れなくなる!)

今までの人生の経験がミランダの言葉を奪う

そしてその言葉を返すのは少年の一言だった

「僕は貴女の言葉なら総てを受け入れます!」

その一言が奪われた言葉をミランダに返した

「!…わ…わたし…も…」
そして言葉は形となった
「私もアレン君を愛してる!」
涙があふれるミランダをアレンは抱き締め、そしてミランダの口を自分の唇でふさぐ、そして

「僕には貴女しかいませんでした…」

「私にも貴方しかいない‥」
ミランダは胸の内をアレンにぶつけた
「わっ私恐かったの!今ある時間や場所や関係が全て壊れてしまいそうで…‥!」
「大丈夫です…そんな事にはなりません…‥」
そう言ってミランダの頭を優しく撫でる
「大丈夫です…‥もし全てが壊れるようなことがあっても僕は貴女の傍にいます…‥」
それを聞いてまた涙があふれる


そうしてしばらく二人抱き合ったまま幸せの余韻に浸る
ほんの少しの言葉が与えたほんの少しの勇気のお話
その後の話はこれから始まる
END
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