ほんの少しだけ

聞けばアレンはよく買い物に行く街で突然同年代の女の子に愛の告白を受けたという

「それでその子は何て?」

「突然だったんですけど…‥」

その日街での買い物が一通り終わったアレンは帰りにお気に入りのパン屋で菓子パンを買って食べようとしていた、そこに
〈あの…‥いつもここで買い物してますよね!これ…‥読んでください!〉
そう言って一通の手紙を半ば強引に渡す少女…アレンは何が起こったかわからない

「それで…‥手紙を読んでみたら…‥」

「つまりラブレターを貰ったのね?」

「…‥はい」

そう言ってまた溜め息を吐くアレンの目は少し虚ろだ

「僕‥こんな事初めてで…‥どうしたらいいんでしょう?」

「どうしたらって…‥」

ミランダの心中は複雑だ…‥まさか意中の人から恋愛相談を受けることになろうとは…‥

「ア、アレン君はどうしたいの?」
ミランダは複雑な心境を悟られないように平穏を装ったつもりだがついギクシャクした怪しい喋り方になっている、幸いにもアレンはそんな事には気付きもせずに質問に答えている

「どうしたいって‥勿論お断りするつもりなんですけど…」

「えっ!?断るの!?」
ミランダはアレンの言葉に驚きと同時に喜びを感じていた、そして自分が安心の気持ちを持っていた事に少し嫌な気持ちになった

「‥どうして?」

「え?だって…‥その‥僕は他に好きな人がいますから‥」
そう言って照れた笑いを浮かべるアレン

「ミランダさんは好きな人いますか?」





笑顔で残酷な質問をされた
ああ この笑顔を私だけに向けてほしいだなんて考えは私のエゴだろうか
私はこの10も歳の離れた少年に恋い焦がれている
手紙を渡した少女よりも遥か前に彼に恋をしている
しかし少女は勇気を出して気持ちを伝えたというのに私は…‥

「‥…私はいないわ…好きな人‥」

私には無理だ…勇気以前に前に進む力さえでない…

「本当ですか?」

「えっ?」
アレンが疑問の声を上げた

「なんだかミランダさん悲しい顔してます…」

「‥…そう?そう見える?」

「はい」
きっぱりと言い切るアレン

「駄目ですよ?ミランダさんは笑顔が似合うんですから?それに…‥」

そして信じられないような言葉をミランダは聞いた

「好きな人には笑っていて欲しいです」
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